皆さんは「重複」をどのように読んでいますか?
「じゅうふく」と読んで「違うよ」と言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「じゅうふく」という読み方は本当に間違いなのか疑問に思う方も多いようです。
そこで、この記事では、
- 重複の読み方
- 重複の意味
- 重複の言い換え表現
- 重複のような慣用読みをする言葉一覧
について解説・紹介していきます。
重複の読み方
重複の読み方は、
『ちょうふく』または『じゅうふく』です。
え・・・?
ぼくは「じゅうふく」は間違いと言われたよ。
間違いと言われたのは、本来は「ちょうふく」と読むのが正しいからじゃないかな?
現在「じゅうふく」は誤読から慣用読みとして認められている
重複は、本来「ちょうふく」と読むのが正しい読み方になります。
しかし、一般的に「重」という漢字は「じゅう」と読むことが多いことから、誤って「じゅうふく」と読んでしまう人が多かったと言われています。
そのため、重複を「じゅうふく」と読んでも間違いではないと認める流れとなり、現在では広辞苑などの辞書にも「じゅうふく」という読み方が※『慣用読み(かんようよみ)』として掲載されています。
※慣用読みとは、本来とは違う読み方が広く用いられるようになり、新しい読み方として定着した読み方のことです。
誤って「じゅうふく」と読む人が多かったのは近年に始まった話ではなく、第二次世界大戦(1939年~1945年)以前からだったようだよ。
平成15年度(2003年)に文化庁が行った「国語に関する世論調査」では、普段「ちょうふく」と読む人の割合が20.0%であったのに対し、「じゅうふく」と読む人は76.1%にも及び、「じゅうふく」と読む人の割合が多いことが明らかになりました。
※残りの3.9%は「どちらも同じくらいの割合で使用する」・「分からない」人です。
しかしその後は、ネットですぐに調べられる環境になったことが影響してかは分かりませんが、本来の読み方である「ちょうふく」と読む人の割合が増え、「じゅうふく」を上回ったと言われています。
現在は、「ちょうふく」と読む人が多いということだね。
ちなみに、『重』を「ちょう」と読む言葉は「じゅう」と読む言葉と比べると少ないですが、「尊重(そんちょう)」・「貴重(きちょう)」・「重畳(ちょうじょう)」といった言葉があります。
ビジネスの場では「ちょうふく」が無難
現在、重複の読み方は「じゅうふく」でも誤りではありませんが、ビジネスの場では『常識知らず』と思われることもあるため、「ちょうふく」と読むほうが無難なようです。
「じゅうふく」という読み方は、あくまでも『誤読だったものが容認されている読み方』ということを認識しておきましょう。
中には、誤読だったものが正しい読み方となり、本来の読み方が失われた言葉もたくさんありますが、「重複」の読み方はまだ意見が割れた状態にあります。
世代や地域によっては「じゅうふく」と習ったという方もいらっしゃるかもしれませんが、目上の方の多くは「じゅうふくは誤り」と学んだ世代が多いです。
ちなみに、NHKなどの放送用語でも、重複は『ちょうふく』と読むように推奨されています。
重複の意味
「重複」は、『同じ物事が2つ以上重なり合うこと』を意味しています。
「重なり合う」というのは、同じ物事がかぶったり、繰り返したりすることを意味しています。
また、生物学の分野では、『染色体の一部が余分に付着していること』を「重複」と言うこともあるようです。
重複の使い方【例文】
それでは、分かりやすく「重複」の使い方を【例文】で紹介します。
- 資料の3ページ目が重複しているから作り直しておいてくれ。
- 重複しますが、重要なことなので再度説明いたします。
- 先程、〇〇様宛にメールを送らせていただきましたが、パソコンの不具合により再送させていただきました。重複しておりましたら、大変申し訳ございません。
- 顧客データ重複のため、名寄せ作業を行った。
- 伝言を伝えるというのは、意味が重なった重複表現になる。
重複の言い換えは?類語を紹介
重複は、使い方の意味によって次のような言葉に言い換えることができます。
①同じ物事が再び起こることを表す言葉
- 繰り返し(くりかえし)
- リピート
- 反復(はんぷく)
②同じ物事が重なることを表す言葉
- 重出(じゅうしゅつ)
- ダブる
- 被る(かぶる)
「じゅうふく」のような「慣用読み」一覧
それでは最後に、誤読であった言葉が、広く定着して認められるようになった「慣用読み」がある言葉を一覧で紹介します。
【慣用読みがある言葉】 | 【本来の読み方】 | 【慣用読み】 |
荒らげる | あららげる | あらげる |
依存 | いそん | いぞん |
確執 | かくしゅう | かくしつ |
堪能 | かんのう | たんのう |
既存 | きそん | きぞん |
固執 | こしゅう | こしつ |
御用達 | ごようたし | ごようたつ・ごようだち |
睡眠 | すいめん | すいみん |
早急 | さっきゅう | そうきゅう |
惨敗 | さんぱい | ざんぱい |
施行 | しこう | せこう |
出生 | しゅっしょう | しゅっせい |
輸出 | しゅしゅつ | ゆしゅつ |
輸入 | しゅにゅう | ゆにゅう |
消耗 | しょうこう | しょうもう |
情緒 | じょうしょ | じょうちょ |
相殺 | そうさい | そうさつ |
貪欲 | たんよく | どんよく |
捏造 | でつぞう | ねつぞう |
貼付 | ちょうふ | てんぷ |
肉汁 | にくじゅう | にくじる |
発足 | はっそく | ほっそく |
他人事 | ひとごと | たにんごと |
漏洩 | ろうせつ | ろうえい |
世論 | よろん | せろん |
まとめ:重複の読み方は、「じゅうふく」でも間違いではない
- 重複の本来の読み方は「ちょうふく」であったが、慣用読みとして「じゅうふく」も認められている
- ビジネスの場では、「ちょうふく」と読むのが望ましい
- 平成15年に行われた文化庁の調査によると、「じゅうふく」と読む人の割合が7割を超えていたが、現在は「ちょうふく」と読む人のほうが多いと言われている
- 重複の言い換えとしては、「反復」・「重出」・「ダブる」などがある
いかがでしたでしょうか。
「じゅうふくは間違い」ではなく、慣用読みとして辞書にも載っている「認められた読み方」ということが分かりました。
慣用読みの一覧を見てみると、本来の読み方が完全に失われて慣用読みが一般化している言葉もあり、大変興味深いのではないでしょうか。
言葉は時代と共に様々変化してきたことから、よく「言葉は生き物」と言われますが、変化を認めながらも正しく日本語を使用していきたいものですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。