皆さんは、「秋晴れ」とは、どのような天気のことをいうのかご存知でしょうか。
よく運動会などのイベントで、「本日は秋晴れの下…」といった言葉を耳にしますが、「春晴れ」や「夏晴れ」といった言葉は用いられませんよね。
また、「秋晴れ」は、季語(特定の季節を表す言葉)としても用いられていますが、いつ使うべき言葉なのか分からないという方も多いようです。
そこで、この記事では、
- 秋晴れの意味とは
- 秋晴れになる理由と秋の天気の特徴
- 秋晴れはいつ使う?
- 秋晴れの使い方【例文】
- 時候の挨拶としての使い方【例文】
- 俳句季語としての使い方【例句】
- 秋晴れの類語
- 秋の天気に由来した「ことわざ」
- 春・夏・冬にも「秋晴れ」のような言葉はある?
- 「秋晴れ」の英語表現
について、紹介・解説していきます。
秋晴れの意味とは
「秋晴れ(あきばれ)」というのは、「秋特有の晴天」のことで、『空気が澄んでいて、透き通った青い空が広がる様子』を意味しています。
「秋晴れ」は他の季節の晴天とは異なり、「空が高く見え、清々しいほどの青空」というのが特徴です。
秋晴れになるのはなぜ?秋の天気の特徴とは
秋と春の季節は、中国大陸から発生した「移動性高気圧」と「低気圧」が、偏西風に乗って日本列島へと次々にやってきて交互に上空を通過します。
そのため、「移動性高気圧」がやってくると晴天となりますが、「低気圧」がやってくると雨となるので、秋と春の季節は『天気が移ろいやすい』という特徴があります。
秋の空が澄んでいて高く見える理由
秋の空が澄んでいて高く見える理由としては、主に次の3つの要因があります。
【要因①】移動性高気圧が乾燥している
秋や春にやってくる「移動性高気圧」は、シベリア気団の一部が温暖化した「揚子江気団(ようすこうきだん)」が基となったものであり、『高温で乾燥している』という特徴があります。
一方、海上や海上付近で発生する「オホーツク海気団」・「小笠原気団(おがさわらきだん)」は、水分をたくさん含んでいるため、湿っているのが特徴です。
従って、大陸から訪れる「移動性高気圧」は、海上から訪れる気団に比べて空気中に含まれる水分の量が少ないため、空がすっきりとした青色に見えるということになります。
【要因②】空気中の塵(ちり)が少ない
まず、太陽の光は一見「白色」に見えますが、実際は「青」や「赤」といった様々な色の波長が一つに合わさることで白く見えています。
空気中には、「窒素(ちっそ)」や「酸素」といった小さな分子がたくさん存在しているのですが、太陽の光が空気中の小さな分子に当たると、主に波長の短い「青」の光がたくさん分子に当り散乱するため、空は青く見えるということになります。
しかし、春と秋の空の色を比べると、春は秋よりも透明度が低く白くかすんで見えます。
これは、春の季節はまだ地面の植物が少なく、土や砂埃(すなぼこり)が舞いやすい状態となり、低気圧の強風で土や砂埃といった塵(ちり)が空中に巻き上げられるためです。
春に「黄砂(こうさ)」が多く日本へ飛来するのも、強風を伴った低気圧が次々と通過することが原因とされています。
低気圧によって舞い上げられた塵に太陽の光が当たると、塵の粒は大きいため、全ての波長が反射して白っぽく見えるということになります。
一方、秋になると、夏の間に植物が地面を覆うため、春に比べると舞い上がる塵は少なくなり、春よりも秋の方が澄んだ青色の空となるのです。
ちなみに、秋に比べて春や夏は気候が暖かいことで水分がたくさん蒸発するため、空気中の水蒸気に反射した白い光によって空がかすんで見えることがあります。
【要因③】雲の見える高さ
すみきった秋の空に見ることのできる雲は、「巻雲(けんうん)」や「巻積雲(けんせきうん)」と呼ばれる『上層雲(じょうそううん)』に属する雲になります。
「巻雲」は、通称「すじ雲・はね雲・しらす雲」、
「巻積雲」は、通称「うろこ雲・いわし雲・さば雲」と呼ばれていますので、そちらのほうが分かりやすいかもしれませんね。
「上層雲」は、地上から最も離れた場所にできる雲で、地上からの距離は5㎞~13㎞と言われています。
そのため、地上から離れたところにある雲を見ることで、「空が高くなったように感じる」ことが秋の空が高く見える要因と言えます。
ちなみに、他の季節にも「上層雲」はできているのですが、低い位置に雲ができやすかったり、空が澄み切っていなかったりすることで、上層の雲が見えなくなっているだけなのです。
「秋晴れ」はいつ使う言葉?
