皆さんはお祝い事の際、「万歳三唱」を行った経験がありますか?
これは、「ばんざーい!」と皆で手を挙げて喜ぶ風習ですが、「万歳三唱」にはどのような意味があり、いつから行われている風習なのか分からないといった方が多いのではないでしょうか。
また、「万歳三唱」と「三本締め(一本締め)」のどちらで行うべきか分からないといった方も多くいらっしゃるようです。
そこで、この記事では、
- 「万歳三唱」の意味や由来
- 「万歳」という言葉の由来
- 「天皇陛下万歳」が怖いと言われる理由
- 「万歳三唱」のやり方・正しい作法について【シーン別解説・例文】
- 「万歳三唱」と「三本締め(一本締め)」の違い
- 「万歳三唱令」について
- 「万歳(まんざい)」とは
- 英語圏での「万歳三唱」
について解説・紹介していきます。
万歳三唱の意味とは?
「万歳三唱(ばんざいさんしょう)」は、「万歳」という言葉を唱えながら、両腕を威勢良く上げる動作を3回繰り返すことを言います。
おめでたい席や嬉しい時、発展や繁栄を祈る式典などで行われる風習で、喜びやお祝いを表す意味があります。
万歳の意味や起源・由来とは?
「万歳三唱」の「万歳」という言葉は、奈良時代頃(710年~794年)中国から日本に伝わったと言われています。
万歳は中国の「千秋万歳」が由来
中国では、もともと「千秋万歳(せんしゅうばんぜい)」という「千年万年」つまり、「永遠」という意味を持つ言葉があったそうです。
そして、この言葉の後半部分である「万歳」という言葉が、秦の始皇帝の時代(紀元前221年~210年)になり、皇帝の永年の繁栄や長寿を願う言葉として用いられるようになったとされています。
そして、日本に「万歳」という言葉が伝わると、天皇の治世(ちせい)・長寿を祝う言葉として用いられるようになったとされています。
現在でも、皇室行事などで「天皇陛下万歳」と言われることがありますが、天皇の健康と長寿を祈る言葉として用いられているそうです。
ちなみに、当初は「ばんざい」という読み方ではなく、「ばんぜー・ばんせい」と読まれており、現在の「ばんざい」と読まれるようになったのは、明治時代に行われた「万歳三唱」からと言われています。
万歳三唱の起源・由来とは?
「万歳三唱」が初めて行われたのは、大日本帝国憲法の公布が行われた1889年(明治22年)2月11日のことだと言われています。
当時、東京帝国大学の学生達が、大日本帝国憲法発布式典が開催されるにあたり、明治天皇を最敬礼で奉送迎(お見送り)しようと考えていたそうです。
そこで、最敬礼だけでは物足りないと、東京帝国大学の教師達がフランスやイギリスといった諸外国を真似して天皇を讃える歓呼の声を唱和したらどうかと学生達に提案したのが「万歳三唱」の由来であるとされています。
万歳三唱が決定するまで
それまで日本では、天皇を讃えるような言葉などはなく、ただ最敬礼するだけでした。
お祝いに相応しい言葉を考えることとなり、日本の教育政策に携わっていた森有礼(もりありのり)文部大臣によって、「喜び祝う」という意味を持つ『奉賀(ほうが)』という言葉が当初提案されたそうです。
しかし、「奉賀」を唱和すると、「奉賀、ほうがぁ、あほうが、阿呆が」と聞こえてしまうことを懸念され、棄却されることとなりました。
そこで、次に提案されたのが「万歳」だったとされています。
ところが「万歳」は、「ばんぜー・ばんせい」と読む言葉であったため、言いづらいという意見があり、「まんざい」ではどうかとなったそうです。
しかし、「まんざい」という言葉も「ま」という言葉はお腹に力が入らないとして、東京帝国大学の文科大学長であった外山正一(とやままさかず)氏が提案した「ばんざい」に決まったとされています。
そして、イギリスの「スリー・チアーズ」と呼ばれるお祝いの言葉などを参考に、東京帝国大学の法科大学教授であった和田垣謙三(わだがきけんぞう)氏によって、「万歳・万歳・万々歳」という言葉が考えられたとされています。
