「お月見」と言えば、「月見団子」が有名ですが、皆さんは「月見団子」をいつ食べていますか?
「お月見の日に食べるものじゃないの?」と思われる方が多いと思いますが、果たして「お月見の日」であればいつ食べても良いものなのでしょうか。
また、地域によっては様々な月見団子が食べられているようですが、お月見に月見団子を食べる理由は何なのでしょう。
そこで、この記事では、
- 月見団子はいつ食べる?
- 月見団子を食べる理由
- 2023年(令和5年)の「お月見」の日
- 月見団子の並べ方や載せる器の名前
- 月見団子をお供えする場所
- 月見団子の作り方と保存方法
- 日本各地の月見団子
- 月見団子の英語表現
について解説・紹介していきます。
月見団子はいつ食べる?
月見団子は、「月を愛で、秋の収穫に感謝して翌年の豊穣をお祈りする日」とされる『お月見の日』にお供えされるお団子のことを言います。
お月見の日は、「十五夜(じゅうごや)」が有名ですが、「十三夜(じゅうさんや)」やというお月見の日もあります。
「十五夜」や「十三夜」については下記の「お月見の由来とは?」の記事で詳しく説明していますので、よろしければ合わせてご覧ください。
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本来、月見団子は「お月様へのお供え物」としての役割があるため、ただお月見の日にお団子を食べるのではなく、『お月様にお供えをした後にお団子を食べる』というのが伝統的な食べ方となります。
月見団子を食べるまでの流れ
「月見団子」を食べるまでの流れとしては、次のようになります。
- 縁起が悪いとされる「一夜飾り(前日)」や「当日飾り」は避けて、2・3日前からお月様から見える位置にお団子をお供えする
- 当日(十五夜・十三夜)の夜にお月様を鑑賞しながら食べる
正式な流れとしては、上記のように2・3日前からお供えするのが良いと言われていますが、月見団子は生菓子になりますのであまり長持ちしません。
手作りの場合だと、作った当日~翌日程度の消費期限となります。
また、時間が経つほどお団子が固くなってしまいますので、現在では、
手作りの場合『当日に作り、当日にお供えして、当日にお月様を見ながら食べる』というのが一般的なようです。
どうしてもお団子を2・3日前から飾って本格的にお月見を楽しみたいという場合には、お供え用にお団子を作ったあと、食べる分は作った日に冷凍して当日に解凍させて食べると美味しくいただくことができます。
カビが生えたお団子は捨てましょう
ちなみに、お供えして固くなってしまったお団子も、汁物に入れたり、焼いたりすることで食べることができると言われていますが、一部でもカビが生えてしまった場合には食べないようにしましょう。
よく、「カビの生えた部分を取り除けば食べられる」という言葉を耳にすることがありますが、実は目には見えない部分にも菌がすでに繁殖しており、中には人体に有毒な毒素を持つカビも存在しているそうです。
食品ロスの問題や、もったいないという気持ちを持つのはとても大切ですが、食中毒やアレルギー症状などの健康被害を引き起こす恐れもありますので、廃棄することが無難と言えます。
お月見にお団子を食べるのはなぜ?
そもそも、なぜお月見にお団子をお供えするのかというと、『お月様の信仰』に関係があります。
昔は月の満ち欠けを利用して、稲や農作物を育てる重要な目安としてました。
加えて、月は「水や植物を司る神様」として信仰されていた時代があり、人々にとって月はとても大切な存在とされていたのです。
また、お月見の季節はちょうど秋の農作物の収穫時期にあたり、「十五夜」は里芋の収穫時期、「十三夜」は豆や栗の収穫時期となっていました。
そのため「お月見」は、『お月様に感謝をして秋の収穫を祝い、翌年の豊作を祈る』という大切な行事であり、丸いお月様に見立てたお団子をお供えすることで、感謝の気持ちを伝える意味があったと言われています。
そして、お月様にお供えしたお団子を食べることで、『健康や幸せが得られる』と考えられていたことが、お月見にお団子を食べるようになった理由とされています。
ちなみに、お月見の日には「お月見泥棒」と呼ばれる風習が行われる地域もあります。
お月見泥棒とは?
