皆さんは神社へ参拝に行かれた時に、「お神酒(おみき)」をいただいたことはありますか?
お正月や、神社で行われる祭礼の際に振る舞われたり、配られたりするお酒のことなのですが、お神酒とはどういう意味があるのか分からずに飲んでいたという人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、この記事では、
- 「お神酒」の意味
- 「お神酒」の神棚でのお供え方法
- 「お神酒」はいつ飲む?
- 「お神酒」の処分方法
- 神社での「お神酒」の飲み方
について解説・紹介していきます。
お神酒の意味とは?
お神酒(おみき)とは、『神様にお供えするお酒』のことで、神饌(しんせん)にはかかせない物となっています。
神饌(しんせん)とは
神饌(しんせん)とは、日本古来からの祭礼において神社や神棚にお供えする食事のことを言っていて、お供えする物としてはお米を初めとして、お酒・お餅・魚・野菜・果物・塩・水などの食べ物をお供えします。
この中でもお酒は特に重要なものとされていたようです。
日本神話では、お米は神様から伝えられたとされ、お米には「稲魂(いなだま)」という御神霊(ごしんれい)が宿るとされていて、そのお米で作るお酒は最高のご馳走とされていました。
また、神様に食事をお供えしてから、そのお供えしたものを私達が頂くという行為のことを「神人共食(しんじんきょうしょく)」と言います。
神人共食とは、神様への畏敬(いけい)の念から、神様に神酒とお供え物をして神様のご加護を願い、そのお供えしたものを食べることで神様と一体となり、『神様の力(守護)が得られる』と考えられていたことから行われるようになったと言われています。
加えて一説によると、お供えする前のお酒を御神酒(ごしんしゅ)、神様にお供えし、神霊が宿ったお酒のことを御神酒(おみき)と、同じ漢字でも読み方が変わると言われているようです。
お神酒の種類とは
では、一般にお神酒に用いられるお酒とはどのようなものがあるのでしょうか。
私達日本人にとってお米は、神様からの恵みであり、その一粒一粒に神様が宿ると言われています。そのお米で作るお酒と言えば『日本酒』ですよね。
お酒は神様にとって最上級のお供え物と言われていて、お神酒としては主に「白酒(しろき)」・「黒酒(くろき)」・「清酒(せいしゅ)」・「濁酒(どぶろく)」の4種類の日本酒をお供えするのが正式となっているようです。
しかし、現在4種類のお酒をお供えしているのは、伊勢神宮・出雲大社・皇室・一部の神社となっていて、一般には「清酒(せいしゅ)」がお供えされているようです。
また、家庭の神棚にお供えする場合には、特に決まりは無いようなので、ビールやウイスキー、ワインなども良しとされています。
お神酒のお供え方法とは?
皆さんのご家庭には「神棚(かみだな)」を備えていますか?
神棚は、江戸時代初期に伊勢神宮への信仰を進めるために神宮大麻(じんぐうたいま)と呼ばれる御神札(おふだ)が配られ、その安置場所として各家庭に作られたのが始まりとされています。
そんな神棚ですが、お供え物を祀(まつ)る際にはやはり決まり事があり、適当に置いて良いものではないようです。
神棚には神具という祀るための道具があり、主な神具としては、「神鏡」・「榊立」・「徳利」または「瓶子」・「水玉」・「皿」などがあります。
それぞれの意味としては次のようになっています。
神鏡(しんきょう)
神鏡(しんきょう)とは、神様の依代(よりしろ)となる鏡のことを言います。鏡は光を反射して輝くため、太陽を象徴しているものとなっており、太陽の神様である天照大神(アマテラスオオミカミ)のご神体とも言われています。
また、鏡に自分の姿が映ることで、清らかな心であるかどうかを振り返らせる役割もあるそうです。
榊立(さかきたて)
榊立(さかきたて)とは、榊(さかき)を立ててお供えするもので、榊とはツバキ科の常緑樹のことを言います。植物や、先のとがっているものに神様が降りてくるとされていたため、葉っぱの先がとがっている植物の榊をお供えすることで、榊を介して神様と交流できると考えられていたようです。
榊は毎月1日と15日に取り替えるものとされています。
しかし、枯れそうな時は枯れる前に取り替えるのが良く、水はすぐに悪くなってしまうので、毎日替えるようにして下さい。
最近では造花で作られているものもあり、造花を使用する際には1年に1度、新年に取り替えるものとされています。
徳利(とっくり)または瓶子(へいし・へいじ)
