皆さんは、「大晦日(おおみそか)」にどのような意味があるか、ご存じでしょうか。
一般的には「年越しそばを食べて、家族揃って新年を迎える日」と思われるかもしれませんが、なぜそばを食べるのかや、門松・鏡餅などを飾る理由について詳しく知らないといった方も多いですよね。
また、大晦日の挨拶として「良いお年を…」という言葉は用いるべきではないとされているようです。
そこで、この記事では、
- 大晦日の意味や由来
- 大晦日までに行うこと
- 大晦日に除夜の鐘を鳴らす理由
- 大晦日の正しい挨拶
- 大晦日になぜ蕎麦を食べるのか
- 大晦日の夜に食べられているものやオススメの料理
- 大晦日を楽しむ過ごし方
- 大晦日の英語表現
について解説・紹介していきます。
大晦日の意味とは?
「大晦日(おおみそか)」は、「大つごもり」とも言われ、『その年1年間の一番最後の日』のことを言います。
現在用いられている新暦(グレゴリオ暦)では、毎年12月31日となり、旧暦(太陰太陽暦)では、12月30日または29日となります。
晦日の意味
「大晦日」の「晦日(みそか)」という言葉は、旧暦では毎月の最後の日を表す言葉で、当初は「三十日(みそか)」と表記されていたそうです。
「三十路(みそじ)=30歳」という言葉があるように、「みそ」という言葉には元々「三十」という意味があったわけですね。
そして、旧暦では、月の満ち欠けによってひと月が決められていたため、月末には決まって新月となりました。
このことから、「月が隠れる」という意味をもつ「晦」という字が当てられるようになり、「晦日(みそか)」と表記されるようになったと言われています。
また、大晦日の「大」という文字は、1年の最終日ということで特別感を出すためにつけられたとされています。
ちなみに、「晦日」の別名である「月隠り(つきごもり)」という言葉が、次第に変化して「つごもり」と言われるようになったそうです。
「大晦日」は何をする日?
「大晦日」の翌日である「新年」には、『五穀豊穣と1年間の幸福をもたらす』と言われる「年神様(歳神様)」が各家庭に訪れる日と言われています。
そのため、「大晦日」は『年神様を迎える準備を完了し、年神様が訪れるのを待つ日』とされています。
また、「年神様」は地域によって、「歳徳神(としとくじん)」・「正月様(しょうがつさま)」・「恵方神(えほうがみ)」など様々な呼び名があります。
旧暦の「大晦日」の風習
太陰太陽暦を用いていた頃の日本では、日没後より1日が始まるという考えがあり、「大晦日」の日没から「新年の始まり」とされていたようです。
そのため「大晦日」の日没後には、「年神様」を迎えるため『年籠り(としごもり)』が行われ、神様を迎えた後は『年取り膳』と呼ばれる豪華な食事をしていたとされています。
年籠り(としごもり)とは
「年籠り」は、『大晦日の日没から元旦まで家に籠もって年神様を迎える風習』で、地域によっては家の家長(代表者)が大晦日の夜から元旦の朝まで「氏神神社(うじがみじんじゃ)」に泊まり、神様に祈願していたとされています。
※氏神神社とは、住んでいる地域を守ってくれている神様をお祀りする神社のことを言います。
また、年神様がいつ訪れるか分からないため、大晦日の夜は一晩中起きてお迎えするという風習があり、早く寝てしまうと「白髪やシワができる」と言われていたそうです。
ちなみに、「年籠り」の風習は、やがて除夜に参拝に行く「除夜詣(じょやもうで)」と、元日の朝に参拝に行く「元日詣(がんじつもうで)」へと変わっていくこととなりました。
※大晦日の夜のことを「除夜(じょや)」と言います。
除夜詣は、大晦日の夜に寺社へ1年を無事に過ごすことができたことを感謝しに行くお参り、元日詣は、元日の朝に寺社へ1年の無事をお願いをしに行くお参りとなっています。
また、年神様は毎年やってくる恵方(方角)が違うため、その年の恵方に位置する神社に新年の願掛けに行く「恵方詣」が江戸時代後期頃に流行したそうです。
それから「元日詣」は「恵方詣」とも呼ばれましたが、明治時代になると鉄道の発展と共に、有名な寺社へ参拝に行く風習が生まれ、恵方詣と区別して「初詣(はつもうで)」と呼ぶようになったとされています。
年取り膳(としとりぜん)とは
「年取り膳」は、年神様をお迎えした神棚の前で、家族揃って食事をしてお祝いする風習です。
年神様に1年の無事を感謝し、年神様にお供えしたものを家族皆でいただくことによって、神様の御利益にあやかるといった意味があると言われています。
このように、神様と同じ食事を頂くことを「神人共食(しんじんきょうしょく)」と言います。
また、新年は新しい年の始まりでありましたが、皆が歳を1つ重ねる喜ばしい日でもありました。
現在では、誕生日になると年齢が1つ増えるという数え方ですが、昔は生まれた時点で1歳となり、その後は1月1日の元旦を迎えると、1歳増えるという「数え年」と呼ばれる数え方をします。
これは、「年取り膳」を食べて年神様の力を頂いたことで、新たな1年を過ごすことができると考えられていたからと言われています。
大晦日の由来・起源を簡単に説明すると?
