よくテレビなどで、「はくしゅーん」とくしゃみをしたかと思うと、「誰かが噂でもしてるなー」と言うシーンがありますが、なぜ噂をされるとくしゃみをする設定なのか疑問に思ったことはないでしょうか。
また、噂と言えど、良い噂・悪い噂がありますよね。
実は、くしゃみの回数によって噂の意味が分かると言われているのですが、いったいどのような意味があるのでしょう。
そこで、この記事では、
- くしゃみをすると「誰かに噂されている」というのはなぜ?
- くしゃみの回数と意味
- なぜくしゃみは出るの?
- くしゃみの語源
- 海外のくしゃみへの反応と言い伝え(ジンクス)
について解説・紹介していきます。
くしゃみをすると「誰かに噂されている」というのはなぜ?
くしゃみをすると、「誰かに噂(うわさ)されている」って言われることがあるけど、なぜなのかな?
くしゃみは予期せぬ時に出てしまうよね。だから昔は「くしゃみは誰かのせいで起こるもの」と考えられていたようだよ。
昔は誰かのせいでくしゃみが出ると考えられていた
古代から日本では、悪霊の仕業でくしゃみが出ると考えられていたようです。
くしゃみをすると魂が抜けて体に悪霊が入り込み、病気になったり、悪疫を広めたりするという考えがあったとされています。
とくに幼い子の場合、風邪であっても亡くなってしまうことが多かったことから、くしゃみは不吉なことの前触れとして恐れられていました。
そのため、くしゃみをすると呪文を唱えて死を遠ざけようとしていたとされています。
日本三大随筆(ずいひつ)の一つ、『徒然草(つれづれぐさ)』の第47段でも、「くさめ、くさめ」と唱えて子供が死なないようにおまじないをする様子が書かれています。
※「くさめ」の意味については、この記事内での『くしゃみの語源』のところで詳しく解説します。
くしゃみを良いことと捉えることもあった
くしゃみは「悪霊のしわざ」という考えがある一方、くしゃみが出るのは「愛する人が自分のことを思っているから」と捉えることもあったようです。
奈良時代末期頃に成立したとみられる日本最古の和歌集『万葉集(まんようしゅう)』第11巻2637番には、くしゃみが何度も出る、どうやら愛する妻も自分のことを思ってくれているのだろう。という内容が書かれています。
「くしゃみを引き起こす誰か」というのは、「悪い誰か」だけではなく、「良い誰か」という考えもあったわけですね。
やがて、「誰かのせいでくしゃみが出る」という考えから、「自分のことを誰かが噂(うわさ)しているからくしゃみが出る」という考えに変わっていったようです。
ちなみに、病気でもないのに突然に出るくしゃみは、何かの病気だと思われたり、場によっては気まずくなったりすることから、「誰かが自分の噂をしているからくしゃみが出た」ということにすることで、その場を収める意味もあったと言われています。
くしゃみの回数と意味
ウワサと言っても、悪いものもあれば良いものもあるけど、どっちとか分かるのかな?
実は、くしゃみの出た回数でウワサの意味が分かると言われているんだ。
くしゃみ1回・2回・3回・4回の意味
下記の言葉は、くしゃみの回数による占いがことわざになったものです。
※地域によって若干言葉が違うようです。
- 「一に褒められ 二に憎まれ 三に惚れられ 四に風邪をひく」
(いちにほめられ にににくまれ さんにほれられ しにかぜをひく) - 「一に褒められ 二に振られ 三に惚れられ 四に風邪」
(いちにほめられ ににふられ さんにほれられ しにかぜ) - 「一誹り 二笑い 三惚れ 四風邪」
(いちそしり にわらい さんほれ しかぜ) - 「一褒め 二腐し 三惚れ 四風邪」
(いちほめ にくさし さんほれ しかぜ)
このことわざによると、くしゃみの回数の意味は次のとおりです。
1回 | 褒められている・悪口を言われている(誹り) |
2回 | 憎まれている・嫌われている・笑われている・悪口を言われている(腐し) |
3回 | 惚れられている |
4回 | 風邪を引いている |
くしゃみ1回に関しては、「褒められている」というパターンが多いですが、逆に「悪口を言われている」という意味もありますので、なんとも言えませんね。
くしゃみ2回になると、全てが悪い意味になるようです。
そして、くしゃみ3回では「惚れられている」・くしゃみ4回では「風邪を引いている」というのが共通の意味となっています。
どうしてこのような意味となるのかは定かではありませんが、全ては迷信であり、根拠のない話とされていますので、くしゃみが2回だからといっても気にしないようにしましょう。
なぜくしゃみは出る?くしゃみの役割
そもそも、なぜくしゃみが出るのかというと、次のような理由があるからと言われています。
- 鼻に入った異物が鼻の粘膜を刺激することでくしゃみが出る
《鼻に入った異物を外に出す役割》 - 鼻の内部の体温が急激に下がると、知覚神経によってくしゃみが出る
《体温を上げるための役割》 - 体内に入ったウイルスやアレルゲンに免疫機能が働くことでくしゃみが出る
《風邪・アレルギー性鼻炎》 - 寒暖差によって鼻が刺激されることによってくしゃみが出る
《寒暖差アレルギー》 - 朝、副交感神経から交換神経に切り替わる際に鼻水やくしゃみが出る
《モーニングアタック・自律神経の乱れ》 - まぶしさを感じることでくしゃみが出る(日本人の約25%の割合)
《光くしゃみ反射(メカニズムは不明)》
くしゃみの威力は凄まじい!
