皆さんは、「三本締め」の意味をご存じでしょうか。
新年会や結婚披露宴など、大事な会の締めに行われる「三本締め」ですが、社会人になり、初めて経験したという方もいらっしゃるかもしれませんね。
社会では当たり前のように行われている「三本締め」ですが、なぜ3回繰り返すのかや、その意味についてはっきりと分からないという方が多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では
- 「三本締め」の意味や由来
- 「三本締め・一本締め・一丁締め」の違い
- 「三本締め」の挨拶【例文】
- 「三本締め・一本締め・一丁締め」の掛け声とやり方
- 各地の「手締め」
について解説・紹介していきます。
三本締めの意味とは
「三本締め(さんぼんじめ)」は、『手締め(てじめ)』と呼ばれる風習の一つで、「三本締め」以外にも「一本締め(いっぽんじめ)」や「一丁締め(いっちょうじめ)」といった手締めがあります。
「三本締め」といった「手締め」を行うことで、
『物事が無事に終わったことを祝い、無事に終わったことへの感謝の気持ちを表す』意味があります。
手締めとは?
「手締め」という言葉は、「手打ちによって締める」が語源とされています。
※手打ちとは、手を叩くことを言います。
「手締め」は、『行事を執り行った主催者が、協力してくれた参加者に感謝する』という趣旨で行われる風習のため、主催者が音頭(おんど)を行うというのが正しい作法となっています。
そのため、来賓が掛け声や音頭を行うことはなく、主催者側から依頼されたとしても断ることがマナーとされていますので気を付けて下さい。
三本締めの由来や歴史とは
「手締め」が行われるようになった由来としては、
「古事記」の『国譲り神話』が始まりという説や、『争い事をした者同士が和解をする際に、お互い武器を手に持っていないという証として指を開き手を叩いたことが始まり』という説など諸説ありますが、はっきりとは分かっていません。
いつの頃か、商談などで「手締め」が行われるようになり、物事の決着や成立を表すものとして定着したと考えられています。
1688年に井原西鶴によって作られた浮世草子(うきよぞうし)である『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』には、
「互いに面を見しりたる人には、千石、万石の米を売買せにし、両人手打て後は、少も是に相違なかりき」(お互いに顔を知っているものであれば、千石・万石といったお米の取引をしたとしても、互いに手を打ち合った契約は必ず守られる)
とあります。
このことから、江戸時代前期には、手を打ち合うことで契約の成立を表す風習があったということが分かりますね。
物事の成立を表す「手を打つ」という行為は、やがて落語会でトリを務める真打や襲名披露のお祝い事でも行われるようになりました。
「手締め」は、当初「手打ち(てうち)」と呼ばれていましたが、武士が無礼をはたらいた町人などを斬り捨てる行為である「手討ち」と重なることから、「手締め」と言われるようになったそうです。
そして1878年(明治11年)に、東京株式取引所(現在の東京取引証券所)の設立を祝って「手締め」が披露されたことで、日本全国に「手締め」の風習が広まることとなったと言われています。
手を叩く拍数の理由
「手締め」は、各地域に様々存在していますが、社会一般的に知られている「手締め」は、別名「江戸締め」と呼ばれるものになります。
手を叩く拍数は、【パパパン(3回)・パパパン(3回)・パパパン(3回)・パン(1回)】と計10回叩きますが、これには理由があります。
【パパパン】と叩く回数だけに注目すると、3回×3セットで9回、すなわち「九(苦)」となります。
しかし最後にもう1回だけ手を叩くことで、一つ点が増えて「丸」となり、『物事が丸く収まる』という意味で縁起が良いと人々に好まれたということです。
