皆さんは、「おざなり」という言葉を耳にしたことがありますか?
「おざなりな態度にがっかりした」や「ここまでおざなりだとは思わなかった」など、批判的な意味で使われる言葉になりますが、なんとなく意味は分かっても正確な意味を理解していなかったという方が多くいらっしゃるようです。
また、「おざなり」と「なおざり」は同じ意味のようで実は明確な違いがあるため、使い分けが必要な言葉になります。
そこで、この記事では、
- おざなりの意味と語源
- おざなりの使い方【例文】
- 「おざなり」と「なおざり」の違いと覚え方
- おざなりの類語
について解説・紹介していきます。
おざなりの意味とは?
「おざなり」という言葉には、次のような意味があります。
- その場をしのぐために、いい加減な言動で済ませること
- その場のがれで誠意のないさま
「言動」とは、字のとおり「言葉」と「行動」のことをいうよ。
おざなりの漢字はある?
「おざなり」は、漢字で表すと『御座なり』や『御座形』と書きます。
なぜ、このような漢字が用いられているのかというと、「おざなり」の語源が由来しているからになります。
おざなりの語源
「おざなり」という言葉は、『御座敷の形(おざしきのなり)』の略称と言われています。
御座敷とは「宴会の席」、形とは「それに応じて」という意味です。
つまり、「御座敷の形」は、『宴会の席に応じて』という意味の言葉になります。
ん~宴会の席と、その場しのぎのいい加減な言動ってどう結びつくの?
昔は、「幇間(ほうかん)」と呼ばれる職業があったんだ。その幇間人が客によっては手抜きをしていたことから生まれた言葉のようだよ。
おざなりは、江戸時代では幇間の隠語だった?
幇間 は、酒の席でお客の機嫌をとったり、芸を見せてその場を盛り上げたりしていた職業のことです。
別名、「太鼓持ち(たいこもち)」や「男芸者(おとこげいしゃ)」とも呼ばれており、男性の職業であったとされています。
そして、幇間人達は、全ての客に対して同じことをしていたというわけではなく、客の質によっては芸を変えたり、手を抜いたりしていたようです。
そのため、幇間人達の間では『御座敷に合わせて接客を行う』ことを「おざなり」という隠語(いんご)にして言っていたことが「おざなり」の由来だと一説には言われています。
隠語とは、仲間の間だけでしか意味の分からない言葉のことだよ。
その後、隠語であった「おざなり」は、『表面的で形ばかりの取り繕った言動』を表す言葉として一般的に使用されるようになっていったと考えられています。
おざなりの使い方【例文】
それでは、「おざなり」の使い方を例文で確認してみましょう。
- 悪徳な建築業者のおざなりな施工のせいで、新築住宅は欠陥だらけなことが判明した。
- 医者のおざなりな診察で不安になったため、二度とその病院へは行かなくなった。
- 自分には分からないからといっておざなりに対応するのではなく、彼なりに真摯に向き合ってくれたところに好感を抱いた。
- 「掃除機をかけておくね」と言っていたのに、ゴミがあちこちに残っていておざなりにも程がある。
- 多忙だからといって仕事をおざなりにしていたせいで、重大なミスを引き起こしてしまった。
「おざなり」と「なおざり」の違い
「おざなり」と似た言葉に「なおざり」という言葉があったよね?
この2つの言葉に違いはあるのかな?
うん!紛らわしいけれど「なおざり」という言葉もあるね。
言葉が似ているせいか、「どっちが正しい言葉?」と戸惑う人もいるくらいだよ。
まずは、「なおざり」の意味を確認しておこう!
