早い方は11月から準備を始める年賀状、皆さんはいつ頃から取り掛かっていらっしゃるでしょうか。
毎年どんな年賀状にしようかと悩むことの多い年賀状ですが、年賀状に書く賀詞の意味をよく分からないまま書いているという方も多いようです。
よく見かける「恭賀新年」や「謹賀新年」という言葉にはいったいどのような意味があるのでしょう。
そこで、この記事では、
- 恭賀新年と謹賀新年の意味や違い
- 恭賀新年の使い方【例文】
- 恭賀の類義語
- 年賀状に用いる賀詞の種類と意味
- 恭賀新年はいつからいつまで使える言葉?
について解説・紹介していきます。
恭賀新年の意味とは
まず、「恭賀新年」の読み方は『きょうがしんねん』です。
「恭賀新年」は、『恭しく(うやうやしく)新年をお祝い申し上げます』という意味があります。
「恭しく(うやうやしく)」の意味
「恭しく」とは、「恭しい」の連用形で、
『とても丁寧で礼儀正しい様子』や『敬意を持って謙(へりくだ)る様子』を表す言葉です。
通常の丁寧さよりも非常に強い丁寧さを意味する言葉のため、「神仏」や「位の高い目上の人」にとる行動に対して用いますが、自分が客観的に見た第三者の行動に対して用いることが多い言葉になります。
【例文】
- その男性は祖父に恭しい態度で深々と頭を下げると、涙をぬぐい去って行った。
- 彼女は恭しく来賓(らいひん)の方をお迎えしている。
- 恭しく神主が祝詞(のりと)を奏上(そうじょう)する中、席を立つというのはさすがに失礼にあたるだろう。
「恭賀新年」という言葉は、『強く敬意を払う相手に謙(へりくだ)って用いる言葉』と覚えておきましょう。
謹賀新年の意味とは
「恭賀新年」と似た言葉に、「謹賀新年(きんがしんねん)」という言葉がありますね。
「謹賀新年」は、『謹んで(つつしんで)新年をお祝い申し上げます』という意味があります。
「謹んで(つつしんで)」の意味
「謹んで」とは、「謹む」の連用形で、
『恭しくかしこまる様子』や『相手に敬意を払い、物事を行う様子』を表す言葉です。
「かしこまる」というのは、『身分の高い人や目上の人に対して畏(おそ)れ敬(うやま)うこと』をいい、「畏れ敬う」というのは、身分が上の人に対して屈服し、尊い存在として敬意を払うことをいいます。
【例文】
- チームリーダーへの推薦(すいせん)の件、謹んでお受けいたします。
- この度は、私の不徳の致すところにより多大なるご迷惑をおかけいたしましたこと、謹んでお詫(わ)び申し上げます。
- 突然のご逝去(せいきょ)の報(ほう)に接し、謹んでお悔(く)やみ申し上げます。
「謹賀新年」という言葉は、『敬意を払う相手に礼を尽くして用いる言葉』と覚えておきましょう。
恭賀新年と謹賀新年の違い
「恭賀新年」と「謹賀新年」は、どちらも『丁寧で礼儀正しく、相手を敬った新年の挨拶』です。
意味としては同義の言葉になりますので、違いはないといって良いでしょう。
意味が同じなら、どちらか好きなほうを選んで書けばいいね。
ちなみに、「恭賀新年」や「謹賀新年」といった挨拶は、友人や目下の人に対しても用いることもできますが、少々堅苦しい印象を与えてしまうかもしれません。
下記の「年賀状に用いる賀詞」のところで、様々な新年の挨拶を紹介していますので、参考にしてみてください。
恭賀新年の使い方【例文】
それでは、「恭賀新年」を用いた年賀状の例文を紹介します。
ちなみに、年賀状の文章には、「区切り・終わり」を意味する「、」や「。」は用いないのがマナーとされています。
そのため、列(行)を変えたり、スペースを空けたりして文を読みやすくする工夫をするようにしましょう。
また、「去」という字も「去る=別れる=離れる」につながるとして『忌(い)み言葉』とされていますので、「去年」という言葉は使わないように注意してください。
- 【会社の上司】(ビジネス)
恭賀新年
旧年中は格別のご厚情を賜り誠に感謝いたします
まだ未熟で至らぬ点もございますが 一生懸命努力していく所存です
本年も 変わらぬご指導ご鞭撻のほど よろしくお願い申し上げます - 【取引先】(ビジネス)
恭賀新年
旧年中は格別のご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます
貴社益々のご発展と皆様のご活躍を心よりお祈り申し上げますと共に
今年も変わらぬお付き合いのほど 何卒よろしくお願いいたします - 【恩師】
恭賀新年
ご無沙汰しておりますが お変わりはございませんか
私は昨年◯月◯日に新たな家族を授かり にぎやかな新年を迎えております
お近くへお越しの際はぜひ遊びにいらしてください