ちなみに、手締めの音は「パン」ではなく、「シャン」と表現されるのが通常となっています。
そのため、質疑応答などがなく短時間で終了する株主総会などは、「参加者は手締めしか行わない」という意味で「シャンシャン総会」と揶揄(やゆ)して呼ぶことがあるそうです。
しかしながら、「パン」と表現するほうが分かりやすいですよね。
三本締め・一本締め・一丁締めの違い
主な「手締め」としては、「一本締め」・「三本締め」の他に、「一丁締め(いっちょうじめ)」(関東一本締め)と呼ばれるものがあります。
それぞれの違いとしては、次のようになります。
- 「一本締め」…【パパパン・パパパン・パパパン・パン】を1回だけを行うもの
- 「三本締め」…【パパパン・パパパン・パパパン・パン】を3回行うもの
- 「一丁締め(関東一本締め)」…一回だけ【パン】と叩いて終わりのもの
三本締め
「三本締め」は、正式な作法となっているため、公式な式典や関係者が多く集まる集会などでは「三本締め」で行われるのが一般的です。
また、繰り返し3回行うのは次のような意味があるとされています。
1回目…会を執り行う主催者へ感謝を込めて
2回目…会に参加している参加者へ感謝込めて
3回目…神様に感謝を込めて
しかしながら、地域や場所によっては、向ける相手が違う場合もあるようです。
一本締め
「一本締め」は、「三本締め」が簡略化されたもので、身内だけの宴会や企業の忘年会などで行われるのが一般的です。
一丁締め(関東一本締め)
「一丁締め」は、「関東一本締め」という別名もあります。関東地方では、「一本締め」と言えば「一丁締め」のことを指すそうなので、注意して下さい。
「一丁締め」が行われるようになった由来としては、気が短い江戸っ子が、「一本締めすら長ったらしい」と始めたのが「一丁締め」の始まりとされています。
一般的には、あまり大声を出せない場所やカジュアルな宴会の席などで行われています。
また、参加者の中に不孝があった方がいらっしゃる場合にも用いられるそうです。
「一丁」の意味とは
「一丁締め」の「一丁」という言葉は、豆腐一丁と数えるのと同様に、数を表す言葉となっていますが、景気付けという役割もあります。
「丁」という漢字には、もともと勢いが盛んな状態を表す意味があったことで、お店を活気づかせようと数を数える単位として用いられるようになったそうです。
「ラーメン一丁!」と厨房でのやり取りを耳にすることがありますが、これはお店を盛り立てるために用いられる言葉となっているわけですね。
三本締めの挨拶【例文】
「三本締め」などの手締めを行う際には、主催者の中で2番目に役職の高いの人が締めの挨拶を行い、手締めを行うという流れが一般的です。
基本としては、開宴の挨拶は幹事・初めの挨拶は1番目に役職の高い人・乾杯の音頭は役職の3番目に高い人・締めの挨拶は役職の2番目に高い人となります。
しかし、その場で突然指名を受けるというケースも中にはあるため、いざという時のために知識として覚えて置いたほうが良いかもしれません。
それでは、例文を交えながら手締めまでの挨拶の流れを説明します。
例文(手締めの挨拶)
「皆様、宴もたけなわでございますが、お時間が迫っておりますので、ここで一度締めさせて頂きたいと存じます。」
②自己紹介をする
「僭越(せんえつ)ながら、締めの挨拶をさせて頂きます、私、○○部の○○と申します」
※会が小規模の場合で、全員顔見知りの場合は必要ありません
③感謝の言葉を述べる
「本日は、お忙しい中お集まり頂きまして、誠にありがとうございました。」
④締めの挨拶をする
「このあと二次会に行かれる方もいらっしゃるかと思いますが、明日からまた気持ちを新たに、社員一丸となって頑張って参りましょう。」
⑤起立をお願いする
「それでは、締めの音頭をとらせて頂きます。皆様ご起立をお願いいたします。」
⑥手締めの種類を伝える
