皆さんは「割烹」とは、どういうものかご存じでしょうか?
少し贅沢がしたくなり、高級な日本料理を頂こうと調べてみると、「割烹」や「料亭」といった言葉が出てくるけど、はっきりと違いが分からないという人が多いのではないでしょうか。
そこで、ぜひ日本人として知っておきたい「割烹」と「料亭」の違いや、「懐石料理」と「会席料理」の違いについても解説していきたいと思います。
この記事では、
- 割烹の意味
- 割烹の歴史
- 割烹と料亭の違い
- 精進料理・本膳料理・懐石料理・会席料理の違い
について解説・紹介しています。
割烹(かっぽう)の意味とは?
「割烹(かっぽう)」とは、肉を割(さ)き、烹(に)るという意味から、
『日本料理の調理法や、調理自体を表す言葉』となっています。
肉を割(さ)くとは、包丁で切ること、烹(に)るとは、火を使う調理法を意味していて、「割烹による日本料理を提供するお店」のことを「割烹店」と言います。
しかし、現在では、主に日本料理を提供するお店自体を「割烹」と呼ぶ事の方が多くなっているようです。
では、割烹という言葉はいつから使われるようになったのでしょう。
割烹の歴史や由来とは
割烹という言葉は元々、中国で生まれた言葉になります。
調理や料理方法を表す言葉として日本でも使用されていましたが、江戸時代に入り、江戸で生まれた料理を、「江戸料理」と呼ぶのに対し、京都や大阪を始めとする上方(かみがた・かみかた)の料理を「割烹」と呼んでいたそうです。
当時、上方とは、天皇の御所(ごしょ)がある方角のことを言っていました。
このことから、江戸時代後期になってからは、主に高級料理に対し「割烹」と呼ぶようになったと言われています。
割烹店の始まり
割烹のお店が初めて登場したのは、1927年(昭和2年)のことで、京都市祇園にある「京ぎをん 浜作」という割烹店が最初と言われています。
お店は、カウンター席のみになっており、お客の目の前で料理を作り、出来たての料理を提供する形式になっています。
この、板前が目の前で調理し、お客の要望に応じて高級な和食を直接提供するというスタイルが明治時代後期に大阪で流行し、割烹店が知られることとなりました。
それまでのお座敷に上がって食べる宴席料理とは違い、気軽に椅子に腰掛けて美味しい料理が食べられることから、昭和初期に大阪で大流行し、全国に広がったと言われています。
ちなみに、割烹の最初のお店と言われる「京ぎをん 浜作」は現在でも営業されていて、老舗の板前割烹京料理店となっています。
「割烹・料亭」それぞれの違いとは
高級な日本料理を提供してくれるお店として、「割烹」とは別に「料亭」と言われるお店もありますよね。
どちらも高級な日本料理が食べられるお店として、あまり違いがないように思いますが、実はこの「割烹」と「料亭」は違う形式のお店となっています。
では、「割烹」と「料亭」の違いについて説明していきます。
「割烹」とは
『割烹』のお店とは、『カウンター形式で日本料理を提供してくれるお店』を言います。
店内は、カウンターやテーブル席となっており、調理場と客席が同じ場所にあるという特徴があります。
基本的には、接客係はおらず、直接板前が注文を受ける形となります。
割烹では、コース料理よりも一品料理や、その日のおすすめを提供してくれ、お客の要望に応じてくれることが多いようです。
しかし、あくまでも「高級料理」を提供してくれるお店となっていますので、居酒屋で注文するようなメニューとは違うものとなっています。
また、割烹のお店では芸者さんを呼んで接待するということはなく、純粋に食事を楽しむ場所となっています。
「料亭」とは
『料亭』のお店とは、『個室のお座敷で高級な日本料理を提供してくれるお店』を言います。
調理場と客席は別の場所となっていて、料理は、会席料理などのとても贅沢で豪華なコース料理となっています。
特徴として、美術品や日本庭園がある料亭が多いため、冠婚葬祭や接待などで使われることが多いようです。
また、接客は仲居と呼ばれる専門スタッフが担当し、芸者や、コンパニオンを呼んで食事と一緒に楽しむことができる場所となっています。
ちなみに料亭は「風営法の規制」を受けているので、料亭を営む際には都道府県公安委員会の許可を得る必要があり、営業時間の制限や、18歳未満の立ち入り禁止といった規制を受けています。
精進料理・本膳料理・懐石料理・会席料理の違いとは
よく、「懐石料理」や「会席料理」といった日本料理を耳にすることがありますが、その違いをご存じでしょうか?