大晦日の風習は、『新年にその年の五穀豊穣を祈ったことが始まり』とされ、平安時代頃(794年~1185年頃)から始まったと言われています。
古来より、山には神様がいて、春になると山の神様が里まで降りてきて田の神となり、秋になると再び山へ帰ると考えられていました。
山は、人々に豊かな恵みを与えてくれる存在とされ、鹿や猪などの獲物や、家を建てる際などの木材、田畑に与える水など、全ては山の神様のおかげとされていたのです。
また、人は死ぬと山に昇ると考えられていて、亡くなった祖先の魂は歳月と共に浄化され、子孫や家を守護する神様になると考えられていました。
そのため、次第に「山の神」と「祖先の霊」が同一視されるようになり、新年には、五穀豊穣と1年の幸福をもたらす「年神様」として戻ってくると考えられるようになったと言われています。
新年(正月)に年神様がやってくる理由
ところで、なぜ新年に「年神様」がやってくるのかというと、「祖先の魂が正月とお盆に戻ってくる」という考えや、年神様が「穀物の神様」と考えられていたことが由来となっています。
中国から伝わった太陰太陽暦(旧暦)では、「立春」後の最初の新月の日を1年の始まりと考え、正月としていましたが、それ以前の日本では満月から次の満月までを1ヶ月としていたため、1年の最初の満月の日を正月としていました。
そして、1年の最初の満月の日(初春)と、1年の真ん中の満月の日(初秋)に、祖先の魂が戻ってくると考えがあり、初春と初秋の満月の日は『祖先を迎え、供養する日』とされていたのです。
また、「年神様」の「とし」という言葉が、元々「稲」や「穀物」、「稲の稔(みの)り」を表す言葉として用いられていたことも大きな理由となります。
一年を表す「年」という単位は、穀物の収穫のサイクルを一年としたことが由来とされています。
そのため、新年を迎えるということは、穀物のサイクルの始まりの日であり、穀物の神様に『今年の五穀豊穣をお願いする大切な日』とされていたわけです。
このことから、穀物の神様でもあり、祖神でもある「年神様」は、新年になると各家庭に訪れると言われるようになり、新年に年神様を迎えるための準備を行う「大晦日」の風習が生まれたとされています。
ちなみに、仏教が伝わったことで、初秋の祖先供養は仏教の行事となり、初春の祖先供養は、年神様をお迎えするお祭りの行事として定着することとなったそうです。
また、新年には祖霊と融合し、個性を失ったご先祖様(年神様)が戻ってくるとされていますが、お盆には個性を持ったご先祖様が戻ってくると言われています。
大晦日までにすること(昔からの風習)
年神様を迎えるため、大晦日までには様々な準備が行われます。この、お正月を迎える準備を行うことを「正月事始め(しょうがつことはじめ)」と言います。
「正月事始め」は、12月13日に行われるのが一般的ですが、江戸時代より前の時代では、12月8日の「事納め(ことおさめ)」に行われていたそうです。
「事納め」は、その年の農作業を終わらせる日のことを言います。
江戸時代になり、12月13日が結婚以外は大開運日とされる「鬼宿日(きしゅくにち)」であったことから、この日に様々な準備が行われるようになったとされています。
煤払い(すすはらい)
「煤払い(すすはらい)」の始まりは、平安時代と言われていますが、江戸時代に特に盛んに行われていたとされています。
また、江戸城で「煤払い」の行事が12月13日に行われるようになったことで、庶民もこれに倣って12月13日に行うようになったそうです。
「煤払い」は、1年の煤や埃(ほこり)を払い、お清めして大掃除を行うことを言います。
煤というのは、竈(かまど)の火から出る煙の中に含まれる黒い粒子で、昔は竈や囲炉裏(いろり)などを使っていたため、天井など至る所が煤で黒く汚れてしまっていました。
また、煤払いを行う際には、竹の棒の先に笹の枝葉や藁(わら)をつけて、箒状にしたもので行われていたとされています。
これは、竹には神聖な力があり、厄を祓うことができると考えられていたためです。
特に家の隅々まで綺麗に掃除をすると、年神様が多くの御利益を持ってきてくれるとされたことから、大きなお店などでは盛大に煤払いを行った後には、胴上げをしてお祝いをしたり、祝宴が開催されたりしたようです。
松迎え(まつむかえ)
「松迎え」は、「門松(かどまつ)」などに用いるための松や、煮炊きに用いる薪を山へ取りに行くことを言います。
取りに行く山は、自宅の屋根が見えないくらい遠い方が良いと言われたり、自宅より低い土地の松は良くないと言われたりするそうです。
松が用いられるのはなぜ?