「○○会社の更なる発展と、本日のご出席の皆様のご多幸を祈念いたしまして、三本締めで参りたいと思います。」
⑦手締めの音頭を行う
「それでは皆様お手を拝借」「いよ~おっ」・・・手締めへと続く
このような流れとなります。こちらは一例ですので、会に合わせた素敵な挨拶を考えてみて下さい。
三本締めの掛け声・合いの手とやり方
「三本締め」の流れは次のようになります。
②「いよ~おっ」の掛け声で【パパパン・パパパン・パパパン・パン】と参加者全員で手を叩く
③「いよっ」または「よっ」の合いの手で、【パパパン・パパパン・パパパン・パン】と全員で手を叩く
④「もう一丁」または「もう一本」の合いの手で、【パパパン・パパパン・パパパン・パン】と全員で手を叩く
⑤音頭の人の「ありがとうございました」の挨拶と共に全員で拍手を行う
以上が「三本締め」の流れですが、「いよ~ぉ」という掛け声は、「祝おう」という言葉が変化したものとされています。
「合いの手」のところは、音頭をとる以外の人も声を出すと盛り上がります。
三本締めで間違われやすいこと
「三本締め」で間違われやすいこととしては、「三三七拍子(さんさんななびょうし)」のリズムと間違えてしまうということです。
「三三七拍子」は、【ピッピッピッ(3回)・ピッピッピッ(3回)・ピッピッピッピッピッピッピッ(7回)】という3・3・7のリズムを刻んでいくものになります。
一般的には、応援の際に「三三七拍子」が用いられていますよね。
音頭を取る(掛け声を行う)という方は、間違ってしまうと大変恥ずかしいこととなってしまいますので、気を付けて行って下さい。
一本締めの掛け声とやり方
「一本締め」の流れは次のようになります。
②「いよ~おっ」の掛け声で【パパパン・パパパン・パパパン・パン】と参加者全員で手を叩く
③音頭の人の「ありがとうございました」の挨拶と共に全員で拍手を行う
一本締めで間違われやすいこと
「一本締め」で間違われやすいこととしては、「一丁締め」と勘違いして覚えているということです。
テレビなどでも「一本締め」と言いながら、「パン」と一回だけ叩くという誤ったシーンが流れることが度々あるそうです。
また、関東地方では「一本締め」と言えば「関東一本締め(一丁締め)」のことですので、このことも間違いやすい要因となっています。
関東の方が他の地域で「一本締め」を行う際には、正式名称である「一丁締め」や「関東一本締め」といった言葉を使い、間違われないようにすることが必要です。
一丁締め(関東一本締め)の掛け声とやり方
「一丁締め」(関東一本締め)の流れは次のようになります。
②「いよ~おっ」の掛け声で【パン】と参加者全員で1回だけ手を叩く
③音頭の人の「ありがとうございました」の挨拶だけで終了(拍手はしない)
「一丁締め」で気を付けることとしては、最後に拍手をしないということです。
しかしながら、上記の動画のような場合、演技への感謝の意を込めて拍手するのは間違っていることではありませんので、一概に拍手をしないとは言い切れないようです。
その場に合わせた対応が必要となります。
その他・各地の手締め
手締めは、一般的な江戸締めの他、各地域にさまざまな手締めが作られていますので、いくつか紹介していきたいと思います。
一つ目上がり(のぼり締め)
「一つ目上がり」は、最初は人差し指だけで手打ちを行い、徐々に指の本数を増やしていく手締めになります。
流れとしては、
②「いよ~おっ」の掛け声で【パパパン・パパパン・パパパン・パン】と人差し指で叩く
③「よっ」または「はいっ」の合いの手で、【〃】と2本の指で叩く
④「よっ」または「はいっ」の合いの手で、【〃】と3本の指で叩く
⑤「よっ」または「はいっ」の合いの手で、【〃】と4本の指で叩く
⑥「よっ」または「はいっ」の合いの手で、【〃】と手全体で叩く
⑦音頭の人の「ありがとうございました」の挨拶と共に全員で拍手を行う
この手締めは、だんだん音が大きくなるのを愉(たの)しむものとされており、末広がりで縁起が良いと言われています。