くしゃみの速度は、新幹線並みの時速320kmと言われることがありますが、実はそこまでの速さはないと確認されています。
粒子画像流速測定法(PIV)という世界最先端の技術によってくしゃみの速度を測定したところ、くしゃみの初速の速さは時速57kmほどで、一般道を走る車と同じくらいということが判明したそうです。
一方、くしゃみの飛沫(しぶき・ひまつ)の距離は2~3mと考えられていましたが、細かな霧状となった飛沫は7~8mも飛ぶことが新たに分かっており、くしゃみによって放たれる病原体の数は200万個とも言われていますので、大変恐怖を感じますね。
また、くしゃみの威力は凄まじく、直立姿勢でくしゃみをした時に体にかかる圧は体重の7倍と言われており、体重50kgの人の場合だと、350kgの圧がかかる計算になります。
そのため、くしゃみを我慢して抑え込もうとすると、逃げ切れなかった力が体の中で放出されることとなり、のどの裂傷や鼓膜の破裂、脳血管の損傷などを引き起こす恐れがあると医師が警鐘を鳴らしているため、くしゃみはいかなる場合であっても我慢は禁物です。
ちなみに、くしゃみ1回の消費カロリーは約4kcalと言われており、体重50kgの人が1分間早めのウォーキングをしたのと同じ消費カロリーになります。
つまり、くしゃみを4回すれば、角砂糖1個分を消費したのと同じだよ。
くしゃみでそんなにカロリーが消費できるんだね!
くしゃみの語源
くしゃみは、もともと「くしゃみ」とは呼ばれてはいなかったようです。
平安時代中期(1001年頃)の書物である『枕草子(まくらのそうし)』の「にくきもの・第28段」には、「鼻ひて誦文する」とあります。
「鼻ひて誦文する」というのは、「くしゃみをして呪文を唱える」という意味で、『鼻ひる』という言葉が「くしゃみをする」という意味の言葉であったようです。
「ひる」というのは、感じで表すと「放る」=「放出する」という意味であり、「鼻ひる」は、鼻から放出することを表した言葉とされています。
くしゃみをした時の呪文がくしゃみの語源
昔は、くしゃみをすると、死を遠ざけるために「くさめ、くさめ・・・」と呪文を唱えていたことが由来となり、次第に「鼻ひる」から「くさめ(嚏)」と呼ばれるようになったと考えられています。
「くさめ」という言葉の由来は諸説ありはっきりしませんが、下記のような説があります。
①梵語「クサンメ」が由来説
一説によると、仏陀(ブッダ)がくしゃみをすると、その弟子らが「クサンメ」と言っていたそうです。
「クサンメ」とは、古代インドの言語であるサンスクリット語で『長寿』を意味する言葉で、それが日本に伝わった際に「休息万命」や「休息万病」と音写されたと言われています。
※サンスクリット語は「梵語(ぼんご)」とも言います。
その後、「クサンメ」や「休息万命(くそくまんみょう)」と早口で唱えているうちに「クッサメ」となり、最終的に「くさめ」となったという説になります。
「くさめ」以外にも、長寿を意味する「千秋万歳(せんずいまんざい)」や、「急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」といった陰陽道に由来する呪文も唱えられていたようですが、明治時代に呪文を唱える風習は消えていったとされています。
②「糞食め(くそはめ)」が由来説
もう一つの説としては、「糞食め(くそはめ)」が由来という説があります。
「糞食め」とは、今でいう「糞食らえ(くそくらえ)」と同じ意味で、悪霊に対して罵倒(ばとう)することで、悪霊を退散させる呪文として唱えられていたと言われています。
江戸時代の庶民の間では、「くそはめ」と唱えるのが一般的でありましたが、一部の知識人の間では、「徳万歳(とこまんざい)」と唱えていたようです。
「徳万歳」は、「徳若に御万歳(とくわかにごまんざい)」の略称とされており、「いつも若々しく、長寿でありますように」という意味の言葉になります。
知識のない者からすると、「クサンメ」が「くそはめ」と聞こえたのだろうね。
その後、「くそはめ」が変化して「くしゃみ」となったという説になります。
ちなみに、沖縄では、くしゃみをした後の呪文がまだ現在も残っており、誰かがくしゃみをすると、「クスクェー」や「クスケー」、「クスタックエー」などと呪文を唱えるそうです。
※意味は「糞食らえ」と同じです。
海外のくしゃみへの反応と言い伝え(ジンクス)
昔の日本では、くしゃみをした後に呪文を唱えることが多くありましたが、実は海外でも、くしゃみをした後に声掛けをする風習があるようです。