※イギリスの「スリー・チアーズ」は、「ヒップ・ヒップ・フレー」という言葉を3回繰り返すものを言います。
初めて行われた「万歳三唱」
こうして、1889年(明治22年)2月11日、「臨時観兵式(りんじかんぺいしき)」が予定されている「青山練兵場(あおやまれんぺいじょう)」へと向かう明治天皇の馬車に向かって「万歳三唱」が行われることとなりました。
しかし、最初の「万歳」の声が上がると、その声に驚いた馬が立ち止まってしまったため、2回目の「万歳」の声は小さくなり、3回目の「万々歳」は言えずじまいに終わってしまったそうです。
その後、「万歳」がおめでたい時の歓呼の言葉として広まることとなりましたが、「万々歳(ばんばんざい)」という最後の言葉は定着しなかったとされています。
「天皇陛下万歳」が怖いと言われる理由
「万歳」という言葉は、大日本帝国憲法の公布以降、天皇を讃える言葉として浸透していきましたが、天皇を中心とする帝国主義国家へと変わっていくにあたり、次第に天皇を神とする教育が行われるようになりました。
1941年(昭和16年)の太平洋戦争時になると、軍国主義的教育によって徹底的に愛国心が叩き込まれたことで、特に若い世代は「天皇のため、国家のために自己犠牲を払うことが素晴らしいことなのだ」と考えるようになっていったそうです。
そのような社会では、家族は戦地に子供を送り出す際には「天皇陛下万歳!」と言って送り出さなければならず、戦地に行った若者達は、「天皇陛下万歳!」と言いながら自らの命を捧げることが正義だと信じていたわけですね。
このような戦争という悲しく、恐ろしい時代があったことで、現在「天皇陛下万歳」という言葉を耳にすると、戦時中の洗脳された人々を思い起こしたり、軍国主義的なイメージを持ったりすることで、「怖い」と思う人や「違和感」を感じる人がいるということです。
本来は、祝福の意味で作られた「万歳三唱」ですが、天皇を神とする考えや戦争によって悪いイメージが植え付けられたことで、万歳三唱は『時代にそぐわない』という考えを持つ方もいらっしゃいます。
【シーン別】万歳三唱のやり方や流れ・正しい作法とは?
では、「万歳三唱」のやり方について説明していきたいと思います。
ちなみに、万歳三唱には定められた作法というものは無いため、正しい作法は存在していません。
しかしながら、万歳三唱の際に手のひらを前に向けると、降参やお手上げのポーズに見えるということから、手のひらを内側に向けて行う方が良いと言われることがあります。(※決まりではありません)
また、万歳三唱が行われるまでには一連の流れがありますので、マナーとして知っておくと安心です。
結婚式での万歳三唱の流れと例文
結婚式はお祝いの場ですので、万歳三唱で締めるといったシーンも多く見受けられるようです。
万歳には、元々「末永く続いていくことを願う」意味もありますので、結婚式には相応しい風習と言えますね。
では、流れを例文を交えて説明していきます。
例文(結婚式)
※司会者が起立を促すアナウンスをしなかった場合
「皆様、恐れ入りますがご起立をお願いいたします。」
②自己紹介をする
「ただいまご紹介に預かりました、新郎○○くんと同じ職場の○○と申します。」
③挨拶を行う
「はなはだ僭越(せんえつ)でございますが、ご指名を頂戴しましたので、万歳三唱の音頭を取らせていただきます。」
「○○くん、○○さん、ならびにご両家の皆様、本日は誠におめでとうございます。
新郎新婦の末永い幸せと、ご両家そしてご臨席の皆様のご多幸とご繁栄を祈念いたしまして、万歳三唱で締めさせていただきたいと存じます。」
④唱和のお願いをする
「それでは皆様、(ご一緒に・私の後に続いて)ご唱和をお願いいたします。」
⑤万歳三唱の掛け声を行い勢いよく手を上げる
「ばんざーい!」「ばんざーい!」「ばんざーい!」
※「万歳」の掛け声は、音頭の人と同時に行う場合と、音頭の人の後に続いて行う場合があります。同時に行う場合は、(せーの)などの前振りをいれると行いやすいと思います。
⑥皆で祝福の言葉を述べて拍手を行う
