皆さんは、「大寒」という言葉をご存知でしょうか。
聞いたことがないという方も、漢字から「とてつもなく寒いんだろうなぁ・・・」ということは想像がつきますね。
「大寒」には、「大寒卵」を食べる風習があり、縁起が良いと言われているようです。
また、他にどのようなものが食べられているのか気になるという方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、
- 大寒の読み方と意味
- 2023年(令和5年)の大寒はいつ?
- 大寒卵の意味やご利益
- 大寒の食べ物
- 大寒の水は腐らない?
- 大寒の行事
- 時候の挨拶・俳句季語としての「大寒」の使い方【例文】
- 大寒の英語表現
について解説・紹介していきます。
大寒の読み方と意味
まず、「大寒」は『だいかん』と読みます。
「たいかん」ではありませんので注意しましょう。
「大寒」は、二十四節気(にじゅうしせっき)の中の一つで、
『寒さが最も厳しくなる頃』という意味があります。
※二十四節気とは、1年を24の季節で分けた暦のことです。
二十四節気については、下記の『二十四節気とは?』の記事で詳しく紹介していますので、よろしければご覧ください。
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太陽の動きを基にして定められる「定期法(ていきほう)」では、太陽黄経が300度となる日が「大寒」とされていて、『毎年1月20日頃』が「大寒」となります。
また、期間としての意味もあり、大寒の次の節気は「立春(りっしゅん)」のため、
『大寒(1月20日頃)から立春の前日(2月4日頃)まで』(約15日間)を表す言葉でもあります。
ちなみに、大寒は『冬』の季節の最後の季節にあたり、
『立冬(りっとう)→小雪(しょうせつ)→大雪(たいせつ)→冬至(とうじ)→小寒(しょうかん)→大寒』の順で冬の季節が巡っていきます。
2023年(令和5年)の大寒はいつ?
【2023年(令和5年)】の大寒は、
『1月20日(金)』です。
また、期間としては、
『1月20日(木)~2月3日(金)』までが大寒となります。
※立春が2月4日(土)のため
大寒に食べる「大寒卵」の意味やご利益とは?
大寒には、『大寒卵(だいかんたまご)』と呼ばれる卵を食べる風習があります。
「大寒卵」とは、1月20日頃の『大寒の日に生まれた卵』のことで、健康に良い縁起物として昔から食べられてきました。
「大寒卵」には次のようなご利益があると言われています。
- 大寒卵を食べることで1年健康で過ごすことができる
- 健康運・金運に恵まれ、1年間お小遣いには困らない
- 子供が食べると体が丈夫になり、大人が食べると金運がアップする
ちなみに、「小寒(1/6頃)から大寒(1/20頃)まで」の期間を「寒の内(かんのうち)」と言いますが、寒の内に生まれた卵は『寒卵(かんたまご)』と呼ばれ、栄養価が高く、保存がきく貴重な食べ物とされていたそうです。
大寒卵が健康・金運に良いと言われる理由
大寒卵がなぜ健康運や金運に良いと言われているのかというと、それは現在とは違う飼育環境にあります。
昔は管理された飼育小屋などはなく、鶏の品種改良も行われていなかったため、厳しい冬の寒さの中ではなかなか卵を産まなかったそうです。
そのため、寒い時期に産まれる卵は『貴重な縁起物』とされていました。
また、寒さの影響から鶏が水をあまり飲まなくなり、寒さをしのぐためエサを豊富に食べるようになったことから、最も寒い日とされる「大寒」に産み落とされた卵には『蓄積された栄養が豊富に含まれている』と考えられたことが、健康に良いと言われるようになった理由とされています。
加えて、大寒に生む卵の黄身は『とても濃い黄色』をしていたため、風水では金運にもご利益があると言われるようになったようです。
ちなみに、現在では一年中卵を食べることができますが、大寒に収穫された縁起の良い「大寒卵」を購入する方は多いそうですよ。
大寒の旬の食べ物とは
「大寒」には、「大寒卵」の他にも旬とされる食べ物がありますのでご紹介します。
寒魚(かんざかな)
寒魚とは、『小寒から大寒の間(寒の内)に旬を迎える魚・貝のこと』を言います。
寒魚は春の産卵に向けて脂肪を蓄えるため、脂がのっているのが特徴で、名前の頭に『寒』をつけて呼ばれています。
寒魚と呼ばれる魚・貝は次のようなものがあります。
- ブリ(寒ブリ)
- サバ(寒サバ)
- タラ(寒ダラ)
- サワラ(寒サワラ)
- カレイ(寒ガレイ)
- ヒラメ(寒ビラメ)
- クロダイ(寒クロ)
- カキ(寒カキ)
- しじみ(寒しじみ)
など
甘酒
一年で最も寒くなる時期である大寒頃、体を温めようと甘酒を飲む人が多いそうです。
そのため、甘酒の良さ・美味しさをもっと多くの人に知ってもらおうと、森永製菓によって大寒の日は『甘酒の日』として制定されています。(2009年7月23日に日本記念日協会が認定)
甘酒は、米麹(こめこうじ)から作られる『麹甘酒(こうじあまざけ)※ノンアルコール』と、酒粕(さけかす)から作られる『酒粕甘酒(さけかすあまざけ)※微量なアルコール成分を含む』の2種類に分けることができますが、森永の甘酒は、米麹(こめこうじ)と酒麹(さけこうじ)の2種類を使用しているのだそうです。
2種類をブレンドした甘酒には「飲む点滴」と言われるほど「豊富な栄養」が含まれているため、疲労回復や免疫力の向上のほか、血流改善による体を温める効果も 期待できると言われています。
また、目の下のクマの改善や美肌にも効果があるとされていますので、美容目的として飲むのもオススメです。
「大寒の水は腐らない」と言われているのはなぜ?
