皆さんは「
あまり聞き慣れない言葉ですが、ある季節を表す言葉になります。
この「芒種」という言葉にはどのような意味があり、いつからいつまでのことをいうのでしょう。
そこで、この記事では、
- 芒種の意味・由来
- 芒種はいつからいつまで?
- 【2023年】の芒種はいつ?
- 芒種の七十二候とは
- 芒種は入梅の季節
- 芒種は縁起が良い日?
- 芒種の旬の食べ物・お花
- 【時候の挨拶・俳句】季語としての芒種の使い方
について解説・紹介していきます。
芒種の意味・由来とは?
まず、「芒種」は『ぼうしゅ』と読みます。
「芒種」は二十四節気(にじゅうしせっき)」の一つで、
『芒(のぎ・のげ)を持つ植物の種をまく頃』という意味があります。
「芒」というのは、お米や麦といったイネ科の植物の小穂(しょうすい)の先端にある針状の部分のことです。
※小穂とは、うろこ状に重なりあった花を含む構造体のことを言います。
二十四節気については、下記の『二十四節気とは?』の記事で詳しく説明していますので、よろしければご覧ください。
二十四節気とは?読み方や意味、2023年の早見表も紹介
皆さんは、「二十四節気」という言葉を聞いたことがありますか? あまり耳にしない言葉かもしれませんが、「二十四節気」は「立 ...
続きを見る
昔は二十四節気を基に農耕を行っていたため、芒種は種をまき始める目安となる日でしたが、前年の秋から育てていた小麦の収穫を芒種までに終わらせなければならなかったため、農家にとっては大変忙しい時期であったようです。
そのため、芒種は「忙種」と表されることもあります。
芒種はいつからいつまで?
太陽の動きを基にして定められる「定期法(ていきほう)」では、太陽黄経が75度となる日が「芒種」とされていて、
毎年『6月5日頃』が「芒種」となります。
また、芒種は期間としての意味もあり、芒種の次の節気が「夏至(げし)」のため、
『芒種(6月5日頃)~夏至の前日(6月20日頃)まで』(約15日間)を表す言葉でもあります。
ちなみに、芒種は『夏』の季節の3番目の季節にあたり、
『①立夏(りっか)→②小満(しょうまん)→③芒種→④夏至→⑤小暑(しょうしょ)→⑥大暑(たいしょ)』の順で夏の季節が巡っていきます。
【2023年】令和4年の芒種はいつ?
【2023年(令和5年)】の芒種は、
『6月6日(火)』です。
期間としては、
『6月6日(火)~6月20日(火)』までが芒種となります。
※夏至が6月21日(水)のため
芒種の七十二候とは
芒種は「二十四節気の一つ」になりますが、二十四節気をさらに細かく3つの期間に分けた「七十二候(しちじゅうにこう)」と呼ばれる暦もあります。
二十四節気は、中国から伝わったものをそのまま使用している暦ですが、七十二候は日本の気候に合わせて何度か作り変えられてきた暦になるため、より正確に季節の変化を知ることができます。
それでは、芒種の期間にあたる七十二候3つを見ていきましょう。
螳螂生(かまきりしょうず)
芒種の「初候(しょこう)」(6月5日~6月9日頃)にあたる『蟷螂生(かまきりしょうず)』は、「カマキリが生まれてくる頃」という意味があります。
カマキリは害虫を食べてくれる肉食昆虫のため、農業にはありがたい益虫とされています。
カマキリは「卵鞘(らんしょう)」または「卵嚢(らんのう)」と呼ばれる膜(まく)の中に200~300ほどの卵を生み、そこから一斉にカマキリの赤ちゃんが生まれますが、大人まで生き残れるのは2~3匹なのだそうです。
腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)
芒種の「次候(じこう)」(6月10日~6月15日頃)にあたる『腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)』は、「腐った草がホタルとなる頃」という意味があります。
なぜ腐った草がホタルになると言われているのかというと、ホタルの生態がまだ分かっていなかった当時は、蒸し暑さで腐った草や竹の根がホタルになると信じられていたからだそうです。
ホタルは幼虫の頃は水の中で過ごしますが、幼虫からサナギになる時には雨の降る夜に陸へと上がり土の中で成虫になるのを待ちます。
幼虫は土の中でまゆを作って40日ほど過ごしたあと、サナギに変化し、10日ほどで羽化して成虫となりますが、成虫となったホタルの寿命は約一週間ほどと言われています。
ちなみに、ホタルは一般的には求愛のために光ると考えられていますが、卵や幼虫、サナギも光るようなので、まだまだホタルについて分かってないことは多いのだそうです。
梅子黄(うめのみきばむ)
芒種の「末候(まっこう)」(6月16日~6月20日頃)にあたる『梅子黄(うめのみきばむ)』は、「梅の実が黄色になって熟す頃」という意味があります。
梅干し作りには黄色く熟した完熟梅を使用すると、実や皮が柔らかい梅干しを作ることができ、失敗も少ないそうです。
また、収穫した梅を使って梅酒や梅干しといった保存食を作ることを「梅仕事(うめしごと)」と言い、かつては年中行事として各家庭で広く行われていました。
生の青梅(特に種の部分)には毒があるため、生のままではなく加工されることが一般的ですが、もし生で食べてしまったとしても大人で300個、子供で100個食べないと深刻な影響はでないと言われています。
しかし注意点として、まだなったばかりの若い青梅は種がやわらかく、種には果肉の10倍~20倍の毒性が含まれているようなので、誤って生のまま食べてしまわないよう気をつけなければなりません。
青梅に含まれる毒成分は「アミグダリン」と呼ばれるもので、頭痛やけいれん、呼吸困難といった症状を引き起こすことが知られています。
芒種は入梅の季節
芒種はちょうど「入梅(にゅうばい・つゆいり)」の季節となります。
「入梅」というのは、雑節(ざっせつ)の一つで、暦の上で「梅雨に入る日」のことを言います。
※雑節も七十二候と同様に、季節の移り変わりを知る目安となる暦です。
現在は太陽黄経が80度になった日が入梅とされ、毎年6月11日頃が入梅となりますが、あくまでも暦上の梅雨入りなので実際の梅雨入りとは日にちが変わってくることになります。
ちなみに、2023年(令和4年)の入梅は6月11日(日)です。
また、あまり聞かない言葉ですが、入梅に対し梅雨が開けることを「出梅(しゅつばい)」と言います。
「入梅」と「梅雨入り」の使い分けはあるの?