これらの料理の違いは、日本料理の歴史と共に変化し、出来上がってきたものになります。
日本料理の歴史
今では様々な調理法のある日本料理ですが、平安時代の頃は、蒸す・焼く・煮るなどのシンプルな料理法のみだったとされています。
その後、貴族の中で食事の作法が確立され、日本独特の食事作法が生まれました。
鎌倉時代に入ると、中国から『精進料理(しょうじんりょうり)』が伝わったことで料理法が大きく変化していくこととなります。
精進料理(しょうじんりょうり)とは
「精進料理」は、仏教の思想を基本とした料理で、『肉は使わず、植物性の素材を使った料理』のことを言います。
特に、大豆を使った豆腐などの料理や、出汁の登場が大きかったようです。
そして、室町時代になると、「食事をとる」ということに儀式的な要素を持たせた『本膳料理』が登場します。
本膳料理(ほんぜんりょうり)とは
「本膳料理」とは、武家の礼法を元に作られた儀礼食(儀式のための食事)と言われています。
簡単に説明すると『武家によるお客をもてなす料理』のことです。
武家のおもてなしでは、酒礼(しゅれい)・饗膳(きょうぜん)・酒宴(しゅえん)の三部から構成された饗宴(きょうえん)が開かれ、本膳・二の膳・三の膳・与の膳・五の膳と料理が提供されていました。
このお膳には、一汁三菜を基本に、何品もの料理が並べられていたようです。
また、饗宴が大規模なものになると、七の膳まで料理が出ることもあったと言われています。
「本膳料理」はその後の日本料理の基本となるものになりましたが、礼儀作法の厳しさもあり、明治時代頃から廃れていき、現在ではほとんど残っていないと言われています。
懐石料理(かいせきりょうり)とは
安土桃山時代に入り、千利休によって「茶の湯」文化が大成されると、それに伴い「茶懐石(ちゃかいせき)」と呼ばれる『お茶を楽しむための食事』が生まれました。
これが、今の「懐石料理」となっています。
「茶懐石」は、お茶の席で空腹だと濃茶を美味しく頂けないことから生まれた食事で、茶会の席でお茶の前に提供される食事のことを言います。
料理は、季節に沿った旬の素材を使用しているのが特徴で、当時の懐石はお茶を飲む前の簡単な食事でしたが、現在では料理の品数が増え、控えめなコース料理として提供されています。
懐石料理は、ゆったりと落ち着いて食べるのが基本で、ご飯や汁物も最初に提供されます。
お酒も提供されますが、食事を美味しく頂く上でのお酒となっています。
会席料理(かいせきりょうり)とは
江戸時代に入ると、上流階級だけではなく、庶民がお店で食事を楽しむことができるようになりました。
すると、「本膳料理」や「懐石料理」などから発展した「会席料理」と呼ばれる『お酒を楽しむための料理』が生まれ、武士や町人に親しまれるようになりました。
「会席料理」は、お酒を美味しく頂くための『宴会の席』となるため、まず最初にお酒が出てくる形式となっています。
基本的に品数も多く、豪華なコース料理となっており、最後にご飯や汁物が出てくるという特徴があります。
現在の料亭などで出される食事と言えは、この「会席料理」となっていることが多いです。
まとめ:割烹(かっぽう)とは、直接調理場から高級な日本料理が頂ける場所
- 割烹とは元々、日本料理の調理や料理方法を意味する言葉だった
- 割烹店は純粋に料理だけを楽しむところ
- 料亭とはお座敷で高級な日本料理を頂ける場所
- 料亭は食事と一緒に芸者さんを呼んで楽しむことができる
- 懐石料理は『お茶を楽しむために食べる料理』
- 会席料理は『お酒を楽しむための料理』
いかがでしたでしょうか。
今回は「割烹」と「料亭」の違いなどを紹介しましたが、どれもはっきりと違いがあることが分かりました。
これからはそれぞれの意味を理解して使っていきたいですね。
ちなみに、2チャンネルなどのネット用語で「割烹」という言葉がありましたので調べてみると…「活動報告」のことを意味していることが分かりました。
「活(動)報(告)」を「かっぽう」と略して、当て字して使われているようです。
ネット用語では様々な言葉があるものですね・・・。時代についていくのは大変だと感じた瞬間でした。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。