「松」は、常緑樹で枯れないことから、不老長寿の象徴とされており、常緑樹には昔から神様が宿るとされていました。
また、特に先端が尖ったものに神様が降りてきて、依代(よりしろ)とすると考えられていたことから、榊(さかき)や松などの植物が神聖な植物として扱われるようになったそうです。
※依代とは、神様が宿る場所のことを言います。
加えて「松」は、「祀(まつ)る」という言葉に近いということや、神様を「待つ」木とされたことが「門松」に用いられる由来となったと言われています。
当初は、松などの常緑樹を庭先に1本立てて依代としていたそうですが、江戸時代頃になり、門の前に雄松と雌松を左右に分けて置くようになったそうです。
このように門松を門の前に置くのは、『神様が迷うことがないよう、目印の役割がある』とされています。
ちなみに、門松に竹が用いられるようになったのは、鎌倉時代頃からと言われていて、竹は成長が早いことから、生命力や繁栄の象徴として長寿を願い、門松に加えられるようになったと言われています。
門松を設置する時期
門松は12月13日~12月28日までに飾るのが良いと言われています。
なぜ、29日以降はダメなのかというと、
・29日は、「二重苦」・「苦松(苦待つ)」30日(旧暦の末日)
・31日は、「一夜飾り」・「一日飾り 」
と言われ避けるべきとされているからになります。
「二重苦」は数字の29とかけたもので、「苦松」は、29が「9の末日」であることから、「苦待つ」として縁起が悪いとされたそうです。
また、「一夜飾り」や「一日飾り」といったものは、誠意にかける・葬儀の準備を連想させたり、同じ扱いをしないためといった理由が挙げられます。
門松については、下記の『松の内の意味とは?』の記事でも詳しく説明していますので、良ければご覧下さい。
【2023年】松の内の意味とは?いつからいつまで?関西と関東では違う?
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しめ飾り
「しめ飾り」は、しめ縄に縁起物などが付けられた飾りのことで、玄関や門の上方に飾るものを言います。
「しめ飾り」を飾ることで、邪気が入ってこないように結界を張る役割があり、清らかな状態であることを神様に示す意味があると言われています。
しめ飾りの縁起物の意味
「しめ飾り」は、地域によって様々な種類が存在していますが、しめ飾りに用いられる特徴的な「縁起物」の意味について解説します。
【紙垂(しで)】
紙垂は、段がつけられた白い紙や布のことで、「清浄」・「神聖」といった意味があり、しめ縄に紙垂を付けることによって、『神聖な領域と現世を隔てる結界の役割がある』とされています。
また、紙垂の形は、雷を表しているとされ、雷が落ちると稲が良く育ち、豊作であったことから稲妻状の形になったと言われています。
ちなみに、なぜ雷が落ちると稲が良く育つのかというと、放電によって空気中の酸素や窒素がイオン化して水に溶け込んだことで、天然の肥料の役割を果すことになったのではないかと考えられているそうです。
加えて、「しめ縄」は雷雲、「〆の子」と呼ばれる藁(わら)を束ねて作った飾りは、雨を表しているとされ、五穀豊穣を願う意味もあると言われています。
【ダイダイ(橙)】
ダイダイは、「子孫繁栄」の意味があるとされています。
ダイダイの果実は収穫しなければ何年も木から落ちずに残っているため、何代もの果実が一緒になると言われています。
そのため、子孫が代々繁栄していく様子から「ダイダイ」と名付けられ、縁起物とされるようになったそうです。
【裏白(ウラジロ)】
裏白は、常緑性のシダ植物で、「長寿」・「夫婦円満」・「心の潔白」などを表すものとされています。
裏白は「葉が垂れる」ことから、「歯垂る」→「齢垂る」と考えられて「長寿」を意味するようになったとするものや、葉の裏が白いことから「心の潔白さ」や「白髪になるまで長生きする」といった意味があるとするものもあります。
また、左右に2枚の葉がつくことから、「夫婦円満」と言われることもあるそうです。
【南天(なんてん)】
南天は、赤い実が特徴の植物で、「難転(難が変化する)」と解釈できることから、災難除けや魔除けの効果があるとされてきました。
また、福寿草と共に飾ると、「難を転じて福となす」と言われ、特に縁起が良いとされています。
福寿草は、旧暦のお正月の時期に黄色い花を咲かせ、長く咲き誇ることから、福を招くおめでたいお花として人々に親しまれてきたそうです。
