空っ風(からっかぜ)とは?時期や、やませと木枯らしの違いについても解説

風見鶏の写真

木枯らし、春一番、つむじ風など、国内で吹く風にはいくつも名前がありますが、その中の1つである「空っ風(からっかぜ)」という言葉を聞いたことがありますか?

沖縄県などの比較的暖かい地方にお住いの方には、あまり聞き馴染みがないかもしれませんが、その他の地域では「名前ぐらいは知ってる!」という方は多いかもしれませんね。しかしながら、聞いたことはあっても、詳しく説明するとなるとなかなか難しそうです。

そこで今回は、空っ風について「その現象がどのように起こるのか」や「吹く時期」そして、「空っ風の季語」や「木枯らしとの違い」などについてもご紹介していきます。

空っ風(からっかぜ)とは?

空っ風(からっかぜ)を簡単に説明すると、関東地方や東北地方の太平洋側で冬から春先にかけてに吹く、北西寄りの乾燥した冷たい風のことをいいます。

また、「からかぜ」と呼ばれることもあるそうですが、空っ風は夏場によく耳にするフェーン現象と似た原理で起こるようです。そこで、フェーン現象がどういうものかを踏またうえで、空っ風がどういう仕組みで起こるのかを説明していきます。

フェーン現象とは

フェーン現象イラスト

フェーン現象は、おもに夏場に起きるので、なんとなく暑いイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

フェーン現象は、湿気を多く含んだ雲(水蒸気)が山脈にぶつかることが原因で発生します。水分を多く含んだ雲は、風に吹かれて山にぶつかると、そこで雨や雪となって多くの水分を失います。そして、山を越えると風は乾燥するとともに、気温も上昇させます。これは主に春の終わりから秋にかけて(5月~10月ごろ)発生します。

フェーン現象について詳しくはこちら!

空っ風の原理

フェーン現象が分かったところで本題の「空っ風が起きる原理」の説明です。

空っ風は基本的にフェーン現象と原理で起こるのですが、夏場のフェーン現象と違う点は、乾いた強風が吹き荒れるため、体感での寒さが厳しいことです。

湿った風が山を越える際に山にぶつかり、雨や雪となることで湿度が下がるのは同じですが、強い風による体感温度の低下(ウィンドチル)があるのが「空っ風」です。寒い時期に吹く強い風のせいで、一層寒く感じるわけです。

「空風と日雇いは日暮れまで」という、ことわざもあるのですが、空っ風は日中の午後2~4時頃に最も強く吹き、日暮れとともに収まる傾向があります。

空っ風は颪(おろし)とも表現される

空っ風は、山を吹き下ろすことから、別名「颪(おろし)」とも呼ばれ、日本各地にそれぞれの名称があります。アイドルグループの「嵐(あらし)」の漢字に似ていますが、「颪(おろし)」というのは、あまりなじみのない漢字でもありますよね。

特に群馬県で冬に見られる北西風は、「上州の空っ風」として有名で、「赤城おろし」とも呼ばれます。これは群馬県の名物の一つともなっており、赤城山方面から風が吹き下ろすことからこのように呼ばれます。

関西にも代表的な颪があるのですが、野球ファンの方でしたらご存じかもしれませんね。関西の颪は、阪神タイガースの応援歌の冒頭に出てくる「六甲颪(ろっこうおろし)」です。これは、冬の季節風が日本海側で雪を降らせた後、乾燥した風が中国山地を越え、六甲山地から吹き下ろして発生するものです。

空っ風によっておこる影響・被害とは

空っ風による被害としては、小さな火事をあおって大火事になってしまうことや、強風により看板が飛ばされることなどが挙げられます。

また群馬県太田市や、伊勢崎市の郊外では、赤城おろしにより畑の砂が巻き上げられて、空が黄色くなる光景が多く見られます。視界不良になることもあるので、車の運転などは十分に注意が必要ですね!

昔は、道路の舗装がされていなかったので、空っ風の吹く日は風塵(ふうじん)がひどく、ほこりは江戸の名物にもなっていたそうです。そこでこういった地域の中には「防風林」というものを植えて、対策をとっている所もあるそうです。

防風林写真

防風林とは海岸線や耕作地、田園地帯の民家などで、台風などの強い風による被害を防止することを目的に植えられる樹木のことを指します。

ちなみに、海岸線や砂丘地に、防風林として「松の木」が多く植えられているのは、潮風に当たっても枯れにくいからだそうです。

空っ風によって生まれるメリットとは

風力発電写真

空っ風による良い面では、その強風を利用して「風力発電ができること」や、強風と乾燥を利用することで、魚や農作物の天日干しができることから、「加工食品工業が発達したこと」などが挙げられます。

群馬県では、空っ風を利用した特産品として、「うどん」や「こんにゃく」が有名だそうです。

木枯らしと空っ風の違い

冬に吹く風と言えば「木枯らし」もよく耳にしますよね。木枯らしと空っ風は、どのように違うのでしょうか?

