桜もち、桜吹雪、桜人など、日本に「桜」が付く言葉が数多くあるように、私たちにとって桜は、なじみ深い存在ですよね。
菊と同じく日本の国花でもある桜は、春の訪れを感じさせるように、なんだか明るい印象を与えてくれます。
また、桜とセットのお花見も私たちが慣れ親しんてきた行事の一つです。
公園にレジャーシートを敷き、桜ごしに空を眺めると、とても風流な感じがして心地よいという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、この記事では、
- お花見の起源と由来
- 現在のお花見の風習はいつから行われるようになった?
- お花見の意味と意義
について解説・紹介していきます。
お花見の起源・由来とは
現代のお花見と言えば、桜の下で仲間と食べる物を持ち寄って飲んだり食べたり、ときには騒いだりするのが一般的な楽しみ方ですが、そのお花見の歴史をたどると、どうやら当初のお花見は様子が違っていたようです。
お花見の歴史は古く、奈良時代まで遡るとされています。
お花見の始まりは奈良時代から
奈良時代のお花見は、「桜」ではなく『梅の花』を観賞していたようです。
当時、梅の花というのは中国から伝来したばかりであり、とても珍しい植物でした。
そのため「外来の珍しく綺麗な花を、皆で観賞し、楽しみましょう」といった行事だったようです。
ですから当時は、「花」といえば『梅』となっており、「万葉集」に梅の歌が100首を超えるほどあるのも、そのためだと言われています。
ちなみに、梅を鑑賞するという行事は、奈良時代の貴族が始めたとされています。
貴族たちは、中国の唐王朝の文化にならって梅の花を観賞しながら、和歌を詠んで楽しんでいたとされています。
今のお花見とは随分とスタイルが異なり、とても風流な行事となっていたのですね。
桜を見るお花見の起源は平安時代から
平安時代に入ると、お花見の対象が、梅から桜へと変わっていきます。
桜の花のお花見の起源は、嵯峨天皇が催した「花宴の節」という宴だったと 『日本後紀(にほんこうき)』には記されています。
『日本後紀』というのは、平安時代初期に編纂(へんさん)された「勅撰史書(ちょくせんししょ)」で、792年~833年に至る当時の天皇の治世を記した書物です。
桜のお花見に関する最古の記述が「日本後紀」であったことから、平安時代に梅から桜へとお花見の対象が変わったと推測できるようです。
また、平安時代中期に成立したとされる『源氏物語』によると、812年には、花宴は宮中の行事とされ、天皇主催で定例行事として行われていたとされています。
貴族が住む宮廷には、広い庭があり、そこに桜の木を植えて鑑賞していたようですよ。
自宅のお庭で桜を眺めるなんて、とても素敵ですよね。
お花見が庶民の風習になったのはいつから?
長らくの間、貴族行事として行われていたお花見ですが、現代のようなお花見の形になったのは、江戸時代になってからだと言われています。
きっかけは、江戸時代に将軍たちが桜の植樹を推奨したことでした。
それにより江戸の色々な場所に桜の名所が誕生し、庶民にもお花見が広まっていったようです。
特に八代将軍の徳川吉宗は、たくさんの人にお花見を楽しんでもらおうと、王子の飛鳥山や品川の御殿山、隅田川の堤などに多くの桜を植えたとされています。
お花見の意味や意義とは?
現在、桜はただ眺めて楽しむことが主な目的ですが、昔は他の役割もあり、「桜の咲き具合によってその年にお米がどれくらいできるか」という占いを行っていたとされています。
また、当時は山に出かけ、桜の木の下で食べたり歌ったりして楽しむことで、厄を祓(はら)うことができると考えられていたことから、「悪いことが起きませんように」といった願いを込めてお花見を行っていたようです。
加えて『開花』は、神様が降りたという証だとされ、早くに散ることは良くないこととされていました。
お花見には一種の宗教的な意味もあったようですね。
ちなみに日本では、ソメイヨシノという品種が一般的で、開花の目安となる標準木にもなっています。
ソメイヨシノという桜は、江戸時代末期から明治初期に江戸にあったとされる『染井村』の職人達によって交雑して作られたとされています。
そのためか、ソメイヨシノは種子からの繁殖ができないのだそうです。
人の手による挿し木で数を増やしてきたことを考えると、当時の人たちの思い入れを感じることができますね。
まとめ:お花見は、桜ではなく梅を眺める貴族の行事だった
- 昔のお花見では、中国から伝来した梅を観賞していた
- 平安時代に貴族が庭に桜を植えて、観賞するようになった
- 江戸時代に桜の植樹がきっかけでお花見が庶民へと広まった
- 昔は桜を用いて占いやお祓いも行われていた
いかがでしたでしょうか。
桜は1年の内、たった2週間程度で見頃を終える儚い植物です。
満開を迎えた桜は当然のことながら大変美しいですが、役目を終え、はらはらと風に舞って散りゆく姿も大変風流があります。
先日、たくさんの蕾をつけて今か今かと、開花を待ち望む桜を見つけました。
翌月には淡いピンクの花が咲き、その下で多くの笑顔が溢れることでしょう。
今年も例年のようにその中に混じって私もお花見を楽しむことができればいいな・・・と思っています。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。