【ゆずり葉】
「ゆずり葉」は、しめ縄飾りの他、鏡餅の飾りとしても用いられています。
特徴として、新しい葉が出てくるまで古い葉が残っていることから、子供が無事に成長し、代々続いていくことを願った縁起物とされています。
【水引(みずひき)】
水引は、和紙でこよりを作り、水糊をつけて乾燥させたものを言い、水引には邪気を払い、浄化する力があると言われています。
お祝い事では、紅白や金銀といった水引が用いられていて、色の濃い方(赤・金)が右側になるようにするのがマナーとされています。
また、結び方は、奇数となる数の水引を用いて「結び切り」・「こま結び」といった結び方にするのが一般的とされていますが、最近では「蝶結び」で結ばれることも増えてきているようです。
【扇(おうぎ)】
扇は、末広がりの形をしていることから、「家の繁栄」を表すものとして用いられています。
【昆布】
昆布は、「よろこぶ」に通じることからお祝いの席では欠かせない縁起物とされています。
昆布は、平安時代には「広布(ひろめ)」と呼ばれていて、蝦夷地(えぞち)と言われる現在の北海道で収穫されて朝廷に献上されていたそうです。
そのため、蝦夷地で収穫した昆布として、「夷布(えびすめ)」とも呼ばれ、七福神の恵比須にかけて「福を授かる」とも言われていたとされています。
【伊勢エビ】
伊勢エビは、「長寿」・「厄除け」・「必勝祈願」といった縁起物とされています。
伊勢エビは長いひげと腰が曲がった姿から「長寿の象徴」、目が飛び出ている姿から「目出たし」と言われ、お正月の飾りとして欠かせないものとされてきました。
また、茹でると真っ赤になることから、魔除けの色として厄除けの効果があるとも言われています。
加えて威勢が良く、鎧を付けたような姿から、勇ましい武士を連想させるとして戦勝の縁起物とされています。
締め飾りを飾る時期
締め飾りも、門松を設置する時期と同じように、12月13日~12月28日までに飾るのが良いと言われています。
鏡餅
「鏡餅」は、年神様の依り代とされ、年神様の魂が宿る場所とされています。
昔から稲には「稲魂(いなだま)」が宿っており、生命力を高めてくれる神聖な食べ物と考えられてきました。
加えて、お餅や酒といったものにすると、さらに霊力が強まるとされていたそうです。
鏡餅の丸い形は、三種の神器である鏡が由来という説や、心臓の形を模したものという説があります。
また、太陽の光を反射して太陽のように輝くことのできる鏡を、神様が宿る物と考えるようになったことで、神様にお供えするお餅を「鏡餅」と呼ぶようになったとされています。
鏡餅を重ねる理由
鏡餅は、大小に作ったお餅を重ねてお供えするのが一般的ですが、これは、月と太陽を表していると言われ、陰と陽を意味するものとされています。
この2つが重なることで、「福徳が重なる」や「円満に年を重ねる」といった意味があると言われています。
鏡餅を飾る場所や時期
鏡餅は1カ所だけでなく、複数置いて良いものとされています。
昔は神棚や床の間にお供えするのが基本とされていたようですが、現在では玄関やリビングなど、神様に来てもらいたい場所にお供えするのが一般的なようです。
また、方角としては、その年の恵方であったり、南や東といった方角が良いと言われています。
飾り方としては、地域によって様々あるようですが、一般的には三方(さんぼう)と呼ばれる台の上に四方紅(しほうべに)と呼ばれる半紙を載せ、お餅を重ねて置き、ダイダイや裏白といった飾りを添えるのが一般的な飾り方となっています。
飾る時期としては、こちらも12月13日~12月28日の間に飾ると良いと言われていますが、末広がりの「八」のついた28日に飾るのが最も良いと言われることもあります。
鏡餅を食べる意味とは
鏡餅は、1月11日または1月20日の「鏡開き(かがみびらき)」でお供えしていた鏡餅を下げ、お餅をいただくことになります。
お餅は、お雑煮にしていただくのが昔からの風習ですが、神様が依り代とした鏡餅には「魂」が宿っていると言われ、それを食べることによって『1年を生きる力が授かる』と言われています。
また、昔は子供の健やかな成長を願って家の家長から子供達に分け与えるものとされ、このお餅を「御年魂(おとしだま)」と呼んでいたそうです。
それから江戸時代頃になると、金品を贈る言葉として用いられるようになり、現在の「お年玉」の形として定着したと言われています。
大晦日に除夜の鐘を鳴らすのはなぜ?