皆さんは「大寒の水は腐らない」と言われているのをご存知でしょうか。
「寒の内」に汲(く)んだ水は『寒の水(かんのみず)』と呼ばれており、とても清らかな水で長期間傷まなかったことから、霊力のある水と考えられていました。
これは、凍てつくような寒さと乾燥から、雑菌が繁殖しにくく不純物が少ない水であったことが理由として挙げられています。
そのため、最も寒いとされる「大寒の朝」に汲(く)んだ水は『一年間腐らない』と言われ、長期保存用として重宝されていたそうです。
実際に一年間保存していたかは不明ですが、夏場に使うことはあったようです。
また、寒の入り(小寒)から数えて9日目(1/14頃)に汲んだ水は『寒九の水(かんくのみず)』と呼ばれており、とても口当たりがまろやかで薬になるほど良質な水であるとして、薬の効果を高めるため服薬として用いたり、長期保存を行う味噌や酒、餅づくりに用いたりしていたと言われています。
ちなみに、薬になるというのは、実際に薬効があるというわけではなく、寒い冬場になると水を飲む量が減ることから、水を積極的に飲ませるための先人の知恵だったのではと考えられています。
「寒九の水」はなぜ9日目?2023年の寒九はいつ?
「寒九の水」がなぜ9日目なのかについては、寒の入りから9日目が『最も水が澄む日』とされていたことが理由のようですが、はっきりとしたことは分かっていません。
また、寒九に雨が降ると『その年は豊作になる』と言われ、喜ばれていたそうです。
ちなみに、2023年の寒の入り(小寒)は「1月6日(金)」となりますので、9日目は『1月14日(土)』になります。
大寒の行事
大寒の時期には、その寒さを生かした行事がたくさん行われていますので、ご紹介します。
寒仕込み
「寒仕込み(かんじこみ)」とは、『寒の内に行う食品づくり』のことを言います。
お酒や味噌、醤油などが作られていますが、雑菌が繁殖しにくい寒の時期に作ることにより腐敗を防ぐ目的があるほか、低温でゆっくりと発酵・熟成が進むことで、より品質の良いものが作れるそうです。
また、寒の水を使うことにより、味が良くなると言われています。
寒ざらし
「寒ざらし」とは、『寒の内に食品や布などを水や空気にさらすこと』を言います。
食品では「蕎麦(そば)」や「寒天(かんてん)」、「餅(もち)」の寒ざらしのほか、布では「染め物」の寒ざらしが行われています。
蕎麦の寒ざらし
「寒ざらし」を行った蕎麦は、『寒ざらし蕎麦』と呼ばれていて、夏にも食べられる最高級品の蕎麦として江戸時代には徳川家への献上品とされていたと言われています。
「寒ざらし蕎麦」は、そばの実を俵に詰めて冷水に30日間漬けたのち、立春の前日に水から引き上げ、寒風と日光にさらしてよく乾燥させたものを使用して作ります。
※地域によって水に漬ける日数は違うようです。
江戸時代の書物である『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』によると、この方法により仕込んだ蕎麦の原料を俵に入れて冷暗所に保管すると、数年経ても腐らないとあり、食べる時に必要な量だけ取り出して製粉して使用していたようです。
このような工程を経て作られた「寒ざらし蕎麦」は、舌触りがなめらかでもちもちとした食感が特徴で、香りが高く甘みも増して大変美味しいと言われています。
寒天の寒ざらし
寒天は、テングサやオゴノリなどの紅藻から作られた「心太(ところてん)」を一度冷凍してそれを解かし、乾燥させて作ります。
実は寒天は偶然生まれたもので、江戸時代の前期、京都の旅館『美濃屋』の店主「美濃屋太郎左衛門(みのや たろうざえもん)」が残った心太を捨てるため、たまたま屋外に放置していたところ、冬の夜の寒さによって凍結し、それが日中に解凍されるというのを繰り返し、やがて乾燥して白く乾物状になった心太を発見したのが始まりだそうです。
それを見つけた太郎左衛門は、ためしに溶かして固めてみたところ、今までの心太よりも海藻臭さのない美味しい心太になったため、「瓊脂(ところてん)の乾物」として売り出し、評判になったと言われています。