「秋晴れ」は、秋特有の晴天のことをいいますが、「秋」の定義は『暦』と『気象庁』で時期が少し異なります。
暦の秋はいつからいつまで?
暦の「秋」は、『立秋(8月7日頃)~立冬(11月7日頃)の前日まで』のことを言います。
8月の上旬と言えば、まだ夏真っ盛りの時期になりますので、まず秋晴れが見られることはないでしょう。
具体的に、秋晴れが見られる時期となると、『10月中旬頃~11月頃』と言われています。
気象庁の秋はいつからいつまで?
気象庁の「秋」は、『9月・10月・11月』と定められています。
一般的に秋と言えば、気象庁の定義が用いられており、実際に夏の暑さが和らぎ始めるのも8月下旬頃~9月上旬頃と言われていますので、体感的にも9月~11月が「秋」というのがしっくりくるのではないでしょうか。
では、実際に「秋晴れ」を使う時期はいつからなのかというと、とくに期間は定められていません。
そのため、「秋晴れ」は、一般的に「秋」とされる『9月・10月・11月頃に用いる言葉』と言って良いでしょう。
しかし、9月上旬~中旬にかけては、まだ夏の暑さが残る時期でもありますので、「秋晴れ」を違和感なく使用するならば、9月下旬頃から用いるのが良いかもしれません。
また、挨拶状などで用いる『時候の挨拶』では、「秋晴れ」は『白露(9月7日頃)~霜降(10月22日頃)』に用いる言葉とされています。
したがって、時候の挨拶として「秋晴れ」を用いる場合には、11月に用いることがないよう注意が必要です。
秋晴れの使い方【例文】
それでは、「秋晴れ」の使い方を『例文』で紹介します。
- 【例文1】
秋晴れの清々しい晴天の中、秋の大運動会が開催された。 - 【例文2】
昨日の天気とうってかわって、今日は秋晴れの良い日取りとなった。 - 【例文3】
秋晴れの空を眺めると、心まで澄み切っていくようだ。
時候の挨拶としての「秋晴れ」の使い方【例文】
季節を表す言葉である「時候の挨拶」として「秋晴れ」を使用する場合は、主に『10月上旬』に用いられることが多いようです。
それでは、「秋晴れ」を使った「時候の挨拶」を紹介します。
ちなみに、時候の挨拶としての「秋晴れ」は、「秋晴」と書き、『しゅうせい』と読みます。
書き出しの挨拶【例文】
- 秋晴の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
- 秋晴の折、皆様いかがお過ごしでしょうか。
- 秋晴のみぎり、清々しい晴天が続いております。
- 秋晴の季節、秋の訪れを感じる日も多くなってまいりましたが、お変わりございませんか。
結びの挨拶【例文】
- 秋晴の候、皆様のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。
- 秋晴の折、貴社ますますのご発展とご多幸を心よりお祈り申し上げます。
- 秋晴のみぎり、くれぐれもご自愛くださいますようお願い申し上げます。
- 秋晴の季節、朝晩は一層冷え込みますので、お風邪など召しませぬようお身体には十分ご留意くださいませ。
俳句季語としての「秋晴れ」の使い方【例句】
俳句季語としての「秋晴(あきばれ)」は、秋の季語として『三秋(初秋・仲秋・晩秋)』に用いることができます。
- 初秋…『立秋(8月7日頃)~白露(9月8日頃)の前日まで』(旧暦7月)
- 仲秋…『白露(9月8日頃)~寒露(10月8日頃)の前日まで』(旧暦8月)
- 晩秋…『寒露(10月8日頃)~立冬(11月7日頃)の前日まで』(旧暦9月)
「秋晴れ」の俳句の紹介【例句】
『時雨に遠く小春に近く秋晴れぬ』
正岡子規(まさおか しき)
『ほのかなる空の匂ひや秋の晴』
高浜虚子(たかはま きょし)
『きこゆるや秋晴妻のひとりごと』
日野草城(ひの そうじょう)
『俄(にわ)かなる秋晴れ空の大き比叡(ひえい) 』
村山故郷(むらやま こきょう)
『秋晴にすこし猫背の阿蘇五岳』
鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)
秋晴れの類語
秋晴れの類語は、『秋日和(あきびより)』です。