「除夜の鐘」は、大晦日の夜にお寺で「梵鐘(ぼんしょう)」と呼ばれる鐘を鳴らす風習で、深夜0時を挟む時間帯に行われています。
「梵鐘」の鐘の音は「苦しみや煩悩を断ちきる」といった意味があり、『清らかな心で新年を迎えて欲しい』という願いが込められているそうです。
除夜の鐘の数は「108回」つかれることが多く、大晦日の夜に107回、新年となったタイミングで108回目の鐘をつくことが一般的です。
108という数は、煩悩の数と言われますが、つく回数には諸説あるようです。
鐘を108回つく意味
鐘を108回鳴らす意味としては、実は定かではありませんが、次のようなことが挙げられています。
- 煩悩の数とされる108回つくことで、煩悩を払う意味がある
- 月の数(12ヶ月)・二十四節気(24節)・七十二候(72候)を足した数が108になることから、1年を表している
- 仏教用語で「あらゆる苦しみ」を表す言葉である「四苦八苦」から、4×9+8×9=108となり、四苦八苦を払う意味がある
ちなみに、「鐘をつく」という風習は、中国から宗の時代に伝わったとされ、鎌倉時代には禅寺で毎日行われていたそうです。
それが室町時代になると、除夜だけに鳴らされるものとなり、江戸時代に様々な宗派のお寺へと広がっていったと言われています。
しかし、全国のお寺で行われるようになったのは、昭和に入ってからと言われていて、1927年(昭和2年)のNHKラジオで、除夜の鐘を生中継したことがきっかけとなり、風習が全国で定着することとなったそうです。
大晦日の正しい挨拶とは
年も年末を迎えると、挨拶の締めとして「良いお年を…」と一般的には言われますが、実は大晦日の日には用いるべきではない言葉とされています。
「良いお年を」と言われると、「良い新年をお迎え下さい」の意味と思われるかもしれませんが、
本当の意味は、
『大晦日を迎えるまでは、色々と大変ですが、無事に大晦日が迎えられるようお互いに頑張りましょう』という意味が込められています。
「良いお年を」と言う理由
江戸時代では、商品を購入する際には商品だけ先にもらい、購入代金はツケにして後からまとめて払うという「掛売り」という方法が多く行われていたそうです。
そのため、ツケの返済がお盆と大晦日に年2回行われることになっており、人々は無事に返済できるかが心配でした。
もし、大晦日に返済できなければ、来年のお盆に再び繰り越すということになっていたようですが、商人にとっては堪ったもんじゃありませんので、商人と支払う側との攻防戦が繰り広げられることもあったと言われています。
このことから、庶民にとって年末の返済ができるかが一番の心配事でしたので、『年神様を迎える準備で大変ですが、大晦日の返済を無事に終えて、お互い気持ちよく新年を迎えましょうね』という意味で「良いお年を」が用いられるようになったそうです。
大晦日の正しい挨拶
実際には、大晦日の31日まで新年を迎える準備を行う方もいらっしゃるかもしれませんが、一般的には29日まで、遅くとも30日までには準備を終わらせるというのが通常とされていますので、「よいお年を」という言葉は大晦日に用いるべきではないと言われています。
では、大晦日にはどのような挨拶を行ったら良いかというと、次のような言葉となります。
- 「来年も宜しくお願い致します」
- 「良い年の瀬をお過ごし下さい」
「年の瀬(としのせ)」という言葉は、江戸時代大晦日のツケの支払いに奔走した人々の様子を、流れが速い川の様子に例え、「慌ただしい年の終わり」を意味する言葉です。
「良い年の瀬」とすることで、『慌ただしい時期にも、素敵な年末を過ごして欲しい』という気持ちを表す言葉として用いることができます。
ちなみに、「年の瀬」については下記の「年の瀬とは?」の記事で詳しく解説していますので、良ければご覧下さい。
年の瀬の意味とは?使い方や挨拶例文、メールの書き方や贈り物についても解説
「年の瀬」は、年末に用いられる言葉となっていますが、「年の瀬という言葉にどのような意味があり、なぜ年末に用いる言葉なのか ...
