いろはにほへとの意味とは?【いろは歌は怖い、呪いの歌だった!?】

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皆さんは「いろはにほへと」とはどういう言葉かご存じでしょうか?

小学校や中学校で習ったという方がいる一方、世代によっては習っていないという方もいるようです。

また、習ったという方でも「聞いた覚えはあるけれどよく分からない」や、「いろはにほへとの続きが思い出せない」など、曖昧になっている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「いろはにほへと」の意味や歴史について解説すると共に、一部で怖いと言われている理由についても解説していきたいと思います。

ちなみに、最後に「いろはにほへと」の覚え方も紹介していますので、覚える時の参考にしていただけたら幸いです。

いろはにほへとの意味とその続きとは?

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「いろはにほへと」とは、『いろは歌』の始まりの一節となっています。

『いろは歌』とは、47文字の平仮名を使い、文字が重複しないように作られた誦文(ずもん)のことを言います。(47文字の中に「ん」は入っていません)

誦文(ずもん)とは、お経やまじないの文句を唱えることを言います。

では、『いろは歌』の全文を見ていきましょう。

いろは歌

いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす

「いろは歌」はただの文字の羅列ではなく、意味が通る文となっています。

いろは歌の意味とは

「いろは歌」の意味は諸説ありますが、次のような文章となっています。

色は匂へど 散りぬるを (いろはにほへと ちりぬるを)
(この世には匂い立つように美しいものもあるが、いつかは全て無くなってしまう。)

我が世誰ぞ 常ならむ (わかよたれそ つねならむ)
(この世に存在する全てのものは 永遠に生きられはしない)

有為の奥山 今日超えて (うゐのおくやま けふこえて)
(苦しい無常のこの世を 私は今乗り越えていく)

浅き夢見じ 酔ひもせず (あさきゆめみし ゑいもせす)
(はかない夢など見ず、色ある世界に酔うこともしない)

となり、「いろは歌」は、仏教の教えを説いた『涅槃教(ねはんぎょう)』の中にある「雪山偈(せっせんげ)」の意味を指す歌と言われています。

「雪山偈(せっせんげ)」とは、「諸行無常偈(しょぎょうむじょうげ)」とも言われますが、

  • 諸行無常(しょぎょうむじょう)
  • 是生滅法(ぜしょうめっぽう)
  • 生滅滅已(しょうめつめつい)
  • 寂滅為楽(じゃくめついらく)

を表す言葉となっています。

この4つの言葉は「四句偈(しくげ)」と言われ、「この世は全て無常であり、これは生滅の法則によるものである。生と死のない涅槃(ねはん)の境地に至ることで、真の大楽が得られる」という意味があります。

いわゆる、「生きると死ぬを繰り返す苦しいこの世を脱するためには、煩悩(ぼんのう)を断ち、仏教においての悟りの境地に達することで安らぎが得られる」という意味になります。

また「いろは歌」は、平仮名の練習をする際のお手本とされたり、「いろは順」として「あいうえお順(五十音順)」が一般的になるまでは、順番法としても広く使用されていました。

では、「いろは歌」はいつ頃から使用されるようになったのでしょう。

いろは歌の由来や歴史とは

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「いろは歌」の起源は、平安時代頃と考えられています。

いろは歌の最古の文献としては、承暦3年(1079年)に書かれた仏教経典である『金光明最勝王経音義(こんこうみょうさいしょうおうきょうおんぎ)』となっています。

この書物は、漢字の意味や発音について説明した本であることから、「いろは歌」は、中国語が元となった漢語の発音の仕方などを学ぶために使用されていたのではないかと考察されています。

その後、字を書く練習のお手本として使用されるようになった「いろは歌」は、江戸時代に入ると、平仮名が重複していないという点から、平仮名を学ぶ際のお手本として広く活用されることとなりました。

「いろは歌」を取り入れる前は、近辺の地名などを書いて練習していたようです。

このように、字を学ぶ初歩として使用されたことから、「物事の初歩的なことや基本を身につける」という意味の言葉として「いろはを学ぶ」などの言葉が生まれることとなりました。