なおざりの意味
「なおざり」には、次のような意味があります。
- あまり注意を払わない様子やいい加減にしておく様子
- ほどほどで、あっさりとしていること
「なおざり」は、平安時代から用いられてきた古い言葉と言われており、語源には諸説あるようです。
なおざりの語源
「なおざり」の語源は、「状態が変わらず続いている状態(そのまま)」の意味を持つ『猶(なお)』と、「放っておく・しない」を意味する『せざり』または、「離れる」を意味する『去り(さり)』が合わさった言葉ではないかと考えられています。
そのため、「なおざり」という言葉は、
・『何もせずにはなれる』
・『そのままにして立ち去る』
・『気にとめない』
といった意味合いのある言葉ということになります。
ちなみに、「なおざり」は漢字で表すと『等閑』と書きます。
これは、「物事をいい加減にすること」という意味の『等閑(とうかん)』という言葉から当てられているそうです。
「なおざり」は平仮名、「とうかん」は漢字にしないと区別がつきにくいね。
「おざなり」と「なおざり」の違いは、「行動があったか、なかったか」
「おざなり」と「なおざり」の意味を見てみると、どちらも『いい加減な様子』を表す言葉ということが分かります。
しかし、「おざなり」は、いい加減な言動表すのに対し、「なおざり」はやるべきことを何もしなかったことでいい加減な状態になっていることを表す言葉です。
そのため、「おざなり」と「なおざり」の違いは、『行動があったか、なかったか』という点になります。
- おざなり・・・言葉・行動がいい加減
- なおざり・・・何も行動しないことでいい加減な状態になっている
「おざなり」と「なおざり」の意味の使い分け【例文】
「おざなり」と「なおざり」は、ビジネスの場でも用いられることがある言葉です。
2つの言葉を明確に区別するためにも、意味の違いを例文で確認しておきましょう。
【例文1】
『勉強をおざなりにしていたので、補習を受ける結果となってしまった。』
(しっかりとしていなかったので)
『勉強をなおざりにしていたので、補習を受ける結果となってしまった。』
(やらないままだったので)
【例文2】
『地球温暖化問題は、おざなりにできない世界的な課題である。』
(いい加減な対応ではいけない)
『地球温暖化問題は、なおざりにできない世界的な課題である。』
(そのままにしていてはいけない)
【例文3】
『彼は身だしなみがおざなりなので、いつも寝癖がついたままだ。』
(適当にしかやらないので)
『彼は身だしなみがなおざりなので、いつも寝癖がついたままだ。』
(気にせず整えないので)
【例文4】
『庭の草むしりをおざなりにしている。』
(適当にしかやっていない)
『庭の草むしりをなおざりにしている。 』
(ほったらかしにしている)
【例文5】
『失礼な客だったので、おざなりにした。』
(いい加減な対応しかしなかった)
『失礼な客だったので、なおざりにした。』
(何も対応をしなかった)
「おざなり」と「なおざり」の覚え方
「おざなり」と「なおざり」って言葉が似てるから、意味の区別が分からなくなっちゃうよ。
何か簡単な覚え方はないかな?
確かに「どっちだっけ?」ってなるかもしれないね。
語源のイメージで覚えてみてはどうかな?
「おざなり」と「なおざり」は言葉のつくりがとてもよく似ている言葉のため、「覚えられない」という方も多くいらっしゃるようです。
しかし、「おざなり」と「なおざり」では、明確な意味の違いがありますので、意味の違いが分かるような覚え方をしておくと安心です。
「おざなり」は、御座敷でおおざっぱに対応する姿、「なおざり」は、壊した物を直さず去っていく姿をイメージすると覚えやすいのではないでしょうか。
おざなりの言い換え表現・類語
「おざなり」を完全に言い換えできる言葉はありませんが、下記のような言葉が同じような意味の類語になります。
- 疎か(おろそか)
- 一時しのぎ(いちじしのぎ)
- 適当(てきとう)
- 雑(ざつ)
- ぞんざい
- 蔑ろ(ないがしろ)
- 杜撰(ずさん)
- 粗雑(そざつ)
- 粗略(そりゃく)
- 放漫(ほうまん)
- 生半可(なまはんか)
など・・・
まとめ:おざなりは、 その場をしのぐためにいい加減な言動をするという意味がある
- おざなりは、 幇間 の隠語だったいう説があり、語源は「 御座敷の形 」の略称と言われている
- 「おざなり」と「なおざり」の違いは、行動があったかなかったか
- 「おざなり」は、御座敷でおおざっぱに対応する姿、「なおざり」は、壊した物を直さず去っていく姿をイメージすると覚えやすい
- 「おざなり」の類語は、「適当」・「ぞんざい」・「 杜撰 」などがある
いかがでしたでしょうか。
「おざなり」と「なおざり」は、『いい加減』という意味では似ている言葉ですが、2つの言葉には明確な違いがあり、言動がいい加減なことは「おざなり」、何もしないことでいい加減になっていることは「なおざり」ということが分かりました。
ちなみに、「おざなり」と「なおざり」を比べてみると、「おざなり」は何かしらの行動をとっているのに対し、「なおざり」は何もしていないので「なおざり」の方が悪いような気がします。
しかし、本人が気にしないあまり、「いい加減な状態」になってしまっているという場面でも「なおざり」と表現することができるので、本人の意思でいい加減な言動をするほうが悪いと捉えることもできます。
そのため、「おざなり」・「なおざり」のどっちが悪いというのは一概に言えないということですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。