皆さんは「三寒四温」という言葉を聞いたことがありますか?
ニュースなどでも使われる言葉ですが、「三寒四温」の由来や使う時期を、正しく理解しているという人は少ないのではないでしょうか。
そこで、この記事では、
- 三寒四温の意味や由来
- 三寒四温となるのはなぜ?
- 三寒四温を用いた俳句の紹介
- 三寒四温の使い方
- 三寒四温の類語や対義語
- 三寒四温と花冷えの違い
- 三寒四温の英語表現
について解説・紹介していきます。
三寒四温の意味や由来とは
「三寒四温(さんかんしおん)」とは、
『冬の時期に寒い日が3日くらい続いたあと、暖かい日が4日ほど続くという現象が生じ、寒い日と暖かい日が7日周期で繰り返される気象現象』のことを言います。
また、『寒い日と暖かい日を繰り返しながら、次第に暖かくなる(春になる)』という意味で使われることもあります。
元々「三寒四温」という言葉は、中国北東部で使われていた「ことわざ」が由来となっており、それが日本に伝わったことで用いられるようになったとされています。
三寒四温となるのはなぜ?
そもそもなぜ「三寒四温」という現象が起こるのかというと、冬になるとシベリア高気圧が発達し、シベリア高気圧から吹き出す寒気が7日間くらいの周期で強まったり、弱まったりすることが要因とされています。
「三寒四温」は、主に中国北東部や朝鮮半島で典型的にみられる現象とされており、日本ではシベリア高気圧の他、太平洋高気圧の影響も受けているため、三寒四温とはなりにくく、冬に一度あるかないかの現象となっているようです。
では、なぜ「三寒四温」という言葉が日本で定着したのかというと、日本ではちょうど春先に「三寒四温」のような寒暖を繰り返す気候となることが理由となっています。
日本では早春(立春2月4日~3月上旬頃)になると、偏西風の影響で移動性高気圧と低気圧が西から東へと交互に通過するようになり、「三寒四温」のような気候となるのです。
そのため、本来「三寒四温」は冬に用いられる言葉ですが、日本では春先に用いられる事が多い言葉となっています。
三寒四温は春の季語?
「三寒四温」は日本では春先に用いられることが多いと説明しましたが、手紙などで使用する場合は、『冬の季語』として用いられています。
そのため、時候の挨拶(あいさつ)として使用する場合は、1月~2月に使用するのが正しい使い方となります。
※時候(じこう)とは、その時の季節を表す気候のことを言います。
しかしながら実際には、3月や4月頃まで「三寒四温」のような気候となることが多く、ニュースなどでは3月頃まで「三寒四温」という言葉が用いられることが一般的です。
そのため、気候に合わせて3月・4月頃まで「三寒四温」を時候として用いるということもあるようですが、本来「三寒四温」は冬の季語とされていますので、4月に「三寒四温」を用いるというのは避けた方が良いでしょう。
三寒四温は秋にも用いられる?
実は春と同じように、秋(10月~11月上旬頃)にも移動性高気圧と低気圧が交互に通過することにより、「三寒四温」のような気候となることがあります。
そのため、秋にも「三寒四温」という言葉が用いられることがあるようです。
しかしながら、本来「三寒四温」は冬の季語であり、『寒暖を繰り返し、次第に暖かくなっていく』という意味があることから、これから冬に向かっていく秋に用いることは誤った使い方となります。
秋から冬へと変わる様子を表す言葉
秋から冬へと移り変わる言葉としては、「露往霜来(ろおうそうらい)」や「一雨一度(ひとあめいちど)」という言葉があります。
露往霜来(ろおうそうらい)
「露往霜来」は、『時が過ぎるのが早い』という喩えで用いられますが、「露が降りる秋が過ぎ去り、霜の降りる冬の季節が訪れる」という意味があります。
一雨一度(ひとあめいちど)
「一雨一度」は、『秋が深まっていく様子』を表す言葉で、「秋になると雨が降るたびに気温が1℃低くなる」という意味があります。
春と秋には移動性高気圧と低気圧の影響で、雨が降りやすくなるという特徴があるそうです。
秋の気温変化は、低気圧がやってくると南からの暖かい空気を運んでくるため比較的暖かくなりますが、低気圧が去った後は北からの冷たい寒気が流れ込み、気温が下がります。
その後、高気圧に覆われると晴れの日が続きますが、高気圧は下降気流のため雲が出来にくく、それにより夜の放射冷却が強まることで翌朝は厳しく冷え込むことになります。
このような低気圧と高気圧の通過を繰り返すことによって、次第に気温が下がっていき、冬となるのです。
三寒四温を用いた俳句紹介
「三寒四温」は、俳句でも『冬の季語』として用いられていますので、いくつか「三寒四温」の入った句を紹介したいと思います。
また「三寒四温」は、冬の季節とされる「三冬」※(立冬・大雪・小雪)の全てに属する季語となっています。
