「馬鹿」という言葉は、よく耳にする罵(ののし)り言葉の一つですね。
「バカ」は、「馬鹿」と書くため、「なぜ馬と鹿?」という方や、「バカの語源は何?」と疑問に思う方が多いようです。
また、罵り言葉にはどんな言葉や意味があるのか知りたいという方もいらっしゃるようなので、一覧で紹介したいと思います。
この記事では、
- 馬鹿の意味と語源
- 馬鹿と表記する由来
- 罵り言葉一覧
- 馬鹿の英語表現
について解説・紹介しています。
馬鹿の意味
まず、「馬鹿(ばか)」には次のような意味があります。
- 知能の働きが鈍く、愚(おろ)かなこと
- 記憶力や理解力が人と比べて劣(おと)っていること
- 夢中になるあまり社会的常識に欠け、愚かな行動をすること
例:【あまりの親馬鹿に子供の将来が心配だ。】 - むだなこと・とんでもないこと
例:【まったく馬鹿なことをしてくれたものだ。】 - 役に立たないこと
例:【鍵が馬鹿になってちゃんと閉まらなくなった。】 - 度が外れている
例1:【一晩中若者が馬鹿騒ぎしていたせいで昨日は全く眠れなかった。】
このように、「馬鹿」という言葉は否定的な意味で用いられることが多い言葉になりますが、恥じらいや愛情、親しみといった感情から「バカ」と言うこともありますので、言い方や状況によっては否定的な意味を持たないこともあります。
馬鹿の語源
ところで、馬鹿の語源はなんだろう?
「馬」と「鹿」は何か関係があるのかな?
「ばか」という言葉は、サンスクリット語が由来という説があるけど、実ははっきりとしていないんだ。
馬と鹿も当て字だと言われているよ。
「馬鹿」の語源としては、いくつかの説がありますが、辞典に採用されている3つの説を紹介します。
1.サンスクリット語(梵語)が由来説
サンスクリット語は古代インドで用いられていた言語の一つで、「梵語(ぼんご)」とも言われています。
梵語は、仏教と共に日本に伝わった言語であったため、仏教と梵語は深いつながりを持っていました。
そして、梵語で「痴・愚か」は「moha(モーハ)」と言い、中国で『莫迦』や『募何』、『謨賀』などと音写されたのち、それが日本に伝わると、「ばか」と読まれるようになり、僧侶の間で隠語として用いられるようになったのが始まりという説になります。
※隠語とは、仲間内だけで通じる言葉のことです。
ちなみに、『無知』を意味する「mahallaka」=『摩訶羅』が「ばか」の語源とする説もあります。
2.破家が由来説
禅語(ぜんご)では、「煩悩がなくなり、心がまっさらな状態になること」を『破家散宅(はかさんたく)』というそうです。
※禅語とは、短い言葉で禅の教えを説いたものことを言います。
この「破家」には、「破産する」という意味があるため、破産するほど愚かな者という意味で「破家者(はかもの)」と言われるようになり、これが転じて「ばかもの」となったという説になります。
3.「はかなし」が由来説
古語の『はかなし』という言葉には、たくさんの意味がありますが、「あさはかだ・愚かだ」という意味があります。
この「愚か」という意味の「はかなし」が変化して、「はか(ばか)」と言われるようになったという説になります。
ちなみに「馬鹿」の字は当て字とされているため、由来で紹介した「莫迦」や「破家」と書かれることもあります。
また、ひらがなやカタカナで書かれることも多いです。
馬鹿と表記するようになった由来
「バカ」という言葉に、なぜ馬と鹿の字が当てられたのかですが、中国の故事が由来という説がありますので、その故事を紹介します。
『史記』の「第6秦始皇本紀(しんのしこうほんき)」【謂鹿為馬(しかをさしてうまとなす)】より
8月己亥(つちのとい)の日のこと、趙高(ちょうこう)は謀反(むほん)を起こそうと考えていましたが、群臣(ぐんしん)が自分の意に従うか心配だったため、まずは試してみようと思い、鹿を二世皇帝の胡亥(こがい)に献上して言いました。
「馬でございます。」
胡亥は笑って言いました。
「丞相(趙高)は何を言っているのやら、鹿を馬と言うとは。」