「お月見泥棒」とは、『子供達がお供えされたお団子(お供え物)を盗む風習』です。
昔は、子供達は「お月様からの使い」と考えられていたことから、お月見の日である「十五夜」だけはお供え物を盗むことが許されていました。
そのため、子供達は長い棒に釘や針金のようなものを付け、家々の庭先に飾られたお団子を盗んでいたようです。
また、お月様の使いとされる子供達がお団子を盗むことは、とても縁起が良いことであり、『農作物が豊作になる』とされていたことから、盗まれる側も取りやすい場所にお団子をお供えしていたと言われています。
現在では、お団子ではなく「お菓子」をもらう風習として残っているそうですよ。
2023年(令和5年)のお月見の日
2023年(令和5年)のお月見の日は、次の通りです。
【十五夜(じゅうごや)】
『9月29日(金)』(旧暦8月15日)
【十三夜(じゅうさんや)】
『10月27日(金)』(旧暦9月13日)
【十日夜(とおかんや)】
『11月22日(水)』(旧暦10月10日)
ちなみに、「十日夜」はお月見メインの行事ではなく、稲の収穫祭がメインの行事となりますが、「十五夜」・「十三夜」・「十日夜」を合わせて『三の月(さんのつき)』と呼ばれています。
月見団子の並べ方や載せる器の名前とは?
月見団子にも正しい「並べ方」がありますのでご紹介します。
まず、月見団子を載せる伝統的な器の名前は、『三方(さんぽう)』と言います。
※仏事では「三宝」と書かれます。
三方の向き
三方は一見繋がっているように見えますが、上部の「折敷(おしき)」と呼ばれる器の部分と、下部の「筒胴(つつどう)」と呼ばれる土台の部分に分かれています。
※現在では、繋がったものも販売されているようです。
「折敷」の外面には「つなぎ目の部分」があるのですが、神様(お月様)からつなぎ目が見えないように、つなぎ目を手前にして(自分からつなぎ目が見えるように)設置するのが正しい向きとなりますので、間違えないよう気をつけてください。
「筒胴」には、一面だけ「眼象(げんじょう)」と呼ばれる穴があいていない面がありますので、穴があいていない面が神様側になるように設置します。
ちなみに、現代では、三宝を置いていない家庭も多いので、お盆やお皿で代用することもあるようです。
敷紙の載せ方と折り方
お団子を三方に置く前に、「敷紙(しきがみ)」や「中折れ紙(なかおれがみ)」と呼ばれる白い紙を置きます。
敷紙は、「半紙(はんし)」・「奉書紙(ほうしょし)」・「コピー用紙」・「クッキングシート」でも代用が可能です。
敷紙の載せ方は様々あるようですが、次の載せ方がよく用いられています。
- 正方形の敷紙の角が上下左右になるように敷いて四方の角を垂らす方法
- 半紙を2つに折り、角が前方になるように敷く方法
注意点としては、半紙の折り方です。
折り方には「慶事用(お祝い事)」と「弔事用(お悔やみ事)」がありますので、間違えないように気をつけましょう。
【敷紙・慶事用の折り方】
〈パターン1〉
①横向きの半紙の右下部分を左上部分の角の右側になるように持っていきます。
②2つの角の間が直角になるところで折ります。
③折った部分が上になるように回転させて出来上がりです。
※弔事用は折り方が逆となります。
〈パターン2〉
①横向きの半紙の右下部分を左の辺に向かって持っていきます。
②左上の角を隠さない位置で折ります。
③折った部分が上になるように回転させて出来上がりです。
※弔事用は折り方が逆となります。
月見団子の並べ方
三方と敷紙を用意した後は、いよいよお団子を並べていきます。
並べるお団子の数は、「十五夜」では15個、「十三夜」では13個と言われていますが、「1年の満月の数」として12個(閏年の場合は13個)や、簡略化して5個という場合もあるようです。
【15個の場合】
1段目には(3×3)で9個
2段目には(2×2)で4個
3段目には2個並べますが、一番上の2個は正面から見て縦になるように並べてください。
横に並べてしまうと「仏事用」となってしまいますので、注意しましょう。
【13個の場合】
1段目には(3×3)で9個
2段目には(2×2)で4個並べます。
【12個の場合】
1段目には(3×3)で9個
2段目には3個、下向きの三角形になるように並べます。