※立冬(11月7日頃~12月6日頃まで)・大雪(12月7日頃~1月4日頃まで)・小雪(1月5日頃~2月3日頃まで)
- 七曜をつなぐ三寒四温もて
(鈴木栄子) - 三寒の四温を待てる机かな
(石川桂郎) - 三寒の四温を濁る頭かな
(山田みづえ) - 砂場の子遠く見守る四温の目
(高澤良一) - 三寒の木にひつかかる四温かな
(松澤昭)
三寒四温の使い方や、例文の紹介
では、「三寒四温」の使い方について説明していきます。
「三寒四温」は、言葉で使用するよりも、手紙で使用することが一般的です。
「三寒四温」を手紙で用いる場合、冒頭の「時候の挨拶」や、「結びの挨拶」として使用することができます。
時候の挨拶として使用する場合
手紙の冒頭の挨拶として「三寒四温」を用いる場合は、次のような時候の挨拶があります。
例文
- 三寒四温の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 三寒四温の季節となりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
- 三寒四温のみぎり、まだまだ寒い日が続きますがお元気にされていますか。
- 三寒四温の折、お障りなくお過ごしでしょうか。
- 三寒四温となり、次第に春の訪れを感じられる季節となって参りました。
例文の「~の候」・「~のみぎり」・「~の折」という言葉は、『~の季節』という意味を持っている言葉で、全て言い換えが可能な言葉となっています。
結びの挨拶として使用する場合
「三寒四温」は、結びの挨拶としても使用されています。
しかしながら、冒頭で「三寒四温」をすでに使用している場合には、結びには「三寒四温」を用いることのないようにしましょう。
例文
- 三寒四温の折柄、どうぞ体調を崩せれませんようご自愛ください。
- 三寒四温の季節、寒い日がまだ続きますので、どうぞお体に気を付けてお過ごし下さいませ。
- 三寒四温の時節柄、どうぞご自愛にて、今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます。
- 三寒四温の候ではございますが、皆様のご健康をお祈り致しております。
三寒四温の類語には、どういうものがある?
「三寒四温」以外で、「寒い日と暑い日を交互に繰り返す」という意味を持つ類語はありませんが、春へと向かう様子を表す言葉は他にもあります。
冬から春へと変わる様子を表す言葉
冬から春へと移り変わる言葉としては、「一陽来復(いちようらいふく)」や「春寒料峭(しゅんかんりょうしょう)」という言葉があります。
一陽来復(いちようらいふく)
「一陽来復」は、『冬が終わり、春が来ること』を意味する言葉となっています。
「一陽」には、「冬から春へと変わる兆し」という意味があり、「来復」には、「再びかえってくる」という意味があります。
このことから、「陰暦11月(冬至)になると春が始まる」という意味で用いられるようになったそうです。
また、「一陽来復」は、『冬至』や『悪いことが続いた後に、幸運が巡ってくる』という意味でも用いられています。
春寒料峭(しゅんかんりょうしょう)
「春寒料峭」は、『春になった後、再び冬の寒さが戻ってきて、肌寒く感じられるさま』を表す言葉となっています。
「春寒」には、「春が訪れ、一度暖かくなった後に戻ってきた寒さ」という意味があり、「料峭」には、「厳しいものが肌に触れる」という意味があります。
ここでの「春になる」とは、「立春(2月4日頃)」になることを意味しています。
また、「春寒料峭」の類義語には「余寒」があり、こちらも「立春」後、まだ残っている寒さに対して用いる言葉となっています。
ちなみに「料峭(りょうしょう)」という言葉は、俳句の世界では「春の季語」として用いられるそうです。
三寒四温と花冷えの違いとは
「花冷え」という言葉をご存じでしょうか。
「花冷え」も先程紹介した「春寒料峭(しゅんかんりょうしょう)」と似ている言葉で、『桜が咲く頃に、寒さが戻ること』を意味する言葉となっています。
「花冷え」は、主に春が到来した『春分(3月21日頃)~清明(4月5日頃)』に用いられる言葉ですので、立春となった頃に用いられる「春寒料峭」とは使用する時期が若干異なります。
一方、「花冷え」が起こる原因としては、「三寒四温」となる理由と同じですが、「寒暖を繰り返して次第に暖かくなる」という意味の「三寒四温」と、「桜が花開く季節(春)に冬の寒さが戻る」という「花冷え」では意味が全く違います。
花冷えについては、下記の『花冷えとは?』の記事でくわしく解説していますので、よろしければご覧ください。
花冷えの意味とは?使い方や俳句季語、英語表現について詳しく解説
桜の咲く季節になると、ニュースなどで「花冷え」という言葉を耳にしたことはありませんか? 「花冷え」と聞くと、寒いイメージ ...