「おめでとうございます」パチパチパチ・・・
運動会での万歳三唱の流れと例文
あまり聞かないと言う方もいらっしゃるかもしれませんが、運動会が無事に終了した喜びを、万歳三唱をして締めるといった地域もあるようです。
運動会の締めになりますので、子供達や先生方、保護者の疲労を考えると、ねぎらいの言葉と手短な挨拶が好まれるでしょう。
それでは、流れを例文を交えて紹介していきます。
例文(運動会)
「ただいまご紹介いただきましたPTA役員を勤めさせていただいております○○と申します」
②ねぎらいの言葉を伝える
「皆様、今日は1日大変お疲れ様でした。この日のため一生懸命頑張ってきた生徒の皆さん、そして、生徒指導のためご尽力いただいた先生方、保護者を代表して改めてお礼を申し上げたいと思います。」
「本日は素晴らしい運動会を開催していただき、誠にありがとうございました。」
③締めの挨拶を行う
「僭越ではございますが、最後に万歳三唱の音頭を取らせていただきたいと存じます。○○学校の益々のご繁栄と皆様のご健勝を祈念いたしまして万歳三唱で締めさせていただきます。」
④唱和のお願いをする
「それでは皆様、(ご一緒に・私の後に続いて)ご唱和をお願いいたします。」
⑤万歳三唱の掛け声を行い勢いよく手を上げる
「ばんざーい!」「ばんざーい!」「ばんざーい!」
⑥お礼を述べる
「ありがとうございました。」
送別会での万歳三唱の流れと例文
職場で行われる送別会では、昇進して本社に異動となった場合や定年退職など、激励やお祝いの意味を込めて万歳三唱が行われています。
左遷(させん)などの異動の場合には、行なわない方が良いでしょう。
※左遷とは、現在の立場より低い地位に落とされることを言います。
それでは、例文を交えながら紹介していきます。
例文(送別会)
「○○さん、短い間でしたが、大変お世話になりました。○○さんには多くのことを学ばせていただき、本当に感謝しています。
○○さんが本社へ異動になると聞いた時は、正直寂しい気持ちが強かったですが、本社でのさらなるご活躍を心より応援しています。」
②万歳三唱の挨拶を行う
「それでは、○○さんのご健勝とさらなるご発展を祈念いたしまして、万歳三唱の音頭を取らせていただきます。」
③唱和のお願いをする
「皆様、(ご一緒に・私の後に続いて)ご唱和をお願いいたします。」
④万歳三唱の掛け声を行い勢いよく手を上げる
「ばんざーい!」「ばんざーい!」「ばんざーい!」
⑤皆で祝福の言葉と拍手を行う
「頑張って下さい」「応援しています」パチパチパチ・・・
忘年会での万歳三唱の流れと例文
忘年会では、無事に一年を終わることができたことを祝い、翌年のさらなる発展を願って万歳三唱が行われています。
それでは、例文を交えながら紹介していきます。
例文(忘年会)
「皆様、宴もたけなわでございますが、お時間が迫ってまいりましたので、ここで一度締めさせて頂きたいと存じます。」
②自己紹介をする※会が小規模で、顔見知りのみの場合は必要ありません
「僭越ではございますが、ご指名により締めの挨拶をさせて頂きます、私○○部の○○でございます。」
③感謝の言葉を述べる
「皆様、この一年大変お疲れ様でございました。今年もこのような素晴らしい忘年会を開催することができましたのも、皆様の頑張りのおかげだと思っております。来年も社員一丸となって邁進して参りましょう。」
④万歳三唱の締めの挨拶を行う
「さらなる○○会社の発展と、皆様のご健勝とご多幸を祈念いたしまして、万歳三唱で締めさせて頂きたく存じます。」
⑤唱和のお願いをする
「それでは皆様、(ご一緒に・私の後に続いて)ご唱和をお願いいたします。」
⑥万歳三唱の掛け声を行い勢いよく手を上げる
「ばんざーい!」「ばんざーい!」「ばんざーい!」
⑦感謝の言葉を述べる
「ありがとうございました。」
このような流れとなります。上記のものは簡単な挨拶となっていますので、一年最後の忘年会にふさわしい感謝の言葉を考えてみて下さいね。
万歳三唱と三本締め(一本締め)との違いとは?
