皆さんは、よく商品のPR記事などに「性能は折紙付きです」という言葉を目にすることはありませんか?
「性能が良い」ことを伝える言葉というのは分かりますが、「折り紙付き」とは『何が由来となり生まれた言葉なのか分からない』という方が多いのではないでしょうか。
また、「折り紙付き」に似た言葉で「お墨付き」がありますが、この二つの違いは何なのでしょう。
そこで、この記事では、
- 折り紙付きの意味や由来
- 折り紙付きの使い方
- 折り紙付きの対義語・類語
- 折紙付きとお墨付きの違い
について解説します。
折り紙付きの意味とは
「折り紙付き」とは、『確かな品質や実力を保証できる、定評がある』という意味で使用する言葉となっています。
しかし、なぜ『折り紙』という言葉が使われてるようになったのでしょう。
折り紙付きの語源・由来とは
「折り紙」という言葉は、『横長に二つに折られた紙』を示す言葉だったと言われています。
その紙には、折り目を下にして文章が書かれてありました。
折紙付きの「折り紙」とは、本来何のこと?
元々手紙などの文書には、「礼紙(らいし)」と呼ばれる何も書いてない白紙を本紙の裏に添えるのが礼儀とされていたそうです。
しかし、鎌倉時代になると、礼紙を節約するため本紙を横長に二つ折りにし、本紙の裏を礼紙の代りとするようになったと言われています。
「折り紙」という言葉は、二つ折りにした紙が主に『訴訟(そしょう)文書』に使われたことから、最初は「訴状や陳状」の別名として使用されていたと言われています。
※訴状・陳状は、裁判で使用される文書のことを言います。
その後、
・正式な折っていない文書は「竪紙(たてがみ)」
・略式の二つに折った文書は「折紙」
と呼ぶようになったとされています。
もともと「折り紙」というと、「直接声に出す言葉」を記したものでしたが、書状や献上品の目録など様々な物に使用されるようになり、室町時代には公文書や美術品の鑑定書としても使用されるようになったと言われています。
刀の鑑定書から「折り紙付き」という言葉が生まれた
室町時代には、贈答儀礼が盛んに行われていたとされていて、中でも刀は重要な儀礼の贈答品となっていたようです。
そのため、偽装などしていない正真正銘の名刀であることの証として、『鑑定書』が刀に付けられるようになったと言われています。
このことから「折り紙(鑑定書)が付いているもの」は確かな品質を保証したものとして、「折紙付き」という言葉が生まれたとされています。
その後、物に対してだけでなく、実力がある人物に対しても「折紙付き」は使用されるようになり、
『価値や実力に定評がある・保証できる』という意味で使われるようになったと言われています。
折り紙付きの使い方【例文】
では、「折り紙付き」の使い方を例文を使用して紹介します。
使い方としては、次の意味で使用していきます。
- 鑑定書がついている美術品などに使用する場合
- 物の価値や人に対して優れていると保証できる場合
現在では、鑑定書がついている美術品に使用する言葉よりも、人や物が優れていることを表す言葉として使用されていることが多い言葉です。
「折り紙付き」の例文
- 何人もの有名人を担当する彼のヘアカット技術は、折り紙付きと言えるだろう。
- 日本製品の品質の高さは折り紙付きで、世界でも絶賛されている。
- 祖母の作るおはぎは、近所で評判の折り紙付きだ。
- 彼女のコミュニケーション能力の高さは、いつも一緒にいる私の折り紙付きです。
注意点として「折り紙付き」は通常、悪い評判には使用しない言葉となっていて、悪い意味で使用する際には対義語である「札付き(ふだつき)」という言葉が一般に用いられています。
対義語である「札付き」の意味・由来とは
「札付き」という言葉は、「札付きの悪(ワル)」という言葉で聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれませんね。
「札(ふだ)」というのは、江戸時代の戸籍帳である「人別帳(にんべつちょう)」に付けられた札(目印)のことを指していています。
当時、罪を犯した場合、罪を犯した本人だけでなく、家族やその周辺に住む人達も処罰の対象となる『連座制(れんざせい)』という制度が敷かれていました。
