皆さんは毎日お米を食べていますか?
炊きたてのお米は絶品で、何杯でも食べたくなってしまいますよね。
そんな時に活躍してくれるものが「しゃもじ」です。
私達がご飯をよそう時、当たり前のように手にする「しゃもじ」ですが、なぜしゃもじと呼ばれているのかご存じでしょうか。
そこで、この記事では、
- 「しゃもじ」とは
- 「しゃもじ」の由来と語源
- 「しゃくし」と「しゃもじ」の違い
- 宮島と「しゃもじ」の関係
について解説・紹介していきます。
しゃもじ(杓文字)とは
一般に、しゃもじ(杓文字)とは、ご飯をすくったり、混ぜたりするもので、先端が丸くなっているヘラ状の道具のことを言いますよね。
しかし、室町時代の文献には、「しゃもじ(杓文字)」ではなく「しゃくし(杓子)」と記述がしてあり、「しゃもじ」とは呼ばれていなかったようです。
では、いつから「しゃもじ」と呼ばれるようになったのでしょうか。
しゃもじ(杓文字)の名前の由来と語源とは
「しゃもじ」と呼ばれ始めた由来としては、室町時代の初期に宮中に仕えていた「女房(にょうぼう)」と呼ばれる身分の高い女性の使用人達が関係しています。
その女房達は、彼女達の間だけで通じる「女房詞(にょうぼうことば)」とよばれる専門用語を使用していて、ある時、言葉の一部を「もじ」という言葉に置き換える女房詞が流行したそうです。
この「もじ(文字)」という言葉は接尾語の「文字詞(もじことば)」というものになり、これを付けることで、上品な言葉遣いになるとされ、主に衣・食・住に関するものに用いられていました。
そのため、「しゃくし(杓子)」の「くし」が「もじ」に置き換えられ、「しゃもじ」と呼ばれるようになったと言われています。
他にも、接頭語の「お」のように、言葉の最初に付けることで丁寧さを表す言葉なども女房詞から由来しています。現在でも用いられる言葉であり、「おにぎり」や「おでん」・「おなら」などもこれから由来しています。
「もじ」の他の例としては、「ゆもじ」(浴衣(ゆかた))・「おめもじ」(お目にかかる)・「すもじ」(寿司)・「ひもじい」(ひだるい)などがあります。
この「文字詞」はその後、将軍家に仕える女性に伝わり、次第に武家や町家の女性へ伝わって様々な人に使われるようになったとされています。
しゃくし(杓子)としゃもじ(杓文字)の違いとは
しゃもじ(杓文字)は、しゃくし(杓子)が文字詞で「しゃもじ」となった言葉ですが、そもそもの「しゃくし」の意味は、ご飯や、汁などをすくう道具となっています。
しかし現在では、しゃもじには汁をすくう用途はありません。
これは当時、お米をすくうものを主に「飯杓子(めしじゃくし)」と言っていたことに由来していて、時代の変化とともに、汁をすくう物を「お玉杓子(おたまじゃくし)」、お米をすくうものを「しゃもじ」と言うようになったとされています。
宮島(厳島)としゃもじの関係とは
広島県甘日市(はつかいち)市(し)宮島町にある厳島(いつくしま)は、西日本の広島湾に浮かぶ小さな島になります。
海に浮かぶ大鳥居で有名な厳島神社があり、日本三景の一つとして日本屈指の観光地として知られている場所でもありますが、「しゃくし(杓子)の発祥の地」としても有名です。
宮島のしゃもじの起源とは
宮島で「しゃもじ」が作られるようになったのは、一人の僧侶の提案が由来となって作られたと言われています。
1800年頃の江戸時代、宮島の神泉寺(しんせんじ)というお寺に「誓真(せいしん)」という僧侶(そうりょ)がいたそうです。
誓真はある夜、弁財天の夢を見て、その手に持つ琵琶の曲線美から「しゃくし(杓子)」を思いつきました。
主な産業が無かった宮島に「厳島弁財天」の持っている琵琶(びわ)と形を似せて、御山(みやま)の神木で「しゃくし」を作り、それを宮島参拝のお土産として作るように提案したことが始まりとされています。
その後、この「宮島杓子(みやじましゃくし)」は、「弁財天の福を招く」と反響を呼び、1894年~1905年の日清戦争や、日露戦争の時代には「敵を召し取る」縁起物として広まっていくこととなりました。
宮島杓子の御利益とは
「宮島杓子」は伝統技法と工夫により、お米が付きにくく、木の匂いもご飯に移らないと言われています。
また、熱によって変形もしない杓子として高く評価されており、「木製しゃもじ」としては日本一の生産量を誇っています。
しゃもじの「ご飯をすくいとる」というところから、「福をすくいとる」や、「飯とる」から「召し取る」とも言われており、『勝負運』や『商運』に良いとされています。
また、弁財天は学問・豊穣・繁栄・勝負事の女神となっていますので、さまざまな「幸せをめしとる」縁起物として大変人気があるようです。
まとめ:しゃもじ(杓文字)は女房詞から由来している
- 元々「しゃくし(杓子)」と呼ばれていたものが女房詞で変化し、「しゃもじ」と言われるようになった
- しゃくしとは、ご飯や汁などをすくう道具とされている
- しゃくしには、ご飯をすくう飯杓子(しゃもじ)と汁物をすくうお玉杓子がある
- 宮島では弁財天の琵琶が由来となり、杓子発祥の地とされている
いかがでしたでしょうか。
「杓子(しゃくし)」は古くから使われ、縄文時代の遺跡からも発掘されているそうです。
現在ではプラスチックなどで作られ、ぽつぽつした突起が付いているものが一般的ですよね。
中には、しゃもじにデジタルの計測器がついていてカロリー計算をしてくれるものまで登場しています。
これからも新しい素材のものが登場していくと思いますが、昔ながらの木のしゃもじは熱に強く、土鍋で炊くお米に使っても溶けたりする心配がないので、用途によって使い分けてみてはいかがでしょうか。
ここまでご覧頂き、ありがとうございました。