また、江戸時代の消防団である町火消(まちびけし)は、区域ごとに組を作り、その組名に「い組」や「ろ組」など「いろは順」で名前をつけ、「いろは組」として活動していました。

なかでも、め組団員と相撲力士達との間で起こった「め組の喧嘩(けんか)」は有名で、規模は小さいながらも様々な組織が関わったことから注目されることとなり、後に講談や芝居の題材として扱われています。

ちなみに、「いろは歌」の最後の言葉である「す」の後に「」や「」が加えられたものもあります。

いろは歌の「京」の意味とは

元々いろは歌は、「いろは四十七文字」として知られていましたが、最後に「京」を加えた48文字となっているものが多く、鎌倉時代の書物である『悉曇輪略図抄(しったんりんやくずしょう)』にも「京」が記されています。

「京」を加える理由としては、「きゃ・きゅ・きょ」などの拗音(ようおん)を覚えさせる目的があったのではないかと言われています。

また、「ん」は「撥音(はつおん)」という言葉で、五十音(清音)には属さない言葉となっています。

しかしながら、言葉の表記を覚えるうえでは必要とされる文字となっていますので、五十音と一緒にされることが多く、「いろは歌」の最後に加えられる場合もあります。

このように様々なことに取り入れられた「いろは歌」ですが、そもそも誰がこのような歌を作ったのでしょうか。

いろはにほへとの作者とは?

いろは歌の字と筆の写真

「いろは歌」は、全ての平仮名を網羅し、重複しないなどの制限があるにもかかわらず、ここまで内容のある歌を作れるのはよほどの天才に違いないと考えられ、真言宗の開祖である「空海」と言われている説がありますが、実ははっきりと分かってはいません。

そもそも「空海」の活躍した平安時代初期とは、使用されていた平仮名の種類が違うことなどから、現在では「空海ではない」と考えられています。

しかしながら、空海によって開かれた真言宗系統の僧の間で「いろは歌」が学ばれ、それが世間に広まったとされていることから「真言宗と関わりのあった人物」の可能性が高いと言われているようです。

また、「いろは歌」には作者の意図として「暗号文」が隠されていると言われていて、このことから飛鳥時代の歌人である柿本人麿(かきのもとのひとまろ)や、平安時代中期の公卿(くぎょう)であった源高明(みなもとのたかあきら)が作者であるという説もあります。

ですが、空海の時代よりもっと前の人物となるので説としては薄いと言わざるを得ないでしょう。

いろは歌は、怖い呪いの歌?

人魂のイラスト

「いろは歌」は、現在では七五調で書かれるのが一般的ですが、当初は七文字ずつに区切って書かれることもありました。七句切りにして書くと次のようになります。

いろはにほへ
ちりぬるをわ
よたれそつね
らむうゐのお
やまけふこえ
あさきゆめみ
ゑひもせ

最後の文字に注目して上から読んでみると、「とかなくてしす」となり、「咎無くて死す」と読むことができます。

この意味としては「罪なくして(私は)死ぬ」となり、無実の罪で殺されることに対しての作者の遺恨が込められた言葉と言われているのです。

また、後ろから3行目を見てみると、「ほをつのこめ」と読むことができますが、こちらが「本を津の小女」となり、「この本を津にいる嫁に(届けてくれ)」と解釈することができます。

このことから、作者の遺恨の念を込めた遺書だったのではないかと考えられた結果、いろは歌は「怖い」・「恨みの歌」・「呪いの歌」などと言われるようになったと思われます。

ちなみに、暗号については様々考察され、本まで出版されているほどですので、気になる方は「いろは歌 暗号」で調べてみて下さいね。

実際のところ、作者の意図があったかそうでないかは定かではありませんが、江戸時代には「咎無くて死す」については既に知られており、一般的に偶然の一致と捉えられていたようです。

しかしながら、この暗号を利用した「仮名手本(かなでほん)」という折句(おりく)が登場するなどしていますので、人々に意識されていたことは確かでしょう。

折句とは、文章や詩などに別の意味を持つ言葉を織り込んだ句のことを言います。

折句が入れられた忠臣蔵

刀の写真

「仮名手本」は人形浄瑠璃や歌舞伎の演目の一つである「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」の題名に見て取ることができます。

