皆さんは、「一富士二鷹三茄子」という「ことわざ」を知っていますか?
一般に「初夢に出てくると良い」と言われますが、「富士山・鷹・茄子」にどのような意味があるのか、実はよく分からないといった方が多いのではないでしょうか。
また、「一富士二鷹三茄子」には、どうやら続きがあるようです。
そこで、この記事では、
- 「一富士二鷹三茄子」の意味や由来
- 「初夢」とはいつ?
- 「一富士二鷹三茄子」の続きとは
- 「一富士二鷹三茄子」の折り紙での作り方
- 「一富士二鷹三茄子」の英語表現
について解説・紹介していきます。
一富士二鷹三茄子の読み方やことわざの意味とは
まず、「一富士 二鷹 三茄子」と書いて『いちふじ・にたか・さんなすび』と読みます。
この言葉は、『夢で見ると縁起が良いとされるものを、順番に並べた「ことわざ」』となっています。
年間を通して、夢に現われると縁起が良いとされている「一富士二鷹三茄子」ですが、初夢に見ると特に縁起が良いとされてきました。
また、「富士山・鷹・茄子」には次のような意味があると言われています。
- 【富士山】…末広がり(繁栄)・不死(健康長寿)・無事
- 【鷹】…高い・運気上昇・強さ・賢さ
- 【茄子】…事を成す(大きな事を成し遂げる)・家内安全(怪我無い)
初夢とはいつのこと?
現在「初夢」は、『元日(1月1日)の夜~2日にかけて見る夢』とされるのが一般的です。
※中には「2日~3日」とされることもあるようです。
しかし、現在のような「元日~2日」という考えへと変わったのは、旧暦から新暦へと変わった明治時代頃からと言われています。
初夢の歴史
「初夢」という言葉が初めて登場したのは、鎌倉時代の歌集である「山家集(さんかしゅう)」からと言われていて、当時は「立春」を新年の始まりと考えることが多かったことから、『節分(2月3日頃)~立春(2月4日頃)』に見る夢を「初夢」としていたそうです。
その後、元日を新年とする考えが定着した江戸時代には、「大晦日~元日」・「元日~2日」・「2日~3日」と3通りの考え方があったようですが、後期になり『2日~3日』が初夢とされるようになったと言われています。
「2日~3日」という考えが一般的になった理由は定かではありませんが、2日に「書初め」や「初売り」といった行事が行われたり、「宝船売(たからぶねうり)」と呼ばれる七福神の宝船の絵を販売する商人が、2日の夜に売り歩いていたことが由来ではないかとされています。
良い夢を見るための宝船
室町時代頃からの風習として、
『なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな』
という回文を書いた「七福神の宝船の絵」を枕の下に置き、この文を3回読んで眠ると良い夢が見られるとされていたそうです。
※回文とは、後ろから読んでも同じ言葉になる文章のことを言います。
『長き夜の 遠の眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良きかな』
この歌の意味としてはいくつもの解釈がされていますが、下記のものがしっくりとしていますのでご紹介します。
『長い夜の深い眠りから皆が目覚め、宝船が波に乗って進む音のなんて気持ちの良いことだろう』
また、この歌には別の意味も含ませてある言葉遊びの歌とされていて、次のような意味もあります。
- 「長き夜」→長寿・夢見が続く様子
- 「波乗り」→実り
- 「船」→宝船・不音(静かな様子)
ちなみに、悪い夢を見てしまった時は、枕の下の置いた宝船の絵を川に流すことで縁起直しをしていたそうです。
一富士二鷹三茄子の由来とは
そもそもなぜ、「富士山・鷹・茄子」の組み合わせになっているのが不思議ですよね。
これには、いくつか説があるとされています。
3つの高いものを表した説
徳川家康が幼少時代に過ごし、晩年の隠居の地と選んだ「駿河国(現在の静岡県)」にまつわる説です。
家康が駿河国で過ごしている際、初茄子がとても高かったことから、『まず一に高きは富士なり、その次は愛鷹山(あしたかやま)なり、其次は初茄子なり』と言って茄子の値段の高さを表したことが「一富士二鷹三茄子」の由来とされています。
徳川家康の好きな物説
徳川家康が好んでいたと言われる、「富士山の景色・趣味であった鷹狩り・冬の贅沢品であった茄子」が由来と言われている説です。
「天下人となった家康にあやかりたい」という気持ちから生まれた縁起物なのかもしれません。
三大仇討ち(あだうち)説
日本三大仇討ちとされる「曾我兄弟の仇討ち」・「忠臣蔵」・「鍵屋の辻の決闘」に由来するという説です。
【曾我兄弟の仇討ち】は、富士の裾野で行われたことから「富士」
【忠臣蔵】は、主君浅野家の紋所が鷹の羽であったことから「鷹」
【鍵屋の辻の決闘】は、伊賀で行われたことから、その名産品である「茄子」
から由来したという説になります。
一富士二鷹三茄子の続きがある?
