運動会や遠足、待ちに待った旅行など、楽しみにしている日は、絶対に晴れて欲しいですよね。
そんな時に「そうだ!てるてる坊主を作ろう」と思い立ったことはありませんか?
私も子供の頃、晴れてほしい前日には「てるてる坊主」をティッシュで作って窓辺に吊るしていました。
このように『天気を晴れにして欲しい』と願って作るてるてる坊主は、いつから行われている風習なのでしょう。
そこで、この記事では、
- てるてる坊主の意味
- てるてる坊主の由来・語源
- てるてる坊主の歴史
- てるてる坊主の飾り方
- てるてる坊主を逆さまにすると効果はどうなる?
- てるてる坊主を処分する方法
- 童謡「てるてる坊主」の幻の一番とは
- 英語圏にてるてる坊主のような風習はある?
について解説・紹介していきます。
てるてる坊主の意味とは
てるてる坊主は、『白い布や紙で作った人形を軒先に吊るして、翌日の晴天をお願いすると願いが叶う』とされている人形のことを言います。
他にも呼び名があり、「てるてる法師」や「てれてれ坊主」、「晴れ晴れ坊主」や「ひより坊主」などとも呼ばれているようです。
てるてる坊主は「照る照る坊主」とも表記され、「てるてる」とは、「日が照る」=「晴天」を表す言葉として使われています。
てるてる坊主の語源・由来とは
てるてる坊主はほとんどの方がご存じかとは思いますが、なぜ「てるてる坊主を吊るすと晴れる」と言われるようになったのでしょう。
実はてるてる坊主の風習の由来ははっきりと分かってはおらず、中国の『掃晴娘』(サオチンニャン)のお話が日本に伝わったことが由来とされている説と、日本のお坊さんが由来という2つの説があるようです。
①中国の掃晴娘(サオチンニャン)が由来という説
それでは、てるてる坊主の由来と言われている中国のお話『 掃晴娘 』をご紹介します。
昔、中国のある村に紙切り細工の好きな晴娘という大変美しい娘がいました。
ある年、雨が長く降り続いたため、村は水害に悩まされていました。
皆が天に向かって雨が止むようお願いすると、天から「晴娘が龍神の妃になるならば雨を止める。そうならなければ村を水没させる。」と声が聞こえ、晴娘は村のためだと妃(きさき)になることを承諾しました。
すると、降り続いていた雨が止み、晴娘は消えてしまいました。
皆はそれ以降、雨が降り続くと晴娘を悼んで切り紙で作った人形を門にかけるようになったということです。
中国では、遅くとも唐の時代(約1400年前)から晴れを祈り、紙で作った掃晴娘の人形を門に吊るす風習が生まれたとされています。
記録としては、中国の『帝京景物略(ていきょうかげものりゃく)』、日本の『榊原談苑(さかきばらだんえん)』にこの風習が記録されています。
また、中国の掃晴娘の人形には「ほうき」が持たされているのですが、これは『雨雲を掃いて晴天にする』という意味が込められているそうです。
そのため、雲を箒(ほうき)で掃かせるために、掃晴娘の人形を逆さ向きに吊るしたところもあるようです。
掃晴娘 がてるてる坊主へ
この「 掃晴娘 」の風習が平安時代頃の日本に伝わると、「てるてる坊主」へと変化したようです。
中国では、元は女の子の人形であったのに、日本のてるてる坊主はなぜ女の子の形をしていないのかというと、当時『日照りを願う僧侶』や『修験者』が男性であったことから、今のような形になったと考えられています。
確かに、てるてる坊主のまるい頭はお坊さんのように見えるね。
②日本のお坊さんが由来という説
では次に、日本のお坊さんが由来という説にもお話がありますのでご紹介します。
昔々、日本でも長く雨が降り続き、人々が苦しんでいた年がありました。
誰か雨を止めることができる者はいないかと探していると、「お経を唱えると次の日は晴れる」と言われる一人の僧侶がいることを知りました。
そこで急いでその僧侶を呼び、お経を唱えてもらったところ、僧侶は「これで明日は必ず晴れます」と言い、人々は安堵しました。
しかし、雨は止まず「嘘つき者」とされた僧侶は首をはねられ、見せしめとして僧侶の首を布に包み吊るしたところ、雨が上がったということです。
「嘘つき」というだけで首をはねられるなんて、とても恐ろしいね。
このお話から『てるてる坊主は本当は怖い』と言われているようだよ。
てるてる坊主の首が吊るされているように見えることがリンクして、より信憑性を増しているように感じますが、実は日本のお話は中国から伝わった後にできた話ではないかと言われています。
しかし、根拠を示すものが何もありませんので、どちらが本当の由来かは定かではありません。
てるてる坊主の歴史
中国からてるてる坊主が伝わり、江戸時代中期には日本でも飾られていたようですが、当時のてるてる坊主は今のような姿ではなく、紙で折って作られていて人間に近い形をしていたようです。
そして、この人形を半分に切ったり、逆さまに吊るしたりして晴れを願い、晴天になれば瞳を人形に描いて神酒をお供えしてから川に流していたと言われています。
一生懸命折って作った人形を半分に切るとはどういう意味があるのでしょうね。
残念ながらその理由を見つけることはできませんでしたが、昔は神様に生贄を捧げる文化がありましたので、てるてる坊主を天気にするための生贄として捧げていたのかもしれません。
てるてる坊主の飾り方
皆さんは「てるてる坊主」をどこに飾っていますか?