そこで趙高は左右にいる家臣たちに尋ねてみました。
すると、ある者は押し黙り、ある者は趙高にへつらって「馬」だと言い、ある者は「鹿」だと言いました。
その後、趙高はひそかに鹿と言った者達に罪をかぶせて処刑しました。(自分に逆らう恐れがあるため)
これ以降、群臣は皆趙高を恐れて従うようになったということです。
この話が由来となり、鹿を馬と言うような行動から、「ばか」という言葉に「馬」と「鹿」の字ががあてられるようになったと言われています。
しかし、こちらの説もはっきりと断定されているわけではありませんので、単純に「ばか」と読むことができる漢字ということで馬と鹿の字が当てられただけなのかもしれません。
ちなみに、この話から『鹿を指して馬と為す(しかをさしてうまとなす)』という故事成語が作られており、この言葉は「人を威圧したり、だましたりして間違ったことを押し通すこと」を意味する言葉として用いられています。
一説では、馬と鹿には胆のうが無く、一部足りないことから「馬鹿」という言葉が生まれたと言われることもあるようですが、この説はとんち話的に作られた後付の説のような気がします・・・。
罵(ののし)り言葉一覧
馬鹿以外にも、日本にはたくさんの『罵り言葉』(暴言・悪口)がありますが、世界に比べると過激な言葉は少ないそうです。
とはいえ、罵り言葉は他人が聞いても良い気持ちのするものではありません。
また、人を傷つける言葉にを安易に使用してしまうと、自分の品位を下げるだけでなく、侮辱罪などの刑罰が科せられることも考えられますので、罵り言葉は心の中にしまっておくようにしましょう。
それでは、罵り言葉を意味と一緒に一覧で紹介したいと思います。
※Googleのポリシー違反となりそうな言葉は紹介していません。
馬鹿にして言う言葉
罵り言葉 | 意味 |
阿呆(あほ・あほう)・あほんだら・あんぽんたん | 愚かなこと |
クソが・クソ野郎・クソ喰らえ・くそったれ | ひどく愚かなこと |
カス・クズ・ゴミ・ぽんこつ・ろくでなし・能無し・無能 | 役に立たたず不要なこと |
でくのぼう・でく | 役に立たない人や気の利かない人、人の言いなりになっている人のこと |
いかれぽんち | まぬけで軽薄な男性のこと |
まぬけ・とんま・ドジ・へっぽこ・とんちんかん・うつけもの・ひょうろくだま | 愚かで非情に抜けている人のこと |
のろま・ぐず・うすのろ・ぼんくら・とろい・どんくさい | 動作が遅い人や頭の働きがにぶい人のこと |
へぼ・へなちょこ | 未熟な者をあざけて言う言葉 |
唐変木(とうへんぼく) | 気の利かない人や物分りの悪い人のこと |
できそこない | 能力が不完全な人のこと |
ザコ | 弱い人や大したことない人を小馬鹿にして言う言葉 |
臆病者(おくびょうもの)・チキン野郎・腰抜け・ビビリ・弱虫・ヘタレ・ふぬけ | すぐ怖がったり、尻込みしたりする気の小さい人を罵る言葉 |
おたんこなす・ぼけなす | のろまな人やぼんやりしている人のこと |
うすらとんかち | 知恵が足りずに反応が遅く、まぬけな人のこと |
たわけ | 馬鹿げた行動をする人のこと |
くるくるぱー・ぱっぱらぱー・すっとこどっこい | 知能が低いこと・まぬけで阿呆なこと |
罵り言葉として、「アホ」や「ドジ」という言葉をあげていますが、本人は馬鹿にするつもりはなく、親しみから無意識にそのような言葉を使う場合もありますので、一概に罵り言葉とは言いにくい言葉もあります。
外見を罵る言葉
罵り言葉 | 意味 |
キモい・キモっ(気持ちが悪い)・きしょい(気色が悪い) | 異様で気持ちが悪いこと |
デブ・ふとっちょ | 太っている人をからかって言う言葉 |
ガリガリ | 痩せている人をからかって言う言葉 |
チビ・ちんちくりん | 小さい人をからかって言う言葉 |
ブサイク | 外見や内面が醜いこと |
ハゲ | ハゲている人をからかって言う言葉 |
ダサっ | 野暮ったいこと・かっこ悪いこと |