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大晦日に年越しそばを食べるのはなぜ?
大晦日の夜に「年越しそば」を食べて新年を迎えるという風習が行われていますが、その起源を遡ると、江戸時代頃からと言われています。
江戸時代の中期(1716年~1829年)に、商家で毎月月末になるとそばを食べる風習があり、30日にそばを食べることから「三十日蕎麦(みそかそば)」と呼ばれていたそうです。
この月末に「三十日蕎麦」を食べる風習が由来となり、年末の大晦日にそばを食べる風習が生まれたと考えられています。
また、そばが縁起物として食べられていたことから、大晦日にふさわしい食べ物として定着したとも言われています。
そばの御利益
年越しそばの由来となった御利益(ゲン担ぎ)としては、次のようなものがあります。
- そばの形状から、細く長くという意味で長寿を願う意味
- そばは切れやすいことから、溜った災厄を断ち切り、新しい年を迎えるという意味
- 金銀細工師が金粉を集める際にそば粉の団子を使用したことから、金運を呼ぶ縁起物と考えられた
- そばは雨風に叩かれても、日光を浴びると元気になることから、健康を願う意味
ちなみに、「そばを食べると江戸患いにならない」と言われたことも、そばが江戸でたくさん食べられるようになった理由だと考えられています。
当時の江戸では、「江戸患い(えどわずらい)」と呼ばれていたビタミン欠乏症の一つである「脚気(かっけ)」になる人が多かったと言われています。
「脚気」はビタミンB1の欠乏によって引き起こされる病気で、食欲不振や倦怠感、しびれといった症状の他、悪化すると心不全を引き起こして死に至るケースもある恐ろしい病気です。
なぜ、江戸の人々の間で多くかかるようになったのかというと、江戸では玄米から白米を食べる習慣ができたことで、発芽部分に含まれていたビタミンB1が精米によって取り除かれた結果、ビタミンB1の不足となったことが原因とされています。
江戸の人々の食事は、おかずは一汁三菜を基本とした小量なものでしたのでお米を大量に食べる習慣があったそうです。
そのため、他の食材からビタミンが摂取できなかったことで脚気になる人が多くいたというわけです。
一方そばにはビタミンB1が豊富に含まれていたことから、そばを食べてビタミンを補うことができたことが脚気にならなかった理由と言われています。
安くて美味しく、健康にも良いと言われるそばが流行らないわけがありませんね。
そばを食べる時間はいつがいい?
年越しそばは、『年をまたいで食べると縁起が悪い』と言われていますので、大晦日の夜のうちに食べるのが良いとされています。
また、「溜った災厄を断ち切る」といった意味もありますので、年を越してしまう前に食べた方が良いでしょう。
しかし、何時に食べるという決まりなどはないため、大晦日の31日であれば、朝であれ、昼であれ、何時でも良いということになります。
一般的には、除夜の鐘が鳴り初める11時頃から食べるといった方が多いようです。
ちなみに、そばを残してしまうと新年は金運に恵まれず、お小遣いにも困るようになるといったことが言われていますので、残さずしっかり食べるようにしましょう。
大晦日には何を食べる?