まだまだ寒い日が続きますので 体調には十分お気をつけくださいませ
恭賀の類義語
「恭賀新年」の「恭賀」という言葉には、『恭(うやうや)しく喜び祝う』という意味があるため、次のような言葉が類義語となります。
- 謹賀(きんが)・・・心から謹んで喜びを申し述べること
- 奉賀(ほうが)・・・謹んでお祝いすること
- 慶賀(けいが)・・・喜び祝うこと
- 祝賀(しゅくが)・・・おめでたいこととして喜び祝うこと
- 奉祝(ほうしゅく)・・・心から謹んでお祝いすること
- 慶祝(けいしゅく)・・・喜び祝うこと
- 御慶(ぎょけい)・・・新年をお祝いする挨拶
- めでたい・・・たいへん喜ばしく、お祝いすべき様子
年賀状に用いる賀詞(お祝いの挨拶)の意味
新年に限らず、お祝いの際に用いられる挨拶を『賀詞(がし)』や『祝詞(しゅくし)』と言いますが、現在では「賀詞」というと「新年に用いる挨拶の言葉」と認識されることが多いようです。
新年に用いられる挨拶として様々な「賀詞」がありますが、目上の方に使用すべきでない「賀詞」もありますので、用いる際には注意が必要です。
そこで、年賀状に用いる「賀詞」の意味と、使える相手を紹介していきます。
賀詞は大きく分けると5種類ある
賀詞は、大きく分けると次の5種類の賀詞に分けることができます。
- 1文字の賀詞
- 2文字の賀詞
- 4文字の賀詞
- 文章の賀詞
- 英語の賀詞
①1文字の賀詞
1文字の賀詞は、「友人」や「目下の人」に用いることができます。
一文字の賀詞 | 意味 |
寿 | おめでたい・喜び祝う |
賀 | 喜び・祝う |
福 | 幸い・幸運 |
春 | 新春・年の初め |
禧 | おめでたい・喜び・幸い |
慶 | 喜び |
短い賀詞のため、続けて「あけましておめでとうございます」と書いてしまいそうですが、賀詞は重複しないように注意しましょう。
賀詞を一度使用したら、添え書きにも賀詞を書かないように注意しよう!
②2文字の賀詞
2文字の賀詞は、「友人」や「目下の人」に用いることができます。
二文字の賀詞 | 意味 |
賀正 (がしょう) | 新年(正月)をお祝いすること |
新春 (しんしゅん) | 新しい年のこと |
賀春 (がしゅん) | 新春をお祝いすること |
慶春 (けいしゅん) | 新春を喜んで祝うこと |
迎春 (げいしゅん) | 新春を迎えること・新年を迎えること |
頌春 (しょうしゅん) | 新春をたたえること |
初春 (しょしゅん) | 新年・年の初めのこと |
寿春 (じゅしゅん) | 新年をお祝いすること |
慶福 (けいふく) | おめでたいこと・幸い |
③4文字の賀詞
4文字の賀詞は、「上司」や「取引先」、「恩師」など、主に「目上の人」に用いることができます。
四文字の賀詞 | 意味 |
恭賀新年 (きょうがしんねん) | 恭しく新年をお祝い申し上げます |
謹賀新年 (きんがしんねん) | 謹んで新年をお祝い申し上げます |
恭賀新春 (きょうがしんしゅん) | 恭しく新しい年をお祝い申し上げます |
謹賀新春 (きんがしんしゅん) | 謹んで新しい年をお祝い申し上げます |
瑞祥新春 (ずいしょうしんしゅん) | 新年を迎え、良い兆しがありますようお祈り申し上げます |
恭頌新禧 (きょうしょうしんき) | 恭しく新年の喜びをおたたえ申し上げます |
敬頌新禧 (けいしょうしんき) | 謹んで新年の喜びをおたたえ申し上げます |
慶賀光春 (けいがこうしゅん) | 輝かしい新年のお慶びを申し上げます |
麗雅懿春 (れいがいしゅん) | 鮮やかで美しく、洗練された奥ゆかしい春の訪れを申し上げます |
新春来福 (しんしゅんらいふく) | 新年を迎え、福が訪れますことをお祈り申し上げます |
新春万福 (しんしゅんばんぷく) | 新年を迎え、たくさんの幸福があることを祈り申し上げます |
笑門来福 (しょうもんらいふく) | 笑顔でいられるよう幸福をお祈り申し上げます |
敬寿歳旦 (けいじゅさいたん) | 元日の朝を迎えましたことをお祝い申し上げるとともに、幸運をお祈りいたします |
④文章の賀詞
文章の賀詞は、目上・目下関係なく誰にでも使用することができます。
文章の賀詞 |
あけましておめでとうございます |
新年おめでとうございます |
新春のお慶び(お喜び・お祝い)を申し上げます |
初春のお慶び(お喜び・お祝い)を申し上げます |
謹んで新年のお慶び(お喜び・お祝い)を申し上げます |
謹んで新春のお慶び(お喜び・お祝い)を申し上げます |
謹んで初春のお慶び(お喜び・お祝い)を申し上げます |
謹んで年頭のご挨拶(ご祝詞)を申し上げます |