おめぇー・てめぇー・きさま | 相手を罵って言う言葉 |
老いぼれ | 老人を罵って言う言葉 |
ガキ・クソガキ | 子供を罵って言う言葉 |
この野郎・こんにゃろう・ジジイ | 男性を罵って言う言葉 |
このアマ・ババア | 女性を罵って言う言葉 |
行動を罵る言葉
罵り言葉 | 意味 |
卑怯者(ひきょうもの) | 卑怯な行いをする人を非難する言葉 |
ぶりっ子 | いい子ぶったり、かわいこぶったりして、女の子らしさをアピールする人を非難する言葉 |
うざい(うざったい)・うぜぇ | 不快に思った時に言う言葉 |
ふざけんな(ふざけるな)・ざけんじゃねーぞ | 自分の意に反することが起きた時に言う威嚇の言葉 |
なめてんのか・なめんなよ | 自分を軽く見ていると感じた時に言う威嚇の言葉 |
どろぼうねこ | 自分の恋人を奪った人を罵倒する言葉 |
ケチ・けちんぼ・せこい | 金品を惜しむような人を非難する言葉 |
甲斐性(かいしょう)なし | 頼りにならない・意気地がないことを非難する言葉 |
人でなし | 情に欠け、冷酷非道なことをする人を非難する言葉 |
サイテー | 悪いと思う行動をした人を非難する言葉 |
意気地(いくじ)なし | 根性や気力が足りないことを非難する言葉 |
恥さらし・恥を知れ・恥知らず | 皆にみっともない姿をさらす人を非難する言葉 |
この体(てい)たらく | だらしがない人やみっともない人を非難する言葉 |
ゲス野郎 | 考え方や性格が卑しい人を非難する言葉 |
インチキ野郎・ペテン師・イカサマ野郎 | 不正やごまかしをする人を罵倒する言葉 |
イキがるな・思い上がるな・自惚(うぬぼ)れんな | いい気になって調子に乗っている人を非難する言葉 |
イカれてる・狂ってる・頭おかしい | 正常な行動とは思えない人を非難する言葉 |
馬鹿の英語表現
馬鹿を英語にすると、『fool』と表現できます。
しかし、馬鹿を意味する英語はたくさんあり、ニュアンスによって使い分けが必要です。
- 『silly』(ポジティブな意味の馬鹿)
※「もう、バカなんだから~」のニュアンス - 『foolish』・『idiot』(愚かな行動をしてしまう人への馬鹿)
※「こんな猛吹雪の中、外出したいなんて君はバカなのかい?」のニュアンス - 『stupid』(人を苛立たせるような間抜けな馬鹿)
※「何度言ったら分かるんだ!馬鹿かお前は!」のニュアンス - 『slow』(物分りが悪い人に使う馬鹿)
※「あいつは馬鹿だから説明しても無駄と思うよ。」のニュアンス - 『jerk』(人を批判して罵る時に使われる馬鹿)〈スラング〉
※「あいつは大馬鹿野郎よ!」のニュアンス
まとめ:馬鹿の漢字は当て字であり、漢字に意味はない
- 馬鹿という言葉は、サンスクリット語(梵語)で「愚か」を意味する『moha(モーハ)』が由来という説など様々あるが、はっきりと語源は分かっていない
- 馬鹿の字は中国の故事『史記』の第6「秦始皇本紀」に出てくる話が由来という説がある
- 馬鹿は当て字のため、「破家」や「莫迦」と書かれることもある
いかがでしたでしょうか。
馬鹿の語源ははっきりとは分からないというのが現状ですが、馬や鹿がバカだから馬鹿と書くわけではないことは分かりました。
一般的に馬は賢い動物と言われており、個体差はあるようですが、人間でいうと2~3歳程度の知能があると言われています。
また、鹿も犬や猫と同等の学習能力があると言われているため、知能の低い動物ではないようです。
馬と鹿にとってはバカの字に使用されるなんて迷惑な話かもしれませんね・・・。
ちなみに、頭が悪そうなイメージのあるハトですが、鏡に映る自分の姿を自分であると学習することができるのに対し、カラスは認識することが難しいと言われています。
知能の高い動物ランキングでは、カラスはトップ10入りを果たしていますので、この結果は意外で面白いですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。