そのため、日頃から素行が悪く、罪を犯しそうな人が身内にいた場合、処罰が家族に及ばないよう「勘当」が行われていたそうです。
勘当が行われると、戸籍が無くなり「無宿者(むしゅくしゃ)」となるのですが、無宿者となりそうな要注意人物にはあらかじめ札を付ける習慣があったとされています。
このことから、札を付けられた人物は悪評の知れ渡った人物となっていたことから「札付き」という言葉が生まれたとされています。
「折り紙付き」と「お墨付き」の違いとは
「折紙付き」と似た言葉で、「お墨付き(おすみつき)」という言葉がありますが、こちらは少し使い方が変わってきます。
「折紙付き」が、世間一般が優れているとする保証に対し、「お墨付き」は、
『権力や権威のある人が認める許可や保証』を表した言葉となっています。
「お墨付き」の由来
元々「お墨付き」は、幕府や大名といった地位のある権力者が、家来に領地を与える際に渡した証明書が元となって生まれた言葉とされています。
権力者が認める証明書には、文書が正しいことの証明として権力者の署名や花押(かおう)が墨でされてあり、このことが「お墨付き」と呼ばれるようになった由来と言われています。
ちなみに「花押」とは、実名の一部やその他の字などを組み合わせて作られた独自の記号文字となっており、江戸時代に多く用いられていました。
現在でも閣議における閣僚署名の際には、花押が使用されているそうです。
「お墨付き」の例文
では、「お墨付き」の使い方も例文を使用して紹介します。
「お墨付き」は、立場が上とされる人が認める物や人に使用する言葉となっています。
- この日本料理店は、ミシュランシェフのお墨付きの店だ。
- 大学の教授から、良い論文だとお墨付きをいただいた。
- 主婦の間でお墨付きとなっているレトルトカレーを購入してみた。
使い方のポイントとしては、立場が下の人が目上の人に対して使用しないということです。
折り紙付きの類語は?
「折り紙付き」の類語としては、「太鼓判(たいこばん)」が挙げられます。
「太鼓判」は、「折紙付き」と同様に『物や人の確かな品質を保証する』という意味で使用される言葉とされています。
「太鼓判」の由来
「太鼓判」とは、太鼓のように大きな判のことを言います。
江戸時代には、品質保証を意味するものとして、大きな判が押されていたことが由来と言われています。
また一説には、甲州(山梨県)で作られた一分金(いちぶきん)の安全策から「太鼓判」と言われるようになったという説もあります。
甲州で作られた金貨は、削り取られたり偽造されたりするのを防止するため、丸い金貨の周りに太鼓の鋲(びょう)のような丸い装飾を施していました。
この金貨が「太鼓判」と言われていたことから品質を保証するという意味で「太鼓判」と言われるようになったとされています。
まとめ:「折り紙付き」は、優れていることを保証する言葉
- 「折り紙」は元々、紙を二つ折りにしたものを示す言葉だった
- 「折り紙付き」は刀の品質を保証する鑑定書が付いているという意味で「折紙付き」と言われたことが由来となっている
- 「折り紙付き」は通常良い評判の時に用いられる言葉
- 「折り紙付き」の対義語は「札付き」、同義語は「太鼓判」
- 「お墨付き」は権威のある人が認める保証
いかがでしたでしょうか。
「折り紙付き」の「折り紙」は、刀に付けられた鑑定書から言われるようになった言葉だったということがわかりました。
ちなみに、私達が親しんできた紙を折って鶴などを作る遊びの「折り紙」は、室町時代から行われてきた「折紙礼法(おりがみれいほう)」から発展したと言われています。
「折紙礼法」は、武家礼法の一つとされていて、儀式の飾りや、物を包んで渡す際の和紙を使い分ける作法となっています。
和紙の折り方には決まった手順があり、渡す際・受け取る際においても全て決まった作法が定められていたそうです。
江戸時代になると遊戯用に発展し、庶民の中で普及したと言われています。
現在使用されている祝儀袋なども、この折紙礼法が元となっていますが、吉凶などに則っていない現在の祝儀袋は「折紙礼法」とは異なったものとされています。
そのため、礼法に伴っていないものを「折り紙」、礼法に則ったものを「折形(おりがた)」と呼び区別しているそうです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。