皆さんは、「怒涛」という言葉を耳にしたことがありますか?
「怒涛の日々」や「怒涛の追い上げ」などと用いられることがありますが、ニュアンス的に言葉の意味を理解できていても、「怒涛」の意味をしっかり答えられるという方は少ないのではないでしょうか。
また、「怒涛」を辞書で調べてみると、「怒濤」と書いてあるため、「怒涛は間違い?」と疑問に思う方もいらっしゃるようです。
そこで、この記事では、
- 怒涛の読み方と意味
- 怒涛の使い方【例文】
- 怒涛と怒濤の違いとは
- 怒涛の類語・言い換え表現
- 怒涛の英語表現
について解説・紹介していきます。
怒涛の読み方と意味
まず、「怒涛」の読み方は『どとう』です。
怒涛は、『荒れ狂うほどの大波』という意味があり、
そこから転じて『物事が激しい勢いで押し寄せる様子のたとえ』として用いられることが多い言葉となっています。
「涛」という字は、「なみ」や「おおなみ」と読むこともあり、『水面が大きく波打つ様子』を表す言葉です。
そのため、まるで怒ったかのように大波が打ち寄せるという意味で「怒涛」と表現されています。
怒涛の使い方【例文】
それでは、例文で「怒涛」の使い方を紹介します。
【例文1】
今年も福袋争奪戦で、お店の扉が開いた途端、皆が怒涛の勢いで中になだれ込んでいった。
【例文2】
忙しい職場のため、毎日怒涛の日々を過ごしています。
【例文3】
宿題がまだ終わっていないのに、夏休みは怒涛の如(ごと)く過ぎていった。
【例文4】
彼が残り時間わずかで逆転ゴールを決めた瞬間、応援席から怒涛のように歓声が上がった。
【例文5】
彼の怒涛の快進撃によって、もうダメかと思われた全国大会への出場が夢ではなくなった。
【例文6】
次々と真相が明らかになる怒濤の展開に、最終回がどのような結末を迎えるのかが楽しみだ。
怒涛と怒濤の違い
「どとう」を辞書で調べてみると、「怒濤」と書いてあったよ。
なんで「怒涛」が載っていないのだろう?
それは、「涛」は「濤」の略字で、正字は「濤」だからだよ。
「涛」は「濤」の『略字(りゃくじ)』です。
※「濤」が旧字ではないことに注意しましょう。※
「略字」とは、本来の字体から点や画を省略して簡単にしたものをいいます。
また、意味が同じで漢字が違うだけの字のことを『異体字(いたいじ)』と言い、略字は異体字の一種になります。
異体字の例
したがって、「怒涛」と「怒濤」は、表記が違うだけで意味に違いはありません。
しかし、「濤」が正字ということは、「涛」で表記するのは間違いということなのでしょうか?
「濤」の代わりに「涛」を使用しても良いが、あくまでも手書きの場合に限る
「濤」は、常用漢字ではない『表外漢字(ひょうがいかんじ)』と呼ばれる字体であり、「印刷標準字体(いんさつひょうじゅんじたい)」とされている字になります。
※印刷標準字体とは、表外漢字のうち、手書きではない印刷物に使用するのが通常とされている字体のことです。
そして、印刷標準字体の代わりに使用しても良いとされている字体を「簡易慣用字体(かんいかんようじたい)」と言います。
簡易慣用字体は、全部で22字あるよ。
「涛」の字は簡易慣用字体には含まれていませんが、漢字検定準一級では、「許容字体(きょようじたい)」として「濤」の代わりに「涛」を使用することが認められています。
つまり、「濤」のかわりに「涛」と記入して良いということです。
しかしながら、印刷標準字体ではなく、簡易慣用字体でもない「涛」の字を印刷字体として使用するのは正しいとは言えませんので、多くの方が目にする印刷物などに使用する際には「涛」ではなく「濤」の字を使用するようにしましょう。
「濤」の字が難しいから、手書きの場合だけ例外的に簡単な略字でもいいよということなんだね。
漢字検定や個人的な文章ではね!公的な書類に名前を書く時は、略字じゃなくて正確に書くようにしてね。
注意点として、公的な機関に名前を書いて提出する場合は、略字ではなく戸籍どおりの漢字を記入することが求められます。
例えば、「松濤(まつなみ)さん」という方が公的な書類に「松涛」と略字で書いてしまった場合、本人確認の際に「戸籍と名前が一致しない」という点で別人扱いされてしまい、書類が通らないことが考えられます。
本人確認に関しては、とても厳しい時代だよね・・・。
怒涛の類語・言い換え表現
「怒涛」と同じような意味を持つ言葉である「類語」や「言い換えの言葉」としては、下記のような言葉が当てはまります。
勢いよく物事が進行する様子を表す言葉
- 畳み掛けるように(たたみかけるように)
- 矢継ぎ早に(やつぎばやに)
- 次々と(つぎつぎと)
- 休む間もなく(やすむまもなく)
- 息もつかせぬ(いきもつかせぬ)
- 目紛るしい(めまぐるしい)
- 激動(げきどう)
程度が激しい様子を表す言葉
- 激烈/劇烈(げきれつ)
- 強烈(きょうれつ)
- 凄まじい(すさまじい)
- 猛烈(もうれつ)
- 物凄い(ものすごい)
激しく大きい波を表す言葉
- 荒波(あらなみ)
- 波濤(はとう)
- 激浪(げきろう)
- 高波(たかなみ)
- 大波(おおなみ)
怒涛の英語表現
「怒涛」を英語にすると、次のように表現されています。
『raging billows』怒涛/荒れ狂う大波
『surging waves』怒涛/押し寄せる波
まとめ:怒涛は、怒濤の略字で、物事が激しい勢いで押し寄せる様子を意味する言葉
- 怒涛には、『荒れ狂うほどの大波』という意味があり、そこから転じて『物事が激しい勢いで押し寄せる様子のたとえ』として用いられている
- 怒濤は漢字が違うだけで怒涛と同じ意味を持つが、正字は「怒濤」で、「怒涛」は略字
- 怒濤は旧字ではないため、印刷字体として使用する場合は、「怒濤」の字を使うのが標準的だが、手書きの場合は「怒涛」と書いても間違いではない
- 怒涛の類語としては、「休む間もなく」や「凄まじい」、「荒波」といった言葉があてはまる
いかがでしたでしょうか。
怒涛は、 まるで怒ったかのように大きな波が打ち寄せるという意味で「怒涛」と表現されており、そこから『激しい勢いで押し寄せる様子のたとえ』としても用いられている言葉ということが分かりました。
ちなみに、水面の高低運動を表す「なみ」の漢字としては、『波』以外に
『浪』・『濤(涛)』・『瀾』といった漢字があります。
そして、漢字によって波のニュアンスが変わるようです。
まず、よく一般的に使用されている「波」は、言わば「色々な波の総称」で、どんな波に対しても使用されています。
「浪」は「波」と同様に扱われていますが、川の波に対して用いられることが多く、形の良い波という意味もあるようです。
また、「濤」はうねりが大きな波のこと、「瀾」は勢いのある横に広がった大きな波のことを表しています。
こんなに波の字があるとは面白いですね!ちなみに、「濤」は漢字検定準一級、「瀾」は漢字検定一級レベルの漢字になります。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。