徳利(とっくり)とは蓋付きのお神酒を入れる器のことで、瓶子より口が大きく安価なものとなっているようです。
神様がお飲みできるようにお供えをする時は、蓋を取ってからお供えします。
お神酒は毎月1日と15日にお供えし、お供えした夕方頃に取り替えると良いとされています。
水玉(みずたま)
水玉(みずたま)は水器(みずき)とも言われていて、蓋付きの丸い器で、お水を入れてお供えするものになります。
これは、神様がお飲みになるものになるため、お供えをする時は、蓋をとってからお供えします。
毎朝新しいお水をお供えをして、夕方頃にお下げするものとされています。
皿(かわらけ)
皿(かわらけ)は、お米や、塩を入れてお供えするものになります。
お米は洗米する必要はなく、そのままお皿に盛ってお供えをし、お塩は天然塩を盛ってお供えします。
お米や塩も神様のお食事としてお供えするものになりますので、毎朝新しいものにして、夕方頃にお下げするものとされています。
上記の神具は最低限必要とされているものになり、他にも「真榊(まさかき)」と呼ばれる神様の領域を表すものであったり、「火立(ひたて)」や「かがり火(び)」と呼ばれる明かりを灯すものも存在しています。
神様へのお供え物は、「お米」・「塩」・「水」が基本です。
お神酒は1日と15日に神社で行われる『月次祭(つきなみさい)』と言われる神事や、お正月、家庭での特別な日に合わせてお供えをします。
月次祭(つきなみさい)とは、『神様に感謝をして、また次のご加護を祈る祭典』のことで、この祭典が終わると、直会(なおらい)と呼ばれる「神饌(しんせん)」(神様にお供えした食事)を参加者一同でいただく行事になっています。
では、本題の祀り方(並べ方)ですが、並べる順番もあるので注意して下さいね。
お供え物の祀り方
お供え物は、神様に重要とされるものから置いていきます。
- まず最初に置くものとしては「お米」になります。
お米を皿に盛り、中央に配置します。 - 2番目は「お神酒」になります。
お神酒の入った徳利をお米の両隣に配置します。
※徳利は通常2本が1対となっていますが、1本しかない場合はお米の左隣に配置すると良いようです。 - 【3】3番目は「お塩」になります。
お塩を盛った皿をお米から見て右側のお神酒の右側に配置します。
※徳利が1本しかない場合は、お塩はお米のすぐ右隣になります。 - そして、最後は「お水」になります。
お水を入れた水玉をお米から見て左側のお神酒の左に配置します。
また、八足台(はっそくだい)や三方(さんぽう)と呼ばれる供え物を乗せる台がある場合は、お米とお神酒を神前に近い方(奥側)に設置し、手前にお塩とお水を設置します。
三宝の向きは、穴が開いていない方を神棚に向けて設置して下さいね。
もし台の上に乗らない場合は、お米とお塩とお水を台に乗せ、お神酒はその両側に配置します。
ちなみに、榊(さかき)にはとくに決まった祀り方はないようなので、お米等を配置した一番最後に神棚の両端に置いた方が転倒防止のためにも良いかもしれません。
上記の置き方は一般的なお供えの位置になりますが、地域などによって若干変わってくる場合もあるようです。
また、神鏡は必ず設置しないといけないものではなく、神鏡がない神棚も存在しています。
神鏡は神様の依代(よりしろ)となるものですが、御神札(おふだ)がご神体となっているので、神鏡は装飾の意味合いが強いものとなっているようです。
お神酒はいつ飲む?
通常神棚にお供えしたお神酒や水などのお供え物は、神様の力が宿ったものと考えられ、「撤下神饌(てっかしんせん)」(神様にお供えしたお下がり)として頂くことで、『神様の力を分けていただく』という意味があります。
では、神社に参拝し、ご祈祷を受けた後に頂くお神酒や、神棚に祀った後のお供え物(撤下神饌)はいついただいたら良いのか見ていきましょう。
神社で頂いたお神酒はいつ飲む?
神社で頂いたお神酒は神様にお供えした後のものになるので、いつ飲んでも良いとされており、参拝をして祈願された人だけではなく、家族などで一緒に飲むのが良いと言われています。
また、頂いてすぐ飲むことに抵抗のある方もいると思いますが、一度お下がりしたお神酒を再び神棚にお供えするというのは失礼にあたり、良くないと言われていますので控えたほうが良さそうです。
ちなみに、お神酒は頂いた日が一番強い力を持つと言われるため、できれば『頂いたその日に飲むのが良い』とされています。
神棚にお供えしたお神酒はいつ飲む?