ちなみに、「寒天」という名は、『黄檗山萬福寺(おうばくざんまんぷくじ)』を開創した「隠元禅師(いんげんぜんじ)」により名付けられたと言われており、漢語で「冬の空」を意味する「寒天」という言葉に、『寒ざらしの心太』という意味を込めてつけられたそうです。
餅の寒ざらし
寒の内には「寒の水」を用いてお餅を作る風習が各地にあり、年明けの一番寒い時期に作られるお餅を「寒餅(かんもち)」と言います。
別名「かきもち」とも呼ばれており、油で揚げたり、焼いたりして食べられています。
中でも、富山県立山町では、四角いお餅を薄くスライスして縄で縛り、約1ヶ月間寒風にさらして自然乾燥させるという昔ながらの製法で色とりどりの寒餅を作成しており、町の特産品とされています。
かつては、農村地域の保存食として多くの家庭で作られていたようですが、現在ではほとんど作られなくなってしまったそうです。
また、一度お餅を水に浸して凍らせ、寒風にさらして乾燥させたものは、「氷餅(こおりもち)」や「凍み餅(しみもち)」、「干し餅」などと呼ばれていて、お湯に浸してそのまま食べたり、細かく粉砕して和菓子の材料として用いられています。
鯉のぼりの寒ざらし
岐阜県郡上市(ぎふけん/ぐじょうし)の旧「八幡町(はちまんちょう)」では、毎年大寒になると、郡上市を流れる吉田川で「郡上本染(ぐじょうほんぞめ)」された鯉のぼりの寒ざらしが行われており、冬の風物詩となっています。
※大寒の前後に行われることもあるようです。
郡上本染は、桃山時代・江戸時代初期に始まった400年以上もの歴史のある伝統工芸の一つで、昭和52年(1977年)には、岐阜県重要無形文化財として指定されていますが、時代と共に染物店が減少し、現在は1軒だけしか残っていないそうです。
鯉のぼりは、「カチン染め」と呼ばれる技法で染められており、まず初めに、布に糊で輪郭を描いて乾燥させた後、染色を行います。
その後、糊を落とすため寒ざらしが行われるのですが、冷たい川の水で洗うことにより、布が引き締まり色彩が鮮やかになるのだそうです。
大寒みそぎ
「大寒みそぎ」とは、最も寒いとされる大寒の日に冷水に浸かって身を清め、『無病息災を祈る儀式』です。
「大寒みそぎ」が行われている有名な場所としては、次のような場所があります。
- 山口県防府市(ほうふし)の『春日神社(かすがじんじゃ)』
- 茨城県鹿嶋市(かしまし)の『鹿島神宮(かしまじんぐう)』
- 福井県福井市の『和田八幡宮(わだはちまんぐう)』
- 「宮城県七ケ浜町(しちがはままち)」の海で行われる宮城県内の若手神職の大寒みそぎ
寒稽古・寒中水泳
寒の内には、武道精神の鍛錬(たんれん)の一貫として、気温が最も下がる早朝や夜間に稽古を行う「寒稽古(かんげいこ)」が行われています。
寒稽古と言えば海水に入るイメージがありますが、海水に入って行う鍛錬は「寒中水泳」と呼ばれていて、年中行事の一貫として行われることも多いため、その場合は身体機能に異常がなく健康な方であれば誰でも参加できる行事となっています。
※参加する場所によって事前申し込みが必要なところもありますので、参加希望の方は募集案内に従って行かれるようにしてください。
「寒中水泳」は、『人々の健康と安全、水泳の普及と発展』を願う目的で行われていますが、成人式の記念行事の一貫として行うところもあり、その場合は『成人の日を皆でお祝いし、良い一年になることを祈念』して行われるのだそうです。
ちなみに、寒中水泳に参加される方は、いきなり当日に寒い水に入るというのは大変危険ですので、日頃から水浴びをして体を慣らしておくようにしましょう。
入る前には必ず準備運動を行い、徐々に水に浸かって体を慣らすようにすると良いと言われています。
寒中水泳を行った後には、温かいおしるこや豚汁が振る舞われますので、それを楽しみに頑張るという方も多くいらっしゃることでしょう。
時候の挨拶としての「大寒」の使い方【例文】
時候の挨拶として「大寒」を用いると、『一年で最も寒い季節になりましたね』という意味のある挨拶になります。
また、「大寒」は『大寒(1月20日頃)~立春の前日(2月3日頃)まで』に用いることのできる時候の挨拶とされていますが、『1月下旬に用いるのがふさわしい』と言われていますので、使用する場合には1月下旬の挨拶文に用いるようにしましょう。
