皆さんは背中が痒くなった時に上手くかけず、イライラした経験はないでしょうか。
そんな時に活躍してくれるものと言えば、「孫の手」ですね!孫の手があれば誰かに背中を掻いてもらわずに済むので、とても助かるアイテムです。
しかし、なぜ「孫の手」と言うのでしょう。
「お爺さんの背中を孫が掻いているイメージ」や、「小さな手に見えることから孫の手と言うのでは?」と思われている方が多いと思いますが、実はまったく「孫」とは関係が無いようです。
そこで、この記事では、
- 「孫の手」の由来
- 「麻姑掻痒(まこそうよう)」とは?
- 「麻姑掻痒」の類語
- 「孫の手」の英語表現
- おすすめな「孫の手」
について解説・紹介しています。
孫の手の由来とは
「孫の手」は中国の西晋時代の書『神仙伝(しんせんでん)』のお話に登場する「麻姑(まこ)」という仙女(せんにょ)にちなんで名付けられたと言われています。
当時「孫の手」は、「麻姑(まこ)の手」と呼ばれていたようで、「麻姑」が変化し『孫』という言葉が使われるようになったそうです。
神仙伝とは
『神仙伝』とは、不老不死で、神通力(じんつうりき)を持つと言われる仙人の『伝記集』となっています。
そこに登場する「麻姑」という仙女は、歳は18、19の若く美しい娘で、鳥のように長い爪をしていると書かれています。
また、「麻姑 」という仙女は、女性の長寿の象徴にもなっているそうです。
それでは、「麻姑の手」の由来になったお話を見ていきましょう。
「神仙伝 麻姑」
この話は、桓帝(かんてい)という皇帝が漢を治めていた時代の話になります。
仙人の王遠が、弟子である蔡経の家に降臨した時のこと、使者を送って妹の麻姑を呼び寄せました。
蔡経の家に麻姑が訪れると、葬経の家族は揃って麻姑を迎え入れました。
彼女は19歳くらいの年頃に見え、とても美人でした。頭のてっぺんにはマゲを結っており、残りの髪の毛はさらりと腰の辺りまで垂らしています。
着物は、錦の着物に、鮮やかな模様が入っており、それを身につけて輝いて見える姿は皆が目を奪われてしまうほどで、とてもこの世のものとは思えないほどでした。
また、彼女の爪は鳥の爪のように長かったので、蔡経は爪を見て「背中が痒い時に彼女の爪で掻いてもらったらどんなに気持ちが良いだろう」とひそかに思っていました。
すると、その思いを察した兄の王遠はすぐに蔡経を捕らえると、「恐れ多くも、麻姑は神人であるぞ。お前のような者がなんということを考えているのか」と激怒しました。
蔡経は、その時背中を鞭で打たれたのですが、鞭で叩く人の姿は見えませんでした。・・・
というお話になります。この話が由来となり、手が届かないところを掻く道具を「麻姑の手」と呼ぶようになったと言われています。
その後「まごのて」と呼ばれるようになったのですが、江戸時代中期に出版された『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』という百科事典には、「爪枝(まごのて)」と載っており、呼び名は「まごのて」ではあっても、字は「孫の手」ではなかったようです。
いつから「爪枝」から「孫の手」に変わったのかは定かではありませんが、「孫の手」のほうが優しさが感じられて良いですよね。
「麻姑」のお話を紹介しましたが、この話が元になり、「麻姑掻痒(まこそうよう)」という四字熟語も生まれています。
麻姑掻痒(まこそうよう)とは?