大阪締めとは
「大阪締め」は、大阪を中心に行われている手締めで、大阪では手締めのことを「手打ち」と呼びます。
「大阪締め」の起源は、諸説あるようですが、大阪府大阪市天王寺区生玉町(てんのうじくいくたまちょう)にある『生國魂神社(いくくにたまじんじゃ)』の手締めが、日本三大祭りの一つである天神祭で簡略化され、「大阪締め」として広まったと考えられています。
「大阪締め」の流れは、次のようになります。
これは男締めと呼ばれるもので、女締めの場合は、「う~ちまひょ」または「う~ちましょ」と掛け声の伸ばす場所が変わります
②「もひとつせぇ」の掛け声で【パンパン】と手を叩く
③「祝うて三度(いおうてさんど)」の掛け声で【パパン・パン】と手を叩いて終了
名古屋ナモ締めとは
「名古屋ナモ締め」は、平成26年(平成14年)に登場した新しい手締めとなっています。
「なも」という言葉は、名古屋弁の敬語表現で、「~ですね」という意味をもつ丁寧語となります。
現在では、ほとんど「なも」という言葉は使われていないようですが、名古屋ならではの言葉を用いた手締めを、今後何百年も続く地域文化となるようにと「名古屋ナモ締め」が作られたそうです。
「名古屋ナモ締め」の流れは次のようになります。
②「名古屋締めで しめよかナモ」
③「はぁ~」の掛け声で【ナモ・ナモ・ナモ】と言いながら声に合わせて3回手を叩く
④【ナモ・ナモ・ナモ】と言いながら再び3回繰り返し手を叩く
⑤【ナモ・ナモ】と2回だけ繰り返し手を叩く
⑥【ナモ・ナモ・ナモ】と最後に3回繰り返し手を叩く
⑦「ありがとうございます」または「おめでとうございます」と言って拍手をする
伊達の一本締め
「伊達の一本締め」は、伊達政宗(だてまさむね)の家臣によって始められた手締めで、「伊達政宗の三国一(全世界)の覇者となる夢の実現」を願って行われるようになったとされています。
その後、江戸時代になり、三国(日本・中国・インド)の征服という思想が時代にそぐわなくなったため、幕府に配慮して公には行われなくなったそうです。
しかし現在仙台では、締めの長さがちょうど良いと徐々に復活し、行われるようになってきたと言われています。
「伊達の一本締め」は次の流れとなります。
②「よぉ~」の掛け声で【パパパン】と3回手を叩く
③「よぉ~」の掛け声で【パン】と1回手を叩く
手締めで3回・1回と叩くのは、「三国一」の三と一を掛けたものとされています。
伊達家戦勝三本締め
「伊達家戦勝三本締め」は、伊達政宗を始祖とする仙台伊達家に代々伝わる伝統的な手締めとされています。
この手締めは、「大殿の光栄・武門(武家)の誉れ・御家の存続・領国の繁栄」を願って心を一つに一致団結し、戦いに勝つことを誓い合う意味があるそうです。
「伊達家戦勝三本締め」は次の流れになります。
②「えぇ~い!・えぇ~い!」と指揮役は腹から声を出しながら手を叩く
③「お~!」と皆で声を出し、手を叩く
④「えぇ~い!・えぇ~い!」と指揮役は先程よりも声を大きく出し、手を叩く
⑤「お~!」と皆で先程よりも大きく声を出し、手を叩く
⑥「えぇ~い!・えぇ~い!」と指揮役はより大きな声を出し、手を叩く
⑦「お~!」と皆でより大きな声を出し、手を叩く
「えい・えい」「おー」という掛け声は、戦への出陣に向けて士気を鼓舞させるための「鬨の声(ときのこえ)」と呼ばれる武家作法となっています。
「えいえい」という言葉には、「戦闘準備・覚悟はいいか」という「良いか良いか」の意味があり、「おー」という言葉には、「準備・覚悟はできている、いざ出陣だ」という「おう良いぞ」の意味があるとされています。
現在仙台・宮城のPRを目的に活動を行っている、「奥州・仙台おもてなし集団 伊達武将隊」には、伊達家現当主直々に「伊達家戦勝三本締め」が伝授されているそうです。
