皆さんは、「三隣亡」という日をご存じでしょうか。
若い方は「聞いたことがない」ということが多いかもしれませんが、「三隣亡」について知らなかったがために、思わぬトラブルに発展したという方もいらっしゃるようです。
そこで、この記事では、
- 「三隣亡」の意味や由来
- 「三隣亡」の日にしてはいけないこと
- 「三隣亡」はいつ?
- 2023年(令和5年)の三隣亡一覧カレンダー
- 「年間三隣亡・隠れ三隣亡」とは
- 「三隣亡」と「大安」が重なる日はどうなる?
について解説・紹介していきたいと思います。
三隣亡(さんりんぼう)の意味とは?
「三隣亡(さんりんぼう)」とは、※選日(せんじつ)の1つで、『建築関係の大凶日』とされている日のことを言います。
「三隣亡」の日に建築をすると、『火難を受け、近隣三軒先まで滅ぼす』と言われ、不吉な日として避けられてきました。
※選日(撰日)というのは、その日の吉凶を占ったものの1つで、昔の暦には「六曜」や「九星」といった様々な吉凶を表す言葉が書いてありました。
また、選日は「雑注(ざっちゅう)」とも言います。
選日については、下記の『天赦日・一粒万倍日とは?』の記事でも紹介していますので、あわせてご覧下さい。
【2022年】天赦日と一粒万倍日はいつ?それぞれの意味についても解説
皆さんは宝くじ売り場で、「天赦日」や「一粒万倍日」と書かれたのぼり旗を見かけたことはありませんか? 「大安(たいあん)」 ...
続きを見る
三隣亡の由来とは
「三隣亡」の由来は、実ははっきりと分かってはいません。
「三隣亡」の始まりについては、江戸時代の書物から「三隣亡」についての記載がされていることから、江戸時代に確立したのではないかと考えられています。
しかしながら江戸時代の書物には、現在とは異なる「三輪宝」という字で書かれてあり、
「屋立てよし」・「蔵立てよし」と注記されていたそうです。
どういうことかというと、江戸時代には『家や蔵を建設するのに良い日』と言われ、吉日とされていたのです。
では、なぜ現在では大凶日になってしまったのかというと、いつの頃か暦を作る編集者が、「よし」と書くところを「あし」と書き間違え、「屋立てあし」・「蔵立てあし」というものが広く伝わってしまったという説が言われています。
しかしながら、この説も推測でしかなく、定かではありません。
その後、誤った意味での「三輪宝」が明治時代に流行し、「三輪宝」という字ではそぐわないとして「三隣亡」という字に改められたと考えられています。
良いことよりも、悪いことのほうが広まりやすいということだね。
三隣亡にしてはいけないこととは?入籍や引越し等は避けるべき?
「三隣亡」の由来から、「吉日と考えるのが本当では?」と思う方も多いと思いますが、一般に「大凶日」と考えられてきた時代がありますので、風習に沿って解説していきたいと思います。
また、風習が色濃く残っている地域などでは「三隣亡の日にしてはいけないこと」をすることで、『思わぬトラブルに発展した』という方もいらっしゃいますので、知識として知っておいたほうが良さそうです。
「三隣亡」にしてはいけないと言われているのは、『建物に関すること』となっています。
『建物に関すること』とは、次のようなことが挙げられます。
- 地鎮祭(じちんさい)
- 土起こし(基礎工事)
- 柱建て
- 棟上げ(むねあげ)
- 上棟式(じょうとうしき)または建前(たてまえ)
- 高いところに登る
- 結婚式・入籍
- 引っ越し
建築関係
建築に関すること(主に柱建て)は、避けるべきとされています。
家を建てる際には、「地鎮祭」を行った後、「基礎工事」へと進み、「柱建て」、「棟上げ」となります。
地鎮祭
「地鎮祭」とは、土地の守護神に土地を利用することの許しを得るために行う儀式のことで、一般には、工事の無事を祈る儀式のことを言います。
柱建て前の土台設置に関しては、三隣亡にしてはいけないという風習はありませんので判断が難しいですが、建物に関するお祝い事や、主要な工事において避けるべきと考えられているようです。
棟上げ
「棟上げ」というのは、柱や梁(はり)などの骨組みが完成した後、最後に屋根を支える木材「棟木(むなぎ)」を取り付けることを言います。
現在では、骨組みから棟木を取り付けるところまでの工程を指す言葉として使われることが一般的となっているようです。
