皆さんは、「二百十日」という日をご存知でしょうか。
現在では、「聞いたことがない」という方も多いかもしれませんが、昔は農家にとっては重要な日となっていたようです。
また、「二百二十日」という日もあるようですが、いったいどのような意味がある日なのでしょう。
そこで、この記事では、
- 二百十日とは?
- 二百十日はいつ?
- 二百十日の行事と食べ物
- 俳句季語としての二百十日とは
- 夏目漱石の『二百十日』
について解説・紹介していきます。
二百十日とは?
まず、二百十日の読み方は
『にひゃくとおか』です。
「二百十日」は、雑節(ざっせつ)の一つで、
『農家の厄日』とされている日のことを言います。
昔は、季節を24の区切りで分けた暦である「二十四節気(にじゅうしせっき)」を目安にして農業を行っていましたが、二十四節気は中国から伝わった暦であったため、日本の季節とは若干異なっていました。
そのため、二十四節気では分かりにくい季節の移り変わりを的確に把握するための暦(こよみ)として雑節が作られ、日本独自の暦として農家の間では重要な役割を果してきたと言われています。
ちなみに、二十四節気や雑節については、下記の『二十四節気とは?』の記事で詳しく解説していますので、よろしければご覧ください。
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二百十日が厄日なのはなぜ?
二百十日がなぜ厄日なのかというと、
『台風がやってくることが多かったため』と言われています。
ちょうど稲の開花時期であったことから、稲に被害をあたえる台風に警戒する頃として二百十日が雑節に定められたようです。
二百十日はいつのこと?いつから数えて210日目?
ところで、二百十日っていつのことなの?
それは、二十四節気の始まりの季節「立春」から数えて210目のことだよ。
「農家の厄日」とされている二百十日は、
『立春(りっしゅん)から数えて210目』のことで、毎年『9月1日頃』が二百十日となります。
※立春後209日目です。
二百十日は農家の三大厄日の一つ
実は、二百十日は【農家の三大厄日】の一つとなっており、他には「二百二十日(にひゃくはつか)」と「八朔(はっさく)」が厄日と言われています。
二百二十日(にひゃくはつか)とは
二百二十日も雑節の一つで、立春から数えて220日目のことを言います。
※立春後219日目です。
二百十日の10日後である9月11日頃も台風の襲来が多かったことから、暴風・豪雨に警戒すべき日として二百二十日が定められたと言われています。
八朔(はっさく)とは
八朔とは、旧暦8月1日のことで、「八月朔日(はちがつさくじつ)」の略称です。
※朔日は、月の始まりの日(1日)を意味しています。
ちなみに、旧暦8月1日は、新暦では8月下旬頃~9月頃にあたります。
八朔は雑節ではありませんが、早稲(わせ)に穂が稔(みの)り始める時期であったため、農家では大切な時期として「田の実の節供(たのみのせっく)」と呼ばれていました。
田の実の節供には、神様に豊作を祈る行事が行われ、収穫の前祝いも行われていたそうです。
しかし、この時期も台風が訪れる時期にあたるため、農家の厄日と言われるようになりました。
2022年(令和4年)の二百十日・二百二十日・八朔はいつ?
【2022年(令和4年)】の二百十日・二百二十日・八朔は次のとおりです。
- 二百十日
『2022年9月1日(木)』 - 二百二十日
『2022年9月11日(日)』 - 八朔
『2022年8月27日(土)』
二百十日の行事と食べ物
二百十日の時期になると、作物を風害から守るため、台風除けのおまじないや、豊作を神様に祈る行事が行われているようです。
そこで、二百十日に行われる行事や食べ物をいくつか紹介します。
風祭り
「風祭り(かざまつり)」は、風神に風を鎮めてもらい、農作物の豊作を祈る『風害防除のお祭り』のことです。
地域によって風習は様々あるようですが、人々が神社やお堂に籠もって心身を慎むことで身をを清める「忌籠(いみごもり)」をしたり、関東~東北地方では、団子を神棚にお供えする「風穴ふたぎ」という風習が行われたりしています。
そのため、風祭りは、「風籠り(かぜごもり)」や「風日待(かぜひまち)」と呼ばれることもあるようです。
また、神様に稲穂と共に「きのこ飯」と「焼き味噌」をお供えする風習もあり、これは、風神様に力をつけてもらい、すぐに過ぎ去ってもらうためだと言われています。
風切り鎌
風祭りには、風が吹いてくる方角に向けた鎌(かま)を屋根の軒(のき)や竹竿に取り付け、風除けのまじないを行う「風切り鎌(かぜきりがま)」の風習があります。
全国では行われていない風習になりますが、昔は関東地方を中心に広く行われていたようです。
おわら風の盆
「おわら風の盆(おわらかぜのぼん)」は、富山県富山市の八尾地区で毎年9月1日~9月3日にかけて行われているお祭りです。
3日間開催されるお祭りには、毎年全国から20万人もの見物客が訪れるとされており、富山県を代表するお祭りとなっています。
お祭り期間中には、300年の間受け継がれてきたとされる「越中おわら節(えっちゅうおわらぶし)」の民謡に合わせて町を練り歩きながら踊る「町流し」や「輪踊り」が披露されます。
三味線(しゃみせん)や胡弓(こきゅう)、太鼓を奏でる奏者と唄い手を「地方(じかた)」と言うよ!