残念ながら「伊達家戦勝三本締め」の動画は見つかりませんでしたが、伊達武将隊による勇ましい「えいえい・おー」が披露されている動画がありましたので、載せておきます。
博多手一本とは
「博多手一本」は、福岡県福岡市の博多で行われる手締めとなっています。
「博多手一本」は、博多祇園山笠の他、結婚式や商談の成立・約束事の確認・揉め事にけじめをつける際などに行われているそうです。
一連の流れとしては、次のようになります。
②「まひとつしょ」または「もひとつ」などの合いの手で【パンパン】と2回手を叩く
③「祝うて三度」または「よーてさんど」などの合いの手で【パパン・パン】と3回手を叩く
「博多手一本」を行ったあとは、「異論を唱えない」・「拍手をしない」ことが作法とされています。
また、祝い事の際には、「博多手一本」の前に「祝いめでた」と呼ばれる祝い歌を歌うのが習わしとなっているそうです。
小倉ゑびす締めとは
「小倉ゑびす締め」とは、福岡県北九州市小倉で行われている手締めで、ミス十日ゑびすに選ばれた芸者姿の女性達と世話人が、商売繁盛を願って掛け声と共に手打ちを行い、小倉の町を練り歩くものとなっています。
現在は、ミス十日ゑびすの女性達ですが、かつては花柳界の芸者さんが町を練り歩いていたそうです。
毎年1月10日の「小倉十日ゑびす祭・宝恵(ほえ)かご道中」で「小倉ゑびす締め」は行われています。
「小倉ゑびす締め」は次のような流れとなります。
②全員で「商売繁盛でいよーぉ」と声を出し、福を包み込むイメージで輪を描いて腕を上げる
③かるく足を曲げ、前傾姿勢を取りながら腕を下に降ろし、【よい・よい】と言いながら声に合わせて2回手を叩く
④「やー」と言いながら腕を万歳するように上げ、姿勢を戻す
⑤再びかるく足を曲げ、前傾姿勢を取りながら腕を下に降ろし、【よい・よい】と言いながら声に合わせて2回手を叩く
⑥「やー」と言いながら腕を万歳するように上げ、姿勢を戻す
⑦再びかるく足を曲げ、前傾姿勢を取りながら腕を下に降ろし、【よい・よい】と言いながら声に合わせて2回手を叩く
⑧「やー」と言いながら腕を万歳するように上げ、姿勢を戻し、拍手を行う
まとめ:「三本締め」は、主催者が協力者に向けて感謝の気持ちを表すという意味がある
- 「三本締め」は「手締め」と呼ばれる風習の一つ
- 「三本締め」の他に、「一本締め」・「一丁締め(関東一本締め)」など、様々な手締めが各地に存在する
- 「三本締め」の3・3・3・1という拍数には、物事が丸く収まるという意味がある
- 「三本締め」の挨拶を行う人は、役職が2番目に高い人
- 「一丁締め」の後には基本拍手をしてはいけない
いかがでしたでしょうか。
「三本締め」は無事に物事が終わったことを祝うだけでなく、主催者から協力者に向けて感謝の気持ちを表す意味があることが分かりました。
ちなみに、大相撲では「神送りの儀」として千秋楽に三本締めが行われています。
大相撲は神事とされていて、大相撲が開催される前日には「土俵祭」と呼ばれる大相撲の神様を迎える儀式が行われることになります。
そして千秋楽の最後に、神様を天に帰す儀式である「神送りの儀」が行われるわけですね。
「神送りの儀」では、翌場所に四股名(しこな)が載る新人力士達がお神酒を頂き、土俵の中央で三本締めを行って、最後に御幣を持つ行事さんを天に向かって胴上げして神送りとなります。
2019年に白鳳が全勝優勝を飾り、春場所千秋楽の優勝インタビューで三本締めを行ったことが問題となったのは有名ですが、「なぜだめなの?」と思われた方も多いと思います。
これは、「神送りの儀」という神様を天へと送る儀式を行う前に、三本締めを行ってしまったことが儀式を無視した行為と見なされたことが理由です。
多くのシーンで感謝の気持ちや心を一つにする行為として行われている「手締め」ですが、行うタイミングや立場をわきまえることも時には必要なようです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。