皆さんは、「春うらら」という言葉をご存じでしょうか?
とても優しい印象を持つ言葉である「春うらら」ですが、意味を説明するとなると「難しい」といった方もいらっしゃるようです。
また、「秋うらら」・「冬うらら」といった言葉もあるようですが、どのような意味があるのでしょう。
そこで、この記事では、
- 「春うらら」の意味・語源
- 「うらら」と「のどか」の違い
- 「春うらら」の類語
- 「春うらら」の使い方
- 「うららか」を用いた俳句
- 「秋うらら」・「冬うらら」の意味
- 「春うらら」の英語表現
について解説・紹介していきます。
春うららの意味とは
「春うらら」の意味は、『春の空が晴れて明るく、日が穏やかに照っている様子』を表す言葉です。
「春うらら」は、名詞の「春」と形容動詞の「うらら」が合わさった言葉で、「春麗ら」と漢字で表記されることもあります。
うらら(麗ら)の意味や語源とは?
「うらら」という言葉は、古語である「うらうら」の略称とされています。
「うらうら」は、
『日差しが明るく穏やかである様子』
『心ののどかさ・穏やかな態度』
といった意味があり、ゆったりとした繰り返しの動作を表す「ゆらゆら」という言葉が変化したものという説があります。
また、「うらら」は、「うららか(麗らか)」という形でも用いられています。
うららか(麗らか)の意味とは
「うららか(麗らか)」には、大きく3つの様子を表す意味があります。
- 空が晴れて、日の光が穏やかに照らす様子
- 声などが晴れ晴れとして明るく、楽しそうな様子
- 心にわだかまりがなく、すっきりとした状態や、おっとりとして穏やかな様子
このように「うららか」は、①天候・②人や動物の声・③人の心の状態に対して用いられる言葉で、次のように用いることができます。
- ①うららかな春の陽気に誘われて散歩に出掛けた。
- ②春を喜ぶように小鳥がうららかに鳴いている。
- ③父の温かい言葉に、うららかな気持ちになった。
「うらら」は、「うららか」と同意とされていますが、主に①の春の天候に対して用いられることの多い言葉となっています。
「うらら」と「のどか」の違いとは
「うらら」と似た言葉に、「のどか(長閑)」という言葉がありますね。
「のどか」も『天気が晴れて、天候が穏やかな状態』といった意味を持つ言葉です。
どちらも穏やかな天気で、気持ちが良い状態を表す言葉として用いられていますが、この二つの言葉の背景には、細やかな違いがあります。
「うらら」が『穏やかな日の光』によって心地が良い状態を表す言葉に対し、
「のどか」は、風景や気候などの『その人がおかれた穏やかな環境』によって感じる心地良さを表す言葉ということです。
また、「のどか」は、『静かでのんびりとした様子』や『ゆっくりとくつろぐ様子』といった意味もあります。
「のどか」の漢字を「長閑」と書くことからも、「長く閑か(静か)な状態」といった意味が強い言葉というのが分かりますね。
このことをまとめると、
「うらら」は、『穏やかな日の光から心地よさを感じるさま』
「のどか」は、『閑かで穏やかに流れる時間や環境から心地よさを感じるさま』
ということになります。
春うららの類語は?
「春うらら」の類語は、次のような言葉があります。
- のどか(長閑)
- 小春日和(こはるびより)
- ほがらか(朗らか)
「小春日和」は、春の言葉のように感じますが、11月~12月上旬に訪れる春のような穏やかで暖かい日和のことを言います。
「ほがらか」は、『日差しが明るく、空が晴れ渡る様子』を表す意味の他、『心にわだかまりが無く、晴れ晴れとして明るい様子』・『広く開けて明るい様子』といった意味があります。
春うららの使い方【例文】
では、実際に「春うらら」を使った文章を紹介します。
【例文1】
今日は春うららで、ピクニック日和だ。
【例文2】
春うららの陽気に誘われて、なんだか眠たくなってきた。
【例文3】
冬の寒さも遠ざかり、春うららのような穏やかな日が続いている。
「春うらら」を季語として用いる場合は?