新春を寿(ことほ)ぎ謹んでご挨拶申し上げます |
ちなみに、年始の挨拶として『新年あけましておめでとうございます』という言葉が用いられることがありますが、「新年」は「年が明ける」という意味があることから、「新年」と「あけまして」を一緒に用いるのは誤りとされています。
そのため、賀詞として用いる場合には、「新年おめでとうございます」または「あけましておめでとうございます」と書くのが正しい賀詞となります。
しかし、広く一般的に使用されている言葉ということや、おめでたい言葉を強調する言葉の一つとして必ずしも間違いとは言えないという見解もあるようです。
テレビなどでも、「新年、あけましておめでとうございます!」と言っているのを耳にするよね
英語の賀詞
英語の賀詞は、「友人」や「親しい間柄の人」に用いることができます。
英語の賀詞 | 意味 |
Happy New Year | あけましておめでとう |
Best wishes in the new year | 新年のご多幸をお祈りしています |
New Year’s Greetings | 新年のご挨拶 |
I hope you will have a great year | あなたにとって素晴らしい一年となりますように |
Have a great new year | 素晴らしい新年を過ごしてください |
気をつけたいこととして、「Happy New Year」の最初に「A」をつけて「A Happy New Year 」しまうと、「良いお年を」という意味になってしまいます。
新しい年を迎えた後に送られる年賀状にはふさわしくないとされていますので、「A」はつけないようにしましょう。
恭賀新年はいつからいつまで使える言葉?
「恭賀新年」などの新年の挨拶は、『松の内の期間まで』と言われています。
「松の内(まつのうち)」というのは、『門松を飾っておく期間』のことで、正月に訪れた年神様が各家庭に滞在している期間でもあります。
「松の内」は地域によって異なり、主な期間としては次の通りです。
- 関東地方は『1月1日~1月7日まで』
- 関西地方は『1月1日~1月15日まで』
- 九州地方は『1月1日~1月7日まで』※地域によって8日・10日・15日までのところもあります。
「松の内」に関しては、下記の『松の内の意味とは?』の記事で詳しく紹介していますので、よろしければご覧ください。
【2023年】松の内の意味とは?いつからいつまで?関西と関東では違う?
お正月のある期間を表す言葉なのですが、若い方は聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれませんね。 また、「松の内」 ...
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年賀状の消印は1月8日以降から
通常、年賀状には業務の便宜上の理由から「消印」は押されないのですが、1月8日以降からは消印が押されるようになります。
一般的に年賀状の返信は『1月7日までに行うのがマナー』とされていますので、1月7日までは「年賀状」として出すようにし、相手に届くのが1月7日を過ぎるようであれば「寒中見舞い」として返信するようにしましょう。
「寒中見舞い」として返信する場合は、立春(2月4日頃)の前日の『節分』まで送ることができます。
※2023年の節分は、2月3日(金)となります。
まとめ:恭賀新年も謹賀新年も、同じ意味合いの礼儀正しい新年の言葉
- 恭賀新年 は、「恭 しく新年をお祝い申し上げます」という意味がある
- 恭賀新年も謹賀新年も、「丁寧で礼儀正しく、相手を敬った新年の挨拶」とされる
- 恭賀の類義語は、「謹賀・奉賀・祝賀」など
- 恭賀新年を用いる時期は「松の内」まで
いかがでしたでしょうか。
恭賀新年は、主に目上の人に対して用いるのが一般的で、 強く敬意を払う相手に 謙 って用いる言葉ということが分かりました。
ちなみに、「元日(がんじつ)」と「元旦(がんたん)」の違いをご存知でしょうか。
「元日」は『1月1日』のことで、「元旦」は『1月1日の朝』を表す言葉になります。
年賀状は、1月1日の朝に届くのが礼儀とされていますので、年賀状には「元旦」と書き、できるだけ1月1日に届くよう送るようにしましょう。
郵便局では、毎年『12月15日~25日まで』に投函すると、元旦に届くとされています。
ついつい後回しにしてしまいがちな年賀状ですが、何事も余裕を持って臨むようにすると良いですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。