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「寒の戻り」とは
また、「寒の戻り」という言葉も「花冷え」と同様に『暖かくなった頃に再び冬の寒さが戻ってくる』という意味で用いられます。
しかし、こちらは『晩春(4月5日頃~5月4日頃)』に一時的に寒くなることを言います。
ここで少しこんがらがってきましたので、以上のことをまとめると次のようになります。
「一時的な寒さの戻り」を表す言葉の一覧
言 葉 | 季 節 | 意 味 |
余寒 | 立春(2月4日頃)~2月下旬まで | 春になった後、まだ残っている寒さ |
春寒料峭 | 立春(2月4日頃)~3月下旬まで | 春になった後、再び冬の寒さが戻ってきて、肌寒く感じられるさま |
花冷え | 春分(3月21日頃)~清明(4月5日頃)まで | 桜が咲く頃に、一時的に寒さが戻ること |
寒の戻り | 晩春(清明4月5日頃~立夏前日の5月4日頃)まで | 晩春の頃に、一時的に寒さが戻ること |
このように、時期によって「一時的な寒さの戻り」を表す言葉がいくつもあります。
以上であげた言葉は、時候の挨拶や結びの挨拶としても用いることができますので、時期に合わせて使い分けられると良いですね。
三寒四温と逆の意味を持つ四字熟語は存在する?
「三寒四温」と反対の意味を持つ対義語は、存在していません。
「三寒四温」は、「冬の季節に寒暖を繰り返しながら春となっていく」という言葉ですので、逆と考えると、「夏の季節に寒暖を繰り返しながら秋となっていく」や「春の季節に寒暖を繰り返しながら冬となっていく」と考えることができます。
前者の方は、実際にそのような言葉があってもおかしくなさそうですが、寒暖を繰り返しながらという意味の言葉は「三寒四温」しかありませんので、言い換えができない言葉となっています。
ちなみに、夏から秋へと移り変わる様子を由来としたものでは、「秋風索莫(漠)(しゅうふうさくばく)」という言葉があります。
「秋風索莫」は、「夏が過ぎ、秋風が吹く季節になると物寂しくなる」という意味から、『盛んだった物事の勢いが衰えて、侘しくなるさま』を表す言葉として用いられるようになったそうです。
また、後者の「春から冬に移り変わる」というのは、実際に起こりえない現象ですので、そのような言葉はありませんが、「寒さの一時的な戻り」とするならば、先程紹介した「春寒料峭」が挙げられます。
三寒四温を英語で表現すると
「三寒四温」という言葉は、英語圏では存在していないため、直訳できる言葉は存在していません。
そのため英語にすると、次のような表現となります。
『a cycle of three cold days followed by four warm ones』
(寒い日が3日間続き、暖かい日が4日間続くサイクル)
こちらの表現は、「三寒四温」という言葉を英語で表現したものですので、「三寒四温」を知らない方に説明する場合には、
『This cycle is a sign of the arrival of spring.』
(このサイクルは春の到来を告げるサインです)
といった説明も必要かもしれません。
まとめ:三寒四温は冬の季節に起こる周期的な寒暖の変化を表す言葉
- 「三寒四温」とは、冬の季節に寒い日が3日続いた後、暖かい日が4日続くという現象が繰り返されること
- 「三寒四温」は元々中国北東部の言葉が由来となっている
- 「三寒四温」は、寒暖を繰り返しながらだんだん暖かくなるという意味でも用いられる
- 「三寒四温」は冬の季語で、時候の挨拶として用いる場合は1月~2月に用いるのが正しい使い方とされている
- 「三寒四温」の類語や対義語は存在しない
いかがでしたでしょうか。「三寒四温」は冬の言葉とされ、本来は春先に用いる言葉ではないということが分かりました。
しかしながら、「三寒四温」を実際に時候として用いる場合には、2月~3月といった春先に用いる方が季節に沿っていて自然に感じます。
また、実際の気候は暖冬で、寒さをあまり感じないという時に、「三寒四温」という言葉を時候の挨拶として使用するのは、相手に違和感を与えることになるかもしれません。
冬に用いる言葉とされていたとしても、年によって気候はさまざま変わりますので、正しく言葉の意味を理解した上で季節の言葉選びを行っていきたいものです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。