「麻姑掻痒」には、『物事が思い通りになること』や、『細かい要望に対し、満足する結果で応えることができる』という意味があります。
ちなみに、逆の意味で使われる四字熟語では『隔靴掻痒(かくかそうよう)』という言葉があります。
「隔靴掻痒」は、靴の上から足を掻くように、核心に触れることができずに歯痒く思う様子を表す言葉となっています。
また、「麻姑掻痒」の他にも、思い通りになるといった「如意」という言葉もあるようです。
如意(にょい)とは
あまり聞き慣れない言葉になりますが、「如意(にょい)」という道具をご存じでしょうか。
「如意」というのは、仏教において住職がお経を唱える際や、説法を行う際に手に持つ道具のことで、平安時代に貴族が持っていた笏(しゃく)のように権威や、威儀を正す(身なりを正して作法にあった立ち居振る舞いをする)ものとされています。
しかし、元々はインドで背中を掻く道具として使われていたものが原型とされていて、『意の如(ごと)く痒いところに届く』という意味から「如意」と呼ばれるようになったと言われています。
このことから、「如意」には「思いのまま」という意味があるのですが、もしかしたら「西遊記」を知っている方は、ピンときたかもしれませんね。
主人公の孫悟空が持っている「如意棒(にょいぼう)」も伸縮自在で思いのまま操れることからこの名が付けられています。
ちなみに、「如意棒」は正式には「如意金箍棒(にょいきんこぼう)」と言うのだそうです。
孫の手は英語圏で何という?
背中を掻きたいというのは世界共通なようで、世界各国で孫の手のような道具が存在しているようです。
英語圏での「孫の手」は下記のような言葉が使われています。
- Back scratcher
- scratch-back
日本では竹や木で作られたものが多いですが、17~18世紀のヨーロッパでは、象牙で作られたものや、銀などの貴金属による装飾がされているものなどが貴族の間で使われていたようです。
しかし、アジア圏以外の国ではあまり孫の手を見かけることはないようなので、日本のお土産として「孫の手」は喜ばれるようですよ。
おすすめの「孫の手」をご紹介
「孫の手」と言えば、ゴルフボールが付いていて、肩叩きもできるといったものが有名ですが、最近では便利な「孫の手」がたくさん登場しています。
いくつか紹介していきますので、ぜひ参考にしてみて下さいね。
コンパクトに携帯できる孫の手
このタイプの孫の手は、伸縮できるものになっているので、15㎝~50㎝までの長さの調節が可能となっています。
また、クリップが付いているので、胸ポケットなどに引っ掛けておけるのも便利で、スーツを着ている時に背中が痒くなっても安心です。
良質な竹で作られた味わい深い孫の手
こちらの孫の手は職人が一つ一つ手仕事で仕上げた孫の手となっています。
長さは43㎝と調度よく、使用するほど味わい深い艶が出てくる特徴があります。
肌当たりが優しく作られているので、安心して使用することができる孫の手となっています。
還暦のプレゼントに最適な孫の手
こちらは天然木で作られた高級感のある孫の手になります。
色は優しい赤茶となっていて、色合いがとても上品なので、還暦のお祝いにぴったりな孫の手となっています。
また、文字も入れることができるので、名前を入れて贈ると特別感が出て、より一層喜んでもらえるのではないでしょうか。
まとめ:孫の手は「麻姑(まこ)の手」が変化し「孫の手」と呼ばれるようになった
- 「麻姑」は中国の『神仙伝』の話の中に出てくる若くて美しい仙女
- 麻姑の手の爪は鳥の爪のように長く、背中を掻いてもらいたいと思わせるほどで、それが由来し「麻姑の手」と呼ばれるようになった
- 「物事が思い通りになること」という意味の「麻姑掻痒」という言葉も生まれた
- 「如意」は本来背中を掻くための道具として使われていた
いかがでしたでしょうか。
「孫の手」が元は「麻姑」という仙女の手だったとは思いも寄りませんでしたね。
鳥の爪のように長いというと、その鋭さから血まで出てきてしまいそうで恐ろしく感じてしまいますが…。
今回「孫の手」をいくつか紹介させていただきましたが、ここに挙げた以外にもたくさんの種類の孫の手がありますので、ぜひ、自分に合った孫の手を探してみて下さいね。
ここまでご覧頂き、ありがとうございました。