皆さんは時代劇などで、人の背中に向かって石を鳴らす光景を見たことはありませんか?
これは「切り火」という風習なのですが、なぜこのようなことを行うのかご存じでしょうか。
現在ではあまり一般的には行われなくなってしまったので、どのような意味があるのか分からないという方が多いと思います。
そこで、この記事では、
- 「切り火」の意味や由来
- 「切り火」はいつから行われているのか
- 「切り火」の行い方
- おすすめな「火打石」
について解説・紹介していきます。
切り火の意味とは
「切り火(きりび)」とは、「火打石(ひうちいし)」を用いて火花を起こし、
対象の物の『お清めをする儀式』のことを言います。
火打石を用いて火花を起こすことを「火花式発火法」と言い、鋼に取っ手をつけた「火打鎌(ひうちがま)」に、火打石を打ちつけて火打鎌を削ることで、火花が出る仕組みとなっています。
また、人を送り出す際に、送り出す人の右肩に向かって火花を起こすことを「切り火を切る」と言い、「切り火」には厄除けの効果があるとされています。
見送る人が出掛ける人に「切り火」をすることで、
『その人の無事を祈り、縁起の良いことが起こりますようにと願う意味』があるそうです。
ちなみに、木材を使って摩擦を起こし、発火させる方法も「鑽火(きりび)」と言います。
火打石で「切り火」をする由来とは
なぜ「切り火」をすることで厄除けの意味があるのかというと、古来から「火」は神聖なものとされ、火には浄化する力や魔除けの力があり、霊は火を嫌うと考えられていたからになります。
また「切り火」で作る火花は、できたばかりの穢(けが)れのないものとして、お清めや厄除けに効果があるとされていたそうです。
ちなみに、なぜ人の右肩に向かって「切り火」を行うのかについては、詳しく分かりませんでしたが、「右肩上がり」にかけて「運気が上昇」するように願う意味もあると言われています。
切り火をする習慣はいつから?
切り火に用いられる「火打石」は、712年に作られた日本最古の歴史書である『古事記』にも登場することから、大変昔から用いられていたようです。
古事記に登場する火打石とは
古事記に登場する火打石は、倭健命(ヤマトタケルノミコト)が叔母の倭比売命(やまとひめのみこと)から授かった「火打石」で難を逃れるというお話になります。
倭比売命は、伊勢神宮の創建に関わった人物で、伊勢にヤマトタケルノミコトが立ち寄った際に、
「草那芸剣(くさなぎのつるぎ)」と「火打石」を倭健命に渡したとされています。
ヤマトタケルノミコトが東北遠征に向かい、相撲国で火攻めにあった時、渡された剣を使って草木をなぎ払い、「火打石」を使って迎え火を作ったことで助かることができたとされています。
江戸時代に火打石が庶民に普及
平安時代(794年~1192年頃)までは、「火打石」は貴族だけが用いる高価なものでしたが、江戸時代に入ると庶民の間にも普及したと言われています。
主に火打石は、焚き火や竈(かまど)、行灯(あんどん)、煙管(きせる)に火をつける道具として用いられていたとされています。
厄除けとしての切り火は、江戸時代中期~後期頃(1681年~1867年頃)にはすでに用いられていたようですが、いつ頃から行われるようになったのかは分かっていません。
現在では、鳶職(とびしょく)・大工・花柳界(かりゅうかい)・落語などの芸能関係などで切り火を行う風習が残っているそうです。
ちなみに、明治時代になるとマッチが生産されるようになったことで、「火打石」の需要はマッチへと変わっていくこととなりました。
切り火のやり方・作法とは
「切り火」を行う際は、正しいやり方・作法がありますので、行う際は意識して行ってみて下さい。
- まず、「切り火」を行う対象の物・人の方を向きます。人に行う際は人の背中側に1m以上間隔を開けて立ちます。
- 利き手に火打石を持ち、もう片方の手に火打鎌(火打金(ひうちがね))を持ちます。
- 火打鎌を水平(地面と平行)に保ち、火打石の角を火打鎌の縁部分を削るように強く前方へ打ち滑らせます。この時、人に行う場合は、右肩に向かって行います。
- 打つ際は、火打鎌の方は動かさず、火打石の方を2~3回ほど打ち鳴らして火花を飛ばします。
この方法が「切り火」の作法となります。