「入梅」は太陽黄経が80度となる日、「梅雨入り」は実際に梅雨入りした日で使い分けがされているよ。
芒種は縁起が良い日?
芒種は種をまくのにふさわしい日とされていることから、
『物事を始めるのに縁起が良い日』と言われています。
これは、種をまいた植物がどんどん成長していくように、物事も大きく成長すると考えられるからになります。
また、芸事の稽古を始めるなら『6歳の6月6日に始めると上達する』という古くからの言い伝えもあるようです。
なぜ「6歳の6月6日」なのかについては諸説ありますが、
一説によると、数字を片手で数える際に親指から指を閉じて数えていくと、6を数える時には小指を立てることから、「子が芸事で身を立てる」として数字の6にゲンを担いだのではないかと言われています。
そのため、6月6日は芸事の日として「楽器の日」・「邦楽の日」・「いけばなの日」が制定されています。
芒種の旬の食べ物・お花
芒種(6月6日頃~6月20日頃)には、特別に食べる行事食などは無いようですが、ちょうど旬を迎える食材や見頃のお花がありますので、ご紹介します。
芒種の食べ物・食材
- 青梅
- しそ
- さやえんどう
- 枝豆
- トマト
- とうもろこし
- さくらんぼ
- 鮎(あゆ)
芒種のお花
- 紫陽花(あじさい)
- ホタルブクロ
- 温帯スイレン
- 花菖蒲(はなしょうぶ)
- ユリ
- バラ
- ドクダミ
- 露草(つゆくさ)
- クチナシ
時候の挨拶としての「芒種」の使い方
芒種を「時候の挨拶」として用いる場合は、芒種の期間である『6月5日頃~6月20日頃』に用いることができます。
時候の挨拶とは、手紙の最初に書く季節を表す書き出しの言葉のことです。
時候の挨拶に「芒種」を用いると、『穀物の種をまき始める季節になりましたね』という意味の挨拶になります。
それでは、時候の挨拶としての「芒種」の使い方について例文で紹介します。
書き出しの挨拶【例文】
- 芒種の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
- 芒種の折、じめじめとした蒸し暑い日が続いていますが、お変わりございませんか。
- 芒種のみぎり、紫陽花が大変美しく見頃を迎えております。
- 芒種の季節、雨に濡れた青葉が鮮やかに彩る季節となりました。
結びの挨拶【例文】
- 芒種の候、貴社ますますのご発展とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
- 芒種の折、崩れやすい天候のうえ、どうぞ健やかにお過ごしください。
- 芒種のみぎり、夏本番まであとわずかです。お互い体調管理に気をつけて、また元気にお会いしましょう。
- 芒種の季節、晴れ間にかかる虹のように気持ちは明るく元気にまいりましょう。
俳句季語としての「芒種」の使い方
「芒種」は、俳句の季語としても用いられており、『仲夏(ちゅうか)』を表す「夏の季語」とされています。
二十四節気でいうと、
仲夏は『芒種(6月5日頃)~小暑(7月7日頃)の前日まで』(旧暦5月)を表します。
芒種を用いた俳句【例句】
それでは、「芒種」を用いた俳句をいくつか紹介します。
- 『芒種はや人の肌さす山の草』
鷹羽狩行(たかは しゅぎょう) - 『ささやくは芒種の庭の番鳩』
石原八束(いしはら やつか)
※「番鳩(つがいばと)」は、オスとメスの鳩のことです。 - 『芒種なり水盤に粟蒔くとせむ』
草間時彦(くさま ときひこ) - 『芒種とふこころに播かん種子もがな』
能村登四郎(のむら としろう) - 『大灘を前に芒種の雨しとど』
宇多喜代子(うだ きよこ)
まとめ:芒種とは、稲などの穀物の種をまく頃という意味がある
- 芒種は二十四節気の一つで、夏の季節の3番目
- 2023年(令和5年)の芒種は、「6月6日(火)」で、期間としては「6月20日(火)」まで
- 6月11日頃は「入梅(梅雨入り)」となり、ちょうど芒種の時期と重なる
- 芒種は、「物事を始めるのに縁起が良い日」と言われている
- 時候の挨拶として「芒種」を用いる場合、(6月5日頃~6月20日頃)に使用することができる
- 芒種は夏(仲夏)の俳句季語となる
いかがでしたでしょうか。
芒種は、芒(のぎ)を持つ植物の種をまく頃という意味があり、昔の農家にとっては大変忙しい時期であったことが分かりました。
ちなみに、現在は品種改良や栽培技術の進歩により、種まきは1ヶ月ほど早い5月頃に行われることが多いようです。
そのため、芒種の時期にはすでに田植えが終わり、美しい水田を見ることができます。
芒種には、芒種の時期ならではの風景や旬の食べ物を楽しみたいものですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。