皆さんは「わびしい」という言葉をご存知でしょうか。
「わびしさを感じる」などと使われることが多い言葉ですが、「わびしい」の意味を説明するとなると難しいと感じる方も多いようです。
また、「わびしい」と「寂しい(さみしい)」の違いがよく分からないという方もいらっしゃるようなので、違いを解説していきたいと思います。
そこで、この記事では、
- 「わびしい」の意味とは
- 「わびしい」の使い方【例文】
- 「わびしい」と「寂しい(淋しい)」の違い
- 「わびしい」の類語・対義語
- 古文単語「わびし」とは
- 「わびしい」の英語表現
について解説・紹介していきます。
わびしいの意味とは
「わびしい」は漢字で書くと『侘しい』と書き、次のような意味があります。
②貧しくてあわれな様子
③心細い/もの悲しい気持ち
④苦しくてつらい気持ち
⑤思い通りにならず、気落ちする気持ち
⑥やりきれない/当惑してとまどう気持ち
⑦面白くない/つまらないと思う気持ち
このように、「わびしい」という言葉には様々な意味がありますが、
基本的には『気持ちが暗くなり、心が沈む状態』を表す言葉です。
「わびしい」にはたくさんの意味があるけど、良い意味では使われないんだね。
意味を見るとそうだね。でも、必ずしも悪い意味とは限らないよ。
「わびしい」は基本的にはマイナスの感情を表す一方、さびしい景色や簡素な物などに『趣や味わい深さ』を感じた場合にも「わびしい」と用いることがあり、この場合の「わびしい」にはプラスの感情が含まれています。
一般的にはこのプラスの感情を「わび」と言い、日本の代表的な美的概念の一つとされています。
「わび」については、下記の『わびさびの意味とは?』の記事で詳しく紹介していますので、よろしければご覧ください。
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わびしいの使い方【例文】
それでは、「わびしい」の使い方を、分かりやすく例文で紹介します。
【例文1】①非常に物静かでさびしい様子の「わびしい」
『暗くてわびしい自宅に帰ると、煩わしいと思っていた実家での生活を恋しく思うようになった。』
【例文2】②貧しくてあわれな様子の「わびしい」
『わびしい身なりをしているからといって、そのことをからかったり、いじめたりする人は、心が わびしい 人だ。』
【例文3】③心細い/もの悲しい気持ちの「わびしい」
『他県への転勤が決まった時はわびしい気持ちもあったが、いざ転勤してみると、第二のふるさとにしたいほど素晴らしい場所であった。』
【例文4】④苦しくてつらい気持ちの「わびしい」
『夢を抱きフランスへ留学してみたものの、わびしさが募るばかりで1年で夢を諦めてしまった。』
【例文5】⑤思い通りにならず、気落ちする気持ちの「わびしい」
『朝早くから並んでいたのにもかかわらず、お目当てのパンが購入できなかったので、とてもわびしくなった。』
【例文6】⑥やりきれない/当惑してとまどう気持ちの「わびしい」
『育児ノイローゼが原因で、育児放棄や虐待をしてしまう親が増えていることを聞くと、言いようのないわびしさが込み上げてくる。』
【例文7】⑦面白くない/つまらないと思う気持ちの「わびしい」
『マンネリ化したわびしい人生を脱却するためには、いくつになっても新しいことへの挑戦が不可欠だ。』
「わびしい」と「寂しい(淋しい)」の違いは?
「わびしい」に似た言葉で、「寂しい・淋しい」があるけど、違いはあるの?