「万歳三唱」と同じように、最後の締めとして行われている「三本締め」ですが、どのように使い分けをして良いか分からないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
まず、三本締めとは何かについて解説します。
三本締めとは
「三本締め」は、手締めと呼ばれる風習の一つで、
『物事が無事に終わったことを祝い、無事に終わったことへの感謝の気持ちを表す』という意味があります。
行い方としては、音頭を取る方の「それでは皆様お手を拝借、よ~おっ」の掛け声で、「パパパン・パパパン・パパパン・パン」と手を叩くという動作を3回繰り返すという流れになります。
※一本締めは、「パパパン・パパパン・パパパン・パン」と1回だけするものを言います。
万歳三唱と三本締めの違い
三本締めは、物事が無事に終わったことを祝い、感謝のため行われる風習であることから、お祭りや宴会(飲み会)・商談事・総会など、様々な物事を締める場面で用いられています。
一方「万歳三唱」は、おめでたい時や嬉しい時のお祝いに行われる風習ということから、優勝セレモニーや結婚式・新年会・祝賀式典などで行われています。
このことから、「三本締め」は『無事に終わったことを喜び、感謝を前提にして行われるもの』、「万歳三唱」は『おめでたいことや喜びがあったことを前提にして行われるもの』ということでしょう。
しかし、どちらも行う会が決まっているわけではありませんし、お祝いする気持ちや今後の繁栄を願うという意味では違いがありません。
そのため、より相応しいと思うどちらか一方を行ったら良いかと思われますが、地域によっては、結婚式には「三本締め」で行われるのが通常というところもあります。
自分の判断だけでなく、周りの意見を聞いてみるということが必要になりそうです。
ちなみに、「三本締め」については、下記の『三本締めとは?』の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧下さい。
三本締めの意味や由来とは?掛け声や一本締めとの違いについても解説
皆さんは、「三本締め」の意味をご存じでしょうか。 新年会や結婚披露宴など、大事な会の締めに行われる「三本締め」ですが、社 ...
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万歳三唱令とは?熊本から始まった?
「万歳三唱」には、本来正式な作法は定められてはいませんが、
『万歳三唱令(ばんざいさんしょうれい)』と言われる誤った偽文書が出回ったことがあります。
「万歳三唱令」は、万歳三唱の作法を定めた太政官布告(だいじょうかんふこく)と称して、1990年代に広まったとされています。
太政官布告とは、明治時代初期の法令の形式となっていて、律令制における司法・立法・行政を司る最高国家機関であった太政官によって公布されたものを言います。
作法の内容としては、次の通りです。
偽文書による万歳三唱の作法
②万歳の発生と共に、右足を半歩踏み出し、同時に両腕を垂直に高々と挙げる。その際、両手の指をまっすぐに伸ばし、手のひらは内側に向けておく。
③万歳発声の終了と同時に、素早く元の直立不動の姿勢に戻す。
④以上の動作を三度、節度を持ち、気迫を込めて行うことが肝要である。
上記のような偽文書がなぜ出回ることとなったのかについては、2018年(平成30年)に制作者が告白の手紙を熊本の新聞社に送ったことで明らかになりました。
偽文書が出回るまでの経緯
熊本県在住の公務員であったAさんが、1985年(昭和60年)頃に行われたゴルフコンペの打ち上げの際、ふらふらと立ち上がり、変な格好で万歳を行った人を見たことがきっかけだったとされています。
そして、Aさんがその真似をしつつ右足を出して万歳したところ、仲間内で面白い万歳として流行し、周囲の人達も万歳目当てで宴会に参加するほど人気を博すものだったそうです。
その後、Aさんの異動もあり、万歳を行うことは無くなっていたそうですが、1989年(昭和64年)頃になり、暇つぶしとして「万歳三唱令」というものを作ってみようと思い立つことになります。
Aさんは、西南戦争後に出されたという設定で、断髪令・廃刀令に続く「明治三大布告」にしようと構想を練り始めました。
その頃、BさんCさんと知り合うこととなり、一緒に制作を進めることとなったそうです。
3人は「正しい万歳三唱を普及する国民会議」と称して、国立図書館で実物の太政官布告を見るなどして、細部にまでこだわりを見せるようになっていきました。
そして、完成した「万歳三唱令」を普及させようとAさんは熊本市内、Bさんは福岡県久留米市内、Cさんは鹿児島市内の飲み屋などで活動を行い、実演や指導をしながら「万歳三唱令」の紙面を配ったとされています。
その際、「酒の席以外では絶対やるなよ」と必ず付け加えていたそうですが、文書が次々にコピーされ広まっていく中で、口頭で行っていた注意は忘れられていくこととなりました。