風害を鎮め、豊作を祈る目的で行われる「おわらの風の盆」は、哀愁が漂い、独特の世界観があるお祭りとして人々に親しまれ、愛されてきたそうです。
ちなみに、お祭りが行われる前の8月20日~30日までの11日間は『前夜祭』となっており、「八尾曳山展示館(やつおひきやまてんじかん)」で踊り方教室や鑑賞会が行われるほか、20時~22時になると、八尾にある11の町が1日交代で「町流し」や「輪踊り」を開催するため、本祭の混雑を避けたい方や、日程が合わないという方でも楽しめるイベントとなっています。
防災の日
毎年9月1日は「防災の日」です。
防災の日は、1960年6月17日の閣議了解によって定められ、9月1日という日付は、1923年9月1日に発生した「関東大震災」にちなみ決定されました。
昔から9月1日頃は台風に警戒する「二百十日」となっていただけでなく、1959年9月26日に発生した「伊勢湾台風」による戦後最大の被害を受けたことが、防災の日が定められた理由とされています。
防災の日は、
『皆が様々な災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備する日』として創設された防災啓発デーのため、いつ災害が起こってもパニックを起こすことのないよう、防災意識の向上や災害に対しての日頃からの備えが求められています。
備蓄は最低3日間分用意しよう
ちなみに、備蓄食料としては、最低3日分は必要と言われますが、これは人命救助のタイムリミットが72時間(3日間)と言われることに由来しています。
72時間の理由としては、
・阪神淡路大震災の際、被災から72時間(3日間)を過ぎると生存率が著しく低下したこと
・人が水を飲まずに過ごせる限界が3日間とされていること
が挙げられています。
そのため、災害が発生してから3日間は物資支援よりも人命救助が優先して行われることから、人命救助・救急活動の妨げとならないよう、最低3日間の備蓄をすることが求められているのです。
備蓄は3日間あれば十分なのかな?
最低でも3日間、できれば1週間分用意することが推奨されているよ。
1日に必要な水の量は一人あたり3リットルと言われているから、3日間分で9リットル、7日分で21リットルも必要だね。
すると、お水の大きいペットボトル1本は2リットルだから、3日間で4本半・7日間で10本半も必要なのか!
俳句季語としての二百十日とは?
俳句の世界では、「二百十日」は『仲秋(ちゅうしゅう)』を表す「秋の季語」とされています。
仲秋は、『白露(9月8日頃)~寒露(10月7日頃)の前日まで』のことです。
ちなみに、俳句で「厄日」と言えば、「二百十日」のことを表しており、「厄日」も秋の季語とされています。
それでは、いくつか「二百十日」を用いた俳句をご紹介します。
二百十日の俳句の紹介【例句】
『芒の穂二百十日も過ぎにけり』
正岡子規(まさおかしき)
『二百二十日眼鏡が飛んで恐しや』
高浜虚子(たかはまきょし)
『枝少し鳴らして二百十日かな』
尾崎紅葉(おざきこうよう)
『芋虫や二百十日のころげもの』
野村喜舟(のむらきしゅう)
『二百十日も尋常の夕べかな』
与謝蕪村(よさぶそん)
夏目漱石の『二百十日』
夏目漱石(なつめそうせき)の「二百十日」は、1906年(明治39年)に発表・出版された中編小説です。
「圭(けい)さん」と「碌(ろく)さん」という2人の会話形式で話が進んでいく作品で、旅行先で訪れたという設定の熊本県・阿蘇(あそ)が舞台となっています。
夏目漱石の実体験を元に書かれた作品と言われており、この作品に登場する「圭さん」は夏目漱石自身がモデルと言われています。
1899年9月1日に夏目漱石が実際に阿蘇山に登った際、その日が「二百十日」であり、悪天候に見舞われたようです。
作品の中で、圭さんと碌さんの2人は9月2日に阿蘇山に登っていますが、実はその日が「二百十日」であり、悪天候に見舞われ登山を断念するという内容となっています。
夏目漱石の「二百十日」については、下記のサイトで公開されていますので、興味のある方はご覧ください。
まとめ:二百十日は農家の三大厄日の一つで、台風などに警戒すべき日とされている
- 二百十日は雑節の一つで、立春から数えて210目のこと
- 2022年(令和4年)の二百十日は「9月1日(木)」
- 農家の三大厄日は、「二百十日」・「二百二十日」・「八朔(はっさく)」の3つ
- 二百十日には、風祭りの風習があり、団子やきのこ飯、焼き味噌などが神様にお供えされている
- 俳句の世界では、「二百十日」は『仲秋』を表す秋の季語とされている
いかがでしたでしょうか。
「二百十日」は、ちょうど稲の開花時期と台風の到来の時期が重なる頃であったことから、暴風・豪雨などに警戒すべき日として雑節として定められ、農家の厄日とされてきたことが分かりました。
現在は、気象レーダーによる観測や気象衛星ひまわり、スーパーコンピュータによる天気予測などにより、台風や豪雨などの発生が事前に分かるようになったため、的確に台風への備えができるようになりました。
台風対策は農家だけ限らず各家庭にも必要なことですので、被害を防ぐためにも防災知識を深めておくようにしましょう。
基本の台風の備えとしては、下記のようなものがあります。
- 風で飛ばされてしまいそうな物を固定したり、屋内に移動させたりする。
- 側溝などの排水場所を掃除して水はけを良くしておく。
- 雨戸を閉める。雨戸がない場合は、カーテンを閉めたり飛散防止フィルムを貼ったりする。
- 飲料水の確保と、断水に備えて浴槽に水を溜めて生活用水を確保しておく。
- 停電に備えてスマホや充電機器の充電をしておく。
- カセットコンロと予備のガスボンベ、非常食を用意しておく。
- いざという時のために近くの避難場所を確認しておく。
- 下水が逆流し、トイレや排水口から水が吹き出すのを防ぐため、ゴボゴボと音がしたりトイレの水かさが上がってきたりしている時には、大きなビニール袋に水を入れて作った「水のう」をトイレの中や排水口に置いておく。
二百十日や防災の日には、災害用の食料を入れ替えたり、身を守るための防災について学んだりする日にしたいものですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。