うん!だけど、まずは「寂しい」と「淋しい」の使い分けも理解しておこう。
「わびしい」と似た言葉に、「寂しい」・「淋しい」という言葉がありますね。
「寂しい」・「淋しい」は、どちらも「さびしい」または「さみしい」と読むことができますが、この2つの言葉には、若干の違いがありますので、まずはこの2つの言葉の意味と使い分けから紹介します。
「寂しい」と「淋しい」の意味と使い分け
まず、放送用語や教科書など、公的な表現として用いる場合は、「寂しい(さびしい)」と読み書きするのが基本になります。
これは、「淋しい」という字は常用漢字として登録されておらず、「さみしい」という読み方も元々「さびしい」と読まれていたものが、次第に「さみしい」へと変化したものとなっており、正式な読み方とされていないからになります。
しかし、日常会話や私的な文書などでは、「淋しい」と書いたり、「さみしい」と読んだりすることができますので、漢字の使い分けを理解しておいたほうが良いでしょう。
「寂しい」と「淋しい」には下記のような意味があります。
【寂しいの意味】
・あるべき物が欠けていることで感じる
「物足りない感情」や「心細い感情」、「孤独感」
・「人の気配がなく、ひっそりとしている風景」
【淋しいの意味】
・涙を流すくらいの「心細さ」や「孤独感」
ポイント
「寂しい」と「淋しい」の使い分けのポイントとしては、
『涙を流すくらいのさびしさ(さみしさ)に対しては「淋しい」を用いる』ということです。
また、読み方はどちらの読み方をしてもかまいませんが、「さみしい」と読む場合には、風景よりも人の感情に対して用いることが多いようです。
それでは、「わびしい」と「寂しい・淋しい」の違いについて説明していきます。
「わびしい」と「寂しい(淋しい)」の違い
「わびしい」と「寂しい(淋しい)」の意味について紹介しましたが、「寂しい(淋しい)」という言葉には、「わびしい」の意味である
・①『非常に物静かでさびしい様子』
・③『心細い/もの悲しい気持ち』
は含まれていますが、
・②『貧しくてあわれな様子』
・④『苦しくてつらい気持ち』
・⑤『思い通りにならず、気落ちする気持ち』
・⑥『やりきれない/当惑してとまどう気持ち』
・⑦『面白くない/つまらないと思う気持ち』
などの意味は含まれていません。
また、満たされない気持ちから生じた心細さや悲しみを感じた場合には、「わびしい」よりも「寂しい・淋しい」と表現されることの方が多いようです。
加えて「寂しい」には、「口の物足りなさ」を表す言葉である「口寂しい」という使い方もされますが、「わびしい」には「何かが欠けていることで生じる物足りなさ」などを表す意味はないため、「口わびしい」といった使い方はしないのが特徴となります。
心細さを感じた時や、物哀しい風景に対しては、「わびしい」と「寂しい」のどちらを使っても良いのかな?
うん!どちらも使うことはできるけど、「わびしい」と「寂しい」の言葉の中にはそれぞれ次のような気持ちが込められていると言われているよ。
ポイント
「わびしい」という言葉には『期待が叶わず失望する気持ち』
「寂しい」という言葉には『必要なものが欠如している気持ち』
が根底にあると言われています。
わびしいの類語
「わびしい」には、下記のような類語があります。
【①非常に物静かでさびしい様子の類語】
「寂しい・薄寂しい・物寂しい・うら寂しい・ひっそり・蕭索(しょうさく)・ 寥寥(りょうりょう)・寂寥(せきりょう)・寂寞(せきばく)・閑散(かんさん)・悄然(しょうぜん)・蕭条(しょうじょう)」など
【②貧しくてあわれな様子の類語】
「みすぼらしい・憐(あわ)れ・しがない・惨(みじ)め・粗末・憫然(びんぜん)・うらぶれる・嘆(なげ)かわしい・不憫(ふびん)」など
【③心細い/もの悲しい気持ちの類語】
「寂しい・心寂しい・淋しい・孤独・煢然(けいぜん)・寂寥(せきりょう)・寂寞(せきばく)・物哀(ものがな)しい・湿っぽい・悄然(しょうぜん)・淅瀝(せきれき)」など
【④苦しくてつらい気持ちの類語】
「悲痛・沈痛・痛ましい」など
【⑤思い通りにならず、気落ちする気持ちの類語】
「気鬱(きうつ)・落胆・惨(みじ)め・気落ち・意気消沈・失望・がっかり」など
【⑥やりきれない/当惑してとまどう気持ちの類語】
「耐えられない・気持ちの収まりがつかない・せつない・たまらない」など
【⑦面白くない/つまらないと思う気持ちの類語】
「しがない・味気のない・面白みがない・退屈」など
わびしいの対義語(反対語)