ちなみに、忠臣蔵のお話は昔からとても人気があり、20世紀に至るまでドラマや映画など様々な作品で扱われることとなりました。

2019年秋にも『決算!忠臣蔵』が公開され、主演 堤真一・キャスト 岡村隆史・濱田岳・阿部サダヲ・石原さとみ・竹内結子などの豪華俳優人で涙あり笑いありの新しい忠臣蔵が制作されています。

話は戻りますが、「仮名手本」は、仮名のお手本である「いろは歌」のことを指していて、「お手本にすべき忠臣の物語」を意味する題名となっています。

「忠臣」とは、主君のためなら死も厭(いと)わず、忠誠的に尽くした家来のことを言います。

また、忠臣蔵のお話に登場する「赤穂四十七士(あこうしじゅうしちし)」と呼ばれる、赤穂藩の浪士(ろうし)である47人の武士いろは歌の47文字とかけてあったり、登場人物が実名ではなく仮名(かめい)となっていることも「仮名手本」が用いられた理由と言われています。

しかし、「仮名手本」にはまだ違う意味が隠されています。

先程説明したように、「仮名手本」は「いろは歌」を表す言葉となっていますので、隠された意味というと「咎無くて死す」です。

忠臣蔵のお話は、藩主の敵討ち(かたきうち)のため立ち上がった47人の浪士達が、敵討ちに成功するも最後には裁きを受け切腹をするという話になります。

当時では、敵討ちであれば罪に問われませんでしたが、罪人とされた藩主の敵討ちであったため、法の体裁を保つため裁かれるという結果になりました。

このことから、「罪無くして死ぬ」を暗示させる題名となっており、折句として「仮名手本」が使用されていると言われています。

では、最後に「いろは歌」の覚え方について紹介します。

いろは歌の覚え方とは?

ひらがなが書かれた書道の写真

「いろは歌」は、学校で覚えないといけなかったり、知識のひとつとして覚えておいたりしたいものですよね。

覚え方としては、次のような点がポイントになってきます。

  • 文字を区切る
  • 和歌のようにリズムで覚える
  • 歌詞に情景を当てはめて想像する

文字を区切るというのは、七五調に区切ることを言います。

いろはにほへと/ちりぬるを
わかよたれそ/つねならむ
うゐのおくやま/けふこえて
あさきゆめみし/ゑいもせす

そして、行ごとにリズムをつけて唱えます。その時、情景を当てはめながら言葉を思い出すと覚えやすくなります。

いろは歌のイラスト
いろは歌のイラスト
いろは歌のイラスト
いろは歌のイラスト

このような情景を当てはめてみてはいかがでしょうか。

まとめ:「いろはにほへと」とは「いろは歌」の始まりの一節のこと

いろはにほへとを書く人のイラスト
  • 「いろは歌」は重複しない47文字の平仮名から作られた「誦文(ずもん)」のこと
  • 「いろは歌」には仏教の教えである「雪山偈(せっせんげ)」(四句偈)の意味がこめられている。
  • 「いろは歌」は「数え順」や「仮名手本」としても広く使用されていた
  • 「いろは歌」には折句として「咎無くて死す」という意味がある

いかがでしたでしょうか。「いろは歌」はちゃんと意味が通る順番で並べられ、仏教の教えまで説いていると分かると本当に天才的な作品と言えますね。

ちなみに英語圏では、全てのアルファベット26文字を使って文を作る遊びを「パングラム」と言いますが、一度も同じ文字を使用してはいけないなどのルールはありません。

けれども、使用頻度は少ないほうが良く、全ての言葉が1度しか使用されないものは「完全パングラム」と呼ばれています。

日本でも、「いろは歌」以外に「あめつちの詞(ことば)」・「鳥啼歌(とりなくうた)」など様々な「パングラム」が作られていますので、興味のある方はぜひ調べてみて下さい。

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。