私は何気なく窓辺に飾っていましたが、てるてる坊主には決まった飾り方や注意点があるようなので、説明していきたいと思います。
1.てるてる坊主を作る時には『注意点』に気をつけよう
まず始めに、てるてる坊主の材料はティッシュペーパーや布が用いられていますが、これで作らないといけないという決まりはありませんので、自分の好きな材料を使って作りましょう。
しかし、作る際には『注意点』がありますので、そこだけ注意が必要です。
てるてる坊主を作る際に注意しないといけないのは、『顔を描いてはダメ!』ということです。
顔を書いてはダメなのはなぜ?
てるてる坊主は、『願いが叶い、晴れた後に顔を描くもの』とされているからだよ。
どうしても「のっぺらぼうは違和感」と思う場合は、右目だけ描くといいそうだよ。
願いがかなった時に描く「だるまの目」と同じだね。
だるまの目を願いが叶った時に描く行為を「開眼」と言います。
これは、願いが叶ったことに感謝して目を描くことで魂をその物に宿し、供養するという儀式になります。
言い伝えによると、先に墨などで顔を描いてしまうと雨で顔が滲んでしまい、その顔が泣いたように見えるため、雨をもたらすと言われているそうです。
作り方が分からないという方は、下記のリンクから作り方を確認してくださいね。
2.てるてる坊主を飾る場所の注意点
てるてる坊主を飾る場所は決まっているの?
てるてる坊主は 『太陽の見える南側の窓辺に飾ると良い』と言われているよ。
また、北側の窓に吊るすと雨が降ると言われているんだ。
もし、太陽が見える窓辺がない場合は、太陽が見えるように外に吊るすと良いよ。
3.てるてる坊主を飾るタイミングの注意点
てるてる坊主を作ったらせっかくなので長く飾っておきたいですよね。
しかし、てるてる坊主の歌に「あ~した天気にしておくれ」とフレーズがあるように、てるてる坊主は前もって飾っておくのではなく、前日に飾るというのが正しい飾り方になります。
ちなみに、前日ならいつ飾ってもいいの?
うん!とくに前日のいつ頃飾るというのは決まっていないから、前日であれば好きな時に飾るといいよ。
てるてる坊主の向きを逆に吊るすと?
よく、てるてる坊主を逆さに吊るすと雨が降ると言われていますが、昔は逆さに吊るして雨を祈る風習はなかったようです。
「てるてる坊主の歴史」でも紹介したように、紙のてるてる坊主が吊るされていた時代には『てるてる坊主を逆さまにしたりして晴れを祈った』とされているので、当時は逆さまにして晴れることを願っていたわけですね。
しかし、いつしか晴れにしてくれるてるてる坊主を逆さにすると、天気まで逆、すなわち『雨になる』と言われ始めたようです。
そのため、逆さのてるてる坊主にもちゃんと名前が付けられていて、「降れ降れ坊主」や「雨雨坊主」、「るてるて坊主」といった名前が付いています。
また、黒い色のてるてる坊主も存在していて、白の逆の色ということでこちらも雨を降らせるてるてる坊主とされています。
加えて、てるてる坊主の胴体部分のヒラヒラに切り込みが入っているてるてる坊主も雨を降らせると言われているそうで、切り込みがたくさん入ることで雨が降っているように見えるところから、逆さのてるてる坊主に切り込みが入れられることもあるようです。
てるてる坊主を処分する方法
てるてる坊主の役目が終わり、いざ処分となった時皆さんはどうされていますか?
そのままゴミ箱にポイッと捨ててしまう方が多いとは思いますが、願いが叶い「晴れになった時」と、叶わず「雨になってしまった時」では、処分の方法が違うようです。
願いが叶い晴れた時の処分方法
願いが叶い晴れた場合は、願いが叶い晴れたことに感謝して、てるてる坊主の顔を描きます。
※右目だけ描いている場合は左目を入れて完成させます。
その次に、お酒をお供えするという意味で頭からお酒をかけます。
ここまで終われば、後は処分するだけなのですが、昔は川に流して供養していましたが、現在では勝手に川に物を流したりしてはいけないので、小箱や袋などに入れてあげてから、燃えるゴミとして処分すると良いようです。
また、最後まで感謝の気持ちを忘れないようにしましょう。
願いが叶わず雨になってしまった時の処分方法
残念ながら願いが叶わなかった場合は、てるてる坊主に顔は描かず、頭をコツンとします。
そして、まだ使えそうだからと取っておくのはNGとされていますので、やはりこちらも処分することになります。
「次は晴れますように」とお願いして、小箱や袋に入れるなどしてから燃えるゴミとして処分するようにしましょう。
てるてる坊主は、その都度願いと共に作ることがポイントです。
てるてる坊主の歌と歌詞の紹介
皆さんも子供の頃、『てるてる坊主』の歌を耳にしたり歌ったりした経験はあるとは思いますが、歌詞は覚えていますでしょうか?