また、「棟上げ」時には、棟上げまでの完成を祝い「上棟式(建前)」が行われますが、こちらも「三隣亡」の日には避けるべきこととされています。
上棟式(建前)
「上棟式」とは、工事が順調に行われていることに感謝し、無事に建物が完成することを祈る儀式のことを言います。
現在でも建築関係の方は、近隣に配慮して「三隣亡の日には工事を行わない」という所が多いそうです。
ちなみに、土地の契約や引き渡しなどに関しては特に避ける風習はありませんが、建築に関係するところから避ける方もいらっしゃるようです。
しかしながら「三隣亡」自体、信憑性の低い迷信、ましてや「吉日」とされていた過去がありますので、第三者が日付を知る由(よし)もない『契約』などは気にする必要はないでしょう。
高いところに登る
「三隣亡」の日には、「高いところに登る」ことも良くないこととされています。
「大工さんのように高いところに登ると不運が訪れる」と言われ、暦にもそのように記載されているものがあるようです。
結婚式・入籍
建築関係と無関係のようですが、「結婚式」や「入籍」といったことも避けた方が良いとされています。
これは、「家庭を築く」・「一家の大黒柱となる」という考えからそのように言われるようになったそうです。
親戚や家族の中には「三隣亡の日に結婚式を挙げるなんて非常識だ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんので、結婚式を挙げられる方はできれば「三隣亡」は避けたほうが無難かもしれません。
引っ越し
「引っ越し」も、「三隣亡」には行わない方が良いと言われています。
「建築するわけではないから関係ないのでは?」と思われるかもしれませんが、「家」に関係することなので、避けるべきことと考えられているようです。
『三軒先まで滅ぼす』という迷信ですので、「あなた達が三隣亡に引っ越ししてきたせいで…」と責任転嫁されないためにも「三隣亡」は避けた方が無難と言えるでしょう。
また、新潟県や群馬県の一部では、『三隣亡の日にお土産をもらうと没落し、贈った人は繁栄する』という言い伝えがあるそうなので、引っ越しの挨拶などでお土産を渡す際は注意して下さい。
三隣亡はいつ?
「三隣亡」は毎月2~4回訪れる日となっています。
そして、「三隣亡」となる日は、次のように定められています。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
亥の日 | 寅の日 | 午の日 | 亥の日 | 寅の日 | 午の日 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
亥の日 | 寅の日 | 午の日 | 亥の日 | 寅の日 | 午の日 |
亥の日・寅の日・午の日というのは、十二支が割り当てられた日のことです。
【2023年】(令和5年)三隣亡一覧カレンダー
2023年(令和5年)の三隣亡は次のとおりです。
1月 | 12(木)・24(火) |
2月 | 10(金)・22(水) |
3月 | 9(木)・21(火) |
4月 | 2(日)・6(木)・18(火)・30(日) |
5月 | 17(水)・29(月) |
6月 | 13(火)・25(日) |
7月 | 11(火)・23(日) |
8月 | 4(金)・9(水)・21(月) |
9月 | 2(土)・17(日)・29(金) |
10月 | 15(日)・27(金) |
11月 | 13(月)・25(土) |
12月 | 10(日)・22(金) |
年間三隣亡(隠れ三隣亡)とは?
実は山形県には、「年間三隣亡」または「隠れ三隣亡」と呼ばれる年があり、
『年間を通して「三隣亡」となる』という風習があります。
「年間三隣亡」は、『寅年(とらどし)・午年(うまどし)・亥年(いのししどし)』の『立春(2月4日頃)~翌年の立春の前日(2月3日頃)まで』が一年中三隣亡となるというものです。
これは、庄内地方の修験者か大工が言い始めた話が広まったのではないかと考えられており、最初は庄内地方だけの話だったものが、山形県全域において言われるようになったとされています。
この「年間三隣亡」に関しては、「誰かが言い始めた嘘が広まった話」であり、全く信じる必要はありませんが、山形県では実際に住宅を建てる人が極端に少なくなる年となってしまうそうです。
山形県の人が近隣の人を思い配慮した結果、建てることを避けたことが要因かな・・・。
三隣亡と大安が重なる日はどうなる?