昔は、大晦日の夜には「年取り膳」と呼ばれる豪華な食事をしていたようですが、現在では「大晦日に何食べよう…」と困る方も多くいらっしゃるようです。
そこで一般的に食べられているものから、大晦日におすすめな食べ物について紹介します。
大晦日の夜に食べられているもの
ここでは、大晦日の夜によく食べられているものについて紹介します。
- 年越しそば
- おせち料理
- お寿司
- 手巻き寿司
- 天ぷら
- カニ
- すきやき
- 鍋物
- ピザ
- オードブル
大晦日の料理について調べてみると、「すきやき」という意見が多かったように感じます。
また、「大晦日はゆっくり過ごしたい」といった方が多く、簡単な鍋料理や出前・オードブルといった料理を食べられているようです。
おすすめな料理・食べ物
大晦日におすすめな食べ物としては、『鴨鍋(かもなべ)』です。
鴨は冬になると脂がのって美味しくなると言われていて、鍋との相性も良く、ねぎと合わせると「良いことが重なる」として縁起が良いとされています。
また、鴨は夫婦仲の良いことから「夫婦円満」の象徴でもあります。
鍋を食べた後は、旨味がたっぷりと出たスープの中にそばを入れて「年越し蕎麦」にすると、わざわざ年越し蕎麦を用意する必要もありませんので簡単です。
また、お正月を迎えると、豪華な食事をたくさん食べることが多いと思いますので、大晦日にはあっさりとした鴨鍋を楽しんでみてはいかがでしょうか。
鴨鍋のレシピ
料理レシピ動画サイト『DELISH KITCHEN』で紹介されている「鴨鍋」の紹介です。
材料は、鴨ロース肉とお好みの野菜・豆腐、スープは、昆布・酒・みりん・塩・しょうゆで作ることができます。
レシピサイトでは、分かりやすく動画と文章で作り方を記載してくれていますので、ぜひサイトの方でご覧下さい。
ちなみに、食べ方のポイントとしては「煮込みすぎない」ということです。お肉は煮込みすぎると硬くなってしまいますので、色が変わった頃合いで食べるようにすると美味しくいただけます。
購入におすすめな鴨肉
こちらは、楽天市場『猪肉のキザキ』で取り扱っている「鴨ロース(塊肉)」になります。
お肉を切らずに塊のまま冷凍しているため、切ってあるものと比べ美味しさが違うと評判です。
注意点として、1㎝以上で切ってしまうとお肉がかみ切れなくなってしまいますので、半解凍して5㎜~6㎜に切ると美味しく頂くことができます。
ぜひ美味しい国産の鴨肉を味わってみて下さい。
鴨鍋のお取り寄せ
鴨のみを購入するのも良いですが、「鴨鍋のセット」を頼んでみても良いのではないでしょうか。
こちらは、高知県の豊かな環境で育てられた国産の合鴨を使った『鴨鍋セット』です。
京都の老舗料亭や有名割烹店にも認めらるほどの品質で、本物の味が堪能できるとして大変人気があります。
こちらのセットは、合鴨ローススライス200g・合鴨ももスライス250g・鴨ミンチ250g・鴨だしつゆが入った3~4人前の商品になりますが、10~12人前のセット商品も販売されています。
お好みで野菜や豆腐を加えるだけで、贅沢な鴨鍋を家で頂くことができるのが嬉しいポイントです。
大晦日を楽しむ過ごし方とは
大晦日には、やはり「家や温泉でゆっくりと過ごす」というのが一番の楽しみ方ですよね。
昔は毎日お風呂に入ることが難しかったため、年末に入るお風呂は特別なものだったようです。
大晦日にお風呂に入ることを「年の湯(としのゆ)」と言い、『1年間で溜った厄を落とし、綺麗な身体で新年を気持ちよく迎える』といった意味があると言われています。
ちなみに、元日には年神様から頂いた福を逃がさないようにするため、「お風呂には入らない」という風習もあります。
みんなで遊べるゲーム
また、大晦日の日には親戚で集まることが多いと思いますので、子供から大人まで一緒になって遊べるパーティーゲームについて、いくつかご紹介したいと思います。
ナンジャモンジャ
「ナンジャモンジャ」は、不思議なキャラクターが描かれたカードを一枚ずつめくり、めくった人はキャラクターに名前を付けていくゲームです。
どんな名前をつけても良いので、面白い名前や長くややこしい名前などネーミングセンスが問われるゲームとなっています。
順番にカードをめくり、名前を付けていくのですが、すでに名前が付けられたキャラクターのカードが出たら、その名前を叫びます。
一番に名前を叫べた人が、めくってあるカードを全て取ることができ、最後に一番多くカードを集めた人が勝ちというゲームです。