「秋日和」は、『秋の空がよく晴れて、爽やかな天気の様子』という意味があります。
秋の天気に由来した「ことわざ」
秋の天気に由来した「ことわざ」をご存知でしょうか。
有名なことわざから、覚えておくと天気が分かる便利なことわざがたくさんありますので、いくつかご紹介します。
①『男心と秋の空』
「女心と秋の空では?」と思われるかもしれませんが、実はもともと『男心と秋の空)』ということわざがあり、そこから由来して『女心と秋の空』と言われるようになった歴史があります。
『男心と秋の空(おとごころとあきのそら)』とは、『秋の空模様のように、男性の女性に対する愛情は、変わりやすいものだ』という意味があります。
②『女心と秋の空』
『女心と秋の空(おんなごころとあきのそら)』とは、『女性の心は秋の空模様のように変わりやすい』という意味があります。
「男心と秋の空」のように、変わりやすいのは愛情だけではなく、様々なことに対して感情がコロコロと変化していくことを表しています。
③『日暈月暈出ると雨』
『日暈月暈出ると雨(ひがさつきがさでるとあめ)』とは、『日暈、月暈が出ると翌日は雨が降る』という意味があります。
「日暈(ひがさ)」というのは、太陽の周りにできる白色の光の輪のことです。
上層にできる白いベール状の雲である「巻層雲(けんそううん)」や「巻雲」の氷片に、太陽の光が反射してできるもので、月の周りにできる光の輪は、「月暈(つきがさ)」となります。
「巻層雲」や「巻雲」は、前線や低気圧がやってくる前に現れることが多いため、その後、雨が降る確率が高くなるというわけです。
だいたい60%~80%の確率で雨が降るようなので、覚えておいて損はありませんね。
また、『鱗雲が出た後は雨風(うろこぐもがでたあとはあめかぜ)』ということわざもあり、こちらも低気圧がもたらす雨や風を予感させることわざとなっています。
④『秋の雨が降れば猫の顔が三尺になる』
『秋の雨が降れば猫の顔が三尺になる(あきのあめがふればねこのかおがさんしゃくになる)』とは、『秋の雨の日は暖かいため、猫は顔を長くして喜ぶ』という意味があります。
移動性高気圧がやってくると快晴になりますが、朝晩は放射冷却により冷え込みが厳しくなります。
一方、低気圧がやってくると天気は悪くなりますが、空気は暖かく、朝晩の放射冷却もないので、比較的気温が暖かくなるのです。
ちなみに、三尺をcmで表すと約90cmの長さとなりますので、大変恐ろしい猫となってしまいますね。
⑤『秋雨は涼しくなれば晴れる』
『秋雨は涼しくなれば晴れる(あきさめはすずしくなればはれる)』ということわざがありますが、これは、『低気圧の通過』を意味しています。
秋に訪れる低気圧は、中心から南東方向に温暖前線、中心から南西方向に寒冷前線が伸びています。
まず、低気圧がやってくると、先に暖気を伴った温暖前線が通過します。
温暖前線では、長時間広い範囲で穏やかな雨を降らせ、通過後は暖気の影響で気温が上昇します。
次に寒気を伴った寒冷前線が通過すると、短時間狭い範囲で激しい雨を降らせ、通過後は寒気の影響で気温が低下します。
このことから、寒冷前線が通過すると気温が低下、つまり涼しくなるということになりますので、低気圧の影響で振っていた雨が止み、天気が晴れるというわけです。
⑥『天高く馬肥ゆる秋』
『天高く馬肥ゆる秋(てんたかくうまこゆるあき)』とは、「秋は、空が澄み渡るように高く晴れ、馬も気候が良いので食欲が増して肥えてたくましくなる」ということわざで、『秋は清々しく、心地よい季節である』という意味があります。
もともと「天高く馬肥ゆる秋」という言葉は、中国の前漢の将軍であった「趙充国(ちょうじゅうこく)」が述べた言葉で、秋になると強靭な騎馬に乗って敵国が収穫物を奪いにやってきていたことから、『秋は敵襲に備えよ』という意味で用いられた言葉であったようです。
その後、敵国が滅亡した後は、現在の清々しい秋の季節を表す言葉として用いられるようなったと言われています。
また、現在は「時候の挨拶」としてもよく用いられています。
春・夏・冬の季節にも「秋晴れ」のような言葉はある?
