「有明の月」の意味とは?古典で出てくる意味との違いについても解説!

有明の月の写真

皆さんは「有明の月」がどのような月がご存じでしょうか。

現代ではあまり耳にしない言葉ですが、古典ではよく登場する月となっていて、百人一首の中にも「有明の月」が用いられている歌が存在しています。

また、古典で用いられる場合には、別の意味を含ませて使われることが多いようです。

そこで今回は、

・「有明の月」の意味・理由
・古典で用いられる「有明の月」とは
・「有明の月」の類語・反対の月

について解説していきます。

有明の月(ありあけのつき)の意味とは

有明の月の写真

有明の月(ありあけのつき)」は、『夜が明けても、まだ残っている月』を意味する言葉となっています。

ちなみに、「有明」という言葉には「夜明け」という意味があります。

また、「月齢16~月齢29までの月」が「有明の月」となりますが、特に月齢20以降の月を指して「有明けの月」と言います。

有明の月になるのはなぜ?

地球と太陽と月のイラスト

「有明の月」が、「月齢16~月齢29までの月」と言われているのは、「月の出(つきので)」と、「月の入り(つきのいり)」の時間が毎日変わっていくことが理由です。

「月の出」と「月の入り」の時間は、見る場所によっても変わりますが、毎日50分ずつ遅くなっていきます。

これは、地球と月の公転周期の違いから生じています。

そもそも月は、新月(真っ暗で見えない月)から三日月、満月へと様々形を変え、また新月へと戻るということを繰り返していますが、この月の変化を「満ち欠け(みちかけ)」と言います。

月の満ち欠けは、約29.5日周期で繰り返しており、これは月が地球の周りを1周する日数と同じになります。

地球からは太陽の光を反射した部分だけの月が見えるので、月の位置が変わることで月が満ち欠けしているように見えるわけです。

この「月の満ち欠け」を表したものを「月齢(げつれい)」と言い、「月齢」は、新月を「月齢0」として次の新月までの30日間を「月齢0~月齢29」と表します。

「月の出」・「月の入り」の時間

「月の出・月の入り」の主な目安は、次のようになっています。

月齢 月の出 月の入り
月齢0(新月) 6時 18時
月齢7(上弦の月) 12時 0時
月齢15(満月) 18時 6時
月齢22・23(下弦の月) 0時 12時

「月齢15(満月)」の時には、ちょうど夜を迎える時間に月が昇り、朝を迎える時間に月が沈んでいくので、「月齢16以降の月が残っていく」ということになります。

「月齢0(新月)」になると、朝を迎える時間に月が昇り、夜を迎える時間に月が沈むので、夜の月が残っているとは言えなくなります。

従って、「月齢16~月齢29までの月」が「有明けの月」となるのです。

しかしながら、「有明けの月」が用いられる場合には、夜遅くに昇り、夜明けまで残っている「月齢20以降の細い月」を指して「有明けの月」と言うことが多いようです。

ちなみに、月齢26の月を指して「有明の月」または「有明月(ありあけづき)」と呼ぶこともあります。

月齢26の頃の月は、1時~3時の間に昇り、夜が明ける頃に東の空で白く輝いている姿を見ることができますが、月齢26を過ぎると、日の出の直前に月が昇ってくることとなり、月が太陽の光ですぐに見えなくなると言われています。

古典・古文の「有明の月」の意味とは

逆三日月の写真

古典では、「長月二十日(ながつきはつか)」という言葉が用いられる事がありますが、これは「長月二十日の有明の月は美しい」とされていたことから、その情景を描く言葉としてよく用いられる言葉となっていたようです。

「長月二十日」は、旧暦の9月20日の「有り明けの月が出る夜」を表す言葉で、現在で考えると10月頃の季節となり、この時季は空気が澄むことで月が一番綺麗に見ることができるとされていました。

20日頃(月齢20)の月は、満月(月齢15)と比べると少し欠けた月になります。

人々は、この欠けた月に趣を感じ、「有り明けの月」に想いを乗せて文を書いていたのでしょう。

「有明の月」は夜遅くに昇り、夜明けまで残る月ですので、これになぞらえ、男の人が夜遅くに会いに来て、夜明けと共に帰って行く様子を例えた文や、男の人が会いに来るのを待ちわびる切なさを書いたものが多く存在しています。

平安貴族の恋愛は、男性が女性の元へ通い、一夜を共に過ごすという「妻問い(つまどい)」が盛んに行われていて、有明の月と共に別れることが多かったようです。

百人一首にこのような歌があります。

『今来むと言ひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな』

【訳】あなたが「すぐに逢いに行くよ」と言ったので、私は9月の夜長を待っていました。そしてとうとう明け方となり、有明の月が出てきてしまいました。(まるで私は月を待つために待っていたみたいだわ)

この歌は、会いに来てくれると言った男の人が来なかったことへの寂しさ、嘆きの気持ちを「有明けの月」で表現した歌となっています。

平安貴族の女性と月のイラスト

有明の月を言い換えると(類語)

「有明の月」は、夜が明けても残っている月を表す言葉なので、

  • 残月(ざんげつ)
  • 昼の月(ひるのつき)

といった言葉で言い換えることができます。

ちなみに、「明け方」を意味する言葉はたくさんあり、

・明け(あけ)
・夜明け(よあけ)
・暁(あかつき)
・東雲(しののめ)
・曙(あけぼの)
・黎明(れいめい)
・払暁(ふつぎょう)
・彼は誰時(かわたれどき)

などが日の出の頃を表す言葉として用いられています。

有明の月と反対の意味を表す月は?