「大安(たいあん)」と呼ばれる日をご存じでしょうか。
一般的に「大安」は有名なので、聞いたことがないという方のほうが少ないかもしれませんね。
「大安」は、『六曜(ろくよう)』と呼ばれるものの1つで、その日の吉凶を占うものを言います。
六曜の中でも、「大安」は最も良い吉日とされ、『何事においても良い日』と言われています。
結婚式や自動車の納車日、建物の着工日、引き渡し日に「大安」を選ぶという方も多いそうです。
では、もし「大安」と「三隣亡」が重なってしまった場合はどうなるのでしょう。
この場合は、上記で説明した「三隣亡の日にしてはいけないこと」以外は特に影響がないとされています。
つまり、大安であったとしても「三隣亡」を打ち消すことはできないと考えられているということです。
ちなみに、三隣亡と大安が重なる日は次のようになっています。
【2023年】三隣亡と大安が重なる日
- 4月6日(木)
- 4月18日(火)
- 7月23日(日)
- 8月4日(金)
「三隣亡」は自分は何も気にしていなくても、自分以外の人に悪影響があるとされるのが厄介なところです。
恐ろしいことに、「三隣亡」に上棟式を行った方が訴えられ、裁判で敗訴して家を建て壊さなければならなくなったという事例があるそうです。
もちろん、訴えた側が敗訴という場合もあるようですが、このような裁判沙汰になってしまうと時間・労力・近所付き合い、全てが最悪になってしまいます。
『建設関係のことを行う場合は、「三隣亡」を避ける』ことが無難と言えますので、「大安」だからといって安心というわけではなさそうです。
まとめ:「三隣亡」は建築関係の大凶日とされている
- 「三隣亡」に建築をすると、『火難を受け、近隣三軒先まで滅ぼす』と言われている
- 元々「三隣亡」は、江戸時代には「三輪宝」と書かれ、吉日とされていた
- 「三隣亡」の由来は不明で、信憑性の低い迷信となっている
- 「三隣亡」にしてはいけないことは、「建築関係・婚姻関係・高いところに登る・引っ越し」とされている
- 山形県には「年間三隣亡」・「隠れ三隣亡」と呼ばれる風習が独自に存在する
- 「三隣亡」と「大安」が重なる場合、「三隣亡にしてはいけないこと」以外には影響を及ぼさないが、「大安」に「三隣亡」を打ち消す力はない
いかがでしたでしょうか。
「三隣亡」は建築に関することを避けるべき日とされていますが、元をたどると「吉日」という困った風習だということが分かりました。
実際に建築に関する日が「三隣亡」だと分かり、縁起の悪いことが起こるのではないかと不安になったという方もいらっしゃるようですが、由来が不明かつ手違いで「凶日」となったと言われる「三隣亡」を気にする必要は全くないと思います。
しかしながら、「三隣亡」を信じている方とのトラブルと避ける目的では気にする必要があると言えるでしょう。
ちなみに、現在メジャーとなっている「六曜」も、旧暦では毎年同じ月、同じ日に同じ六曜を配置しただけの単純なものであったため、見向きもされていないものだったそうです。
それが明治時代になり、他の吉凶占いが廃止される中、単純な配列であった「六曜」は禁止されず、生き残ったとされています。
加えて、旧暦に基づいて新暦に反映される「六曜」は、新暦ではランダム性があるように見えたことで、信憑性のある吉凶占いとして人々の間で流行することとなったそうです。
このように、メジャーとなっている「六曜」でさえ信憑性のない迷信とされていますので、「三隣亡」や「六曜」などに囚われすぎないというのが一番大切なことだと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。