皆さんは、「お茶の子さいさい」という言葉を聞いたことがありますか?
昔のドラマや、アニメなどで「こんなのお茶の子さいさいよ!」と言っているシーンを思い出される方も多いと思いますが、最近では、めっきり使われなくなってきましたよね。
そんな「お茶の子さいさい」ですが、言葉の意味は分かっても、なぜその言葉が使われるようになったのかまで分からない、という方は多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、
- お茶の子さいさいの意味や語源
- お茶の子さいさいの言葉の由来
- お茶の子さいさいの使い方【例文】
- お茶の子さいさいの類語
- お茶の子さいさいの英語・中国語
について解説・紹介していきます。
お茶の子さいさいの意味や語源とは
まず、「お茶の子さいさい」は『物事が容易(簡単)にできる』という意味があります。
しかし、なぜ「お茶の子さいさい」で「簡単にできる」という意味があるのか分かりませんよね。
それでは、まず「お茶の子さいさい」の語源について紹介していきます。
「お茶の子」とは
「お茶の子」とは、一般に”茶菓子”のことを言い、茶菓子とは、『お茶を飲む時に合わせて食べるお菓子』のことを言います。
正式にはお茶を飲む際、濃いお茶には『主菓子(おもがし)』、薄いお茶には『干菓子(ひがし)』を合わせて食べるというのが基本になっているそうです。
- 「主菓子」とは、主にあんこを使用した和菓子のこと言い、饅頭や羊羹(ようかん)・きんとん・練り切りなどのずっしりとした和菓子のことを指します。
- 「干菓子」とは、砂糖や粉を固めて作った乾いたお菓子のことで、落雁(らくがん)や、金平糖・煎餅などのことを言います。
また、地方によっては朝ご飯の前に食べる「茶粥」のことを、「お茶の子」と呼ぶ地域もあります。
ちなみに、同じ意味で使われる「朝飯前」という言葉の由来になったとも言われています。
「さいさい」とは
次に「さいさい」とは、※俗謡(ぞくよう)の囃子詞(はやしことば)のことを表します。
※「俗謡」とは、民謡などの”歌”のことを指します。
「囃子詞」は、歌を引き立てる為に歌詞に添えられる『掛け声』のことを言い、「あそれっ」、「どっこいしょ」、「ヨイヨイ」など様々な囃子詞が存在しています。
「お茶の子さいさい」の言葉の由来
「お茶の子」と「さいさい」の意味は分かりましたが、これがなぜ「簡単にできる」という意味で使われているのでしょう。
これは、お茶菓子は、お腹に溜まらずササッと簡単に食べられることから「お茶の子」が使用されたと言われています。
また、「さいさい」は元々「のん子さいさい」という囃子詞があり、そこから「さいさい」だけをもじってつけられたとされています。
この、「のん子さいさい」という囃子詞は、長崎県諫早市から佐賀県南部の民謡の『のんのこ節』の「のんのこさいさい」という掛け声からきた俗謡ではないかと言われているようです。
しかし、有力とされているだけで根拠は無いようなので、「のん子さいさい」の出所ははっきりと分かってはいません。
囃子詞自体には、現在意味が分かっていないものがほとんどなので、「さいさい」自体の意味は分かりませんが、「お茶の子」に「さいさい」を付けることで簡単に食べられる様子を、より表すために付けられているのでしょう。
現代の言葉で言うと、「お菓子をぱくぱく」のような感じでしょうか。
お茶の子さいさいの使い方例文
「お茶の子さいさい」の意味が分かったところで、その使い方を例文で紹介していきます。
- 「彼女は秀才だから、この問題は彼女にとってはお茶の子さいさいだろう。」
- 「この本を読むだけでいいの?そんなのお茶の子さいさいだよ。」
- 「彼は大食いなので、ご飯3杯を食べることなんてお茶の子さいさいだった。」
「お茶の子さいさい」=「簡単」という言葉に変換して意味が通じれば、正しく使用できています。
お茶の子さいさいの類語とは
「お茶の子さいさい」と同じように「容易(簡単)」という意味で使われている言葉は意外と数多く存在しています。
朝飯前(あさめしまえ)
上記の「お茶の子」の意味を説明しているところでも少し説明しましたが、地方によっては朝ご飯前に食べる茶粥(軽い軽食)を、お茶の子と呼んでいた地域があり、そこから「簡単」という意味で使われるようになったという説があるようです。
しかし、一般的に言われている由来としては、「朝食を食べる前の少しの時間でもできるような簡単な仕事」という意味で使われるようになったと言われています。
江戸時代中頃まで朝食はお昼頃、夜は夕方4時頃の1日2回の食事しか取っていなかったため、朝食までの時間が長く、特に朝食前は力が入らなかったようです。
そんなに時間が空いてしまうと、夜にはお腹が空いて起きてしまいそうですね…
ちょちょいのちょい
「ちょちょいのちょい」という言葉も最近ではあまり聞かなくなりましたね。
こちらも”物事を簡単に行う様子”を表す言葉となっています。
「ちょちょいのちょい」は元々、簡単にできる様子を表す「ちょいと」から「ちょい」という言葉ができたことが由来しています。
しかし、なぜ「ちょちょいのちょい」という言葉になったのかは定かではないようです。
また、「よよいのよい」のような、特に意味を持たないリズミカルな言葉と合わさり、「ちょちょいのちょい」ができたのではないかとされる説もあります。
同じ意味で「ちょちょいと」という言葉が使われることもありますが、こちらの情報も残念ながら見つかりませんでした。
こちらも似たような言葉になっていますので、「ちょいと」から発展し、生まれたのではないでしょうか。
へのかっぱ
「へのかっぱ」を初めて聞いた人は何のことを言っているのか全く分かりませんよね。