実は、「一富士二鷹三茄子」には続きがあるのですが、いくつもの説が存在しています。
「四扇・五多波姑(煙草)・六座頭」説
一番多く言われているのが、「四扇(しおうぎ)」・「五多波姑(ごたばこ)」・「六座頭(ろくざとう)」というものになります。
「四扇五多波姑六座頭」は、「一富士二鷹三茄子」に重ねた縁起担ぎと言われ、次のような意味があります。
四扇
「扇」は、富士と同様に末広がりであることから「繁栄」を表す縁起物とされています。
子孫繁栄・商売繁盛に御利益があり、「成功」を意味するものとなっています。
五多波姑(煙草)
「多波姑(煙草)」は、煙が上昇していくことから鷹と同様に「運気上昇」の縁起物とされています。
昔、煙草はお酒と同様に、お祭りやお祝いの席では欠かせない嗜好品(しこうひん)とされていたそうです。
六座頭
「座頭」は、髪の毛を剃った盲人階級を表す言葉で、琵琶法師などが「座頭」に当たります。
※盲人(もうじん)とは、目の見えない人のことを言います。
座頭は、髪の毛を剃髪(ていはつ)していたことから、茄子と同様に「怪我ない(毛が無い)」として「家内安全」を願うものとされています。
「逆夢(さかゆめ)」説
「逆夢」と呼ばれる「現実とは逆のことが起きる夢」を願い、あえて悪い夢を見ることで、悪いことが現実には起きないように願ったものとされています。
「逆夢」を願ったものはいくつか説があり、
- 四葬礼・五雪隠(※雪隠=便所)
- 四雪隠・五葬式
- 四葬礼・五糞
- 四葬式・五火事
などがあります。
葬礼・葬式・火事
お葬式や火事といったものは、実際に起こって欲しくない悪いことですので、夢にお葬式や火事を見ることで、悪いことが起こらないように願う意味があります。
お葬式は、再生の夢と言われていて、「良い変化が起きる」・「嫌な物が消える」とされています。
火事は、弱い火事よりも、激しく燃え上がるほどの大火事や、自宅の全焼といった火事の夢ほど「より大きな幸運が訪れる」と言われており、繁栄の夢とされています。
雪隠(せっちん)・糞
雪隠は、トイレのことを言います。トイレや便といったものは、汚い物の象徴となっていますが、汚い物を排出するという意味から、「富を得る」とされています。
七番以降はある?
