天気予報などで「フェーン現象」という言葉を耳にしたことがありますか?
「フェーン現象」と聞くと、何となく暑い日が続くイメージはありますが、実は暑いだけでなく、火事の原因にもなったりする怖い現象になります。
身近に災害を起こす可能性があるフェーン現象とは、どのような原理で起こるのでしょう。
そこで、この記事では、
- フェーン現象とは何?
- フェーン現象の名前の由来
- フェーン現象の原因と原理
- フェーン現象が起こる時期
について解説・紹介していきます。
フェーン現象とは何?
フェーン現象とは、
『風によって気流が山越えをしたあと、暖かく乾いた気流となって麓(ふもと)に向かって降下することで、気温が上昇する現象』のことを言います。
日本では場所によっては35.0℃を越える猛暑日になることもあり、現在の最高記録としては、2018年7月23日に埼玉県熊谷市、2020年8月17日に静岡県浜松市で観測された『41.1℃』が最高気温とされています。
冒頭にも書きましたが、フェーン現象は大火事の原因となりますので注意が必要です。
これは、フェーン現象が起こると空気が乾燥すると共に、強風が吹くので火災を助長してしまうからだと言われています。
2016年新潟県糸魚川市で約140棟に延焼した大規模火災があったのを覚えていらしゃるでしょうか。
連日ニュースで被害状況が取り上げられていましたが、この火災もフェーン現象が原因だったと言われています。
この日、糸魚川市には強風注意報が出ており、朝から南寄りの強い風が吹いていたため、一軒の火元から町一帯に広がってしまったのだそうです。
フェーン現象の原因・原理
日本でフェーン現象が起こる原因としては、次の点が挙げられます。
- 連なった高い山脈が数多くある
- 海に囲まれているため、湿った空気となりやすい
- 高い山脈を乗り越えるだけの強い風が吹く(台風や春一番など)
ちなみに、フェーン現象といっても実は二種類あるのですが、ご存知でしたでしょうか。
1.湿ったフェーン
一般的に言うフェーン現象は、『湿ったフェーン』のことを指します。
乾いた風と説明していたので、乾いたフェーンと間違えてしまいそうですが、湿った空気が山を越えることで乾燥した暖かい風になって吹き下ろす現象は「湿ったフェーン」になります。
湿ったフェーンの原理
- 湿った空気が強い風によって山の斜面に沿って上昇すると、100m上昇するごとに1℃気温が下がります。
- すると、次第に空気が冷やされていくことで、空気に含まれていた水蒸気が飽和状態となり、水滴となって雲が発生します。
雲ができ始めると、今度は100m上昇するごとに0.5℃気温が下がるようになります。
これは、雲ができる過程で熱を放出するため、気温の低下が少なくなるためです。
(できた雲はやがて雨や雪を降らせます。) - 湿った空気は山頂付近で雲を作ることで乾燥し、今度は山に沿って下っていきます。
- 山頂から麓(ふもと)に向かって風が下りる時には、100m下降するごとに1℃気温が上がっていくこととなるため、高い山を越えるほど温度差が高くなります。
2.乾いたフェーン
『乾いたフェーン』は、湿った空気が風によって上昇してくるのではなく、もともと山頂付近にあった乾燥した空気が何らかの理由で山頂から斜面に沿って下降し、温度が上昇したものを「乾燥いたフェーン」としています。
日本でフェーン現象が起こりやすい季節は?
日本で特にフェーン現象が起こりやすいのは、次の季節が挙げられます。
- 春先の北陸地方(日本海岸側の地域)
- 台風の季節
湿った南寄りの強い風が吹くと、風下側である日本海側(北陸地方など)の気温が高くなります。
北陸では、5月に30℃を超す真夏日を観測することもあるようです。
しかし、フェーン現象は、季節を問わず起こる現象となっています。
夏場にフェーン現象が起こると、熱中症などの被害も出てしまいますので注意が必要です。
また2019年5月には、北海道ではありえない39.5℃という北海道の史上最高気温が計測されています。
これは、網走(あばしり)地方の佐呂間(さろま)で、西風が北海道中央部の山岳地帯を越えたことで、東側で気温を上昇させたそうです。
ちなみに、冬に北西の季節風が吹くと、太平洋側でフェーン現象が起こっているようですが、そもそもの気温が低いためフェーン現象は目立たないと言われています。
フェーン現象の名前の由来
「フェーン現象」という名前の語源は、ヨーロッパの大きな山脈であるアルプス山麓の『フェーン村』から名付けられたそうです。
この地域では、春や秋になると南寄りの風が吹き、アルプス山を越えて暖かく乾いた風が吹くため、その風で気温が上がった結果、降り積もった雪があっという間に消えてしまうことがあったそうです。
このことが有名となり、同様の現象をフェーンと呼ぶようになったと言われています。
しかし、雪が早く溶けるとワインにするブドウが多く実るという利点もあるそうですよ。
ちなみに、日本の山とは違い、より標高の高いアルプス山脈から降りてくる高温で強い風の下降気流は、急に温度が上昇するだけではなく、人体に悪影響を及ぼすことがあるようです。
高温によって頭蓋内の血管が拡張し、片頭痛を引き起こすことがあると言われており、仕事できないくらい体調を壊す人もいて、”フェーン病” という病名もあるそうです。
スイスでは、「フェーン予報」も放送されているようなので、スイスを訪れる際には気をつけて下さいね。
フェーンとは英語で「foehn」と書きますが、元はドイツ語の「Föhn」だそうです。
日本語では、何だかシャレのようですが「風炎(ふうえん)」と書くこともあります。しかし、フェーン現象が起きると、大火事が起きやすくなってしまうので、当て字ではなくちゃんと意味を持っていると言えますね。
まとめ:フェーン現象とは、気流が山越えをしたあと麓(ふもと)に向かって、暑く乾いた空気が降下する現象
- 語源はヨーロッパの大きな山脈であるアルプス麓のフェーン村が由来
- 日本でフェーン現象が起こりやすいのは、春先の北陸地方などが多い
- フェーン現象が起きると、小さな火事でも強い風で広がって大火事になりやすくなってしまう
- 急激な温度上昇で猛暑日になることもあるため、熱中症に注意が必要
いかがでしたでしょうか。
フェーン現象は、海と山脈に囲まれた日本では、季節問わず発生する現象であることが分かりました。
ちなみに、フェーン現象が原因で世界で一番高い気温を記録したのは、アメリカのデスバレーと言われています。
その気温はなんと、56.7度だったそうです!これは地面で目玉焼きが作れるくらいの暑さとのことです。
このような温度では、外に出ることさえ難しいかもしれませんね。
暑い日が続いて強い風が吹いた時などには、フェーン現象が起こるかもと注意して行動するようにしましょう。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。