では、家庭の神棚に祀った後のお供え物はいつ飲むのかですが、お参り後にお下げした神饌はいついただいても良いとされています。
また、このようにしないといけないという決まりなどは無いようです。
また、お神酒は1日と15日にお供えすることになっていますが、下げるのはその日の夕方頃で良いとされています。
お神酒を処分するには
神棚にお供えしたお神酒などの神饌は、本来であれば神様の力が宿ったものとなりますので口にしたいところですが、そうできない場合もありますよね。
そのような時は、他にも処理の仕方がありますので参考にしてみて下さい。
お神酒の活用方法
お神酒は、そのまま飲んだり、料理として使用した方が良いとされていますが、口に入れることに抵抗のある方や、飲めない方はお清めとして使用すると良いと言われています。
お風呂に入れたり、家の周りやお庭に撒くと良いようです。
お米の活用方法
お米は生米の場合だと傷むことはないので安心ですが、洗米したお米の場合はすぐに使わないと傷んでしまうので注意が必要です。
基本は朝にお供えして夕方頃にお下げすることとなっていますが、お供えして神棚にお参りした後であればいつお下げしても問題はないため、炊いたお米や洗米の場合はすぐに頂いてしまうというのが良いようです。
お塩の活用方法
お塩もお供え後は料理として使ったり、お清めとして使うことができます。
お風呂に入れても良いですし、家の周りや、庭に撒くと良いようです。
どうしても使用しきれない場合は、流しに流したり、榊を捨てる際のお清めとして取っておいたりするというのも一つの方法です。
お水の活用方法
お水は口にするのは抵抗があると思いますので、お清めとして使用したり、植物に使用すると良いですね。
正式には毎日お供えし、夕方にお下げするとされていますが、生活スタイルの変化により毎日取り替えるのが大変という方もいらっしゃると思います。
そのような場合には、必ず毎日交換しなくても大丈夫なようです。
神様は常に神棚にいらっしゃるわけではなく、願った時に現れるとされていますので、もし替え忘れてしまったとしても罰が当ったりはしないので安心して下さいね。
しかしながら、放置しずぎてしまうのはやはり失礼に当りますので、最低月に2回、1日と15日の月次祭(つきなみさい)の日には交換するようにした方が良いとされています。
神社でのお神酒の飲み方は?
神社で行われる祭礼の後には、直会(なおらい)と言われる神様にお供えした食事を皆でいただくという儀式が行われます。
これは神様の力が宿ったとされる神饌を口にすることで、神様の力を分けていただくという大事な儀式になります。
この儀式ではお神酒を皆でいただくのですが、やはり飲む際には決まった作法があります。皆さんにはぜひ正しい知識で直会に参加して下さいね。
それではお神酒の頂き方を説明していきます!
お神酒の飲み方
- まず初めに、神職の方がお神酒を注ぎに来られるのを待ちます。
神職の方が自分のところに来られたら、手を一度叩き、礼手(らいしゅ)を行います。
※礼手とは、神様に感謝の心をもって手を一度叩くことを言います。 - 次に、盃(さかずき)を手にするのですが、両手で盃を持ち、親指は盃のふちに乗せ、他の4本の指で盃を下から支えるような持ち方をします。
この状態を維持したまま、あまり盃を動かさないようにして神職の方にお神酒を注いでいただきます。 - お神酒を注いでいただいたら、3回に分けてお神酒を飲み、飲み終わったら右手の人差し指、中指、親指の3本の指で飲み口を拭き取るようにします。
- 最後に盃をそっと台の上に置いて終わりとなります。
飲み方の注意点としては、次の2点です。
・盃を台に置いたまま(盃を持たずに)注いでもらわない
・合図もなしに勝手に飲み初めてしまわない
通常は神主の方の合図があり頂くことが多いようなので、すぐに飲み始めてしまうということはせず、勧められるまで待ったほうが良いようです。
また、お酒が飲めない人、運転する人は、軽く口をつけて飲むフリをするだけでも神様の力を頂けるとされていますので、ぜひ参加して下さいね。
まとめ:お神酒とは、神様にお供えした後の神様の力が宿ったお酒のこと
- お神酒は神様にとって最高のご馳走である
- 神棚の祀り方には祀る順番と配置の仕方がある
- 家庭でのお神酒は何のお酒でも良い
- 神社でお土産として頂いたお神酒は、その日のうちに飲むのが良い
- お神酒を処分する場合は、お清めとして使用するのが良い
- 祭礼の時に頂くお神酒の飲み方には正式な作法がある
いかがでしたでしょうか。
現在神棚が家に無いという人も多く、神様との接し方が分からない人も多いと思います。
しかし、神社などで結婚式や、何かしらの祭礼に参加する際には、最低限の知識があった方が心持ちが変わり、より違ったものになるはずです。
ぜひ、神社でお神酒をいただく際には今回の作法をマスターし、神様の力が宿ったお神酒を味わって下さいね。
ここまでご覧頂きありがとうございました。