対象年齢は4歳からとなっていて、計6人まで遊ぶことができますが、「ナンジャモンジャ」には「シロ」と「ミドリ」シリーズがあり、二つを合わせることで最大12人まで遊ぶことができます。
はぁっていうゲーム
「はぁっていうゲーム」は、様々なお題の書いてあるカードの中から1枚を選び、お題に書かれた言葉をシーン別に表現し、声に出して遊ぶゲームです。
お題のカードには、A~Hにそれぞれ別のシーンが書かれていて、例えばお題が「はぁ」だとすると、Aは「何で?という時のはぁ」・Bは「力をためる時のはぁ」・Cは「ぼうぜんする時のはぁ」などと書いてあります。
次に、アルファベットが書かれたカードを他の人に見られないようにして1枚もらい、カードに書かれたアルファベットの「はぁ」をそれぞれ順番に真似していきます。
この時、ジェスチャーをするのは反則となっていますので、「はぁ」の言葉だけで何のシーンか表現します。
全員が言い終わると答え合わせとなり、予想した表現と合っていれば1点、表現した人は正解した人の数だけ点数がもらえ、合計の点数で一番高かった人が勝ちという流れです。
お題は30種類あり、言葉ではなく表情だけで表現するものなどもあるので、大勢でやるほど楽しめます。
対象年齢は8歳からで、3~8人でゲームを行うことができ、シリーズとしては3まで登場しています。
ブロックス(トライゴン)
「ブロックス」は、ピースの角と角または角と辺を繋げて自分の陣地を広げていくだけという、とてもシンプルで分かりやすいボードゲームです。
簡単なルールですが、考えてピースを置かないと相手に有利な場所を奪われてしまったり、自分が置けなくなってしまったりするので、戦略的にピースを置いていく必要があります。
ピースを置けなくなってしまった人はその時点で終了で、全員が置けなくなるまで続行され、一番多くのピースを置いた人が勝ちとなります。
従来のブロックスは四角のピースでしたが、こちらは三角形となり、より難易度が上がっているようです。
対象年齢は7歳からで、2~4名で遊ぶことができます。
大晦日を英語で表現すると
では最後に、「大晦日」を英語では何と言うのかについて説明します。
大晦日を英語で言うと『New Year's Eve(ニューイヤーズイブ)』となります。
元旦は『New Year's Day』になりますので分かりやすいですね。
まとめ:「大晦日」は五穀豊穣を司る年神様の来訪を待つ大切な日とされている
- 大晦日は1年で一番最後の日のこと
- 年神様は、その年の五穀豊穣と一年間の幸福をもたらすと言われている
- 年神様は、山の神様であり、ご先祖様でもある
- 大晦日に準備を行うと一夜飾りと言われ、良くないこととされる
- 年神様を迎える準備は、12月13日の「正月事始め」から12月28日までに行うと良い
- 門松は年神様の目印となり、しめ飾りは結界、鏡餅は年神様の宿る場所となっている
- 大晦日に「良いお年を(お迎え下さい)」は誤った使い方
- 除夜の鐘は「苦しみと煩悩を断ち切る」と言われ、「清らかな心で新年を迎えて欲しい」との願いが込められている
- そば縁起物とされ、溜った災厄を断ち切るとも言われることから、「年をまたいで食べると縁起が悪い」とされている
- 年越し蕎麦は、大晦日の日であれば、いつ食べても良い
いかがでしたでしょうか。元々新年に五穀豊穣を祈る風習があり、山の神様とご先祖様が同一視されたことで、年神様を迎える風習が生まれたということが分かりました。
ちなみに、大晦日に1年最後の掃除をすることを「掃き納め」と言います。
元日以降の三が日には掃除・洗濯・料理など、家事全般においてすべきでないこととされているため、大晦日のうちに家の周りなどを念入りに掃除して締めくくるのです。
なぜ、三が日に家事全般をすべきでないと言われているのかというと、「年神様を掃き出さないため」・「頂いた福を水に流さないため」・「かまどの神様に休んでいただくため」と言われています。
しかしながら昔の女性は、毎日家事という過酷な重労働をしていたため、せめてお正月の三が日には休んで欲しいという思いから生まれた風習だと考えられています。
現在では、お正月も家事を休むことがありませんので、女性ばかりに頼るのではなく、男性も率先して家事を行うと、皆が気持ちの良い新年を過ごすことができるのではないでしょうか。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。