【5個の場合】
1段目には(2×2)で4個
2段目には1個並べます。
このように、月見団子はピラミッド状に並べられるのが基本ですが、実はこれにも意味があり、ピラミッドの一番上の団子の先端は『霊界に通じる』とされていたことから、『団子を通して感謝の気持ちがお月様に伝わる』と考えられてきたそうです。
月見団子やお供え物を置く場所
月見団子やお供え物は、お月様へのお供え物なので『お月様から見える位置』に置きましょう。
昔ながらの縁側のある家では、縁側に小さな台を置いてその上にお供え物を置いたり、床の間に飾るのが一般的であったようです。
しかし、現在は縁側や床の間がない家も多く、外のベランダには置きたくないという方もいらっしゃると思います。
その場合は、お月様が見える窓辺の近くやリビングに置くと良いと言われています。
置き方としては、左側に人工的なもの(お団子)、右側に自然のもの(ススキ・野菜)となるようにお供えします。
※お月様から見ると左側がススキ、右側がお団子です。
ちなみに、お月様にお供えしたススキを玄関に飾ると、「厄除け」の効果があると言われています。
簡単な月見団子の作り方
月見団子は、思っている以上に簡単に作ることができますので、お子さんがいらっしゃる方はぜひ子供さんと一緒に作ってみてください。
月見団子を作る材料は、
・だんご粉
・砂糖
・水
になります。
上記の動画サイトでは、「だんご粉」が用いられていますが、「白玉粉」・「もち粉」も同じ作り方となりますので、代用することができます。
違いとしては、食感の違いになります。
- 「だんご粉」は、弾力があり、コシが強いのが特徴で、砂糖を入れることで固くなるのを防ぐことができます。
- 「白玉粉」は、つるんとした柔らかい触感になるのが特徴で、冷やしても固くなりません。
- 「もち粉」は、なめらかな触感で伸びが良いのが特徴で、大福などにも使用されています。
ちなみに、「上新粉(じょうしんこ)」で作る団子は、とてもしっかりとした弾力と歯ごたえがあるため、重ねてお供えする月見団子に向いていると言われていますが、蒸したり、麺棒でついたりと、「だんご粉」と作り方が違ううえ、『手間がかかる』というデメリットがあります。
また、お団子を作るポイントとしては、完全なまんまるではなく、『少しへこました形にする』ということです。
完全なまんまるの形のお団子は、「枕団子」と言われていて、亡くなった方にお供えするお団子の形とされていますので、お月見用のお団子は、丸めた後に少し抑えるようにしましょう。
月見団子の大きさ
月見団子の大きさは、昔は様々あったようで、小さいお団子は仏壇にお供えするお団子を思わせるとして、「三寸五分(約10cm)」もあるとても大きなお団子がお供えされることもあったと言われています。
しかし現在では、「十五夜」に合わせて『1寸5分(4.5cm)』で作ると『縁起が良い』とされています。
普通のお団子の大きさが2.5センチ程度と考えると、それでも少し大きめのお団子となりますね。
月見団子の保存方法
月見団子を作った当日に食べる場合は、冷蔵庫に入れてしまうとすぐに固くなってしまいますので『常温保存』が基本ですが、気温が高く衛生上気になるようであれば、密閉できるタッパーなどに入れて冷蔵庫で保存するようにしましょう。
長時間冷蔵庫に入れて固くなってしまったお団子は、再びお湯で温めるか、お団子が隠れるくらいの水を入れ、電子レンジで加熱することで柔らかくすることができますが、加熱しすぎてしまうとお団子がドロドロに溶けてしまう恐れがありますので少しずつ様子を見ながらお団子が温まる程度加熱するようにしてください。
そして、加熱した後に再び冷水にさらすことで、作りたてのようなお団子を楽しむことができます。
また、月見団子を多く作りすぎてしまった場合には、すぐに冷凍することで長期保存ができるのでオススメです。
冷凍保存の方法としては、次のような方法があります。
〈方法1〉
①冷ました団子を一つずつラップで包む
②冷凍保存用の袋に入れて冷凍庫に入れる
〈方法2〉
①ラップを広げて敷く
②団子がくっつかないようにラップの上に並べる
③並べた団子に上からラップをかける
④冷凍保存用の袋に入れて冷凍庫に入れる
〈方法3〉
①バットに団子をくっつかないように並べる