秋の季節のように、春・夏・冬の季節にも「秋晴れ」のような言葉があるのか気になりますよね。
春には残念ながら「秋晴れ」のような言葉はありませんが、夏には『五月晴れ』や『梅雨晴れ』、冬には『冬晴れ』と言った言葉があります。
夏は『五月晴れ』・『梅雨晴れ』
「五月晴れ(さつきばれ)」・「梅雨晴れ(つゆばれ)」というのは、本来『6月(旧暦5月)の梅雨の時期にみられる晴天』という意味があります。
しかし、時代の流れと共に、誤って新暦の5月に「五月晴れ」が用いられることが多くなったことで、『5月のさわやかな晴天』という意味でも用いることができる言葉となりました。
また、5月の晴天に用いる場合には、あえて「五月晴れ(ごがつばれ)」と読むこともあるようです。
冬は『冬晴れ』
「冬晴れ(ふゆばれ)」というのは、『冬の穏やかな晴天の日』という意味があります。
また、「冬晴れ」は、『冬日和(ふゆびより)』とも言いますが、冬晴れの状態によって他にも呼び方があります。
- 『凍晴(いてばれ)』…凍てつくような寒さの中の冬晴れ
- 『寒凪(かんなぎ)』…寒中の風のない冬晴れ
※寒中とは、寒さが最も厳しいとされる小寒(1月5日頃)~大寒(1月20日頃)の期間のことです。 - 『風花(かざはな)』…冬晴れの中、雪が舞う現象
秋晴れの英語表現
「秋晴れ」を英語で表すと、次のように表現されています。
『a fine autumn weather』
(秋晴れの中)
『a fine autumn day』
(秋晴れの日)
『a clear autumn day』
(澄み切った秋の日)
『a clear autumn sky』
(澄み切った秋の空)
まとめ:秋晴れとは、秋特有の清々しい晴天のこと
- 「秋晴れ」は、空が高く見え、透き通った青空が広がる様子を表した言葉
- 秋の空が高く透き通って見えるのは、移動性高気圧が乾燥していることや雲の高さなどが影響している
- 「秋晴れ」の使用時期は定められてはいないが、一般的に秋とされる9月・10月・11月に用いられる言葉
- 時候の挨拶の「秋晴れ」は、主に10月に用いられることが多い
- 俳句季語としての「秋晴れ」は、三秋に用いることができる秋の季語とされている
- 「秋晴れ」の類語は「秋日和」
- 夏には「五月晴れ」、冬には「冬晴れ」といった言葉がある
いかがでしたでしょうか。
秋の空が高く清々しく見えるのはちゃんとした理由があり、「秋晴れ」は、季節を表す季語として様々な分野で用いられている言葉ということが分かりました。
ちなみに、秋の季節にあたる「11月3日」は、晴れの特異日と言われています。
晴れの特異日というのは、前後の日に比べて偶然とは言えないくらいの確率で晴れになる日のことです。
しかし近年では、あまり快晴とはならないようで、特異日も時代と共に変わってきているということなのでしょう。
現在、熱波や集中豪雨など、異常気象による自然災害が世界中で頻発していますが、これらの現象は、地球温暖化による影響が大きいと考えられています。
地球温暖化となる原因は、地球上から排出される温室効果ガスによるもので、最も影響が大きいとされるガスが二酸化炭素となります。
二酸化炭素は、ガスやガソリン、電気を消費することでたくさん排出されるため、地球温暖化を防止し、美しい日本の四季を守るためにも、私達一人ひとりが省エネを考えて行動していくことが大切です。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。