実は童謡『てるてる坊主』には、幻の1番から、4番まで歌詞があるようです。
『てるてる坊主』の歌詞
作詞 浅原鏡村(六郎) 作曲 中山晋平
【1番】てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ いつか夢の空のよに 晴れたら金の鈴あげよ
【2番】てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ わたしの願いを聞いたなら あまいお酒をたんと飲ましょ
【3番】てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ それでも曇って泣いてたら そなたの首をチョンと切るぞ
この『てるてる坊主』は大正時代に小説家の「浅原鏡村(六郎)さん」が作詞を行い、『しゃぼんだま』や『せいくらべ』など、たくさんの童謡の作曲を行ってきた「中山晋平さん」によって作曲された曲になります。
私達が歌ってきた歌詞は3番までしかありませんが、本来4番まであった歌詞を作曲を行った中山氏によって1番が削除されたと言われています。
その幻の1番と言われている歌詞はこちらになります。
『てるてる坊主』幻の1番
てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ もしも曇って泣いてたら 空をながめてみんな泣こう
なぜこの歌詞が削除されたのかは定かではありませんが、3番の歌詞と少し被っているのが分かりますね。「曇って泣いてたら」の部分です。
幻の1番は、「空をながめてみんな泣こう」と一緒に悲しむ気持ちを詠んでいる歌詞なのに対し、3番は「そなたの首をチョンと切るぞ」と恐ろしいことを言っている歌詞になっています。
これも「てるてる坊主が怖い」と言われる所以でしょう。
なぜ、幻の1番が残らず、恐ろしい3番の歌詞が残ったのでしょうか。
作詞を行った浅原氏によると、「子供の一面として持つ残酷性を取り入れた」と説明しているようです。
また、最初は「チョンと切らう」と作詞していたそうなのですが、作曲家の中山氏によって「チョンと切るぞ」に変更されたそうです。
また、中山氏は題名も『てるてる坊主の歌』から『てるてる坊主』という単語だけの題名に変えていて、浅原氏の「子供の残酷性」に似合うものにしていったように感じられます。
何気ない「子供の残酷性」を表すには、幻の1番が無い方が良いと判断した結果が今の『てるてる坊主』となっているのでしょう。
ちなみに、映画『となりのトトロ』の中で、「真っ黒くろすけ出ておいで、出ないと目玉をほじくるぞ」というフレーズがありますが、私も子供の頃は残虐性などは感じず、その言葉に何も違和感を思っていなかった気がします。
てるてる坊主は英語圏にも存在する?
てるてる坊主は中国の風習が日本に伝わって独自の風習に変化したものと言われていますが、その他の国に「てるてる坊主」のようなものは存在しているのでしょうか。
調べてみたところ、晴れを祈るような文化は英語圏には存在していないようです。
そもそも英語圏は日本の梅雨のように雨が降り続くという気候ではなく、1年を通して雨が少なく、カラッとしていると言われています。
逆に、雨が降ってほしいと雨乞いをする文化は様々な国であるようです。
人形を使った雨乞い
人形を使って雨乞いするものとしては、古代ローマでは、5月7日以降の満月の夜に、神に仕える巫女達がテヴェレ川に24体の等身大の人形を投げ込んで、雨乞いをするという儀式が行われていたそうです。
今でもヨーロッパの一部地域にはこれと似た儀式を行っている地域があるそうですよ。
ちなみに、「てるてる坊主」を英語で表現すると、
『Shine,shine shaven‐head』(シャイン シャイン シェイブンヘッド)となるのですが、訳すと「晴れろ、晴れろ、坊主頭」となり、正直これでは意味は伝わらないかもしれません。
また、てるてる坊主のことを『Paper doll(ペーパードール)』や、『Weather doll(ウェザードール)』と説明することもあるようです。
まとめ:てるてる坊主の由来は諸説あるが、中国の「掃晴娘」の風習が元になったと言われている。
- てるてる坊主が日本で飾られるようになったのは江戸時代中期頃から
- てるてる坊主は飾る時には顔を描かず、晴れたときに顔を描く
- てるてる坊主は、南向きの太陽が見えるところに飾る
- てるてる坊主を処分する時は、晴れた時と雨が降った時で処分の仕方が違う
- 英語圏にはてるてる坊主のようなものは存在しない
いかがでしたでしょうか。
とても可愛らしい存在でもある「てるてる坊主」ですが、由来を知ると、なんだか見え方が変わってくるのではないでしょうか。
しかし、由来がどうであれ明日天気になってほしいと願って吊るす「てるてる坊主」は、願う気持ちや作るという行為が大切だと思います。
てるてる坊主に願いを込めて飾る風習は、これからも有り続けて欲しいものです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。