②上からラップをして冷凍庫に入れる
③団子が凍ったら冷凍保存用の袋に入れて冷凍庫に入れる
冷凍保存したお団子を食べる場合は、室温に置いて自然解凍でも良いですが、冷蔵庫に入れた場合と同様に加熱して冷水にさらすことで、作りたてのような弾力のあるお団子を楽しむことができます。
地域によって月見団子が違う?各地の月見団子を紹介
「月見団子」と言えば、まんまるの月見団子が有名ですが、地域によっては様々な形の月見団子が作られていますので、日本各地の月見団子を紹介します。
関西(京都・大阪)の月見団子
京都・大阪といった関西地方では、行事食として食べられていた「里芋」を模した月見団子が作られています。
関西の月見団子は、里芋のようなしずく型をしたお団子に、あんこが巻かれているのが特徴です。
ちなみに、お団子は月、あんこは雲を見立てているという説もあります。
愛知(名古屋)の月見団子
愛知の月見団子も、関西の月見団子と同様に「里芋」を模した月見団子が作られています。
形はしずく型で、白・茶・ピンクの三色があり、ういろうと同じ材料で作られているため、ねっちりとした食感が特徴です。
3色の色にもちゃんと意味があり、
「白」は、皮を向いた里芋
「茶色」は、皮付きの里芋
「ピンク」は、子供が好きな色
と言われています。
静岡の月見団子
静岡には、「へそもち」と呼ばれる月見団子があります。
「へそもち」は、白玉団子のように真ん中がへこんだ形をしていて、そのへこみにあんこを載せて食べるのが特徴です。
由来は諸説あるようですが、徳川家康がまだ「竹千代」と呼ばれていた幼少時代に、今川義元の人質として駿河国(するがのくに)にいた時のこと。
三河国(みかわのくに)からの竹千代の付き人が「丈夫に育ってほしい」との思いを込めてお団子にくぼみ(へそ)を作り、そこにあんこを載せて食べさせたことが「へそもち」の由来だと言われています。
中国・四国地方の月見団子
中国・四国地方では、お団子を串に刺した串団子タイプの月見団子が主流だと言われています。
串団子と言っても様々な種類があり、あんこで包んだお団子や、きなこ、みたらしなどもあるそうですよ。
沖縄の月見団子
沖縄には、「ふちゃぎ」と呼ばれる月見団子があります。
「ふちゃぎ」は、小判型のおはぎのような大きなお団子に、塩茹でした小豆を全体にまぶしているのが特徴です。
(お団子というよりはお餅に近い感じですね。)
伝統的な「ふちゃぎ」には、基本甘い味付けはされていませんが、甘く味付けされた「甘ふちゃぎ」や、紅芋の粉を混ぜた「紅芋ふちゃぎ」と呼ばれるものもあります。
月見団子を英語で表現すると
月見団子を英語にすると、次のように表現できます。
『sweet rice dumplings for the moon festival』
(月祭のお団子)
『moon viewing sweet rice dumplings』
(月見団子)
まとめ:月見団子は、お月見の日に月を眺めながら食べるもの
- お月見は、秋の収穫をお月様に感謝し、翌年の豊穣を願う日とされている
- 月見団子はお月様へのお供え物
- お供えした月見団子を食べることで、『健康や幸せが得られる』と言われている
- 月見団子をお供えする際には、お月様から見える位置に配置し、左にお団子、右にススキや収穫物を置く
- 月見団子には、収穫物であった里芋を模したものや、串で刺したものなど様々なお団子が各地で作られている
いかがでしたでしょうか。
月見団子は、お月様の信仰から生まれたもので、お月様に感謝の気持ちを伝えるためにお供えし、お供えした月見団子をお月見の日に月を眺めながら食べるということが分かりました。
ちなみに、「十五夜」に月が雲で隠れて見えないことを「無月(むげつ)」、雨が降ると「雨月(うげつ)」と呼び、これもまた風流なことであるとして『秋の季語』とされています。
また、「十五夜」だからといって必ずしも「満月」ではなく、1日前後「満月」の日がずれることもありますので、「満月」の日に合わせてお月見をしたり、「十五夜」が曇りや雨の予報の場合は、1日前後ずらしてお月見をするのも良いかもしれません。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。