それでは、時候の挨拶としての「大寒」の使い方について例文で紹介していきます。
書き出しの挨拶【例文】
- 大寒の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
- 大寒の折、皆様いかがお過ごしでしょうか。
- 大寒のみぎり、寒桜が見頃を迎えております。
- 大寒の季節、厳しい寒さが続いておりますが、お変わりございませんか。
結びの挨拶【例文】
- 大寒の候、貴社ますますのご発展とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
- 大寒の折、身にしみる寒さが続きます。どうぞご自愛くださいませ。
- 大寒のみぎり、本格的な冬将軍の到来です。お風邪など召しませぬようご留意くださいませ。
- 大寒の季節、立春まであと少しとは言え、厳しい寒さが続きます。滋養に良いものをたくさん食べて元気にお過ごしください。
俳句季語としての「大寒」の使い方
俳句の世界で「大寒」は、『晩冬(1月)』を表す季語として用いられています。
- 『大寒の星雪吊に光りけり』
久保田万太郎(くぼたまんたろう) - 『何たること大寒の酒切らすとは 』
高澤良一(たかざわりょういち) - 『大寒のたましひ光る猫通す』
斎藤玄(さいとうげん) - 『大寒の埃の如く人死ぬる 』
高浜虚子(たかはまきょし) - 『大寒の老体五名鰻食ふ』
佐藤鬼房(さとうおにふさ) - 『大寒やしづかにけむる茶碗蒸』
日野草城(ひのそうじょう)
「小寒の氷大寒に解く」のことわざの意味
ことわざの中には、『小寒の氷大寒に解く(しょうかんのこおりだいかんにとく)』ということわざがあります。
「小寒の氷が大寒に溶ける」という言葉ですが、これは「小寒のほうが寒く、大寒のほうがかえって暖かい」ということを表している言葉で、
『物事の順序は、必ずしも順序どおりとは限らない』という意味で用いられています。
大寒を英語で表現すると
「大寒」を英語で表すと、次のように表現されています。
『the coldest days of winter』(冬で最も寒い日)
『the coldest season』(最も寒い季節)
まとめ:大寒は一年で最も寒さが厳しくなる頃
- 大寒は、二十四節気の最後の節気
- 2023年(令和5年)の大寒は『1月20日(金)』で、
期間としては『1月20日(木)~2月3日(金)』までのこと - 大寒卵は健康運・金運に良いとされる
- 大寒の食べ物としては、「寒魚・寒餅・甘酒」などがある
- 大寒の水は霊力のある水として、薬として飲まれたり食品づくりに用いられたりしていた
- 大寒の行事は、「寒仕込み・寒ざらし・大寒みそぎ・寒稽古」などがある
- 時候の挨拶としては『1月下旬頃』に用いるのがふさわしく、
俳句季語としては『晩冬(1月)』を表す言葉として用いられている
いかがでしたでしょうか。
大寒は、一年のうち最も寒い期間であり、寒さを利用した行事がたくさん行われていることが分かりました。
ちなみに、『二十日正月(はつかしょうがつ)』という言葉をご存知でしょうか。
「二十日正月」は、「1月20日」を表す言葉で、ちょうど大寒と重なることも多いです。
昔は、1月20日をお正月の最終日(祝い納め)としてお正月飾りを外したり、残った正月料理を食べ尽くしたりする日としていました。
主に西日本では、年越し用に準備した塩ブリの残った骨や頭も、じっくりと煮て残さず食べていたことから、「骨正月(ほねしょうがつ)」や「頭正月(かしらしょうがつ・あたましょうがつ)」と呼ばれることもあります。
現在では、「松の内(まつのうち)」に正月飾りを外し、松の内が明けた後に「鏡開き」を行うのが一般的ですが、鏡開きは、「二十日正月」の風習が由来になったものと言われています。
「松の内」や「鏡開き」に関しては、下記の『松の内の意味とは?』の記事内で紹介していますので、よろしければご覧ください。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。