有明の月は、「夜に昇り、夜が明けた後も残っている月」を表す言葉なので、反対と考えると、「明るい時間に昇り、夜まで残っている月」を表すものとなります。

明るい時間に昇り、夜まで残っている月は「月齢1~月齢14」の月が当てはまります。

けれども、「有明の月」が主に「月齢20以降の細い月」を意味する言葉であることから、「反対の月」は主に「月齢10以降の丸い月」を意味するものと考えることができます。

特に「有明の月」の対義語というのは存在しませんが、「有明の月」のように時間帯で見える月に名前が付けられているものは他にもあります。

時間帯での月の呼び名

  • 夕月(ゆうづき)…夕方の空に見える月
  • 宵月(よいづき)…宵の間(日が暮れて間もない時)に見える月で、特に旧暦の8月2日~7日頃の月をいう

ちなみに、「日没」を表す言葉は次のような言葉があります。

・夕(ゆう)
・暮れ方(くれがた)
・暮れ(くれ)
・日暮れ(ひぐれ)
・黄昏時(たそがれどき)
・大禍時(おうまがとき)
・逢魔時(おうまがとき)
・薄暮(はくぼ)
・仄暮れ(ほのぐれ)

また、月の満ち欠けによっても様々名前がありますのでご紹介します。

月の満ち欠けの呼び名

月の満ち欠けのイラスト
月齢0 新月(しんげつ)・朔(さく)
月齢1 二日月(ふつかづき)・繊月(せんげつ)
月齢2 三日月(みかづき)・若月(わかづき)・眉月(まゆづき)・蛾眉(がび)
月齢7~8 半月(はんげつ)・上弦の月(じょうげんのつき)・弓張り月(ゆみはりづき)
月齢10 十日夜(の月)(とおかんや)
月齢11 十日余りの月(とおかあまりのつき)
月齢13 十三夜(の月)(じゅうさんや)・豆名月(まめめいげつ)・栗名月(くりめいげつ)
月齢14 十四日月(じゅうよっかづき)・待宵の月(まちよいのつき)・幾望(きぼう)・小望月(こもちづき)
月齢15 十五夜(の月)(じゅうごや)・満月(まんげつ)・中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)・
月齢16 十六夜(の月)(じゅうろくや・いざよい)・既望(きぼう)
月齢17 十七夜(じゅうななや)・立待月(たちまちづき)
月齢18 十八夜(じゅうはちや)・居待月(いまちづき)
月齢19 十九夜(じゅうくや)・寝待月(ねまちづき)・臥待月(ふしまちづき)
月齢20 二十夜(にじゅうや)・更待月(ふけまちづき)
月齢23 二十三夜(にじゅうさんや)・半月(はんげつ)・下弦の月(かげんのつき)
月齢26 二十六夜(にじゅうろくや)・有明の月(ありあけのつき)・逆三日月(ぎゃくみかづき)・暁月(ぎょうげつ)
月齢30 三十日月(みそかづき)・晦日(みそか・つごもり)

このように月には満ち欠けによって様々な呼び名がつけられています。

まとめ:有明の月は、夜が明けてもまだ残っている月のこと

有明の月イラスト
  • 「有明の月」は、月齢16~月齢29までの月をいうが、主に月齢20以降の細い月に対して用いられる
  • 古典では、「長月二十日(旧暦9月20日)」の有明の月が美しいとされていたことから、よく文に使用されている
  • 古典で「有明の月」が用いられる際、夜会いに来て、明け方に帰って行く男性に例えたものや、恋の心情を重ね合わせたものが多く存在している
  • 「有明の月」の類語は、「残月」・「昼の月」

いかがでしたでしょうか。「有明の月」は、言わば恋愛においては欠かせない月として貴族の間では浸透していたのでしょうね。

平安時代では、明りを灯す油が高価であったため、夜中に出歩けたのは貴族だけで、庶民は日が落ちた後は寝ることしかできなかったそうです。

出歩けるといっても、明りというのは油に直接芯を浸したもので、かろうじて前が見える程度のものであったと言われています。

そのような中、暗闇に光り輝く月は人々にとって特別な存在だったことでしょう。

現在の暦では月の満ち欠けに対応していないので、いつが有明の月になるのか分かりにくいですが、1000年前の人が見ていた明け方頃の月をぜひ一度は眺めて見たいものです。

月の満ち欠けカレンダーはこちらへ

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。