これは、空想上の生き物とされる「河童(かっぱ)」の「屁(へ)」のこと言っています。
河童のおならは水の中でするから勢いがなく頼りないと考えられ、それが「取るに足らない事」つまり、「容易で何でも無いことの意味」になったと言われています。
また、もう一つ由来があり「木っ端の火(こっぱのひ)」の音が変化して「かっぱのへ」になったのではないかと言われているものになります。
「木っ端(こっぱ)」とは木のかけらのことを言い、木のかけらに火をつけても大したことないことから、何も問題の無いことを表す言葉として使われるようになったとされています。
初めは「こっぱのひ」だったのが、「こっぱのへ」と変わり、今度は「かっぱのへ」に変化して、最終的に「へのかっぱ」になったと言われています。
最後の言葉の入れ替わりは、江戸時代後期頃に言葉を反転するのが流行したことから「かっぱ」と「へ」が入れ替わったようです。
江戸時代にも言葉を反転させる流行があったのは面白いですね。反転と言えば、バブル期にも「シースー」(お寿司)や、「ザギン」(銀座)などの業界用語と言われるものが流行した歴史があります。
ちょろい
「ちょろい」という言葉は今でも使われていますね。
こちらも意味は「簡単なこと」を表す言葉としてよく知られています。
しかし、言葉の由来を分からずに使っている人も多いのではないでしょうか。
この「ちょろい」という言葉は、ねずみや、トカゲなどの小動物が動きまわる様子を表す言葉として「ちょろちょろ」と擬態語を使ったりしますが、その「ちょろ」を形容詞化させたものになります。
「ちょろちょろ」としたものは、あまり重要性がないと考えられていたことから、「取るに足らないこと」=「容易なこと」を表す言葉として使われるようになったとされています。
楽勝(らくしょう)
こちらもよく使われる言葉になりますね。
「簡単にできる」という意味で様々なことに使われる言葉になっていますが、元々は主にスポーツなど勝ち負けのある勝負事に対して「楽に(簡単に)勝てる」という意味で使われる言葉だったようです。
こちらで以上となりますが、調べるとまだまだ似たような意味で使われている言葉はあるようです。時代と共に使われる言葉も変化していきますが、一つ一つの由来を知るととても面白いですね。
お茶の子さいさいを英語や中国語で表現すると
「お茶の子さいさい」を英語や中国語で表すとすると、どのような言葉になるのでしょうか。
英語ではよく「easy」という言葉が使われますが、「お茶の子さいさい」のような何かを比喩して使われる言葉を調べてみると、いくつかあるようなのでご紹介します。
英語
『a piece of cake』
なぜこのような言葉が用いられるのかというと、これには2つの説があります。
- 1870年代に競技大会で優勝者に賞品としてケーキが与えられていたそうなのですが、その競技が頑張る必要のないくらいにあまりにも簡単な競技であったため、「a piece of cake」が使われるようになったという説。
- 「ケーキを一切れ食べるくらい簡単なこと」という意味から使われるようになったという説。
【例文】 It is a piece of cake.
【訳】 そんなの簡単だよ。
『as easy as pie』
実はこれも由来が2つあります。
- アメリカでお袋の味でもあるパイは、誰でも簡単に作れることから「パイを作るのと同じくらい簡単」という意味から「as easy as pie」が使われるようになったという説
- 「パイを1つ食べるのと同じくらい簡単」という意味から使われるようになったと言われている説
【例文】 Even a child can do it as easy as pie.
【訳】 子供でもできる簡単なことさ。
『cinch』
「たやすい」、「楽勝」といった意味合いの単語になります。
【例文】 The exam was a cinch.
【訳】 試験は楽勝だった。
『win hands down』
この言葉は、競馬から作られたとされていて、「騎手が手綱を緩めてゴールできるほど楽に勝つ」という意味で、楽勝という意味で使われています。
【例文】 He won the game hands down.
【訳】 彼はその試合で圧勝だった。
中国語
『小菜一碟』
こちらの意味としては、「小皿に乗った少量の料理を食べるように簡単」という意味で使用されています。
【例文】 对我说来小菜一碟
【訳】 私にとっては容易いことだ。
以上となります。英語圏にも「お茶の子さいさい」のような、モノに例えて表現する言葉がありましたね。
言葉の意味を理解していないと何のことを言っているのか分からない表現になりますので、覚えておくと良いですね!
まとめ:「お茶の子さいさい」は、茶菓子を食べるのと同じくらい簡単という意味
- 茶菓子とは、お茶と合わせて食べるお菓子のこと
- 「さいさい」とは囃子詞(はやしことば)のひとつ
- 類語は「朝飯前」、「へのかっぱ」、「楽勝」など数多く存在する
- 英語圏にも「お茶の子さいさい」のような表現が存在する
いかがでしたでしょうか。
現在ではあまり使われなくなってきた「お茶の子さいさい」ですが、誰が一番最初に言い出したのでしょうね。
現在では次々に新しい言葉が生まれ、若者が何のことを言っているのか全く分からないということもありますよね。
私自身JK(女子高生)言葉にはついていける自信はありませんが、その言葉がなぜそう言われるのかを知った時には、「なるほど」と納得するものもあり、とても面白いと思っています。
時代と共に変化する言葉をこれからも楽しみながら学んでいきましょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。