木枯らしとは、「季節が秋から冬へと変わる時期に、初めて吹く強い風」のことを指します。気象庁では、最初の木枯らしを「木枯らし一号」として発表します。また木枯らしは漢字一文字で「凩(こがらし)とも表記するそうです。

※凩(こがらし)という漢字は、古くに日本で作られ、使われてきた漢字で、風の省略形の「几」と「木」の二文字を合わせ、意味を持たせた「会意文字(かいいもじ)」というものです。

天気予報イラスト

具体的に『木枯らし』は、10月半ばの晩秋から、11月末の初冬に、初めて吹く毎秒8メートル以上の北よりの風のことを指します。またこれは、冬型の気圧配置になったことを示す現象でもあります。※この場合の風速とは、10分間の平均風速のことを指し、毎秒〇.〇m、または〇.〇 m/sと表します。

このような木枯らしの発表を、気象庁がいつから始めたのかは定かではありませんが、現在まで続く正式な木枯しの基準は、1991年に生まれたようです。

気象庁では、東京地方(東京)と近畿地方(大阪)のみでこのような風が吹いたとき、「木枯らし1号」のお知らせを発表しています。また、この強い風で災害が起こる恐れがあるようなときには、注意報や警報を発表して、注意を促します。

「木枯らし二号」や「木枯らし三号」というのが発生することも考えられますが、気象庁でそこまでの発表は行わないそうです…

ちなみに近年では、2018年と2019年は東京の「木枯らし1号」が吹かなかったそうです。このことは1951年の統計開始から数えて6回目のことですが、2年連続というのは初めてだそうです。この時は冬型の気圧配置が強まらず、上空の偏西風がいつもより北を通ったので寒気が南下しにくかったと考えられています。

また、これは地球規模での気象変化が関係しているとも言われていますが、もしかしたら今後、日本で木枯らしの発生はなくなっていくのかもしれませんね。今年はどうなるのでしょうか・・・?

やませと空っ風の違い

やませは「山背(やませ)」とも表記され、6月~8月ごろに北日本の太平洋側(北海道、東北、関東など)で吹く北東の風のことをいいます。寒流である親潮の上を通って吹く風なので、やませは冷たく、湿った風となります。

このやませが続いた場合、太平洋側沿岸地域では最高気温が20℃程度を越えない、肌寒い日が続くこともあります。そのため「冷害」として、作物に甚大な被害をもたらしてしまうようです。

特にお米の稲である水稲は、6~8月に穂が出ることから、その時の気温が低いと収穫に大きな影響を与えます。やませは昔から「冷害風」や「餓死風(がしふう)」とも呼ばれ、あまり良い印象のない風でもあります。

また、空っ風は「冬の季節風」が、やませは「夏の季節風」が元となって発生します。

冷害写真
 

空っ風の季語

からっ風は冬の季語として使われ、俳句では「空風」と書くこともあります。

江戸前期の俳人で、松尾芭蕉の甥である、「天野桃隣(あまの とうりん)」という俳人が、古太白堂句選の中でこのような句を詠んでいます。

   「から風の 吹きからしたる 水田かな」

これは、空っ風による被害を詠ったものですね。

また松尾芭蕉と一緒に「奥の細道」における、奥州・北陸の旅に同行した弟子でもある、河合曾良(かわい そら)はこのような句を詠んでいます。   

   「雪は来で から風きほふ 空凄し」

その他にも空っ風を季語とした俳句は多くありますので、是非こちらをご参照ください。

http://www.haisi.com/saijiki/karakaze.htm

俳句を書く人イラスト

空っ風を英語で言うと

山を越え、乾いた冷たい強風が吹く空っ風とほとんど同じ意味の英単語は存在しないようです。そのため、英語圏で空っ風を単語で伝えるとすると、次のように伝えたら良いかもしれません。

・dry wind(乾いた風)

・cold winter wind(寒い冬の風)

・cold,strong,dry wind(冷たくて、強い乾いた風)

様々言い方はありますが、どれも意味は通じると思います。

まとめ:空っ風は、冬場の関東に住む人々の生活に大きな影響を及ぼしてきた

空っ風イラスト
  • 空っ風は、冬から春先にかけて関東地方などで、山を越えて吹いてくる冷たい乾燥した風のことをいう
  • からっ風は日中の午後2~4時頃にもっとも強く吹き、日暮れとともに収まる傾向がある
  • 山を吹き下ろすことから颪(おろし)とも呼ばれ、日本各地に名称がある
  • 関東では、空っ風の強風を利用した風力発電が盛んに行われたり、乾燥を利用した干物食品が作られたりしている

群馬県では「かかあ天下と空っ風」という、県民にとっては有名な言葉があるそうです。昔、養蚕で栄えた群馬県は、勤勉で働き者の女性が多く、男性よりも高い経済力があったので、女性の発言権がとても強かったそうです。それを揶揄して「かかあ天下と空っ風」という言葉が有名になったのですが、群馬県の空っ風は、かかあ天下に匹敵するほど他県と比べて厳しいようです。

また、群馬県では車のドアはしっかり持たないと風で反対向きに折れるので、風上を頭、風下をお尻にして駐車している車の隣を選んで駐めてるそうです。くわえて、自転車が強風にあおられて進まないことが理由で、自動車の免許普及率が全国1位ともいわれているようです。気候によって、その土地ならではの暮らしぶりや風習があるのですね。

ここまでお読みいただきありがとうございました。