皆さんは朝早くに起きて「日の出」を見ることはありますか?
普段その時間は寝ているという人でも、旅行などで早起きした際には見ることもありますよね。
朝日とともに次第に明るくなっていく様子はとても美しく、「これから新たな1日が始まるぞ」と清々しい気持ちにさせてくれる「日の出」ですが、これを別名「ご来光(ごらいこう)」や「初日の出(はつひので)」といった呼び方をすることがあります。
中には「富士山に昇ってご来光を拝んでくる」などといった言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、なぜそのように呼ばれているのかはご存じでしょうか。
そこで、この記事では、
- 「ご来光」と「初日の出」の違い
- 「ご来光」と「初日の出」の意味と由来
- 元旦に富士山から見る太陽は「ご来光」?「初日の出」?
について解説・紹介していきます。
ご来光と初日の出の違いとは?
さっそくですが、「ご来光」と「初日の出」の違いとは何なのでしょうか。
どちらも呼び方が違うだけで『日の出』という意味で使われている気がしますよね。
けれども、
「ご来光」は、『高い山や山頂から見る日の出』のこと
「初日の出」は、『元日の朝に見る日の出』のこと
を表す言葉になります。
「ご来光」は天気が良ければ季節を問わず見ることができますので、1年中見ることができますが、「初日の出」は元日の朝限定の日の出になりますので、1月1日だけとなります。
どちらも太陽の光を表した言葉になりますが、その呼び方の意味を考えると全く違った意味となるようです。
それでは、それぞれの意味を説明していきたいと思います。
ご来光の意味とは
「ご来光」は、仏教と関係している言葉になります。
山の上から日の出を見た時に、お釈迦様が後光の光を放ちながら現れるように見えることからそう呼ばれるようになりました。
また、山岳信仰から生まれたとも言われていて、この山岳信仰とは自然崇拝のひとつで、自然環境を神聖的なものと考え信仰することを言います。
ご来光は「御来迎(ごらいごう)」が由来
「ご来光」という言葉は元々「御来迎(ごらいごう)」というものが由来となっています。
御来迎とは、高山の頂上付近で太陽を背にして雲や、霧を見た時に自分の影が大きくなって映り込み、影の周りに虹色の綺麗な光の輪が現れる現象をいいます。
この現象は「ブロッケン現象」と呼ばれているものなのですが、大気中の水滴に光りが散乱されて、見ている人の影に円を作って現れるとても稀で貴重な現象になります。
当時の人達は、この現象を見た時に「阿弥陀如来(あみだにょらい)」(仏様)が来迎したと思い、とても歓喜したそうです。
このため「ご来光」は神聖なものとして人々から尊いものとして拝まれるようになりました。
ご来光は「高い山で見るほど早く日の出を拝む事が出来ることから、よりご利益がある」と考えられていて、富士山の頂上から見るご来光は格別なものになっています。
ちなみに、低山や高山の明確な区分というのは無く、山地分類においては、起伏の大きさで概ね区分されているようです。
低山性山地は500m以下、中山性山地は1000m程度、高山性山地は2000m以上となっていますが、様々な研究者の意見があり、はっきりと決まっているわけではないようです。
初日の出の意味とは
「初日の出」とは、神道に関係している言葉になります。
穀物の豊作を司る神様である年神様(歳神様)が、元日の日の出と一緒に現れるとされていたことから、1月1日の日の出の時にその1年の豊作と、無病息災を祈るようになったのだそうです。
この「初日の出」の風習は、主に明治以降に行われるようになった比較的新しい風習になります。
これは、天皇が元日に行う「四方拝(しほうはい)」という東西南北の神々に年災消滅と五穀豊穣を祈る儀式が由来とされています。
これが貴族や、庶民の間で広まり、家族揃って元日の日の出と共に東西南北を拝むようになったのが始まりとされ、現在の日の出に向かって拝むというスタイルに変化していったようです。
元旦に富士山から見る太陽は、ご来光?初日の出?
「ご来光」と「初日の出」の意味が分かりましたが、元日に富士山から見る日の出はどちらの意味になるのでしょうか。
これは、『拝む対象』によって意味が変わります。
『仏様にお祈りをする場合は「ご来光」となり、神様にお祈りをする場合は「初日の出」となる』ということです。
ちなみに、仏様と神様の違いがよく分からないと思われている方もいらっしゃると思うので簡単に説明させていただきますね。
仏様(ほとけさま)とは
仏様とは、インドで発祥した仏教の中での覚り(さとり)を開いた人のことで、主に「如来(にょらい)」・「菩薩(ぼさつ)」・「明王(みょうおう)」・「天部(てんぶ)」・「垂迹(すいじゃく)」の5種類に分類されます。
覚りとは、修行を行いこの世の煩悩や悩みなどから解放され、並外れて卓越した存在になることを言います。
この仏様の中でも「阿弥陀如来(あみだにょらい)」と呼ばれる仏様は、最高位である「釈迦如来(しゃかにょらい)」の師匠にあたる仏様となっています。
神様とは
日本の神道においての神様とは、日本人の暮らしの中から生まれたもので、古来の人々は、自然現象の中に恵みや恐怖を与える何かの存在を感じ、その何かを神様として捉えるようになったのが始まりとされています。
日本古来の神様は、太陽や風、木、水など、さまざまな物に神様がいると考えられていて、その数と種類の多さから八百万の神(やおよろずのかみ)と言われています。
時代の流れと共に、この世は全て神様から生まれてきたものとされ、人間もまた神様から生まれてきたとする日本神話(古事記)が作られました。
その話の中では、イザナギノミコトとイザナミノミコトという神様が国を造ったとされています。
そして、かつてはアマテラスオオミカミという神様の子孫が天皇家とされていました。
仏様と神様の意味を知ると違いがはっきりしたのではないでしょうか。
ちなみに、仏様はお寺に、神様は神社に祀られているのでその参拝方法も異なるものとなりますので、注意しましょう。
まとめ:元日には拝む対象によって「ご来光」か「初日の出」かが決まる
- ご来光は、仏様が後光の光を放っているように見えるところから名付けられた
- 高い山から仏様に祈り、拝む日の出は「ご来光」となる
- 初日の出は、元日の日に日の出と共に年神様が現れるとされていたことから縁起の良いものとされ、拝まれるようになった
- 1月1日に神様に祈り、拝む日の出は「初日の出」となる
いかがでしたでしょうか。
私自身としては、お正月には新しい年の始まりを象徴するものとして日の出を見る風習があるのだと思っていましたが、ご来光と初日の出は、言葉の違いだけではなく、それぞれ違う信仰から生まれた意味の違う言葉だということは驚きでした。
いつの日か日本一の富士山に登り、初日の出を拝んでみたいものです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。