「わびしい」という言葉には、たくさんの意味があることが分かりましたが、「わびしい」に直接対応する対義語はないようです。
しかし、それぞれの意味に対応する対義語は考えることができますので、対義語に近いといえる言葉をご紹介します。
【①非常に物静かでさびしい様子】の対義語は、
『明るく活気があり、にぎやかな様子』を表す言葉が当てはまります。
「活気・活発な・にぎやか・にぎわい」など
【②貧しくてあわれな様子】の対義語は、
『華やかで心惹かれる様子』を表す言葉が当てはまります。
「華やか・きらびやか・美美(びび)しい・派手やか・豪華・贅沢・絢爛(けんらん)・素晴らしい・素敵・見事」など
【③心細い/もの悲しい気持ち】の対義語は、
『心強い/喜ばしい気持ち』を表す言葉が当てはまります。
「安心感・落ち着く・安堵・心丈夫(こころじょうぶ)/嬉しい・歓喜・癒やし・満ち足りる・高揚感・晴れ晴れ・軽やか」など
【④苦しくてつらい気持ち】の対義語は、
『楽しく、幸せな気持ち』を表す言葉が当てはまります。
「楽しい・愉快・面白い・幸せ・幸福・満ち足りる・心地よい・安らぎ」など
【⑤思い通りにならず、気落ちする気持ち】の対義語は、
『思い通りに事が進み、気持ちがよくなること』を表す言葉が当てはまります。
「悦に入る・心にかなう・歓喜・得意・舞い上がる・有頂天・満悦・満足・愉悦(ゆえつ)」など
【⑥やりきれない/当惑してとまどう気持ち】の対義語は、
『心がすっきりとして晴れやかな気持ち』を表す言葉が当てはまります。
「清々しい・爽やか・喜ばしい・清らかな」など
【⑦面白くない/つまらないと思う気持ち】の対義語は、
『面白い/楽しいと思う気持ち』を表す言葉が当てはまります。
「愉快・心嬉しい・愉しい」など
古文単語の「わびし」の意味とは
古文の中には、「わびしき」や「わびしけれ」といった使い方(シク活用)をされる『わびし』という形容詞があります。
「わびし」は、現代でいう「わびしい」の『古語』であり、意味は同じになります。
わびしいを英語で表現すると
「わびしい」を英語で表現すると、直接対応する言葉はありませんが、意味によって次のように表現ができます。
【①非常に物静かでさびしい様子】
『quiet(静かな)』・『silent(静けさ)』
【②貧しくてあわれな様子】
『shabby(みすぼらしい)』・『tattered(ぼろぼろ)』・『pity(あわれ)』
【③心細い/もの悲しい気持ち】
『lonely(孤独)』・『lonesome(寂しい)』・『sad(悲しい)』・『melancholy(物哀しい)』
【④苦しくてつらい気持ち】
『 tough(精神的に辛い)』・『mentally tired(精神的に疲れている)』・『painful(悲痛な)』
【⑤思い通りにならず、気落ちする気持ち】
『discouragement(落胆)』・『disappoint(がっかり)』・『disappointment(気落ち・失望)』
【⑥やりきれない/当惑してとまどう気持ち】
『intolerable(耐えられない)』・『unbearable(我慢できない)』・『 be bewildered(当惑する)』
【⑦面白くない/つまらないと思う気持ち】
『uninteresting(面白くない)』・『boring(つまらない)』・『I’m bored(退屈だ)』
まとめ:わびしいは、気持ちが暗くなり心が沈む状態を表す言葉
- 「わびしい」には、「貧しくてあわれな様子」や「非常に物静かでさびしい様子」など、複数の意味がある
- 「わびしい」は、基本的には「心が暗くなる状態」を表す言葉だが、『趣』を表す良い意味で用いられることもある
- 満たされない気持ちからくる心細さや孤独感に対しては、「寂しい」が用いられることが多く、「わびしい」には「寂しい」にはある『満ち足りない気持ち』を表す意味はない
- 「わびしい」の古語は「わびし」で、意味は同じ
いかがでしたでしょうか。
「わびしい」という言葉には様々な意味があり、その言葉の根底には「期待が叶わず失望する気持ち」が含まれていることが分かりました。
「わびしい」にはたくさんの意味があるため、少々扱いにくい言葉かもしれませんが、「さみしい」ではなく「わびしい」という言葉を使うことで、なんとなく哀愁(あいしゅう)が漂い、暗い印象を相手にイメージさせることができます。
自分の気持をより正確に表現する言葉として覚えておくと良いですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。