皆さんは、「まほろば」という言葉を聞いたことはありますか?
この言葉は、物の名称として用いられることが多いのですが、意味や語源はご存じでしょうか。
また「まほろば」は、特定の場所を表す言葉とも言われているようです。
そこで、この記事では、
- 「まほろば」の意味や語源
- 「まほろば」が示す場所とは
- 「まほろば」の使い方
- 「まほろば」の類語
- 「まほろば」の英語表現
- 日本の「まほろばの湯」と言われる場所
について解説していきます。
「まほろば」の意味や語源とは
『まほろば』は、「まほらま」や「まほろ」と言われることもありますが、
『素晴らしい場所やすぐれた立派な場所、秀でた場所』を表す古語(こご)とされています。
古語とは、現在では一般に使われなくなった昔の古い言葉のことを言いますが、俳句の世界では、現在でも古語を使用した句が詠まれています。
まほろばの語源
「まほろば」は、「真秀(まほ)」という「物事が十分に整っている」ことを表す言葉に、場所を意味する接尾語の「ら」が付いた言葉である『まほら』が変化した言葉とされています。
場所を表す接尾語の「ら」は、「こちら」・「あちら」・「そちら」などにも用いられていますね。
ちなみに、「まほ」は、「完全なもの、真実なもの」を表す接頭語の「ま」と、「秀でたものや、高く突き抜けたもの」を意味する「ほ」が合わさって生まれた言葉となっています。
「まほろば」の漢字表記はある?
「まほろば」の元となった「まほら」という言葉は、奈良時代(710年~794年)以前に使用されていた言葉である「上代語(じょうだいご)」と言われ、使用されていた当時は文字の表記がまだ無かったそうです。
そのため漢字表記は定まってなく、
・麻保良(まほら)
・真保良(まほら)
・麻本呂婆(まほろば)
・摩倍邏摩(まほらま)
などと古典文学には様々な漢字が当てられ用いられていました。
その後、「まほ」という言葉に「真秀」という漢字が当てられたことから、「真秀ろば」が正しい表記のかもしれませんが、広辞苑の用語集には、ひらがな表記で記載されていますので、定められた漢字は無いということなのでしょう。
しかし一般には、ひらがな表記の他に
- 真秀場(まほろば)
- 真秀呂場(まほろば)
- 真秀等間(まほらま)
と書かれることもあるようです。
「まほろば」は、どこの場所を指していた?
712年に作られた日本最古の歴史書である『古事記』には、このような一節があります。
『倭(やまと)は国のまほろば たたなづく青垣(あおかき) 山籠(やまごも)れる倭(やまと)し麗(うるわ)し』
この和歌での「まほろば」は、「倭(大和)」にかかる「枕詞(まくらことば)」となっています。
※枕詞とは、ある決まった言葉とセットで使用される言葉のことで、「まほろば」と使用したら後には必ず「倭」が続くと決められている言葉のことを言います。
この和歌の意味は、
『大和は日本の中で最も素晴らしい場所だ。長く続く垣根のような青い山々に囲まれた大和は美しい』
となります。
「倭(大和)」というのは、現在の奈良県を表す言葉で、この歌は、倭健命(やまとのたけるのみこと)が亡くなる前に故郷を思って詠った「国偲(くにしの)びの歌」とされています。
しかしながら、ヤマト王権が日本全域を支配していた時代ということもあり、日本自体を「倭(大和)」と呼んでいたことから、「奈良県」だけではなく、「日本」を思い詠った歌ともされています。
倭健命にとっては、故郷である「奈良県」が「まほろば」となっていたのかもしれませんが、自然に囲まれた住みやすい現在の日本を思うと、「日本全体」のことを「まほろば」と言っても何もおかしくはありませんね。
「まほろば」の使い方【例文】
「まほろば」は古語とされてますが、現在では様々な名称に用いられています。
使い方としては、
- 「素晴らしい場所」
- 「住みやすい場所」
- 「優れた場所」
- 「美しい場所」
などの意味で使用します。
名称としては現在でも使用されていますが、会話などではあまり使用されることのない言葉かもしれません。
「まほろば」の例文
- まほろばの地と言われる絶景スポットがこの近くにあるそうだ。
- この介護施設は、快適な場所という意味で「まほろば」という名が付けられた。
- 駅・学校・スーパー・コンビニが近いこのマンションはまさに「まほろば」と言えるだろう。
「まほろば」の類語は?