アウトドア・キャンプに最適!おすすめ最新の火打石・切り火セット
現在、火打石は伝統的なものから、火打石の最新版である「ファイヤースターター」や「メタルマッチ」と呼ばれるものが販売されています。
そこで、切り火におすすめな火打石セットや、最新の火打石について紹介します。
簡単に切り火できる火打石セット
こちらは、天然石の「水晶・ローズクォーツ・アメジスト」が火打石として付いている火打石セットになります。
天然石(パワーストーン)は持っているだけで運気をアップさせてくれると言われていますので、持ち運び用としてもオススメです。
水晶はあらゆる幸運を呼び寄せると言われ、ローズクォーツは恋愛運向上、アメジストは精神の安定に効果があるとされています。
火打鎌は特殊な加工がされていますので、子供からお年寄りまで簡単に火花を作ることができ、誰にでも使っていただける商品となっています。
強風時でも火が付けられるファイヤースターター
こちらは、ストライカーと呼ばれる金属板でマグネシウムで作られた火打棒を削って粉を落とした後、金属板で火打棒を擦って火花を起こして着火させるものとなっています。
マグネシウムは水気に強いので水滴を拭き取れば雨天時にも使うことができ、酸素の薄い高所や強風時の着火も可能となっています。
また、伸縮する火吹き棒もついていますので、酸素をピンポイントに火種に送ることができ、簡単に火を起こすことができます。
ファイヤースターターの魅力として、使用できる回数が数千回~数万回ということや、ライターなどと違いガス漏れの心配がないことがあげられます。
こちらのセットには、火打棒を収納するポーチや、着火の際火種を作りやすい麻紐も入っている便利なセット商品となっています。
火打棒はもっと短い物もありますが、初心者は持ちやすい形状のものが扱いやすく、長めの棒の方が火花が飛ぶ量が増えるため、ある程度の長さがある物を選ぶ方が良いと言われています。
アウトドア時だけでなく、災害時用として購入しておくといざという時安心ですね。
ブレスレット形ファイヤースターター
こちらは、ブレスレット形のコンパクトなファイヤースターターとなっています。
コンパスとホイッスル付きで、ブレスレット部分に使用されているパラコードは、ほどいて緊急時の止血帯や衣類用ロープなど様々な用途で活用することができるのが魅力な商品です。
登山時などに持っておくと心強く、パラコード自体は単品で様々な種類が販売されていますので、編み方さえ覚えればファッション感覚で取り替えることもできます。
また、芯が着火剤となっているパラコードもありますので、火起こしの際にはパラコードを切って、中の糸をばらして着火剤とする方法もあります。
こちらの火打石はバックル部分に付いているので、少々コツが必要になるかもしれません。動画を参考にぜひチャレンジしてみて下さい。
まとめ:人に向かって切り火をすることで、厄除けの効果があるとされている
- 切り火は、鋼で作られた火打鎌に、火打石と呼ばれる石を打ちつけて火花を起こし、お清めをする儀式となっている
- 切り火から出る火花は、穢(けが)れの無い火とされ、お清めや厄除けの効果があるとされた
- 切り火は江戸時代中期~後期にはすでに行われていたが、いつから行われているのかは不明となっている
- 現在でも、切り火をする風習が残っている職業がある
- 現在火打石は、「ファイヤースターター」や「メタルマッチ」と呼ばれるものに進化し、アウトドアなどで用いられている
いかがでしたでしょうか。
切り火にはお清めや厄除けの効果があり、見送る人が送り出す人の安全や幸運を願って行っていた風習だということが分かりました。
ちなみに、広く知られている塩で行うお清めは、身を清め、穢れを払うものとされています。
これは、塩が腐敗を防ぎ、塩自体も腐らないことからお清めに効果のあるものと考えられたことから、邪気を払う目的で塩が用いられるようになったと言われています。
日本には切り火やお清めの塩など、様々な風習がありますが、これらの意味や由来を知った上で実際にやってみると、気持ちが変わり、人生を豊かにするきっかけになるかもしれませんね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。