よく、「子供の頃に犬に噛まれたのがトラウマになって、それ以来犬が苦手になった」というような話を聞くことがありますが、皆さんは「トラウマ」の意味を理解できていますか?
なんとなく分かってはいても、説明するとなると難しいのではないでしょうか。
また、トラウマという言葉から、虎と馬が関係している?と思う方も多いようですが、実際はどうなのでしょう。
そこで、この記事では、
- トラウマの意味と語源
- トラウマに漢字はある?
- トラウマの使い方【例文】
- トラウマとPTSDの違い
について解説・紹介していきます。
トラウマの意味
トラウマとは、簡単に説明すると『心に負った深い傷』のことです。
トラウマは「心的外傷」や「精神的外傷」とも言い、何らかの強いストレスを受けた際、恐怖や精神的ショックなどが心に残ることにより、その後の行動に強い影響をもたらすような状態のことを言います。
トラウマになる原因は?
トラウマの原因となるような体験としては、身の危険を感じるような出来事や、日常的に繰り返されてきた出来事、尋常ではない恐怖を感じた出来事などが考えられます。
トラウマ体験の例
トラウマの語源・由来
トラウマの語源は、ギリシャ語で「傷」を意味する『τραύμα※(トラァンマに近い発音)』が語源とされています。
元々はギリシャ発祥の言葉であったようですが、ドイツ語でも「傷」を意味する言葉として『Trauma※(トァウマに近い発音)』が用いられていたようです。
その後、精神分析学の創始者とされるジークムント・フロイト博士によってドイツ語の「Trauma」が「強いショックによって受ける心の深い傷」を意味する言葉として精神医学の分野で用いられるようになったのが始まりと言われています。
そして、日本で「トラウマ」という言葉が広まった由来としては、1995年(平成7年)に発生した『阪神・淡路大震災』だと言われており、それ以前は精神科医であっても「トラウマ」という心の傷についてはあまり知られていなかったようです。
トラウマに漢字はある?
現在、「トラウマ」という言葉は日本語として定着している言葉と言えますが、元々日本の言葉ではないため、トラウマに漢字はありません。
「トラウマ」は、虎や馬に関係ある出来事が由来してできた言葉かと思っていたけど違ったんだね。
ちなみに、トラウマに当て字をして「虎馬」とは書かないから注意してね!
トラウマの使い方【例文】
トラウマは、「過去に起こった出来事によってできなくなったことや嫌いになったこと」、「思い出したくない過去」といった意味でよく使用されています。
- 【例文1】
昔信頼していた友人に裏切られたことがトラウマになり、それ以来誰も信じることができなくなった。 - 【例文2】
私にとって学生時代はトラウマでしかない。 - 【例文3】
彼女は何らかのトラウマを抱(かか)えているようだった。
トラウマの意味としては、「心に負った深い傷」を意味する言葉のため、本来であれば軽々しく使用するのは避けるべきなのかもしれませんが、「恐ろしい体験をした」、「不快な出来事があった」という場合でもトラウマが使用されることがあります。
- 【例文4】
このホラー映画はトラウマものだ。 - 【例文5】
かぼちゃからイモ虫が飛び出してきたのがトラウマすぎて、それ以来かぼちゃを買えなくなってしまった。 - 【例文6】
電車で席を譲ろうとして声をかけた時、「年寄り扱いするな!」と怒鳴られたことが本当にトラウマになりました。
トラウマとPTSDの違い
トラウマと関係のある言葉に、『PTSD』があります。
PTSDは『Post Traumatic Stress Disorder(心的外傷後ストレス障害)』のことで、トラウマとなるような体験をした後、1ヶ月以上にわたってその時の体験が何度も思い出され、恐怖や不安などの感情に支配されてしまう病気です。
症状としては、次のようなことがあげられています。
- トラウマとなった状況がフラッシュバックされて再びその状況を体験しているような感覚に陥る
- 出来事を思い出させるような状況や人との関わりを回避するようになる(無自覚の場合もあり)
- 否定的な感情に支配されて幸福感が得られなくなったり、突然涙が出てきたりする
- ちょっとした刺激に対して過剰に驚いたり、情緒が不安定になったりする
- 集中することができなくなったり、眠れなくなったりする
など・・・
ちなみに、トラウマ体験をした後、1ヶ月以内で収まる症状の場合は、PTSDではなく『急性ストレス障害(Acute Stress Disorder)』と診断されるそうです。
急性ストレス障害の場合は、ストレス体験から1か月以内に発症するのに対し、PTSDはだいたい3ヶ月以内に発症し、数年経過したあとに突然発症することもあると言われています。
最後に、分かりやすくトラウマとPTSDの違いをまとめると、次のようになります。
トラウマは、『過去に受けた心の傷』のこと
PTSDは、『トラウマが原因で発症する心の病気の一つ』
まとめ:トラウマは、「傷」を意味するギリシャ語が語源だった
- トラウマは「心に負った深い傷」を意味する言葉
- フロイト博士によってトラウマという言葉が精神医学の分野で用いられるようになり、心の傷を表すようになった
- トラウマが日本で用いられるようになったのは、阪神淡路大震災からと言われている
- トラウマは、過去に受けた心の傷のことで、PTSDのはトラウマが原因で発症する心の病のことを言う
いかがでしたでしょうか。
トラウマは日本の言葉ではなく、精神医学の分野で用いられていた海外の言葉が由来ということが分かりました。
ちなみに、皆さんの中には和製英語かな?と思われていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。
※和製英語とは、海外の言葉を日本人が解釈して、日本で外国語のように作った日本独自の言葉のことです。
トラウマは、ドイツ語を日本の表記でそのまま表したものになりますので、外来語に分類されます。
他にも、ドイツ語由来の外来語としては、「アレルギー」や「アルバイト」、「カフェイン」などのたくさんの言葉があります。
しかしながら、外来語であっても、発音やアクセントが違えば日本以外では意味が通じないどころか、違う意味にとられトラブルになってしまうことも考えられます。
海外でカタカナ英語を使用する際には、安易に使用するのではなく、正確な発音や意味を理解して使用するようにしましょう。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。