英語圏 | 「Bless you(ブレス・ユー)」 《神の祝福あれ》 |
イタリア | 「Salute(サルーテ)」 《健康(お大事に)》 |
スペイン | 1回の場合 「¡Salud(サルー)」 《健康(お大事に)》 または 「¡Jesús(へス-ス)」 《神よあなたをお守りください》 |
2回の場合 「Salud y dinero(サルー・イ・ディネロ)」 《健康とお金》 | |
3回の場合 「Salud, dinero y amor(サルー・ディネロ・イ・アモール)」 《健康とお金と愛》 | |
フランス | 1回の場合 「À tes (vos) souhaits(ア・テ・スエ/ア・ヴォ・スエ)」 《あなたの願いが叶いますように》 |
2回の場合 「À tes (vos) amours (ア・テ・ザムール/ア・ヴォ・ザムール)」 《あなたの恋がうまくいきますように》 | |
ドイツ | 「Gesundheit(ゲズントハイト) 《健康(お大事に)》 |
オランダ | 「Gezondheid(ヘゾントヘイト)」 《健康(お大事に)》 |
トルコ | 「Çok yaşa (チョク・ヤシャ)」 《長生きしてください》 |
このように、海外では見知らぬ人であってもくしゃみをすると、健康を気遣って声をかける風習があるようなので、声をかけられた際には「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。
かつてくしゃみは、ペスト菌による感染症の初期症状となっていたことから、「どうかペストではありませんように」と願う意味もあったと言われています。
ペスト菌による感染症は、「黒死病」と呼ばれ、14世紀のヨーロッパでは全人口の3分の1がペスト菌によって亡くなったとされています。
海外のくしゃみの意味
最後に、海外でもくしゃみの回数によって様々な言い伝えがあるようなので紹介します。
ドイツ | 1回・・・凶 2回・・・物がもらえる 3回・・・幸運 |
オランダ | くしゃみを3回すると翌日は晴れる |
インド | 食事中にくしゃみが出るのは、誰かに想われている |
中国 | 何度もくしゃみをすると、誰かに想われている |
タイ | くしゃみを2回すると、誰かが自分に会いたがっている |
イギリスでは曜日によってくしゃみの意味が変わる
イギリスでは、回数ではなく、曜日によってくしゃみの意味が変わるようです。
月 | 危険なことが起こる |
火 | 素敵な出会いがある |
水 | 良い知らせがある |
木 | 幸せが訪れる |
金 | 不幸が訪れる |
土 | 恋人との変化がある |
日 | なし |
日曜日だけ意味がないのが気になるな~
まとめ:昔は「くしゃみは誰かのせいで出るもの」と考えられていた
- くしゃみは、「誰かのせいで出る」という考えから、「誰かが噂をしているせい」と考えられるようになった
- くしゃみは回数によって噂の意味が変わり、ことわざにもなっているが、迷信とされている
- 多い意味としては、1回目は良い噂・2回目は悪い噂・3回目は惚れられている・4回目は風邪と言われている
- くしゃみの語源は諸説あり、梵語の「クサンメ=長寿」が語源という説と、「糞食め(くそはめ)=くそくらえ」が語源という説がある
- 海外でも「くしゃみ」に関する様々な言い伝えがある
いかがでしたでしょうか。
くしゃみは「誰かのせいで出る」と考えられたことで、やがて「噂」と結びつき、場を収める意味でも「誰かが噂をしているせいでくしゃみが出る」と言われるようになったことが分かりました。
ちなみに、鼻と口を抑えてくしゃみを抑え込んでしまうのは大変危険な行為ですが、くしゃみが起こりそうになるのを止める方法がいくつかあるようです。
【方法1】
人差し指と中指を使って鼻の下を強く押すと、神経の伝達を止めることができるので、ムズムズした時に押すとくしゃみが収まると言われています。
【方法2】
小鼻の横にある少しへこんだ部分のツボ「迎香(げいごう)」を小鼻を挟むようにして数回押すと、鼻水・鼻詰まりが解消されるだけでなく、くしゃみも止まると言われています。
【方法3】
くしゃみが出そうと思った時に「太陽の光」や「照明の光」を見ると、くしゃみが止まると言われています。
本来くしゃみは止めるべきではありませんが、どうしても止めたい時にはぜひ試してみてくださいね!
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。