七番以降は、「七丁髷(ちょんまげ)」・「八薔薇(ばら)」・「九歌舞伎(かぶき)」という説もありますが、後に誰かによって後付けされたものと考えられています。
意味については分かりませんでしたが、トンチの効いた面白い続きであれば皆に語り継がれたかもしれませんね。
一富士二鷹三茄子の折り紙での作り方をご紹介
縁起が良いとされる「一富士二鷹三茄子日」を折り紙で作り、お正月飾りとして飾ってみてはいかがでしょうか。
そこで、「富士山」・「鷹」・「茄子」の折り方を動画で紹介してくれているサイトがありますので、ご紹介します。
富士山の作り方
こちらの富士山は、立体になっていますので、存在感のある可愛らしい飾りになります。
折り紙1枚と、お箸1本があれば簡単に作ることができますので、ぜひ挑戦してみて下さい。
鷹の作り方
こちらは鷲(ワシ)の作り方で紹介されていますが、鷹(タカ)と遜色ありませんので、ぜひこちらを参考にしてみて下さい。
こちらの鷹は、羽に1枚・胴体部分に1枚の合計2枚の折り紙で作ることができます。
それぞれの折り方は簡単で、最後に接着剤で体と胴体を固定すれば完成です。
少し難易度のある鷹の作り方
こちらの鷹は、1枚の折り紙で作る鷹となっていますので、若干難易度が上がります。
けれども、その分かっこいい鷹が作れますので、子供さんのいらっしゃる家庭では、ぜひチャレンジして「すごい!」と言わせてみて下さい。
茄子の作り方
こちらの茄子も立体的になっていますので、本格的で、飾りたくなる茄子の折り紙となっています。
茄子の本体部分に使う折り紙1枚と、へたの部分に使う折り紙1枚の合計2枚の折り紙があれば作ることができます。
茄子の本体を折ったあと、紙風船を作る要領で空気を入れるところが少し難しいかもしれませんが、慣れると綺麗に膨らませられますので頑張って下さい。
一富士二鷹三茄子を英語で表現すると
「一富士二鷹三茄子」を英語にすると、次のようになります。
『First,Mt.Fuji. Secound,hawks. Thied,eggplants.』
上記のものはそのまま英語にしたものですので、少し説明を加えると分かりやすいかもしれません。
『 The first dream of the New Year, Mt.Fuji is the most auspicious, a hawk is the second, and an eggplant is the third, According to an old Japanese proverb.』
(日本のことわざによると、新年の最初の夢では富士山が最も縁起が良いもので、鷹が2番目、茄子が3番目になります。)
まとめ:一富士二鷹三茄子は、初夢に見ると大変縁起が良いとされるものを順番に並べたことわざ
- 「富士」は繁栄・「鷹」は運気上昇・「茄子」は成功といった御利益があるとされる
- 初夢は、現在では「元日~2日」にかけて見る夢とされるのが一般的
- 宝船の絵に「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」と書き、枕の下に入れてこの言葉を3回唱えると良い夢が見られると言われている
- 「一富士二鷹三茄子」の組み合わせが用いられるようになった理由としては、徳川家康が由来になったものなど、諸説ある
- 「一富士二鷹三茄子」には「四扇五多波姑六座頭」といった4番以降の続きが存在しているが、いくつもパターンが存在する
いかがでしたでしょうか。
「一富士二鷹三茄子日」の所以は諸説ありますが、初夢に出てくると様々な御利益があるとされていることが分かりました。
ちなみに、「茄子」と書いてなぜ「なすび」と読むのかと不思議に思うかもしれませんが、元々「茄子」は「奈須比」と書いて「なすび」と呼ばれていたそうです。
奈良時代に中国から伝わったとされる茄子ですが、当時はとても酸っぱく、小ぶりなものだったとされています。
そのため、「中がすっぱい実」という意味で「なかすみ」と呼ばれるようになり、「なすみ」から転じて「なすび」へと変わったそうです。※諸説あります
江戸時代、「なすび」は関西地方では多く作られていましたが、江戸ではなかなか手に入るものではなかったため、大の茄子好きであった徳川家康が江戸でも栽培するように命じたことで、江戸でも作られるようになったと言われています。
しかし、江戸で馴染みのなかった「なすび」はなかなか売れず、困った商人のアイディアで「事を成す縁起物」として「なす」と言い売り出したところ、縁起を担いだ名前が人気となり、「なす」として定着したとされています。
ちなみに、なぜ「茄子」という漢字になったのかというと、中国で「なす」は「茄(か)」と表記されていたため、そこから由来して「茄子」という文字が当てられたそうです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。