「あそこはヤブ(ヤブ医者)だからやめたほうがいいよ」と言われると、「え!!それならやめておこう・・・」と思ってしまいますよね・・・。
私も「ヤブ医者」と聞くと行きたくないと思ってしまいますが、「ヤブ医者」の「ヤブ」とは何なのか疑問に思ったことはありませんか?
また、もともとヤブ医者は「良い意味だった」と言われることもあるようで、由来が気になるところです。
そこで、この記事では、
- ヤブ医者の意味
- ヤブ医者の語源と由来
- ヤブ医者を「藪医者」と表記する理由
- ヤブ医者の使い方【例文】
- ヤブ医者の類語・対義語
- ヤブ医者の英語表現
について解説・紹介していきます。
ヤブ医者の意味
まず、ヤブ医者とは、
『適切な診察能力や治療能力が無いと判断される医者のこと』を言います。
ん~「ヤブ医者」の「ヤブ」ってどういう意味があるの?
ヤブ医者の「ヤブ」の語源については、いくつか説があるんだ。
ヤブ医者の語源と由来
ヤブ医者の「ヤブ」の語源ははっきりしておらず、諸説あると言われています。
①野巫(やぶ)が語源説
最も有力と考えられているのは、ヤブ医者の「ヤブ」は、「野巫(やぶ)」が由来という説です。
「野巫」とは、『まじないで治療を行っていた田舎の巫女や医者のこと』を言います。
野巫は、様々な治療を行うことはなく、呪術(じゅじゅつ)一つで治療を行っていたことから、
・「いい加減で役に立たない医者」
・「一つのことだけしかできない医者」
という意味で「野巫医者(やぶいしゃ)」と呼ばれるようになったと言われています。
医療の知識が広まった現在では、意味のないインチキな治療法に思えるけど、昔は「まじない」や「お祓い」による治療は普通のことだったんだよ。
「病は気から」という言葉があるように、精神的に救われて病気が治るということもあったかもしれないね。
②養父(やぶ)が語源説
2つ目の説としては、ヤブ医者の「ヤブ」は、「養父(やぶ)」が由来という説になります。
「養父」とは、兵庫県養父市のことで、江戸時代に養父の地に腕の良い医者がおり、「養父医者(やぶいしゃ)」と言えば『養父に住む名医のこと』であったそうです。
しかし、養父医者の門弟というだけで腕もないのに師匠の名前ばかり語る口先だけの医者が多く現れるようになったため、逆に「能力が無い医者」という意味で用いられるようになったと言われています。
この説が本当だとすると、昔は「ヤブ医者」は良い意味だったということになるね。
そうだね!ちなみに兵庫県養父市では、「ヤブ医者」の語源が「養父の名医だった」という説にちなんで、全国の僻地(へきち)で頑張っている若手のお医者さんを表彰する『やぶ医者大賞』という授賞式を平成26年(2014年)から実施しているよ。
しかし、こちらの説については、江戸時代(1603年~1868年)より前の書物である『沙石集(しゃせきしゅう)〈1283年成立〉』にすでに「藪薬師(やふくすし)」との記述があることから、語源ではないと考察されています。
※薬師は、医師の古称です。
ヤブ医者を「藪医者」と表記する理由
現在、ヤブ医者を漢字で書くと「藪医者」と書きます。
「藪(やぶ)」には、草・低木・竹などが生い茂っているところという意味があるよ。
今は「藪」の漢字があてられているのはなぜ?
「藪医者」と表記するなった理由も、いくつか説があるんだ。
「藪」の漢字となった理由としては、下記のような説があります。
- 【語源①】
『藪をつついて蛇を出す』ということわざには、「やらなくても良いことをして災いを受ける」という意味があることから、「余計なことをして事態を悪化させる」として「藪」の漢字が使用されるようになったという説 - 【語源②】
『似て非なるもの(似ているけれど全く違うもの)』に「藪」の字を頭につけて呼んていたからという説 - 【語源③】
能力のない医者であっても、風邪が流行った時には患者がたくさん訪れることから、「風邪で医者が忙しくなる=風で藪が動く」という説 - 【語源④】
藪は茂っていて視界が悪い=見通しがきかない医者という説 - 【語源⑤】
診療時間外であっても、患者のために藪の中に入って薬草を集めては薬を調合していた医者がいたことから、『熱心な医者』という意味で藪医者と言われるようになったという説
良い意味で藪の漢字になったという説もあるんだね。
ヤブ医者の使い方【例文】
それでは、「ヤブ医者」の使い方を例文で紹介します。
- 【例文1】
近くの病院はヤブ医者がいることで有名だが、なぜか通う患者が後を絶たない。 - 【例文2】
ヤブ医者とは言え、ただのかぜ薬をもらうくらいなら問題ないだろう。 - 【例文3】
新しい病院へ変わったところ、母の容態はみるみる回復したため、やはり前の病院はヤブ医者だったのだろう。
ヤブ医者の同義語・類語
藪医者の同義語としては、『庸医(ようい)』という言葉があります。
「庸医」とは、治療がヘタな医者のことです。
また、類語としては、藪医者よりも劣っている医者を表す下記のような言葉もあります。
- 【筍医者(たけのこいしゃ)】
竹のように茂ることさえできないとして、藪医者よりも未熟で劣っている医者のことを言います。 - 【土手医者(どていしゃ)】
土手の向こう側は全く見えないことから、全く見通しがきかない医者のことを言います。 - 【雀医者(すずめいしゃ)】
竹藪は雀のねぐらになっていることが多く、藪に向かうことが多いことから、いずれ藪医者くらいになろうという医者のことを言います。 - 【紐医者(ひもいしゃ)】
紐が首にかかるということで、命があぶなくなるような医者のことを言います。
落語(らくご)では、ほかにも様々な医者が登場するようだよ。
ヤブ医者の対義語
ヤブ医者の対義語は、『名医(めいい)』・『良医(りょうい)』です。
「名医」とは、名前が世間に知れ渡っているほど、医術にすぐれた医者のことを言います。
一方、「良医」も医術にすぐれた医者のことを言いますが、名前が世間に広まっていなくても信頼できる医者ならば「良医」となります。
ヤブ医者の英語表現
ヤブ医者を英語にすると、次のように表現されています。
『a quack (doctor)』
(偽医者・下手な医者)
『a useless doctor』
(役に立たない医者)
まとめ:ヤブ医者の語源は、野巫が由来という説が有力
- 野巫は、まじないで治療を行っていた田舎の巫女や医者のこと
- ヤブ医者は「能力が無い医者」という悪い意味で用いられているが、養父市の説ではかつては「名医」という良い意味を持っていたと言われている
- ヤブ医者の同義語は「庸医」、対義語は「名医」・「良医」
いかがでしたでしょうか。
ヤブ医者の語源は本来は良い意味だったという説があるものの、まじないで治療を行っていた田舎の医者から『役に立たない医者』という意味で「野巫医者」と言われるようになったという説が有力とされていることが分かりました。
ちなみに、「藪医者の玄関(やぶいしゃのげんかん)」ということわざをご存知でしょうか。
能力の無いヤブ医者ほど玄関を立派にして患者を信用させようとすることから、『外見ばかり立派にして実質が伴っていない』ことを「藪医者の玄関」と言うのだそうです。
私は形から入るタイプなので、なんとも言えませんが、人を騙したり、信頼を裏切るような人間だけにはなりたくないものですね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。