耳にすることも多い「二足のわらじを履く」という言葉、皆さんはこのことわざの意味をご存知でしょうか。
意味は何となく分かっていても、なぜ「二足のわらじを履く」というのか分からないという方が多いようです。
そこで、この記事では、
- 「二足のわらじを履く」の意味と由来
- 「二足のわらじを履く」の使い方【例文】
- 「二足のわらじを履く」の類語・言い換え表現
- 「二足のわらじを履く」の英語表現
について解説・紹介していきます。
「二足の草鞋(わらじ)を履く」の意味とは
「二足のわらじを履く(にそくのわらじをはく)」という言葉には、
『とても両立できないような異なる2つの仕事を、同じ人が行う』という意味があります。
本来は、両立が難しいと思われる2つの仕事に対して用いられる言葉ですが、現在は単に2つの仕事を掛け持ちするという意味で用いられることが多いようです。
例えば、会社員として働きながら、副業として別の仕事をしている人は、二足のわらじを履いている人となります。
また、省略して「二足のわらじ」と言うこともあります。
二足のわらじを履くの由来
そもそも、なんで「二足のわらじを履く」と言うのかな?
普通、わらじを二足重ねて履くことはできないから、両立が難しい仕事を一人で行うことの例えとして言われるようになったようだよ。
ちなみに、「わらじ」というのは、稲わらで作った「草履(ぞうり)」のような履物(はきもの)のことだよ。
「二足のわらじ」は、賭博の取締りが由来だった
「二足のわらじを履く」と言われるようになったのは、江戸時代の賭博(とばく)の取り締りが由来だと言われています。
※賭博とは、金銭や品物を賭けて勝敗を争う行為(ギャンブル)のことです。
幕府が賭博の取り締りを行う際、賭博を常習的に行っていた「博徒(ばくと)」に十手(じって)を渡し、罪人を捕まえる立場である「捕吏(ほり)」の役割をさせていたそうです。
※十手とは、捕吏が携帯していた鉄の棒のことで、今で言う警棒や警察手帳のような役割をしていた道具になります。
分かりやすく説明すると、犯罪組織の内部に詳しい人間の罪を許す代わりに、警察の手下として動いてもらっていたというわけですね。
取り締まられるはずの「博徒(罪人)」が、「捕吏(警察)」でもあるというのは、本来ならば真逆の立場であり、両立できない仕事です。
そのため、「博徒が捕吏をすること」を「二足のわらじを履く」と言い、両立が難しいと思われる2つの仕事をするという意味で用いられるようになったと言われています。
二足のわらじを履くの使い方【例文】
それでは、「二足のわらじを履く」の使い方を【例文】で紹介します。
- 【例文1】
彼女は生活費の足しにするため、家では内職の仕事をして二足のわらじを履いていた。 - 【例文2】
10年間二足のわらじを履いた生活を続けてきたが、そろそろ体力的に限界を感じている。 - 【例文3】
収入が安定するまでは、二足のわらじという形でやっていくしかないだろう。 - 【例文4】
二足のわらじとは言え、好きな仕事なので全く苦にならない。 - 【例文5】
彼は二足のわらじとは言えないくらい、たくさんの仕事を掛け持ちしているそうだ。
二足のわらじを履くの類語・言い換え表現
「二足のわらじを履く」を別の言葉に言い換えるとすると、次の言葉が近い言葉になります。
掛け持ち | 職業や任務、仕事を同時に2つ以上持っていることを意味します。 |
兼業 (けんぎょう) | 本職以外に別の仕事を持っていることを意味します。 |
兼職 (けんしょく) | 本職以外に別の職業や任務を同時に2つ以上もっていることを意味します。 |
副業 (ふくぎょう) | 本業を補完する役割として行っている本職ほどではない別の仕事のことを言います。 |
ダブルワーク | 2つの仕事を掛け持ちしていることを意味します。 |
サイドビジネス | 本業以外の仕事のことを言います。 |
二足のわらじを履くの類語
また、「二足のわらじ」と似たような意味の言葉では、次の言葉が類語となります。
兼務 (けんむ) | 本務以外の職務を掛け持ちしていることを言います。 |
兼任 (けんにん) | 1人で2つ以上の職務を持っていることを言います。 |
二刀流 (にとうりゅう) | 2つの物事を同時にうまく行えることを言います。 また、2本の刀を持って戦う戦術・お酒と甘いものの両方を好むという意味もあります。 |
両刀遣い (りょうとうづかい) | 2つの対照的な物事を同時にうまくできることを言います。 また、お酒と甘いものの両方を好むという意味もあります。 |
二足のわらじを履くの英語表現
「二足のわらじを履く」を英語にすると、次のように表現されています。
『Wear two hats』
(2つの職業を掛け持ちしている)
『be engaged in two trades at the same time』
(2つの職業に携わっている)
『many irons in the fire』
(同時に多くのことに手を出している)
まとめ:二足のわらじを履くということわざは、2つの仕事を掛け持ちしているという意味で用いられている
- 二足のわらじを履くは、本来、両立できないと思われる2つの仕事を同一人が行うことを言う
- 二足のわらじを履くということわざは、博徒が捕吏の仕事をしていたことが由来
- 二足のわらじを履くの言い換え表現は、「掛け持ち」・「兼業」・「ダブルワーク」などがあてはまる
いかがでしたでしょうか。
「二足のわらじを履く」ということわざは、現在では、同一人が2つの異なる仕事をするという意味で用いられていることが分かりました。
ちなみに、「二足のわらじを履く」という言葉に悪い意味はありませんが、「どっちつかずで仕事がおろそかになる」・「体を壊すからやめたほうがよい」といった考えから、悪い印象を持つ方もいらっしゃるようです。
しかし、「2つも仕事をしている」という点から、「仕事をがんばってすごい!」や「パワフルで尊敬する」など、良い印象を持つことの方が多いのではないでしょうか。
近年では、働き方改革の一貫として、正社員の副業や兼業を認めていこうという政府の動きもあり、今後「二足のわらじを履く」のは当たり前の時代が来ると言われています。
本業に支障が出ないような仕事や趣味の範囲でできる仕事であれば、お小遣いを増やすためにも挑戦してみたいものですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。