「まほろば」は、良いとされる場所を表す言葉となっていますので、
・楽園
・理想郷
といった言葉が似ている言葉とされています。
しかしながら、「理想郷」といった言葉は『現実には決して存在しない理想の場所』を表す言葉となっています。
「まほろば」は、実際に存在する場所を表す言葉ですので、言い換えはできない言葉と言えるでしょう。
強いて挙げるとすれば、言い方が違う言葉である「まほろ」・「まほらま」となります。
「まほろば」を英語で表現すると
「まほろば」を「快適な場所」や「住みやすい場所」といった意味で使用する際には、「快適な場所、住みやすい場所」という言葉である「comfortable place」を使用します。
『This is a comfortable place to live in.』
(ここは住みやすい場所です。)
「美しい」と表現したい時には、「beautiful」を使用します。
『This is a place surrounded by beautiful nature.』
(ここは美しい自然に囲まれた場所です。)
では最後に、日本各地にある「まほろばの湯」と言われる場所を紹介します。
日本各地「まほろばの湯」の紹介
全国には「まほろばの湯」という温泉がいくつも存在しています。
そこでここでは、特に人気のある温泉施設3カ所をピックアップして紹介していきたいと思います。
宮城県のまほろばの湯
宮城県刈田郡蔵王町(みやぎけん/かったぐん/ざおうまち)にある源泉掛け流しの「まほろばの湯」は、日本最大級と言われる巨大な石風呂が有名な日帰り温泉施設となっています。
自然の石を利用している石風呂は、発汗作用があると言われており、透明感のある肌になると言われています。
また、マイナスイオンを発生させるナノミストサウナは、ドライサウナのような息苦しさを感じるサウナではなく、低温、高湿度の体に優しいサウナとされています。
ナノサイズのとても小さなミストが体に浸透し、美肌効果に効果絶大のようです。
施設内にはお食事処もあり、ゆっくりと満喫できる施設となっています。
栃木県のまほろばの湯
栃木県那須郡那珂川町(とちぎけん/なすぐん/なかがわまち)にある「まほろばの湯」は、『脳卒中の湯』と言われる硫酸塩・塩化物温泉となっています。
効能としては、高血圧・動脈硬化・外傷などに効果あり、飲用することで、糖尿病・肥満症・痛風・慢性婦人病などに効果があると言われています。
施設には、電気風呂・水風呂・ジェットバス・遠赤外線強化使用フィンランドサウナなども完備され、健康作りに適した温泉となっています。
大分県のまほろばの湯
大分県宇佐市(おおいたけん/うさし)にある「まほろば温泉」は、炭酸水素塩泉の源泉掛け流し温泉となっています。
効能としては、痙攣・炎症を抑える鎮静効果がある他、アレルギー疾患・慢性皮膚炎にも効果があるとされています。
また、飲用することで、痛風・尿路結石・膀胱炎・糖尿病・慢性胃腸障害などにも効果が期待できるようです。
温泉の特徴として、皮膚の分泌物を乳化させる作用があるため、皮膚洗浄に適した温泉とされていて、入浴後は皮膚表面からの水分の発散が活発になり、清涼感を感じるため「清涼の湯」とも言われているそうです。
まとめ:「まほろば」とは、素晴らしい場所や優れた場所を表す言葉
- 「まほろば」は、現在では一般に使用されない古語とされているが、名称や俳句の中では今でも用いられている
- 「まほろば」は、現在の奈良県のことを指していたが、日本自体を意味する言葉とも考えられている
- 「まほろば」の類語は「まほろ」・「まほらま」
いかがでしたでしょうか。
「まほろば」は古語となっていますが、現在でも素晴らしい場所を表す言葉として用いられていることが分かりました。
ちなみに「まほろば」は、美しく素晴らしい場所を表すだけでなく、そこに住む人々の心も讃えた言葉と言われています。
たとえどんなに良い環境であろうと、そこに住む人々が思いやりのない人や暴力的な人であったとしたら、そこは素晴らしい場所ではなくなってしまいます。
職場などでも同じことが言えるかもしれませんが、相手を思いやり、良い環境にしていこうとそれぞれが行動することで素晴らしい環境は作られていきます。
思いやりは我慢とは違いますので、自分の意志を抑える必要はありませんが、相手の立場になって考えるということはとても大切なことと言えるでしょう。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。