そして、「万歳三唱令」は全国に広まり、1996年(平成8年)には国立国会図書館に問い合わせが相次ぐようになったと言われています。
1999年(平成11年)になり、共同通信で「国立図書館が万歳三唱令を信じないようにと呼びかけている」との記事を掲載したことで3人は活動を停止し、文書も封印したとされています。
万歳(まんざい)とは
「万歳(ばんざい)」とは別の言葉で、「万歳(まんざい)」という言葉があります。
※旧字体では「萬歳」と書きます。
長寿をお祝いする言葉であった「千秋万歳」が、予祝芸能(よしゅくげいのう)としての「千秋万歳(せんずまんざい)」となり、略して「万歳」と言われるようになったとされています。
※予祝芸能とは、あらかじめお祝いをすることで、実際の実現を祈願する目的で行われる芸能のことを言います。
「千秋万歳」は、新年に二人一組の芸納者が各家々を周り、千年万年も栄えますようにと家の繁栄と長寿を願って、祝いの言葉を発したり、扇を持って舞ったりする芸能であったそうです。
万歳(まんざい)の歴史
平安時代から行われるようになった「千秋万歳」は、江戸時代には歌舞だけでなく、言葉の掛け合いや謎かけといった内容が加わり、面白おかしい芸へと発展して、全国各地で様々な形で行われるようになったとされています。
第二次世界大戦後には、ほとんど行われなくなったと言われる万歳ですが、明治時代になると、「三曲萬歳(さんきょくまんざい)」をベースにした「万才(万歳)」が大阪で行われるようになったそうです。
※「才」は「歳」の非公式な略字となっています。
三曲萬歳は、愛知県知多市発祥の「尾張萬歳(おわりまんざい)」の流れを汲(く)むもので、胡弓(こきゅう)・鼓(つづみ)・三味線(しゃみせん)といった楽器を使用する賑(にぎ)やかな万歳であったそうです。
その後、昭和初期になると、吉本興業の芸人であった「横山エンタツ・花菱アチャコ」コンビによる、スーツ姿で会話のみという革新的な「しゃべくり漫才」が絶大な人気となり、古来の万歳は次第に廃れていくこととなりました。
昭和初期までは「萬歳」や「萬才」といった表記が一般的だったそうですが、吉本興業によって「漫才」と改称することが宣言されたことで、「漫才」表記が定着し、本格的な統一となったと言われています。
現在の「漫才」は、平安時代に行われていた「千秋万歳」が由来となっていたわけですね。
季語としての万歳
「万歳(まんざい)」は、季語としても扱われています。
新年に予祝芸能として「千秋万歳」が行われていたことから、「万歳」は『1月の季語』となっています。
万歳三唱と同じような言葉は英語圏にもある?
「万歳三唱の由来」でも少し紹介しましたが、イギリスには万歳三唱のような感謝の意味を表す言葉である「three cheers(スリー・チアーズ)」と呼ばれる言葉があります。
スリー・チアーズは、『hip hip hooray』(ヒップ・ヒップ・フレー)という言葉を3回繰り返すものを言います。
※「hooray」=万歳
また、喜びを表す「ばんざーい!」を意味する言葉としては、「Yay!(イェイ)」や「bravo(ブラボー)」といった言葉もあります。
まとめ:万歳三唱は、喜びやお祝いを表す歓呼の言葉として明治時代より始まった
- 「万歳」という言葉は、奈良時代に中国から伝わり、天皇の治世・長寿を祝う言葉として用いられていた
- 1889年(明治22年)2月11日に大日本帝国憲法の公布が行われるにあたり、東京帝国大学の教師達によって、「万歳三唱」が提案された
- 「万歳三唱」に正式な作法は定められてはいない
- 「万歳三唱」を行う際、手を内側に向けることがマナーと言われることがある
- 過去「万歳三唱令」と言われる偽文書が出回ったことがある
- イギリスにも「万歳三唱」と似た「スリー・チアーズ」と呼ばれる風習がある
いかがでしたでしょうか。
「万歳三唱」は、「三本締め」と同様に会の締めに行われていますが、「万歳三唱」は喜ばしい気持ち、「三本締め」は感謝の気持ちが強い風習だということが分かりました。
ちなみに、衆議院の解散時に、失職した衆議院の議員達によって「万歳三唱」が行われることが恒例となっているそうです。
「失職するのになぜ?」と思われるかもしれませんが、次の選挙戦に向けての強い意志や、国事行為として衆議院解散を行う天皇に向けての敬意とも言われています。
また、「大声で万歳するほど、次の選挙の当選確率が上がる」というジンクスもあるそうです。
しかしながら、失職するのに万歳はおかしいといった考えや、行う理由がはっきりしていないといった理由で万歳三唱を行わない方もいらっしゃいます。
万歳三唱は、本来お祝いの気持ちを表すものですので、心から祝福の気持ちを持って行っていきたいものです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。