「春うらら」を、春の季語として「時候の挨拶」や「俳句」に使用したい場合、実は「春うらら」という季語はありません。
では、「時候の挨拶」・「俳句」の場合でどのように「春うらら」を表現するか見ていきましょう。
時候の挨拶
「時候の挨拶」として「春うらら」を表現する場合には、次のような言葉があります。
- 麗日の候(れいじつのこう)
- 春光(しゅんこう)うららかな季節を迎え
- うららかな好季節を迎え
- うららかな春日和の頃
- 春陽麗和(しゅんようれいわ)の好季節
「麗日」は、『うららかな春の日』を表す春の季語(三春)です。
※三春(さんしゅん)とは、「初春・仲春・晩春」の春全般に用いることのできる季語を言います。
「春陽麗和」は、『春の日差しが暖かく心地よい』といった意味があります。
俳句
「俳句」で「春うらら」を表現する場合、「うららか(麗らか)」自体が春の季語(三春)となっています。
そのため「俳句」では、「春うらら」を表す次の言葉があります。
- うららか
- うらら
- うらうら
- うららけし
- 麗日
俳句の中には、言葉のリズムの良さから「春うらら」と用いられることもあるようですが、「うらら」自体が「春」を表す言葉ですので、正式な季語の使い方としては誤りとなります。
しかしながら、「春うらら」という言葉の響きを楽しむ句では、一概に否定できないという考えもあるようです。
「うららか(春うらら)」を用いた俳句紹介
では、いくつか春の季語である「うららか(=春うらら)」を用いた俳句を紹介します。
- 『うららかや氷の解けし諏訪(すわ)の湖』
正岡子規(まさおかしき) - 『昼見ゆる星うらうらと霞(かすみ)かな』
芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ) - 『うららかや馬に噛まるる秣桶(まぐさおけ) 』
野村喜舟(のむらきしゅう) - 『うらうらと雲雀上がりて西の京』
筑紫磐井(つくしばんせい) - 『うらうらほろほろ花が散る』
種田山頭火(たねださんとうか) - 『うららかな土の香にありく一日』
尾崎放哉(おざきほうさい)
秋うらら・冬うららとは?
「うらら」というと、春に用いられることの多い言葉ですが、
秋や冬にも「秋うらら」・「冬うらら」といった言葉があります。
秋うらら(秋麗)
「秋うらら」は、『秋麗』と書くのが一般で、「しゅうれい」とも読みます。
「秋うらら」の意味は、
『秋の晴れ渡った日差しの中、春のような心地よい穏やかさを感じる様子』を表す言葉で、秋の季語(三秋)です。
春の季語である「うらら」に「秋」をつけると、秋の季語になるのは面白いですよね。
秋の時候の挨拶として『秋麗』を使用する場合、暑さが和らぎ、秋の訪れを感じる『10月』に用いられています。
ちなみに、春うららを「春麗(しゅんれい)」と音読みで読むことは少ないようです。
冬うらら(冬麗)
「冬うらら」は、『冬麗』と書くのが一般的で、「とうれい」とも読みます。
「冬うらら」の意味は、
『冬の晴れ渡った日差しの中、春のような心地よい穏やかさを感じる様子』を表す言葉で、冬の季語(仲冬)です。
冬の時候の挨拶に『冬麗』はありませんが、季節を感じさせる素敵な言葉ですので、親しい人への手紙の挨拶に取り入れてみてはいかがでしょうか。
使い方の例
ちなみに、1月の挨拶には『うららかな初日の光を仰ぎ』といった祝い事にふさわしい慣用句があります。
春うららを英語で表現すると
「春うらら」を英語で表すと、次のようになります。
『a clear and mild spring day』
(晴れて穏やかな春の日)
『a beautiful spring day』
(うららかな春の日)
まとめ:春うららの意味は、春の空が晴れて明るく、日が穏やかに照っている様子を表す言葉
- 「うらら(麗ら)」は、春の季語で、時候の挨拶や俳句に用いられている
- 「春うらら」は、穏やかな日の光から心地よさを感じるさま、「のどか」は、閑かで穏やかに流れる時間や環境から心地よさを感じるさまを表す
- 「春うらら」の類語は、「のどか」・「小春日和」・「ほがらか」がある
- 「春うらら」以外にも「秋うらら(秋麗)」・「冬うらら(冬麗)」といった言葉がある
いかがでしたでしょうか。「春うらら」は、春の明るい穏やかな日差しから、心地よく感じる様子を表す言葉ということが分かりました。
ちなみに、「春の~うららの~隅田川~♪」という歌詞から始まる有名な歌がありますが、曲名は『花』と言います。
滝廉太郎作曲の歌曲集『四季』の第1曲で、第2曲は『納涼』・第3曲は『月(秋の月)』・第4曲は『雪』と続きます。
『花』の1番の歌詞は、紫式部作『源氏物語』(胡蝶)に登場する和歌が元になっているそうです。
その和歌である『春の日のうららにさして行く船は棹のしづくも花ぞちりける』の意味は、「春の日がうららかに差して、その中を棹を差して行く船は、そのしずくも花が散るようだ」となります。
「うらら」という言葉は、音の響きが優しく、穏やかな春の日差しを表すのにぴったりの言葉と言えますね。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。